保育学研究
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58 巻 , 1 号
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<巻頭言>
原著<論文>
  • ―岡政との出会いを手掛かりに―
    稲田 公子
    2020 年 58 巻 1 号 p. 7-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    戦後,文部省で青少年局初等教育課長として幼児教育の普及と発展に大きく寄与した坂元彦太郎であるが,文部省入省以前に幼児教育について専門的に学んだり,幼稚園に籍を置いて実践したりという経歴を持たない。その保育観,理想として語られる保育の臨場感の由来を探るうち,岡政の存在に行きついた。両者の保育観を比較して岡の残した保育実践が,坂元に多大なる影響を与えていたことを明らかにしたい。
  • ―長野県・新潟県・高知県の市町村保育行政に対する代表的官僚制論の適用―
    山中 拓真
    2020 年 58 巻 1 号 p. 19-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,代表的官僚制論を援用しつつ,公立保育施設の所管部署に保育士が配置されているかいなかによって公立保育施設の子ども・保育士比率縮小施策にいかなる相違が生じるのかを明らかにすることである。長野県と新潟県,高知県内の市町村を対象に収集したデータをもとにロジスティック回帰分析を行った結果,所管部署に保育士を配置する市町村ほど,当該施策を有する傾向にあることが明らかになった。子ども・保育士比率縮小施策が保育過程の質の向上を確かにもたらすためには,保育者の賃金上昇に結び付き,かつ,縮小した子ども・保育士比率にふさわしい方法の習得を内容とする,コーチングに重点化した研修制度を構築・拡充することが重要である。
  • ―5歳児クラスにおける幼児同士の相互行為に着目して―
    堀田 由加里
    2020 年 58 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,OHPを用いた描画表現活動において,幼児がどのような相互行為のなか,描画表現を展開するのかを検討することを目的する。5歳児クラスの自由遊びの時間にOHPが設定された10日間を参与観察し,幼児のやり取りをTheune(2013)の「アノテーションスキーム」に依拠し分析を行った。分析の結果,描画が重なる,光る,動く,拡大されるというOHPの機能により,幼児のイメージが他児のイメージの共有と拡張に繋がりやすいこと,さらに,役割が幼児間で固定化されるのではなく,参加する幼児が相互に「遊び手」や「登場人物」として流動的に役割を担うことによって,虚構場面が深まることが示された。OHPを用いた描画活動が幼児個人の美的享受や個人の思考の表出のみならず,他者との関わりの中で新たなイメージをつくり上げていく過程が示された。
  • ―多声的エスノグラフィーの手法を参照した語りの分析―
    山田 千愛, 砂上 史子
    2020 年 58 巻 1 号 p. 43-55
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究は,保育所を利用せず家庭で子育てをしている養育者(以下,家庭養育者)と保育所保育を利用している養育者(以下,保育所養育者)を対象に,1・2歳児の反抗・自己主張に対する対応と意識を明らかにすることを目的とし,多声的エスノグラフィーの手法を参照した映像視聴による集団討議の語りを分析した。
    その結果,①対応に関して,家庭養育者は「待つ」,保育所養育者は「交渉する」の語りの数が多い。②対応に影響を及ぼす要因に関して,家庭養育者は「時間」,保育所養育者は「時間」「精神的余裕」の語りの数が多い。③意識に関して,家庭養育者は「自己省察」,保育所養育者は「教育方針」の語りの数が多い。④映像視聴における否定的感情は両者に,肯定的感情は家庭養育者のみに見られることが明らかとなった。これらの両養育者の語りの違いには,子どもと接する時間の長さや生活環境の違いが関連していると考えられる。
  • 伊東 祐恵, 佐々木 沙和子, 近藤 万里子, 岩堀 環, 星山 麻木
    2020 年 58 巻 1 号 p. 57-66
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    自閉スペクトラム症療育の経験豊かな療育者の運動への関わりを明らかとし,運動場面で療育者が持つべき関わりを検討することを目的とした。方法は,療育者4人を対象に半構造化インタビューを行い,質的に分析した。その結果と考察から,療育者の運動への関わりは,(1)運動発達に合わせた環境設定や介助の工夫,(2)日常生活に役立てる関わり,(3)興味・関心・モチベーション・遊び・楽しさの工夫,(4)将来の余暇活動を見通した幼児期の関わり,を行っていたことが分かった。この結果から,運動機能の向上を目的とするだけでなく,運動を感覚や精神発達,生活や将来と関連付けて検討することは,より有効な支援につながると考える。
  • 上田 敏丈, 秋田 喜代美, 芦田 宏, 小田 豊, 門田 理世, 鈴木 正敏, 中坪 史典, 野口 隆子, 淀川 裕美, 森 暢子
    2020 年 58 巻 1 号 p. 67-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    日本では,約1万の幼稚園があり,その内の70%が私立幼稚園である。私立幼稚園の多くは,ファミリービジネスであり,園長は経営者としての役割も担っているため,保育の質の向上には,実践面の役割を担う主任教諭の役割は重要である。そこで本研究では,私立幼稚園の主任教諭が自身のリーダーシップをどのようなものとして捉え,また自身の役割をどのようなものとして認識しているのか,そこでの主任教諭としてのやりがいや葛藤はどこにあるのかを明らかにすることを目的とする。私立幼稚園の主任教諭8名に対してインタビューを行い,質的データ分析方法であるM-GTA(木下2003)を用いて分析を行った。その結果,25の「分析概念」,9つの[カテゴリー],3つの〈コア・カテゴリー〉が生成された。主任は,園長と職員集団との意思疎通を図り,それぞれの意図を伝達する〈つなげる〉ことと,カリキュラムの調整や職員への指導,心理的支援といった職員集団を〈まとめる〉ことをリーダーシップと捉える一方で,この2つのリーダーシップの間で,やりがいと共に葛藤の〈板挟み感〉を感じていることが明らかとなった。
  • 香曽我部 琢, 藤田 清澄, 新屋 貴大, 中橋 美穂
    2020 年 58 巻 1 号 p. 81-91
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究では,男性保育者のキャリア形成プロセスにおけるトークニズムの影響を明らかにし,その支援について検討する。そこで,人が社会・文化から影響を受けて発達するプロセスを描く方法である複線径路・等至性モデリングを用いて分析を行うこととした。その結果,男性保育者へのトークニズムの特徴として,多数派である女性保育者にも多様性が存在すること,キャリア形成に有利なトークニズムも多く発現すること,男性保育者の感情の生起に伴って出現すること,同じトークニズムでも異なる作用を持つことを明らかにした。そして,a.関わる他者の多様性を保障すること,b.男性保育者の感情を十分に理解すること,以上2点の有効性を示唆した。
  • ―「子ども志向」を持つA氏の場合―
    境 愛一郎, 栗原 啓祥
    2020 年 58 巻 1 号 p. 93-104
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,職場環境や実践経験の蓄積を通した保育施設に勤める給食職員の意識変容のプロセスを具体的に明らかにすることである。研究協力者は,現在,認定こども園の給食職員として献立作成と調理に従事するA氏である。同氏は,給食職員となる以前より,将来はなんらかのかたちで子どもと関わる仕事に就きたいという願望を抱いていた(「子ども志向」)。本研究では,A氏の約8年間のキャリアを質的に分析することで,そのなかでの意識の変容過程を描き出す。分析の結果,子どもと直接的に接する機会や専門的な挑戦を促す環境を通して,A氏の現在の実践スタンスが構築されていく過程が明らかになった。
  • 庭野 晃子
    2020 年 58 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    保育者不足が問題となっている。その要因として保育者の離職率の高さが指摘されているが,離職を規定する要因について統計的な手法を用いて検証した研究はほとんどない。本研究は,保育従事者の離職意向を規定する要因について検証し離職防止の対策を提案することを目的とした。新任からベテランの保育従事者574名を調査対象としWEBアンケートを行った。重回帰分析の結果,保育従事者の離職意向を規定する要因は,年齢,設置主体,給与,1か月の平均勤務日数,勤務の融通等の変数と有意に関連していた。離職を防止する対策として,「保育士等の処遇改善」を継続することや仕事と家庭の両立をしやすい柔軟な勤務体制を構築していくことを提案した。
  • ―リーダーが認識するリーダーシップ行動とメンバーの行動―
    濱田 祥子, 森川 敦子
    2020 年 58 巻 1 号 p. 115-127
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育学生のグループ活動における集団機能の変容過程を捉えるにあたり,リーダーシップ行動とメンバーの行動をSL理論から考察することであった。リーダーへインタビューを実施し,SCATを用いて分析した結果,グループ活動は「リーダーシップ模索期」,「リーダーシップ確立期」の2期に分けられた。リーダーシップ行動について,「リーダーシップ模索期」は指示的行動,協労的行動ともに低かった。「リーダーシップ確立期」は,指示的行動は高く,協労的行動はリーダーのメンバーの意欲に対する認識によって違いがあった。協労的行動は,意欲的メンバーが多いと認識すると高く,非意欲的メンバーが多いと認識すると低くなる傾向が示された。
応募要項
第2部 保育の歩み(その1)
  • 「グローバル社会に向けた日本の保育のこれから」
    秋田 喜代美
    2020 年 58 巻 1 号 p. 135-141
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,保育学研究のグローバルな視点を文献等から概括し,わが国の保育の展望を描出することである。大きく3点を論じた。第1にグローバル化の進展がもたらす光と影と,国際的な保育政策動向を示した。第2に,保育の質に関し,規制を超えて保育プロセスの質に関する要因の精緻な実証的検討や乳児期の保育の質議論が進展していること,また一方で保育の質で論じられる支配的言説を超える言説としての「質を超える」もう一つの言説の議論が展開していることを,我が国の状況と関連づけ論じた。そして第3に,国際比較研究としてOECD国際幼児教育,・保育従事者調査2018結果を踏まえ,日本の保育の卓越性と課題,そしてこれからの共生社会への射程を示した。
  • 2020 年 58 巻 1 号 p. 143-
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/12/08
    ジャーナル フリー
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編集後記
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