運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
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13 巻 , 1 号
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巻頭言
特別論文
  • Fiona C. Bull
    2011 年 13 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    定期的な身体活動が健康を増進し,非感染性疾患(non communicable disease; NCD)を予防することについては科学的根拠が既に確立している。そしてこのことが,多くの国において身体活動推進に取り組み,国家プログラムを実施する確固たる基盤となっている。世界的にみると,NCDは世界中の総死亡の60%を占めており,これらの80%は所得水準が低から中等度の国(low and middle income countries; LMIC)で発生している。NCD予防の努力を拡大する必要性,特にLMICにおいて必要であることについては,よく認識されているものの,未だに科学的根拠は予防戦略における活動や投資には活かされていない。「アクティブ(活動的)な生活」アプローチを用いて,家庭,「アクティブ(能動的)な移動」(例えば,ウォーキングやサイクリングで場所から場所へ移動すること)や余暇時間(例えば,スポーツ,レクリエーション,運動および遊び)を含むさまざまな設定において,国家戦略が身体活動を促進し,支援するべきである。しかしながら,ほとんどの国において欠如しているものは,十分な政治的取り組み(political commitment)と,そのために必要な長期的な投資である。このような理由から,身体活動の重要性,NCD予防において,たばこ規制,栄養習慣とともに身体活動は中心的役割を果たすこと,環境保全といった関連するその他の課題上の利益,などを啓発・促進するためのより大きなアドボカシー(唱道)活動の必要性がある。これらの乖離を解決し,強力なアドボカシー・ツールをこの領域に提供するために,『身体活動のトロント憲章』が作成された。専門執筆グループの方針に従い,さまざまな利害関係者,団体,政府および個人がこの憲章の内容と構造に関してコメントできるようにするため,公開で,世界的なウェブベースの協議期間を含む段階的アプローチを用いて作成された。この憲章の作成に約2年間を要し,世界すべての地域の55カ国,450名を超える個人または機関から,2000を超えるコメントが寄せられた。全体的には,身体活動の憲章を,行うべき行動とともに,国際的な合意のもとに,明確に示す必要性について強い賛同が得られた。トロント憲章は単なる健康を超えた,身体活動のあらゆる恩恵を強調している簡潔かつ明解で,国際的に同意されたコンセンサスを提供する。ここでは,教育,交通,スポーツ,レクリエーションおよび都市計画を含む関連するすべてのセクターに関する具体的な行動の例について概説されている。この憲章は,2010年5月にトロントにおいて開催された第3回国際身体活動公衆衛生会議の閉会式において公開された。それ以来,この憲章は11の言語に翻訳され,世界中の500名以上の個人および135の機関から支持の表明を受けている。今年開かれる国際連合の慢性非感染性疾患に関する総会のハイレベル会議(2011年9月)に向けて,先行する協議会で「トロント憲章」と最近発表された支援文書である「非感染性疾患の予防:身体活動への投資」を提示し,関連する議論に身体活動を含むように支援することは時宜を得ている。


    (この日本語訳は,読者の利便性を考慮して著者の許可のもとに編集委員会が作成したもので,論文に含まれるものではありません。日本語訳が著者の意図にあっていない可能性もありますので,正確な意味を確認するためには原文をご確認ください)

  • 井上 茂, 岡 浩一朗, 柴田 愛, 荒尾 孝, 種田 行男, 勝村 俊仁, 熊谷 秋三, 下光 輝一, 杉山 岳巳, 田中 茂穂, 内藤 ...
    2011 年 13 巻 1 号 p. 12-29
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    第3回国際身体活動公衆衛生会議(2010年5月,トロント市)において「身体活動のトロント憲章:世界規模での行動の呼びかけ」が採択された。本憲章は会議を主催した国際身体活動健康学会(International Society of Physical Activity and Health)の協議会の1つである Global Advocacy Council for Physical Activity が中心となって作成したものである。学会終了後,本会議への出席者が中心となって日 本語版への翻訳を行った。本稿では日本語版を資料として添付するとともに,憲章作成の背景,翻訳の経緯,憲章の内容等を解説した。

    本憲章は,身体活動推進に携わる研究者,専門家,政策決定にかかわる者の合意として世界規模で身体活動推進の優先順位を高めるための行動を呼びかけ(call for action),関連する団体や個人に支援ツール(advocacy tool)を提供するものである。憲章の中心となる部分は,身体活動がもたらす効果の概要,「9つの指針」と「行動の枠組み」であり,身体活動推進の根拠と対策のあり方が示されている。

    本憲章は政策立案に際してのチェックリスト,政策決定者の説得,現在行われている事業のチェックや課題の抽出,研究課題の抽出,論文作成時の引用文献などとして有用であり,広く活用されることが期待される。

総説
  • Geoffrey Whitfield, Kelley K. Pettee Gabriel, Harold W. Kohl III
    2011 年 13 巻 1 号 p. 30-35
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー
    身体活動と座位時間の組み合わせがどのように作用しているのかについては,研究が不十分である。座位時間の測定も現状の研究では十分に適切とはいえない。座位時間が長い現代社会では,単に身体活動ガイドラインを満たすだけでは健康効果を得るために十分ではないのかもしれない。座位時間が長時間な生活習慣であっても,その悪い効果を打ち消すような身体活動量がどの程度なのかを同定するような研究の必要性が高い。社会経済状況が高く,非常に活動的な集団を研究対象にすることによって,そのような身体活動量の同定が可能かもしれない。そして、このような研究によって、非常に座位時間が長い者を対象にした身体活動の推奨量が明らかになるかもしれない。さらに,座位の内容,座位の測定方法の改善,座位時間の調査を広く実施することが求められる。

    (この日本語訳は,読者の利便性を考慮して著者の許可のもとに編集委員会が作成したもので,論文に含まれるものではありません。日本語訳が著者の意図にあっていない可能性もありますので,正確な意味を確認するためには原文をご確認ください)
原著
  • 澤田 亨, 柿木 亮, 内藤 久士, 岡本 隆史, 塚本 浩二, 武藤 孝司
    2011 年 13 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:これまでに多量飲酒や低い有酸素能力が2型糖尿病罹患のリスクファクターであることが報告されている。しかしながら,2型糖尿病罹患に及ぼす飲酒習慣と有酸素能力の相互作用を調査した研究は見当たらない。そこで本研究は,日本人労働者を対象にして飲酒習慣と有酸素能力が2型糖尿病罹患とどのような関係にあるか調査した。

    方法:本研究の対象者は,1985年度に最大下運動負荷テストおよび定期健康診断を受診した糖尿病に罹患していない男性4,745人(年齢:20~40歳)であった。自転車エルゴメータを用いた最大下運動負荷テストによって最大酸素摂取量を推定し,対象者を有酸素能力で3分位(低FIT群,中FIT群,高FIT群)に分類した。また,自己記入式質問票を用いて飲酒習慣を確認し,対象者を「非日常飲酒群(非飲酒者を含む)」,「日常飲酒群(アルコール45g/日以下)」,「多量飲酒群(46g/日以上)」に分類した。その後,対象者を14年間追跡して2型糖尿病罹患の有無を観察した。追跡終了後,比例ハザードモデルを使用して2型糖尿病罹患の相対危険度および95%信頼区間を求めた。

    結果:追跡期間中,280人が2型糖尿病に罹患した。交絡因子として年齢,BMI,収縮期血圧,糖尿病家族歴,喫煙習慣を調整し,低FIT群で多量飲酒群(低FIT&多量飲酒群)を基準にして他の群の相対危険度および95%信頼区間を求めた。その結果,各群の相対危険度は,いずれの群も低い相対危険度を示していた。そして,「高FIT&多量飲酒群」は0.82(0.30-2.27),「低FIT&非日常飲酒群」は0.50(0.26-0.94),「高FIT&非日常飲酒群」は0.16(0.05-0.50)という相対危険度を示した。

    結論:本研究は,有酸素能力と飲酒習慣の組み合わせは2型糖尿病罹患の強い予測因子であることを示していた。そして,高い有酸素能力を維持し,日常的な飲酒習慣をもたない男性労働者は2型糖尿病罹患のリスクが他の群と比較して著しく低く,飲酒習慣と有酸素運動能力の相互作用が示唆された。2型糖尿病を予防するためには,日常的な飲酒を避けるとともに,有酸素能力を維持・向上させることが重要であると考えられる。

  • 柴田 陽介, 早坂 信哉, 野田 龍也, 村田 千代栄, 尾島 俊之
    2011 年 13 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:スポーツを「する」ことによる健康効果は多く研究がなされているが,「見る(スポーツ観戦)」「支える(スポーツボランティア)」スポーツと健康に関する研究はほとんどなされていない。本研究の目的は「する」「見る」「支える」スポーツ活動と健康の関連を明らかにすることである。

    方法:スポーツライフ・データ2006を用いて,スポーツ実施,スポーツ観戦,スポーツボランティアと主観的健康感の関連を検討した。この調査では,この1年間のスポーツ活動の有無(スポーツ実施,スポーツ観戦,スポーツボランティア),主観的健康感,性,年齢,body mass index,職業,家族構成,歩行時間を尋ねている。主観的健康感(健康群=1,非健康群=0)を従属変数,スポーツ活動を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い,オッズ比と95%信頼区間を求めた。調整因子として年齢,body mass index,職業,家族構成,歩行時間を用いた。

    結果:スポーツ実施者の主観的健康感は,実施していない者と比べて,男性で2.44倍(95%信頼区間: 1.75-3.40),女性で1.88倍(1.37-2.59)高かった。スポーツ観戦者の主観的健康感も男性では2.53倍(1.78-3.59),女性では1.34倍(0.92-1.97)高かった。スポーツボランティア実施者の主観的健康感については,男性では2.03倍(1.09-3.75)高かったが,女性では1.28倍(0.60-2.72)と有意な関連は示されなかった。

    結論:本研究は横断研究であるため,因果関係を証明することはできないが,スポーツを「する」ことで健康増進効果が得られるだけでなく,スポーツを「見る」ことでも「支える」ことでも健康増進効果の得られる可能性が,特に男性において示唆された。「見る」「支える」スポーツに関する研究は非常に少ないため,今後,前向き研究を含め,多くの研究がなされることが期待される。

  • 柴田 陽介, 早坂 信哉, 野田 龍也, 村田 千代栄, 尾島 俊之
    2011 年 13 巻 1 号 p. 51-60
    発行日: 2011/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:身体活動は各種疾患の予防のために注目されている。身体活動に関する調査は多いが,ウォーキング以外のスポーツやその実施頻度を考慮した報告は少ない。そこで本研究はスポーツ種目・実施頻度を考慮した横断的および縦断的なスポーツの実施状況を明らかにすることを目的とした。

    方法:分析対象は1991年,1996年,2001年,2006年社会生活基本調査とした。社会生活基本調査は総務省が国民の生活の実態を明らかにするために5年ごとに実施している調査である。層化二段抽出法により,1991年は15歳以上の約25万人,1996年は10歳以上の約26万人,2001年は10歳以上の約19万人,2006年は10歳以上の約18万人に調査を行っている。青・壮年期を対象にするため,20~59歳を分析対象とした。1)現在のスポーツの実施状況を明らかにするために,2006年社会生活基本調査の「スポーツ活動」項目の分析を行った。「スポーツ活動」はスポーツ21種目について,この1年間の実施の有無と実施頻度を答えるものである。週に1回未満の実施を低頻度,週に1回以上の実施を高頻度と定義し,年齢階級・スポーツ種目別に低頻度実施率と高頻度実施率を算出した。更に直接法による年齢調整をした低頻度実施率と高頻度実施率も算出した。2)縦断的なスポーツの実施状況を明らかにするため,1991年から2006年までの社会生活基本調査の「スポーツ活動」項目の分析を行った。直接法による年齢調整を行い,年齢調整した低頻度実施率と高頻度実施率を算出した。更に長期間のスポーツの実施状況の推移を比較するために,現在(2006年)と1991年の年齢調整した低頻度実施率比と年齢調整した高頻度実施率比(2006年の年齢調整した低頻度または高頻度実施率/1991年の年齢調整した低頻度または高頻度実施率)を算出した。なお,縦断的検討では各年に共通して調査された項目のみを検討対象としたため「ウォーキング・軽い体操」を含む9種目が解析から除外された。

    結果:1)年齢調整した高頻度実施率が最も高いスポーツ種目は,男女ともにウォーキング・軽い体操であった(男性:13.2%,女性:20.8%)。器具を使ったトレーニング,サイクリングの高頻度実施率も高かった。年齢調整した低頻度実施率が最も高いスポーツ種目は,男女ともにボウリングであった(男性:25.2%,女性:22.0%)。水泳,ウォーキング・軽い体操の低頻度実施率も高かった。2)縦断的にみると,年齢調整した高頻度実施率は,いずれの年も男女ともにジョギング・マラソンが高かった(男性3.4~4.1%,女性1.4~1.8%)。男性ではゴルフ,つり,女性ではバレーボール,水泳の年齢調整した高頻度実施率も高かった。年齢調整した低頻度実施率は,いずれの年も男女ともにボウリングが最も高く(男性25.2~38.5%,女性22.0~30.0%),つり,水泳も高かった。年齢調整した低頻度実施率比はすべてのスポーツで1,00以下であったが,年齢調整した高頻度実施率比は男性のバレーボール(1.12),水泳(1.05),ジョギング・マラソン(1.04),女性の野球(1.40),ボウリング(1.26)で1.00以上となった。

    結論:1)横断的な分析から,高頻度で最も実施されているスポーツはウォーキング・軽い体操であり,他の20種目のスポーツと比べても実施している者が非常に多かった。低頻度で最も実施されているスポーツはボウリングであったが,他の20種類のスポーツもよく行われていた。 2)縦断的な分析に「ウォーキング・軽い体操」を加えることができなかったが,それ以外のスポーツは実施する者が減少している傾向がみられた。高頻度で実施する者は低頻度で実施する者より減少幅が小さかった。

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