運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
13 巻 , 2 号
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巻頭言
総説
  • James F. Sallis
    2011 年 13 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー
    国際的なグループは,身体活動推進対策の中心に環境・政策的な対策を据えるように推奨している。政策実行をガイドする研究が求められている。しかし,2~3の国から始まった環境と身体活動の研究は,比較的新しい研究分野である。これまでの研究成果を,明らかに異なる環境,文化をもつ国に一般化できるかどうかは分からない。初期の研究成果(主に北アメリカとオーストラリアで実施された研究)によると,walkableな地域のデザインは「身体活動を伴う移動(歩行や自転車利用)」と関係しており,公園への近くに住んでいることは「身体活動を伴う余暇活動(運動など)」と関係している。最近では,このような知見は,日本,ヨーロッパ,南アメリカなどにおける研究によっても支持されている。これまでの研究で示されていることは,「人々の活発な移動,活発な余暇活動を推進するような地域をつくるための,一般的な原則があるかもしれない」ということである。都市計画,交通,公園,教育,健康部門における意思決定・政策決定に情報提供できるような,各国に特異的な研究が必要である。また,蔓延している身体的不活動,慢性疾患の国際的な対策をガイドするような国際共同研究が必要である。

    (この日本語訳は,読者の利便性を考慮して著者の許可のもとに編集委員会が作成したもので,論文の一部ではありません。日本語訳が著者の意図にあっていない可能性もありますので,正確な意味を確認するためには原文をご覧ください)
  • 中田 由夫
    2011 年 13 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    肥満に関する介入研究では,比較的短期間の減量効果について検討する研究と,長期間の減量効果について検討する研究が行われている。短期的減量効果を高める介入手段として,食事介入と運動介入の両方が重要であることはよく知られているが,体重減少量に対する効果の大きさを考慮すると,運動介入よりも食事介入の優先度が高いと考えられる。また,実際の減量指導においては,動機付け支援や教材の提供,指導スタッフによる支援が重要であり,支援形態として,個別指導と集団指導,インターネットを利用した支援など,さまざまなプログラム構成要素についての検討が行われている。短期的に得られた減量効果をいかに持続するかが次の課題であり,この局面では,運動介入の相対的な重要性が高まると考えられる。また,運動の習慣化による身体活動量の増加が体重維持に強く関与することが示唆されており,アメリカスポーツ医学会が発表したガイドラインにおいても,その重要性が示されている。今後は,肥満予防,減量介入,減量後の体重増加予防,それぞれの局面における質の高い研究を蓄積することが必要であり,日本人を対象としたガイドラインを作成するためには,日本人を対象としたエビデンスづくりも求められる。

原著
  • 齋藤 義信, 小熊 祐子, 井上 茂, 田中 あゆみ, 頼 建豪, 小川 芳弘, 高橋 健, 鈴木 清美, 小堀 悦孝
    2011 年 13 巻 2 号 p. 125-136
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:近年の研究によって自宅近隣の環境要因が身体活動の決定要因となっている可能性が示唆されている。しかし,ほとんどの研究は若年あるいは中高年の成人を対象に実施されたものである。また,日本人を対象にした研究は限られている。そこで,本研究は6069歳の藤沢市民を対象に,移動における歩行および余暇活動のウォーキングと環境要因との関連を検討することを目的とした。

    方法:対象は2009年の特定健康診査と2010年の質問紙調査の結果が得られた6069歳の藤沢市国保被保険者1,917名である。本研究では基本属性(年齢,BMI,学歴,職業の有無,経済的暮らし向き,主観的健康感),国際標準化身体活動質問紙(International Physical Activity Questionnaire Long version; IPAQ)日本語版およびIPAQ環境尺度日本語版のデータを用いた。基本属性を調整して,環境が歩行行動にとって好ましいと想定される場合に移動および余暇の歩行量が多いオッズ比(odds ratio; OR)が算出されるロジスティック回帰分析を行った。

    結果:移動における歩行と有意に関連する環境要因は,男女共通して,近所にスーパーや商店があること(男性:OR=1.64, 女性:OR=1.43),歩道があること (OR=1.35, OR=1.77),自動車・オートバイを所有していないこと(OR=2.56, OR=1.81)であった。近所にバス停・駅があることは男性で関連を認めた(OR=2.31)。近所の安全性(交通量)については女性において関連を認めた(OR=0.73)。近所の運動場所については,女性でのみ関連を認めた(OR=1.34)が男性でも同様の傾向であった。余暇活動のウォーキングと有意に関連する環境要因は,男女共通して,近所で運動実施者を見かけること(OR=1.67, OR=1.57),近所の景観が良いこと(OR=1.32, OR=1.40)であった。自動車・オートバイを所有していないことは,男性で関連を認めた(OR=1.74)。

    結論6069歳の者における歩行と環境要因との関連は歩行の目的(移動と余暇活動)によって異なっていた。しかし,一般成人の研究で繰り返し報告されている歩行-環境関連の性差は,高齢者を対象とした本研究では小さかった。本研究の結果から,6069歳における歩行と環境要因との関連の特徴が示されたことは,この年代の身体活動を推進するための重要な知見になるものと考えられる。

資料
  • 岡田 真平, 井上 茂, 鎌田 真光, 北湯口 純, 朴 相俊, 下光 輝一
    2011 年 13 巻 2 号 p. 137-145
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:個人の健康行動の変容を支援する環境の整備は重要である。本研究の目的は,地方自治体の行政職員がチェックリスト方式で行う身体活動環境評価の有用性を検討することとした。

    方法:長野県東御市役所職員49名(男32名,女17名,43.2±10.1歳,勤続18.0±11.7年)が,下光らの「健康づくり支援環境質問紙」の身体活動・運動10項目を改変したチェックリストを用いて市内5地区(小学校区に相当)の環境評価を行った。各項目のスコアについて5地区全体の平均と標準偏差から各地区の偏差値を算出し,その特徴をレーダーチャートで示した。また,偏差値の最大と最小の差を地区間の環境格差とし,項目ごとにその程度を示した。

    結果:すべての項目から回答が得られた者は34名だった。レーダーチャートから,生活の利便性,運動施設・場所へのアクセスなどの項目で各地区の特徴が示された。5地区間の環境格差を示す偏差値の最大と最小の差は,徒歩での買い物(21.2),公共交通機関の利便性(19.0)で大きく,自転車の安全性(3.6),治安の状態(3.7),歩行の安全性(4.0),地域の景観(4.4)で小さかった。

    結論:行政職員による,チェックリストを用いた身体活動環境評価から,市内各地区の環境の特徴と,地区間の環境格差が示された。今後,環境整備への本手法活用のために,評価実施上の改善や,信頼性・妥当性の検証等が必要である。

  • 原田 和弘, 柴田 愛, 岡 浩一朗, 中村 好男
    2011 年 13 巻 2 号 p. 146-150
    発行日: 2011/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:「健康づくりのための運動指針2006」では,生活活動の一部でも筋力向上が期待できると提案されている。この提案に関する議論を進めていくには,筋力向上に関する行動の概念や用語の整理が求められる。本稿では,米国とカナダの身体活動ガイドラインで記述されている,筋力向上に関する行動を指し示す用語,概念,具体例を紹介したうえで,対応する日本語と,今後期待される研究課題を提案した。

    米国の身体活動ガイドラインmuscle-strengthening activityという用語が用いられ,また,「中等度以上の強度または労作を伴うものであり,かつ身体の主要筋群を働かせるものであれば,すべてmuscle-strengthening activityとみなす」と記述されている。具体例として,レジスタンストレーニング,穴掘り,荷物運びなどが挙げられている。

    カナダの身体活動ガイドライン:ガイドライン用語集ではmuscle-strengthening activityという用語が採用され,「骨格筋力,筋パワー,筋持久力または筋量を増大させる身体活動であり,運動を含む」と記されている。重りを持ち上げること,きつい庭仕事などが具体例として挙げられている。

    結論:「筋力向上活動」という用語を,muscle-strengthening activityの和訳として新たに提案する。筋力向上活動と従来の類似語(筋力トレーニングなど)との最も大きな差異は,生活活動の一部も含んだ概念である点である。今後は,筋力向上活動の実施を効果的に促す方法論の構築に寄与する研究や,筋力向上活動と健康アウトカムとの関連性を検討する研究が行われることが期待される。

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