保育学研究
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第1部 特集論文
<総説>
原著<論文>
  • 加藤 敦史, 高浜 浩二
    2024 年 62 巻 3 号 p. 11-22
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究では,保育所においてクラス全体へのポジティブ行動支援(PBS)に基づく保育を実践し,神経発達症児を含むクラス全体の園児の望ましい行動が促進されるか,またクラスの園児同士の向社会的行動が増えるか検討することを目的とした。5歳児クラスにおいて,望ましくない行動が多かったおやつ準備場面を標的行動として支援を導入した結果,準備の所要時間は短縮され,他児との適切なかかわりは増加した。PBSに基づく実践により,園児のおやつ準備行動および向社会的行動が促進されることが示唆された。また,配慮を要する園児のおやつ準備行動にも有効である可能性も示唆された。
  • ―保育職と看護職との連携に焦点をあてて―
    山本 理絵, 渡邉 眞依子, 三山 岳, 瀬野 由衣
    2024 年 62 巻 3 号 p. 23-34
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育所における医療的ケア児を包摂する集団保育において保育職と看護職が,それぞれの役割を遂行し連携していく上での困難及び具体的な配慮や工夫を明確化することである。医療的ケア児を受け入れている保育所の担任保育士,看護職,管理職にインタビューし,分析した結果,以下のことが明らかになった。保育職と看護職とが柔軟に役割分担し効果的に連携するためには,お互いの専門性や立場の尊重に基づくコミュニケーションや取組を通しての相互理解が必要である。そして連絡・報告・調整による情報共有や相談をすること,とくに会議で保育方針,目標・ねらい,見通し,子どもたちの成長する姿を共有することが重要である。
  • ―関係構築過程における保育者の葛藤に着目して―
    上村 晶
    2024 年 62 巻 3 号 p. 35-46
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究は,若手保育者が外国にルーツのある子どもの発達的課題に気づき,障害診断に至るまでのプロセスを明らかにすると同時に,関係構築過程における保育者の葛藤を解明することを目的とした。2歳児との関係構築過程における自律的可視化とインタビューを隔月で行い,テーマ分析と発生の三層モデルを踏まえた複線径路等至性モデリングで分析した。その結果,重複的ニーズのある子どもとの関係構築過程で,①言語の違いによる意思疎通の難しさという先入観の裏側に発達的課題が潜在しやすく葛藤を誘発しやすいこと,②子どもとわかり合おうとする意識と適切な環境構成が言語以外の課題に注視させ,包摂的志向を促進することが示唆された。
  • ―保育経験年数別にみるインクルーシブ保育の困難感―
    守 巧, 若月 芳浩
    2024 年 62 巻 3 号 p. 47-56
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,経験年数別にみたインクルーシブ保育実践者の困難感や困難感から生じている各教諭の思いを明らかにすることである。幼稚園教諭である新任教諭7名,中堅教諭7名,熟練教諭6名に対し,フォーカス・グループ・インタビューを実施した。逐語録からSCAT分析をした。経験年数によってインクルーシブ保育への捉え方や実践など,困難と感じる観点が違っていた。また,経験を蓄積することで保育実践が熟達化し,困難が軽減するといった単純なものではなく,新たな視点を獲得することで生じる困難もあった。困難感を的確に理解し,園全体で乗り越えることで保育の質的な向上につながると思われる。
  • ―活動システムのモデルを用いた歴史的変遷と課題の分析―
    長澤 真史
    2024 年 62 巻 3 号 p. 57-67
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    近年,保育所等において特別なニーズをもつとみられる子どもが増え,保育者と外部支援者の協働がますます求められている。一方で,保育における多職種協働について,様々な課題も指摘される。本論では,保育をめぐる多職種協働の歴史的変遷のプロセスについて,また,その結果として生じている現在の課題について明らかにすることを目的に,活動システムのモデルに関連付けながら先行研究をレビューし,分析を行った。その結果,歴史的に反復されるプロセス,保育において顕在化しやすい緊張関係が見いだされた。これらの知見は,各地域で多職種協働を発展させていく上での資源となると考えられた。
  • ―多職種の語りによる10年間の協働学習の分析から―
    松崎 恭子, 髙橋 学
    2024 年 62 巻 3 号 p. 69-80
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,地域子育て支援拠点における10年間の包括的支援を実践した「多職種チーム」の協働学習から,その存在意義を明らかにする。拠点職員5名を対象に半構造化インタビューを行い,多職種の語りを分析した。結果の考察は,Yrjö Engeström(2008)の「ノットワーキング(knotworking)」理論を用いた。多職種存在の安心感は利用者の居心地に波紋し,①相談の場の雰囲気づくりと受容,②気づきの感度と連携判断,③イニシアティブの分担化,④長期的に形成された新しい職能集団による予防的支援,⑤地域の実情に応じた多職種チーム点在の必要性が示された。包括的支援の強化という新たな潮流のなかで,これまでに存在しなかった多職種チームの存在意義が示された。
  • ―保育者養成校における実習支援の観点から―
    中村 麻衣子, 松田 こずえ
    2024 年 62 巻 3 号 p. 81-92
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,発達障害様相の学生とその学生を受け入れる保育施設の困難実態と課題を明らかにすることである。研究1の学生対象の質問紙調査から,発達障害様相の学生は実習不安を抱え精神的健康度が低く,自ら支援を求め難いことが示された。研究2の発達障害様相の学生と実習先指導者への面接調査から,困難の背景に発達障害に起因する特性が示唆されたが,学生の無自覚から支援を求めず両者の間に誤解や認識のずれが生じたことが示された。本結果から,養成校の支援策として,本人からの支援要請を待たずに要支援学生をスクリーニングし,自己理解を促す支援を開始,実習前から実習先と情報共有し連携することが有効である可能性が示唆された。
  • ―システマティック・レビューによる分析―
    渡邉 真帆
    2024 年 62 巻 3 号 p. 93-103
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,降園の時間帯の保育に関する研究動向を概観し,保育者がこの時間帯の保育をどのように捉えてきたか,システマティック・レビューの手法を用いて明らかにすることである。研究動向として「預かり保育」「延長保育」「預かり保育及び延長保育」「降園前」「降園方法」の5場面に着目されてきたと整理された。次に,保育者によるこの時間帯の保育の捉え方が示された論文をうえの式質的分析法を用いて分析した。結果,保育者によるこの時間帯の保育に対する考えや葛藤及び納得の仕方等は,降園の時間帯の保育全体に通ずる課題であると示唆された。以上,時間帯に着目し包括的に知見と課題の整理を行った。
  • ―北海道言語障害児教育研究協議会および「北海道言語障害児教育研究協議会幼児問題調査検討委員会」の事例分析―
    田中 謙
    2024 年 62 巻 3 号 p. 105-116
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/02/17
    ジャーナル フリー
    本研究は言語障害幼児支援,特に「幼児ことばの教室」の発展における専門職集団の果たした役割と意義を北海道言語障害児教育研究協議会(以下,道言協)および「北海道言語障害児教育研究協議会幼児問題調査検討委員会」(以下,「委員会」と表記)の事例分析を通して明らかにすることを目的とした。その結果,北海道では道言協および「委員会」による言語障害幼児支援,幼児ことばの教室に関する実態調査やその結果の社会への発信は,北海道の言語障害幼児支援,幼児ことばの教室に係る政策形成を推し進めた要因の一つであると考えられ,道内で幼児ことばの教室が整備されていく際の原動力の一つとして機能したと考えられることを明らかにした。
第2部 学会活動報告
第3部 保育の歩み(その2)
英文目次
編集後記
奥付
目次
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