運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
15 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 鎌田 真光
    2013 年 15 巻 2 号 p. 61-70
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    身体活動をポピュレーション(集団・地域)レベルで促進するにはどうしたらよいのか? 本稿では,その答え(エビデンス・科学的根拠)を導くポピュレーション介入研究を理解し,実施するために必要な理論と枠組みを概説する。身体活動促進のポピュレーション戦略については,個人レベルで身体活動を促進する方法論に比べて,研究の報告数や科学的知見が圧倒的に不足している。研究の実施にあたっては,より質の高い①デザイ ン・②介入内容・③評価項目を採用することが重要である。まず,デザインを検討するにあたっては,クラスター・ランダム化比較試験から事前事後評価デザインまで,多様な選択肢がある。また,介入自体の質を高めるための理論や枠組みとして,ソーシャル・マーケティングとネットワーク理論,生態学モデルなどが注目を集めている。いずれも,仮説(ロジック)を立て,適切に検証しながら進めることが重要である。介入の評価に関しては,社会的インパクトを評価するために,RE-AIMモデルの適用が有用である。大規模集団を対象に,低コストかつ小さなバイアスで身体活動を評価する方法の開発は今後の課題である。まずは,より多くの研究報告と優れた実践の集積が重要である。これらポピュレーション介入研究の成果をもとに,国や地方自治体等,さまざまな機関で質の高い取り組みが行われることが望まれる。

原著
  • 森 耕平, 野村 卓生, 明﨑 禎輝, 片岡 紳一郎, 中俣 恵美, 浅田 史成, 森 禎章, 甲斐 悟, 渡辺 正仁
    2013 年 15 巻 2 号 p. 71-80
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:太極拳ゆったり体操は,虚弱高齢者の身体機能改善に効果が認められた体操である。しかしながら,本体操の動脈硬化性疾患への予防効果は明らかではない。本研究の目的は,太極拳ゆったり体操の継続が,動脈スティフネスに及ぼす影響を検証し,動脈硬化性疾患に対する予防効果を検討することである。

    方法:対象は60歳以上の高齢者47名である。対象者を介入群24名と対照群23名に無作為に割り付けた。介入群に対して3か月間,週1回の頻度で太極拳ゆったり体操教室の提供を行った。また,自宅でも体操を行うことを指導した。一方,対照群には何の介入も行わなかった。介入前後には,心臓足首血管指数(CAVI),身体組成および身体機能の測定を行った。解析対象は,3か月後まで追跡調査が行えた介入群24名,対照群22名であった。介入前後の比較には繰り返しのある二元配置分散分析を用い解析を行った。

    結果:介入群の体操実施回数の平均は2.9 ± 1.3回/週であった。3か月間の介入前後で,CAVIおよび握力に交互作用を認め(それぞれ,F = 4.41, P = 0.04; F = 8.33, P < 0.01),介入群においてCAVIは8.52 ± 0.93から8.24 ± 0.89へ有意に低下した。握力は27.5 ± 5.8 kgf から28.7 ± 6.2 kgf へ有意に向上した。一方,対照群では有意な変化を認める項目はなかった。

    結論:太極拳ゆったり体操は高齢者に適した低強度運動であり,1週間に約3回,3か月間の継続は動脈伸展性の改善に効果的である(UMIN 試験ID:UMIN000006991)。

  • 荒木 邦子, 原田 和弘, 塩田 琴美, 中村 好男
    2013 年 15 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2013/09/30
    公開日: 2021/05/09
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,節電に対する認知,態度,行動,信念のうち,どのような要因が週150分以上の歩行,中等度以上の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity; MVPA)と関連するのかを明らかにすることを目的とした。

    方法:調査方法は,首都圏および京阪神圏在住の20~79歳に対するWeb調査であった。2012年9月22日~25日の間に調査を実施し,1,650名の有効回答を得た。調査項目は,節電行動の規定要因(認知,態度,行動,信念),身体活動量は,International Physical Activity Questionnaire Short Version を用いて,歩行時間と中等度以上の身体活動(MVPA)を評価した。節電行動の規定要因と歩行時間(150分以上/週)およびMVPA(150分以上/週)との関連についてパス解析を行った。

    結果:モデル適合度は,節電行動規定要因と歩行時間(GFI = 0.988, AGFI = 0.973, CFI = 0.969, RMSEA = 0.038),MVPA(GFI = 0.987, AGFI = 0.974, CFI = 0.968, RMSEA = 0.036),いずれも良好であった。節電に対する他者取組(0.14)の認知と電力不足に対する脅威感(0.08)は,歩行時間と正の関連性を示し,否定的項目の有効性評価(-0.13),気づき・学習(-0.15)は,歩行時間と負の関連を示した。節電行動(0.08)は,MVPA と正の関連を示した。

    結論:節電への認知・態度・行動・信念と身体活動に関連が認められた。ただし,関連は弱く,仮説とは逆の関連が認められた節電行動規定要因もあり,今後更なる検討が必要と考えられた。

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