保育学研究
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53 巻, 3 号
―特集 園生活における子どもの育ち合い―
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
第1部 特集論文
<総説>
原著<論文>
  • ―縦断的観察からのエピソード分析から―
    湯浅 阿貴子
    2015 年 53 巻 3 号 p. 248-260
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的はゲーム遊びで生起した「ずる」の場面に着目し,「ずる」が継続的に観察された幼児の行動記録から行動の変容プロセスを明らかにした。その際,他者との相互交渉が幼児の意識及び行動の変容を促す要因と繋がっているのかについて検討した。結果,(1)望んだ状況にするための「ずる」が一定期間繰り返されることによって周囲が疑問を抱くようになる,(2)周囲の幼児が「ずる」に対して疑問や不満を抱き,指摘するようになる,(3)「ずる」を行う幼児が指摘を受け,自身の行動の意味や結果について考える機会を得る,(4)突然変化するものではなく徐々に変容していく,という4つの段階を経ていることが明らかとなった。
  • ―メンターシップの概念による分析―
    保木井 啓史
    2015 年 53 巻 3 号 p. 261-272
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,幼児の協同的な活動の成立過程を,幼児の日頃の関係性の点から明らかにすることであった。研究方法として,幼稚園5歳児クラスの保育場面を,Ripleyらが提唱した「メンターシップ」の視点から質的に分析した。その結果,次のことが明らかになった。第1に,協同的な活動への参加は,日頃の遊びでの決まったメンバーである「仲良しグループ」を単位としてなされていた。第2に,幼児同士の目的の共有がなされない場合にも,「仲良しグループ」を単位とした活動は,他児への関心によって図らずも「協同的」になっていた。第3に,「気楽な雰囲気」が,仲良しグループを単位とした協同的な活動を継続させていた。
  • ―気持ちを和ませる介入行動に着目して―
    水津 幸恵, 松本 博雄
    2015 年 53 巻 3 号 p. 273-283
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育におけるいざこざ場面での,保育者による幼児の気持ちを和ませる介入行動の機能について明らかにすることであった。4歳児クラスにおけるいざこざの事例を収集し,解釈的アプローチに基づき保育者と幼児の相互作用のありようを考察した結果,以下の2つの機能が見出された。第1に,いざこざが終結するまでの過程では,緊張状態を緩和し,自分の行動を振り返る空間をつくり出す機能があった。この空間の中で,幼児は自分の非を素直に認めて気持ちに折り合いをつけていた。第2に,いざこざ終結後では,ネガティブな気分を切り替え,状況を転換させる機能があった。これは,いざこざ後も一緒に遊ぶ等,当事者間の良好な関係を維持することに通じていた。
  • ―幼稚園3歳児学年と4歳児学年の発達的変化に応じて―
    田中 あかり
    2015 年 53 巻 3 号 p. 284-295
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究では幼稚園3・4歳児学年の幼児の「つまずき」場面における幼児の発達的変化に応じた幼稚園教師の行動を明らかにすることを目的とした。幼児26名と教師1名を対象に両者のやりとりの観察記録と,教師へのインタビュー記録を収集し,2学年を比較し分析を進めた。その結果4歳児学年時になると教師が幼児の感情の発達的変化に配慮して「敢えて関わらない」行動を取るようになることが見出された。そしてこの教師の行動には「幼児の感情に配慮する」「幼児の主体的な行動を引き出す」「幼児同士の関係を繋げる」働きがあることが見出された。最後にこれらの働きの背景に幼児の自律的な情動調整を促す教師の行動のしくみがあると考察した。
  • ―「遊びの状況」に着目して―
    河邉 貴子
    2015 年 53 巻 3 号 p. 296-305
    発行日: 2015/12/25
    公開日: 2017/08/04
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,子どもの育ち合いを考える際には関係論的な視点だけでなく,文化的実践としての遊び理解の視座が必要であると論じることである。子どもは身近な環境にかかわることによって,環境の潜在的可能性を引き出しつつ,遊びの課題を生成し,そのことによって遊びの状況を絶えず更新している。このようなプロセスが保障される遊びこそ質の高い遊びであり,育ち合いが保障される。保育者は子どもの遊び課題と遊びの状況を理解し,援助の方策を考える必要がある。
第2部 委員会報告
第15回国際交流委員会企画シンポジウム報告
第3部 保育の歩み(その2)
英文目次
編集後記
奥付
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