運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
14 巻 , 1 号
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巻頭言
総説
  • Edward Archer, Steven N. Blair
    2012 年 14 巻 1 号 p. 1-18
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    現代の環境は,明らかに,肉体労働を減らし,身体的な心地よさを高め,受動的な娯楽を楽しむ余裕を作り出すように設計されている。その結果,身体的不活動と体を動かさない娯楽は,脱工業化社会のいたるところで見られるようになった。人間の代謝,循環,筋・骨格システムは,生き残るために相当な身体活動を要する環境の中で進化してきた。このことを考えると,身体的不活動が多くの病気の原因となっていることは驚くにあたらない。疫学研究のエビデンスによれば,身体的不活動は重大なリスクであり,年齢,遺伝的要因,これまでの過ごし方(例えば,生活習慣),体組成,現在の生活習慣(例えば,食事,アルコール消費,喫煙)などとは独立して,すべての個人に対して重大な健康上の問題を引き起こす。身体的不活動は加齢変化を加速させ,心血管疾患,2型糖尿病,他の病的変化(例えば,衰弱,骨粗鬆症,サルコペニア,肥満)などの非感染性疾患の頻度を増加させる。身体的不活動による非感染性疾患死亡率の相対危険度の上昇は,小児期より認められ,年齢とともに上昇する。しかし,身体活動・運動は非感染性疾患,あるいは座業がちな生活と加齢による他の病的な変化の発症を遅らせる,あるいは予防する。本総説では,健康維持,加齢に関連する疾病,非感染性疾患の予防に身体活動・運動が欠かせない要素であることを支持している観察研究および無作為化比較試験(RCT)を概説する。


    (この日本語訳は,読者の利便性を考慮して著者の許可のもとに編集委員会が作成したもので,論文の一部ではありません。日本語訳が著者の意図にあっていない可能性がありますので,正確な意味を確認するためには原文をご確認ください)

  • 江藤 幹, 大河原 一憲
    2012 年 14 巻 1 号 p. 20-28
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    運動は,減量や体重管理の有効な手段のひとつとして用いられている。しかしながら,運動介入を行っても体重が期待値よりも減少しないケースがみられ,特に女性のほうが男性に比べて体重が減少しにくいと報告されている。これは,運動後の非運動性身体活動量(non-exercise activity thermogenesis; NEAT)の低下や食事摂取量の増加によるエネルギー代償が要因として考えられる。NEATの低下によるエネルギー代償については,いくつかの報告で運動開始後から数週間かけて徐々にみられているが,NEATと運動を含めた総エネルギー消費量は低下しなかったという報告もある。一方,運動後の食事摂取量の増加によるエネルギー代償は,NEATの低下による影響よりも大きいようである。これは女性において顕著にみられ,更に運動量が多いとその代償反応が高まるという報告もされている。また,中期運動介入試験において,食後の満腹感の改善(満腹感が得やすくなる)が認められ,食欲調整ホルモンの変化が関連していることが示唆されている。しかしながら,運動後のエネルギー代償反応の個人差は大きく,検討されてきた要因だけでは説明しきれない。今後,脳科学からのアプローチを含めた更なる検討が期待される。

原著
  • 澤田 亨, 宮地 元彦, 田中 茂穂, 髙田 和子, 田畑 泉, 種田 行男, 小熊 祐子, 宮武 伸行, 岡本 隆史, 塚本 浩二
    2012 年 14 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:厚生労働省は「健康づくりのための運動基準2006」の中で「健康づくりのための最大酸素摂取量」の基準値および範囲を示している。しかしながら,この値や範囲と生命予後の関係について疫学的な検討を行った研究は見当たらない。そこで,本研究はこれらの値や範囲と生命予後の関係を明らかにすることを目的に,コホート研究のデータを解析した。

    方法:本研究の対象者は日本人男性労働者8,935人であり,年齢の中央値および四分位範囲は35(29~43)歳であった。1982年から1988年の間に実施した自転車エルゴメータを用いた最大下運動負荷テストの結果から最大酸素摂取量を推定した。対象者を「健康づくりのための最大酸素摂取量」の基準値および範囲を用いて各年代別に「範囲以下」群(I群),「範囲の下限から基準値以下」群(II群),「基準値から範囲の上限以下」群(III群),「範囲の上限超」群(IV群)の4群に分類した後,2003年6月30日までの死亡情報を確認した。各群別に死亡の相対危険度を算出するために比例ハザードモデルを用いた。そして,年齢,BMI,収縮期血圧,飲酒習慣,喫煙習慣を調整した多変量調整ハザード比および95%信頼区間を求めた。

    結果:観察期間中に360人が死亡した。I群を基準にした場合のII群,III群,IV群の多変量調整ハザード比および95%信頼区間は0.76(0.58-0.99),0.59(0.43-0.80),0.80(0.49-1.31)であった(トレンド検定: p=0.009)。

    結論:日本人男性労働者において「健康づくりのための最大酸素摂取量」の基準値を上回る最大酸素摂取量を持つ群は総死亡リスクが低いことが示された。

  • 渡辺 悦子, 李 延秀, 川久保 清
    2012 年 14 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2012/03/31
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:幼児の身体活動と不活動は成人期の健康状態にまで影響することが知られており,その関連要因を理解することは重要課題である。幼児の平日の外遊びとテレビ等視聴時間に影響する家族・近隣環境について明らかにすることを目的とした。

    方法:東北地方A市内の全保育施設に通園する3~6歳児2598名とその母を対象とし自記式質問紙調査を実施した。調査内容は幼児の身体活動(平日の外遊びとテレビ等視聴時間),家族環境(祖父母同居,兄弟姉妹数,母の就業,母の身長と体重),近隣環境(安心して遊べる場所,一緒に遊ぶ友だち),幼児の属性(性と年齢)であった。外遊び時間(1時間以上/未満),テレビ等視聴時間(2時間以上/未満)と家族・近隣環境との関連について,家族環境,近隣環境,幼児の属性を調整した多重ロジスティック回帰分析で検討した。

    結果:分析対象は1634名(平均 4.2歳,男児52.9%)であった。外遊びが1時間/日以上であることは核家族であること(オッズ比[95%信頼区間], 0.76 [0.60-0.97]),一緒に遊ぶ友だちがいないこと(0.36 [0.28-0.45])と有意な負の関連がみられ,これらは短い外遊び時間のリスク因子であった。テレビ等の視聴が2時間/日以上であることは母が専業主婦であること(1.29 [1.02-1.63]),母が肥満であること(2.24 [1.50-3.34]),一緒に遊ぶ友だちがいないこと(1.34 [1.09-1.65])と有意な正の関連がみられ,長いテレビ等視聴時間のリスク因子であった。

    結論:家族内および近隣で一緒に遊ぶ仲間がいないことと母が専業主婦であること,母が肥満であることが幼児の身体不活動に影響することが示唆された。幼児の健康的な生活習慣が形成されるよう,家族・近隣環境の両方にアプローチする必要がある。

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