保育学研究
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62 巻, 2 号
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<巻頭言>
第1部 自由論文
原著<論文>
  • ―幼児の意図やイメージを問う質問の形式と連鎖に着目して―
    奥谷 佳子
    2024 年 62 巻 2 号 p. 7-18
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究は,4・5歳児クラスの協同的な遊びと活動場面における保育者の質問の形式と連鎖の特徴を明らかにすることを目的とする。幼児の意図やイメージを問う質問に着目し,指導計画等を踏まえて分析した。その結果,①全質問のうち閉ざされた質問が62.2%であった,②場面・学年に共通して,質問の連鎖は閉ざされた質問で終結する傾向にあった,③協同的な遊び場面では,質問の連鎖の後半部分ほど,より具体的に幼児の意図やイメージを引き出す質問になっていたが,その形式には学年による違いがあった,④協同的な活動場面では,連鎖する閉ざされた質問に具体例が示されていたが,そのタイミングには学年による違いがあったことが明らかになった。
  • ―福祉サービス第三者評価における利用者調査結果の活用可能性の検討―
    竹腰 昌央
    2024 年 62 巻 2 号 p. 19-29
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,認可保育所における保護者満足度に影響する要因について,福祉サービス第三者評価における利用者調査結果を用いて検討した。因子分析の結果,保護者満足度の構成因子として「職員に対する信頼感」「安全で快適な環境構成」「保護者都合への配慮」「子どもの体験機会」の4因子が抽出された。また,保護者満足度に対する4因子の影響を検討するため重回帰分析を行った結果,保護者最高満足度には「職員に対する信頼感」「子どもの体験機会」「保護者都合への配慮」の3因子が影響していることが確認された。以上から,福祉サービス第三者評価における利用者調査結果は,保護者満足度を検討する上で活用可能であることが示唆された。
  • 西山 萌
    2024 年 62 巻 2 号 p. 31-42
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究は,倉橋惣三の保育理論における「相互的生活」とは何かを明らかにするものである。1914〜1953年の倉橋の著述を分析した結果,(1)相互的生活は子どもの友達への欲求を満たすために必要である,(2)相互的生活とは対等で交渉的な子ども同士の生活である,(3)相互的生活による教育では個性が尊重され教育の対象が群とされる,(4)相互的生活による教育ではおのずと沸き起こる子どもの心もちに価値を置く,(5)相互的生活により関係の中で生きる人間の下地が耕されるという五つの考えが明らかになった。よって,倉橋の相互的生活論は,槇山栄次や城戸幡太郎の共同性養成を目的とする教育論とは異なる,関係論的視点による教育論だと考察された。
  • ―物・出来事・大人の関わりに着目して―
    青井 郁美, 野中 哲士
    2024 年 62 巻 2 号 p. 43-54
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本稿では,0歳児クラスの乳児の動画観察から,乳児の手が物に触れた場面を抽出し,接触した物,接触の持続時間,接触に伴う出来事や大人の関わりを特定し,乳児の環境との関わり方の発達的変化を検討した。その結果,ハイハイや伝い歩き等の移動獲得後の乳児は,移動獲得前の乳児よりも物との接触時間が短く,各乳児の物の接触時間は,大人の関わりがある時の方が,ない時よりも長かった。また,移動獲得後の乳児は,物の接触に伴う出来事や大人の関わりのヴァリエーションが増加した。本研究の結果は,乳児の物の遊びは,大人の関わりの影響を受けると同時に,乳児自らの発達状態が,物との多様な経験を生み出す機会となることを示唆している。
  • 芦田 祐佳
    2024 年 62 巻 2 号 p. 55-66
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,幼児教育に対する小学校教員の理解がどのようなメカニズムで促されるのかを検討した。大阪府内の小学校教員に対して質問紙調査を行ったところ,幼児教育に対する理解が深い教員ほど,幼児教育を小学校低学年以降にも通ずるものとして捉えやすいことが示された。また,こうした小学校低学年以降にも通ずる幼児教育の理解は,小学校教員が過去に経験した幼小連携・接続の取り組み段階と有意に関連していたが,幼小連携・接続による教員自身の学びに対する効果感を媒介して間接的に関連することも明らかになった。以上の結果を踏まえ,幼児教育に対する小学校教員の理解を深め,幼小連携・接続を活性化するための方策を議論した。
  • ―機能的説明から共感的な捉えへの試論―
    大豆生田 芽吹
    2024 年 62 巻 2 号 p. 67-78
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,「見守る」を従来の非介入によって発達を促す特定の「行動」としてではなく,多様な援助と連続的に,子どもの心に共感的に寄り添う「姿勢」として捉える必要性を示し,幼稚園教育要領を解釈の柱とした文献研究を行って「見守る姿勢」という新たな概念を提案することを試みた。その結果,「見守る姿勢」は,「自然な共感性」「共同注視的な関係性」「姿勢としての見守り」の三つの特徴があると捉えられた。さらに,幼稚園5歳児クラスのフィールドワークを通して得られた事例を,この「見守る姿勢」概念を用いて解釈することによって,「見守る姿勢」が実践を新たな角度から捉えることのできる可能性がある概念であることを示した。
  • 劉 梅
    2024 年 62 巻 2 号 p. 79-90
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究は幼児のレジリエンス過程に対する保育者の捉え方及びそれを支えるためのかかわりのプロセスを明らかにすることを目的とした。15名の保育者を対象に幼児のレジリエンス過程についてエピソード記述を依頼し,その後個別インタビューを行った。M-GTAを用いて分析した結果,幼児のレジリエンス過程を支えるための保育者のかかわりから20個の概念名が生成され,〈かかわりの判断〉を発端に,〈「安心感」を支えるかかわり〉,そして〈「転換」志向を支えるかかわり〉,〈「解決」志向を支えるかかわり〉へと展開していくといった主なプロセスが明らかになった。また,保育実践における幼児のレジリエンス過程を支える視点の意義が示唆された。
第2部 国際的研究動向
  • ―カンボジアの事例にみる就学前教育普及への貢献と政策の推移―
    三輪 千明
    2024 年 62 巻 2 号 p. 93-104
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は発展途上国のコミュニティ幼稚園(CPS)の特徴と課題を整理し,カンボジアを事例に,就学前教育の普及に対するCPSの貢献と政策の推移を明らかにすることである。方法として文献研究および全国統計や最小行政区の経年データの分析を行った。CPSは脆弱なコミュニティでの展開,住民参加,低コスト,包括的発達支援という特徴がある一方,財政面の脆弱性,教育の質や持続性の低さという課題を抱えている。カンボジアのCPSは小学校までの距離が遠い農村地域を優先して設置され,特に3~4歳児(より多くの女児)の就園を促してきた。政策の推移からは政府の関与が漸進的に高まる様子が確認され,CPSの課題に対処する戦略が明らかとなった。
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編集後記
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