運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
19 巻, 2 号
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巻頭言
総説
  • 中田 由夫, 笹井 浩行, 村上 晴香, 川上 諒子, 田中 茂穂, 宮地 元彦
    2017 年 19 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    身体活動量を調査し,身体不活動を是正することは,公衆衛生学的に非常に重要である。身体活動量の調査手法としては,多くの場合,身体活動質問票(physical activity questionnaires; PAQs)が用いられており,PAQsの中で24時間の行動内容とそれぞれのメッツ値が把握できれば,総エネルギー消費量(total energy expenditure; TEE)を推定できる。TEEは健康アウトカムとの量反応関係を検討するうえで重要な指標であり,さまざまなPAQsからTEEという同一の指標が算出できれば,複数のコホート研究の比較可能性を高めることができる。そこで,本研究では,我が国における代表的なコホート研究で使用されているPAQsを収集し,それぞれのPAQsからTEE を算出するためのスコアリングプロトコルを整理・提案することを目的とした。各コホート研究の代表者らの協力を得て,21のPAQsを収集し,その中でTEEが算出可能な7つのPAQsについて,その特徴とTEE算出方法を詳述した。PAQs間の整合性を考慮すると,各項目に割り当てるメッツ値を修正する必要があったり,公式なスコアリングプロトコルでは割り当てるメッツ値が定められていなかったりするなど,改善が必要な点が残されている。今後は,この点についての議論を深めるとともに,本研究で整理・提案したTEE算出のためのスコアリングプロトコルの妥当性を検討していくことが必要である。

原著
  • 田中 千晶, 喜屋武 享, 高倉 実, Tim Olds, Natasha Schranz, 田中 真紀, 田中 茂穂
    2017 年 19 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,WHO Health Behaviour in School-aged Children (HBSC) survey の質問票のうち,身体活動量(PA)の質問票を日本語に訳し(HBSC-J),その妥当性を検討することを目的とした。

    方法:対象者は,小学校5年生の児童であった(70名の平均年齢は11.3 ± 0.3歳: 10.6~11.9歳)。質問票は,日本語訳を行ったうえで予備調査にて精査し,英語に逆翻訳を行い,オリジナル版と齟齬がないか検討した。妥当性は,加速度計で評価したデータとの比較により検討した。PAの質問票の妥当性を評価するために,質問票と加速度計を用いて客観的に測定された中高強度活動(MVPA)あるいは高強度活動(VPA)に対して,スピアマンの順位相関を用いた。また,HBSC-Jによって自己申告された「1日当たりのMVPAが少なくとも60分」が5日以上と5日未満の2群に分類し,対応のないt検定を用いてMVPAの客観的な平均所要時間を比較した。

    結果:加速度計によるMVPAの所要時間と1日当たりのMVPAが少なくとも60分の日数は,有意な正の相関がみられた(ρ = 0.339)。更に,加速度計によるVPAの所要時間とHBSC-JにおけるVPAの頻度(ρ = 0.515)や持続時間(ρ = 0.400)との間には,有意な正の相関がみられた。また,加速度計によるMVPAの所要時間は,1日当たりのMVPAが少なくとも60分5日以上群が,5日未満の群に比較して高い傾向にあった。

    結論:これらの結果から,日本人児童において,HBSC-JによるMVPAやVPAのパターンの推定に関する妥当性が認められた。

資料
二次出版
  • ―PLOS ONEに掲載された英語論文の日本語による二次出版
    岡 檀, 山本 美緒, 牟礼 佳苗, 竹下 達也, 有田 幹雄
    2017 年 19 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,個人の生活習慣のみならず,住環境の観点からも検討したうえで,高血圧有病率の地域差に寄与する要因を探索することにある。対象者は,治療中および未治療の高血圧有病者である。目的変数は,都道府県別の高血圧有病率とした。説明変数として,都道府県別(男性)の肥満,塩分摂取量,野菜摂取量,飲酒習慣,喫煙習慣,1日当たり歩数のデータを用いた。住環境データとして,鉄道駅数,普通自動車利用,軽自動車利用,可住地傾斜度を用いた。医療環境に関連する変数として,特定健診受診率,医療施設数を用いた。これら変数を用いて相関分析を施したのち,ステップワイズ法による重回帰分析を行った。高血圧有病率に対し,歩数と特定健診受診率が有意な負の相関を,軽自動車利用と可住地傾斜度が有意な正の相関を示した。歩数に対し,住環境と関連する変数として鉄道駅数が有意な正の相関を,普通自動車および軽自動車利用が有意な負の相関を示した。重回帰分析の結果,歩数は高血圧有病率に対し最も強い影響を及ぼしていた。住環境に基づく歩行習慣の違いが,日本の高血圧有病率の地域差と関係していた。

  • ―The Journal of Physical Fitness and Sports Medicineに掲載された英語論文の日本語による二次出版
    大藏 倫博, 辻 大士, 角田 憲治, 北濃 成樹, 尹 智暎, サガザデ マシド, 相馬 優樹, 尹 之恩, 金 美珍, 神藤 隆志, 慎 ...
    2017 年 19 巻 2 号 p. 118-128
    発行日: 2017/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    本研究プロトコルでは,高齢者の健康,体力,身体活動に着目した中規模縦断研究「かさまスタディ」を紹介する。本研究は,日本の介護予防とサクセスフルエイジング支援に向けたシステムの将来について検討する挑戦的な研究プロジェクトである。我々は2008年5月,地域在住高齢者を対象とし,運動を中心とした要介護化予防教室を開催するとともに,かさまスタディをスタートさせた。2016年3月に至るまで,以下の6つの研究・事業:1)かさま長寿健診,2)元気長寿!教室,3)自主運動サークル・ボランティア育成,4)男性限定教室,5)あたまと体のパワーアップ教室,6)いきいきチェックリスト調査を遂行した。本研究プロトコルでは,これらの研究・事業の詳細を解説する。

日本運動疫学会声明
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