保育学研究
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63 巻, 2 号
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<巻頭言>
第1部 自由論文
原著<論文>
  • ―モノを使用した行為と水との関わりにおける意味の考察―
    最上 秀樹
    2025 年63 巻2 号 p. 7-18
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は1歳児クラスの水遊びの過程において,子どもとモノや水などの環境との関わりを明らかにし,子どもがモノや水,行為の意味をどのように形成し,環境との関わりに影響を及ぼしているかについて,考察することを目的とする。研究方法は子どものモノを使用した非言語的行為に着目し,微視発生的分析法を採用した。6名の事例を分析した結果,第一に水との関わりだけでなく,水遊びに構成されたモノ自体に対する意味を形成していく過程,第二にモノと水との相互作用による現象が子どもの水やモノを使用した行為の意味の形成に影響を与える過程,第三に他児や保育者の行為がモノや水の意味の形成に影響を与える過程があることを明らかにした。
  • ―保育者の身体行為に焦点を当てて―
    何 星雨, 倉持 清美
    2025 年63 巻2 号 p. 19-30
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,集団保育で複数の子どもを保育する状況で,保育者が泣いている2歳児に対する身体行為をどう取っているのかを明らかにすることを目的とした。東京都にある保育園2歳児クラスの保育者2名と子ども8人(平均月齢2歳9ヶ月)を観察した。保育者の身体行為をタイムサンプリング法によって分析した。保育者の身体行為は,位置・手の動き・姿勢,視線について分類された。その結果,保育者は泣いている子に対して,身体接触を使って落ち着かせるような行動をとっていた。また,身体全体を使って,他児にも注意を払っていた。そうした身体行為は,泣いている子の情動調整の支えになるだけではなく,他児の援助にもつながると示唆される。
  • 永井 久美子, 渡辺 俊太郎, 香曽我部 琢, 水落 洋志
    2025 年63 巻2 号 p. 31-42
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究は,3歳未満児担当保育者の連携・協働を評価するための尺度を開発することを目的とした。現任保育者2207名を対象に,尺度候補項目を用いた質問紙調査を実施した。有効回答者数は1730名(男性:60名,女性1670名)であった。尺度項目を検討するために因子分析を行った結果3下位尺度42項目が抽出され,各尺度の内的整合性,再検査信頼性ならびに妥当性が認められた。また,回答者の雇用形態や,クラスで担当している役割,勤務先等によって尺度得点に差異が認められた。研究の結果,3歳未満児担当保育者の具体的な連携・協働の姿を捉えることのできる一定の信頼性・妥当性を備えた尺度を作成することができた。
  • ―関係構造図を用いた保育者支援の試み―
    濱田 祥子, 杉村 伸一郎
    2025 年63 巻2 号 p. 43-54
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者を対象に外在化問題の背景要因の推定に着目した介入を行い,効果を検討することであった。介入ではBPSモデルとシステム思考に関する講義を行い,5歳男児の事例への対応について関係構造図を用いて考えてもらった。分析の結果,介入後に対応のカテゴリー数が増加し,「指示・説明」は減少することが示された。また,介入前と介入から1ヵ月後を比較すると,1ヵ月後の方が事例に対する重大性,負担感,責任性が低かった。自由記述では「子どもの安心感・落ち着き」「子どもと保育者の関係性の良化」などが報告された。集団を対象とした介入であっても一定の有効性が認められ,保育者支援となり得ることが示唆された。
  • 大谷 多加志, 原口 喜充
    2025 年63 巻2 号 p. 55-65
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,2020年から2023年に生後10-11か月および18-24か月の子どもを持つ養育者に実施した育児不安調査の結果をコロナ前の調査結果と比較し,コロナ禍が養育者の育児不安に及ぼした影響について検討した。この調査において新版K式発達検査2020を用いた子どもの発達調査も実施し,この発達評価の結果と養育者の育児不安との関連についても検討した。その結果,コロナ禍において育児不安の増大は確認されなかった。また,子どもの発達状態との関連も確認されなかった。一方で,既存の尺度では,コロナ禍のような非日常的な状況における育児不安を正確に評価できていない可能性もあり,継続的な検討が必要である。
  • 大金 保穂, 山口 創
    2025 年63 巻2 号 p. 67-77
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究では,乳児の親子体操において児が快反応を示す動作の同定および母子の満足度を検証した。親子体操と対照動作の様子を動画で撮影し,印象評定を行い,親子体操と対照動作による児の笑いの表出について群内で比較した。また,介入前後の母子の満足度について母親に質問紙調査を行った。その結果,親子体操において児の笑いが表出される動作は,立ち姿勢の縦揺れと立ち姿勢の高い持ち上げの2つであることが明らかとなった。また,介入前および対照動作後に比べ,親子体操の実施後は母子ともに満足度が高まることが明らかとなった。心地良い揺れや適度な高さが児の覚醒水準の上昇や母子の表情の同調をもたらし,児に快反応を表出させた可能性が考えられた。
  • ―日本語文献レビューを通して―
    朴 貴禮
    2025 年63 巻2 号 p. 79-90
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,「多文化保育」にかかわる文献の検討を通して,現在までの研究傾向と今後の課題について明らかにすることである。抽出された全98件の論文は研究対象ごとに6つのカテゴリーで分類し,さらに研究目的及び内容ごとに19のカテゴリーで分類した。その結果,研究蓄積や研究内容は増加傾向にあった。しかし,子どもの姿を観察した長期的な研究が少ないこと,「すべての子どもたちのため」の「多文化保育」についての研究がなされていないことが課題として明らかになった。今後,保育現場において「多文化保育」が「特別な取り組み」でなくなるよう,研究の発展を通して具体的方法やプロセスが広まっていく必要性が示唆された。
  • ―共通感覚のブリコラージュの視点から―
    山本 一成
    2025 年63 巻2 号 p. 91-102
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    保育学では遊びを深めるための重要な研究が蓄積している。一方で,矢野智司が述べるように,遊びを手段-目的関係に基づいて捉えることは,遊び概念を狭隘化し,一回性の体験である遊びの深さを失わせてしまう可能性もある。本研究では以上の先行研究を踏まえ,遊びを深める子どもの感覚という視点から,遊び論を発展させることを目的とする。その際,中村雄二郎の共通感覚論を手がかりに,臨床教育学的に保育実践を考察する。共通感覚は,五感を超えた感覚,想像力の座,トポスの感覚であり,それらの感覚が遊びを深める過程を明らかにする。最後に,遊びが深まる保育実践理解の視点として「共通感覚のブリコラージュ」概念を提示する。
  • ―Japan Kindergarten UnionとInternational Kindergarten Unionの関係性に着目して―
    永井 優美
    2025 年63 巻2 号 p. 103-114
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,アメリカ人在日宣教師であるA.L.ハウ(1852-1943)が日米の保育団体であるJapan Kindergarten Union(JKU)とInternational Kindergarten Union(IKU)の交流に果たした役割を明らかにすることを通して,保育における国際交流の意義を考察することにある。第一にハウ個人の継続的な交流活動によってIKUの支部としてJKUが設立されたことが解明された。第二に,その結果,IKUの国際交流が進展したことが明らかとなった。ハウは保育の質の向上を世界的に促進するため,保育者が広い視野で国際的かつ学術的な研究交流を行うことの必要性を示し,日米の保育者に互いに連携するよう啓蒙した。ハウは保育団体の国際交流事業における重要人物であり,日米保育の架け橋としての役割を超えて,実際の継続的な交流を生み出した主体であった。
第2部 国際的研究動向
  • オデガード エリン・エリクセン
    2025 年63 巻2 号 p. 117-154
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/04/09
    ジャーナル フリー
    北欧諸国(デンマーク,フィンランド,アイスランド,ノルウェー,スウェーデン)は,包括的な福祉国家体制と革新的な政策を基盤として,生活の質や子どもの教育成果において常に高い評価を得ている。総人口2,800万人を超えるこれらの民主主義国家は,遊びと全人的成長の調和を通してサステナブルな未来の価値を重視し,幼児教育と保育(ECEC)および家族政策において包括的なアプローチを展開している。また,親の共同責任の理念や,すべての子どもに開かれた包摂的な場としてのECEC組織の役割も,その根幹を成している。本論は,歴史的および国際的要因を踏まえつつ,北欧型ECECモデルが独自の枠組みとして成立するかどうかを検証する。北欧諸国には共通する特徴が見られる一方で,各国固有の違いも存在することから,単一のECECモデルという概念を批判的に検証する必要がある。このような分析は,これらの制度を形成するうえでの独自性と国際的観点の重要性を明らかにするものである。さらに本論では,国際教育や哲学的対話の知見を踏まえつつ,北欧のECECモデルが広範な文化的・環境的影響を受けながら発展してきた過程を明らかする。加えて,北欧の幼児教育が子どもの発達を学問的な側面にとどまらず,情緒的・社会的側面を含めた「全体」として支援することを重視している点を指摘する。とりわけ,芸術的表現や屋外での身体活動が中心的な役割を果たしていることを強調する。本稿は,北欧の福祉国家政策,文化的価値観,そして子ども観が交差することで,包摂性,子どもの権利と遊びの尊重,そして学びと発達への全体的アプローチを特徴とする独自のECECシステムがいかに形成されてきたかを明らかにし,既存研究の空白を補う。最後に,ECEC分野における知の創出を支える研究基盤の近年の発展にも焦点を当て,これまで十分に論じられてこなかった側面を掘り下げる。
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編集後記
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