背景:スポーツグループに参加することは機能障害の発生を予防するために鍵となる重要な因子である。高齢者におけるスポーツグループの参加に関連する要因を明らかにすることは,効果的な健康政策を開発する一助となる可能性が考えられるが,その関連要因は明らかになっていない。そこで本研究は,日本人高齢者におけるスポーツグループへの参加に関連する人口統計学的・生物学的要因,心理社会的要因,行動要因,社会文化的要因,および環境要因を明らかにすることを目的とした。
方法:日本全国31市町村の要介護認定を受けていない65歳以上の地域住民を対象としたコホート研究である日本老年学的評価研究からデータを得た(対象者数78,002名)。ポアソン回帰分析を用いて,スポーツグループへの参加に関連する要因を検討した。
結果:人口統計学的・生物学的要因では,低学歴者,就業者,農林漁業職者において,心理社会的要因では,主観的健康感の低い人や抑うつの人においてスポーツグループの参加率が低かった。行動要因に関しては,喫煙者でスポーツグループの参加率が低く,飲酒習慣のある人では多かった。社会文化的要因については,情緒的なサポートがあることや趣味の会,老人会,ボランティアの会へ参加していることがスポーツグループへの高い参加率と関連していた。環境要因の中では,公園や歩道がある,店舗へのアクセスが良い,気軽に立ち寄れる施設へのアクセスが良いと認識している人でスポーツグループへの参加が多かった。
結論:本研究は,高齢者のスポーツグループへの参加を促進するためには,人口統計学的・生物学的要因,心理社会的要因,行動要因,社会文化的要因,環境要因など広範囲にわたる要因を考慮する必要があることを示唆した。今後,因果関係を明らかにするための縦断的な検討が必要であるが,スポーツグループへの参加を促進するためには,社会的なネットワークを通して地域の活動への参加を促すことが効果的かもしれない。
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