保育学研究
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<巻頭言>
原著<論文>
  • ―幼稚園における「読ミ方」「書キ方」の存廃問題に着目して―
    鈴木 貴史
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 7-17
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼小の接続問題について,おもに言語領域における文字教育の接続に着目して検討することを目的としている。その方法として,はじめにフレーベルの文字教育論について確認し,それが東京女子師範学校附属幼稚園(以下,「附属幼稚園」)をはじめとしてわが国に受容されてきたのかを辿った。その方法として,附属幼稚園における「読ミ方」,「書キ方」の導入から1891(明治24)年における削除に至る時期について,当時の主事であった小西信八や中村五六を中核に据えて保育理論書や雑誌記事を参照した。わが国では明治10年代に恩物による文字教育から「読ミ方」「書キ方」における系統的な文字教育へ移行していた。その後,明治20年代に「読ミ方」,「書キ方」が保育科目から削除されたことにより,幼稚園における文字教育と小学校のそれとは明確に分離されることになった。明治20年代の幼小の接続問題の一つには,幼稚園での「読ミ方」「書キ方」において幼児の興味関心が軽視されたことにより,小学校以上の系統的な文字教育へ円滑に移行することができなかった点があった。
  • 野尻 美枝
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 19-30
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,20世紀初期の日本における幼児教育の二つの潮流(官立幼稚園・キリスト教主義幼稚園)をふまえ,恩物積木の実践を検討することにある。当時の書籍や学生ノート等を手がかりに各特徴を明らかにする。官立幼稚園の恩物積木は,フレーベルの恩物用法に依拠しつつも子どもがより楽しめるように子どもの年齢別に積木の構成を改変したり,他教材を一緒に用いたりして使用法の緩和を試みていた。一方,キリスト教主義幼稚園は,方法論だけではなくフレーベル思想も鑑みながら恩物の意義を捉え,創作話を用いて忠実に恩物積木を実践していた。この方法は,同時代のアメリカにおける実践に類似していた。
  • ―『昭和22年度(試案)保育要領―幼児教育の手びき』の修正翻刻版の検討から―
    小林 小夜子
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 31-42
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    現代保育の原点である『昭和22年度(試案)保育要領―幼児教育の手びき』は,昭和23年3月に翻刻印刷されたが,同年9月には修正翻刻印刷されている。筆者は修正翻刻に至る経緯と修正箇所の確認を行なった。その作業過程で,「学理と経験にもとづいた正しい保育の仕方を普及徹底して」いこうとする本書の目的が達成半ばになってしまったことについて精査し,考察した。時代の流れだけではなく,当時の経済状況と大きくかかわっており保育者の給料で購入することは困難なくらい高い価格であったことがその原因の一つであると確証した。これらから,保育の質と経済との関わりについて考察した。
  • 佐野 友恵
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 43-54
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,明治期における幼稚園保姆の無試験検定に関する研究である。本研究では,明治期における東京府で実施された幼稚園保姆検定の史料を精査することにより,無試験検定による免許状の具体的な授与理由を明らかにした。授与理由とされていたのは,次の4点である。 1.他県の小学校教員免許状を有する者 2.他県の幼稚園保姆免許状を有する者 3.高等女学校を卒業した者 4.知事が適任と認めた者 この4つの分類ごとに保姆免許状授与者像をその年齢や学歴・経歴などの側面から明らかにした。
  • ―愛育隣保館(1938-45)の疎開保育時までの実践を中心に―
    西脇 二葉
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 55-67
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    戦時下愛育隣保館の訪問活動を基にした健康相談事業について考察した結果,社会事業として始まった健康相談事業が戦時厚生事業化し,母親への育児改善指導が言説上は強化される変容を看た。しかしながら,子どもに対しては,科学的検査から個性を見極め,母親には,子どもの特徴を伝え,その子に応じた育児が徹底されるよう指導した実践の過程に変容は看られなかった。愛育隣保館の多種連携による健康相談事業は,「託す」という子どもの育ちを中心にした保育従事者同士の協力体制の結果が生んだ一つの形態であった。分担を前提とした連携とは,質的に異なるものであった。
  • ―人的環境としての保育者・友達との関係に着目して―
    山田 恵美, 小林 直実, 中澤 潤
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 69-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は幼稚園における降園活動の着座が示す発達上の意味を探ることを目的とした。降園活動時に幼児が座る位置や座るまでの時間,隣り合わせる子などの着座の様子を観察し,幼児の年齢や在園経験の違いによる着座の特徴と,クラス集団ができあがっていく過程の観点から着座の変化を検討した。 その結果「まずは担任との関係を求めて担任のそばを好む」,「担任に認められようと前の方にきちんと座る」,「友達関係があると後方を好む」,そして「クラスの仲間と列に並んで座る」という変化が見られた。これは発達に伴い,まずは個人同士の関係性について担任から友達へと重要となる対象が変化し,そしてクラス集団の成熟に従ってクラスの仲間意識が高まっていく様子が反映されていると考えられる。
  • ―キッズジャンベの遊び方の変遷に着目して―
    伊原 小百合
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 81-92
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼児の自由探索を促す環境に楽器を置いたとき,そこで幼児がどのように楽器を探索するのかを,縦断的観察を通して明らかにするものである。公立幼稚園にて,2015年10月から2018年3月までの長期的な参与観察を行った。午前中の自由遊びの時間に6種類(キッズジャンベ,ギロ,ウッドブロック,たまごマラカス,サウンドシェイプ,モーコック)の小型楽器を並べた楽器コーナーを作り,幼児が自由に楽器に触れられる環境を設定した。観察対象として,楽器コーナーに来る頻度の高かった女児1名に着目し,遊びの中でキッズジャンベにかかわる様子を事例として示した。その結果,楽器の自由探索では,非慣習的な使い方を含む様々な遊び方を通して,子どもが主体的に楽器の文化と出合っていくことが実証された。
  • ―幼稚園と親の会の共同性を中心に―
    末次 有加
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 93-104
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,自閉スペクトラム障害と診断された子ども(ASD児)の親が,どのように子育て実践を編成し,子どもの将来展望を見出しているのかを,親へのインタビュー調査を通じて明らかにするものである。本研究では,ASD児の親たちが,子どもの将来を展望するにあたって,K幼稚園と親の会が重要な役割を担っていることがわかった。 分析の結果,K幼稚園と親の会では,ASD児に固有の感覚や知識が習得・共有されていること,また,保育者は,日常的に親に対する手厚い支援を行っていることが確認された。さらにそうした共同体の実践を形作る規範として,①療育の脱中心化,②インクルーシブ教育への志向性,③定型発達的コミュニケーションの中心化が作用していた。K幼稚園と親の会という共同体に参画した親たちは,能力主義を前提とする教育や社会のドミナントなあり方を異化するような子育て実践の方略を創出していることが明らかとなった。
  • ―特性も踏まえた上で仲間として互いに無理なく過ごせるまで―
    広瀬 由紀, 岩田 美保
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 105-117
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,対人面に配慮を要する子に対して,周囲の子から関わる姿を捉えて,その変容過程を分析した。4歳児クラスから5歳児クラスにかけて観察した結果,5歳児クラス後半になると,特性を含めて特別な配慮を要する子たちを一人の仲間として受け入れ,互いに無理せず関わっている様子が確認された。また,そこに至る過程では,一方的なものから双方向的になっていくこと,「優位性を確保した上での関わり」「動きに魅力を感じ共有する関わり」「対等を求める中で特性も受け止めようとする関わり」に分類できる関わりが見られることが示唆された。さらに,今回見られた関わりの発達的な変容につながる環境を検討した。
  • ―4・5歳児クラスのごっこ遊びと生活発表会に向けた活動における発話の分析―
    奥谷 佳子, 砂上 史子
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 119-130
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,幼稚園の4・5歳児の協同的な遊びや活動における保育者の言語的援助の特徴を明らかにすることを目的とする。ごっこ遊び場面と生活発表会に向けた活動場面の観察から,場面や学年による保育者の発話の特徴を検討した。その結果,以下の3点が明らかになった。第1に,学年に共通して協同的な遊びや活動では,保育者の質問の発話が最も多かった。第2に,協同的な遊びでは,協同的な活動に比べ幼児の主体性はより尊重され,学年ごとに異なる発話の特徴がみられた。第3に,協同的な活動では,協同的な遊びに比べ保育者の発話は増加し,指示の発話が多く,指示の質が学年で異なっていた。
  • 三山 岳, 五十嵐 元子
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 131-142
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は保育活動の振り返りの場として,日常的に行われている保育カンファレンスに焦点を当て,話し合いの構造を可視化し,専門性を向上させる学びが生まれる条件について明らかにすることを目的とする。話し合いの内容を質的に分析した結果,専門性の向上は振り返りの促進と子どもに寄り添う視点にもとづいて,保育場面の語りを循環的に省察することによって生まれていることが分かった。また専門性の向上におけるさまざまな学びが生じる条件を検討した結果,3つの水準の3条件によって保育者の学びが分岐することが明らかとなった。
  • 松浦 美晴, 上地 玲子, 岡本 響子, 皆川 順, 岩永 誠
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 143-154
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    この研究では,リアリティショックを引き起こすギャップとリアリティショック反応の構造を探索し,保育士リアリティショック尺度を作成した。ギャップ尺度は27項目からなり,「業務負担の重さ」「職場の問題」「力量不足」「心理的孤立」の4因子が抽出された。反応尺度は10項目からなり,「内的反応」「表出反応」の2因子が抽出された。ギャップ尺度の下位尺度は,NTSSの下位尺度と低~中程度の相関を示した。反応尺度の下位尺度は,JSS-Rのストレス反応尺度の下位尺度と中程度の相関を示した。症例対照研究の枠組みによって,特性自己効力感,保育者効力感,ソーシャルスキルがリアリティショックを予防するであろうことが示された。
  • 横山 草介, 関山 隆一
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 155-166
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    信念の実践への影響に鑑みるとき,保育の質改善に向けた提言は,保育の担い手が抱いている彼ら自身の実践についての信念の検討を含む必要がある。こうした問題意識から本研究は,保育の担い手が抱いている実践についての信念を明らかにしていくことを目的とする。先行研究は実践についての信念は保育者の経験に伴って「保育者中心」「意図的」なものから「子ども中心」「受容的」なものへと変化していくことを明らかにしてきた。本稿はこれらの研究を引き継ぎつつ,新たな試みとして保育者の実践についての信念の検討をヴィジュアル・ナラティヴの方法論に依拠したイメージ画の分析を通して明らかにすることを試みる。14名の保育士の描いた42枚のイメージ画を分析した結果,保育経験を重ねるにつれて,保育者が子どもと保育者との関係を一人の人間として対等な立場にある存在として捉える考え方があり得ることが示された。
  • ―園のエピソードを両親と語ることを通して―
    勝浦 眞仁
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 167-178
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,障害のある子どもをもつ親の内面で,障害を巡って揺れ動いている心性の両面を描き出すとともに,それを支える保育環境を明らかにすることである。自閉症で知的障害のある幼児をもつ両親に,園でのエピソードを提示し,父と母それぞれが,園での姿をどのように受け止めたのかを語りから迫ることを試みた。 その結果,「障害児の親」であるとともに,障害の有無にかかわらず「この子の親」であるという,親ならではの心性に揺れ動いていることを見出した。そして,園に「我が子がいる意味」を実感することが,親にとって大きな支えとなることを明らかにした。さらに,その実感が生まれる要因となる保育環境についても言及した。
  • ―1997年から2017年までのノルウェーの保育政策の分析から―
    松田 こずえ
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 179-189
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究は,ノルウェーにおける21世紀初頭の保育者のジェンダーバランスに関する政策に着目し,その政策内容の変遷と意図を明らかにすることを目的とする。1997年から2017年までにノルウェーで発行された保育施設における男女平等に関する政策文書や民間研究機関の報告書の記述を分析した。その結果,保育者のジェンダーバランスを適正化するための多様な政策が異なる省庁や関連団体から発行された変遷,男性保育者が子どもや保育者の意識を男女平等に向けて変革するプロモーターと位置付けられた意図,保育者の性別に関するアンコンシャス・バイアスを取り除くためのアファーマティブアクションがとられた経緯が明らかとなった。保育者のジェンダーバランスを通じて,幼児期に子どもの男女平等意識を培う重要性が示唆された。
  • ―「慣らし保育」という概念からの転換―
    吉次 豊見
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 191-202
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究では,スウェーデンの就学前学校において「inskolning」と呼ばれる新入園児の家庭から園生活への移行過程期間に着目をした。スウェーデンでの現地調査から,1歳児の入園時から生涯教育のスタートとして教育的な配慮はあるものの,家庭的な環境が整えられ,ゆるやかに家庭生活から園生活へ移行していく様子が明らかになった。また「園に慣れる」ということだけを目的とせず,人権尊重・民主主義という理念が浸透していることから,子どもを主体として育むために,保育者が〈養護の働き〉〈教育の働き〉を行っていることを見出した。
第2部 国際的研究動向
  • 内田 千春
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 205-215
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    公平な就学前の保育・教育へのアクセスのしやすさと保育者・教員の待遇改善に向けた近年のアメリカ合衆国の動向を紹介する。保護者の負担額は増加傾向にあり,家庭の経済状況や人種・民族によって就学前教育や保育へのアクセスのしやすさが異なる。全米教育省(2015)は,平均60%の子どもたちが公的就学前教育のプログラムに入ることを課題としている。一方,保育者・教員の待遇改善に向けて,関連団体が共同で「専門性に力を(2020)」を公表し,制度を越えた専門性の統一に向けた枠組みを提案し,並行して保育者・教員の養成及び専門研修システムの調査と改善が進められている。事例として2015年から運用されているコロラド州の研修システムPDISについて議論した。
<総説>
原著<論文>
  • 大森 弘子, 秀 真一郎, 西山 修
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 223-232
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,認知行動論的技法及びリフレクションに基づいた子育て支援に関わる保育者支援プログラムを試行し,現職教育における効果を明らかにすることである。具体的には,現職保育者の効力感等の変化を,統制群と比較し検証した。その結果,次の3点が明らかとなった。1)実験群の保育者の方が統制群よりも,明らかな保育者効力感の上昇がみられた。2)支援プログラムによる効果の現れる時期は,保育者効力感が1か月の実施後であることが確認された。3)支援プログラムを援用しての現職教育は,保育者が主体的に学び続けるための有効な手立てであることが明らかになった。
  • ―研修をデザインする側の視点から―
    片岡 元子, 松井 剛太, 松本 博雄, 髙橋 千代
    2020 年 58 巻 2-3 号 p. 233-244
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/08/04
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,園内研修と,各園の代表者が集まった園外研修との間で,往還型にデザインされた保育者の現職教育・研修の在り方を検討することであった。研修参加者は課題を設定し,アクションリサーチの手法を用いて各園で課題探究に取り組んだ。その結果,研修を介した学習によって,研修参加者の役割への自覚が高まり,自身の成長の手応えへと結びつくことが示された。研修参加者以外の各園の保育者を巻き込む過程を含んだ研修内容を設定したことは,研修参加者の資質向上はもちろん,その他の保育者や園長にも行動変容の機会を提供した。この結果は,研修をデザインする側から保育者研修に必要な視点を示唆するものである。
第4部 保育の歩み(その2)
英文目次
編集後記
奥付
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