運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
19 巻 , 1 号
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巻頭言
原著
  • 小野 はるか, 田中 千晶, 田中 茂穂, 小関 俊祐
    2017 年 19 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は,幼児自身の運動に対する認知的評価と幼児自身の友人の数に対する認知的評価,加速度計による日常の身体活動量,および保育者や保護者による幼児に対する認知的評価との関係を検討することを目的とした。

    方法:195名(男児106名,女児89名)の年中および年長の幼児を対象に,口頭で,運動が好きかどうか,運動が上手であると思うかどうか,および保育所や幼稚園内外それぞれの友人の数に対する認知的評価を尋ねた。加えて,各幼児の保育者と保護者に,各認知的評価に関して質問紙で尋ねた。更に,平日と週末を含む6日間にわたり,三軸加速度計を使って日常生活全般の中高強度活動(moderate-to-vigorous physical activity; MVPA)を測定した。

    結果:ロジスティック回帰分析の結果,保育者の認知的評価の「友人の数」,および保護者の認知的評価の「運動が上手である」は,幼児自身の認知的評価の「運動が上手である」と正の関連性があった。 また,保育者の認知的評価の「活発である」,および保護者の認知的評価の「活発である」,「運動が好きである」は,幼児自身の認知的評価の「運動が好きである」および「運動が上手である」と負の関連性があった。

    結論:本研究の結果から,保育者および保護者の認知的評価が,幼児自身の運動に対する認知的評価に対して正負の両方向で関連することが明らかとなった。そのため,幼児自身の運動に対する認知的評価を高めるために,保育者や保護者のかかわり方の工夫が必要になると考えられる。

  • 根本 裕太, 稲山 貴代, 北畠 義典, 荒尾 孝
    2017 年 19 巻 1 号 p. 12-23
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:小学5年生を対象に外遊びに対する動機付け強化を図る健康教育プログラムを実施し,その効果を検討することを目的とした。

    方法:対象は山梨県都留市の公立小学校2校の5年生で研究参加の同意が得られた142名(男児79名,女児63名)とし,学校単位で介入群(男児42名,女児27名)と対照群(男児37名,女児36名)に割り当てた。介入群に対し,2009年6月から7月の6週間にかけて,週2回の通常の体育授業に加え,総合的な学習の時間において外遊びに対する動機付け強化を図る健康教育プログラムを実施した。対照群の児童に対しては通常の体育授業のみを実施した。介入前後で身体活動量の測定,質問紙調査を行い,介入プログラムの影響を検討した。

    結果:対照群においては,平日の歩数が男児で有意に減少し,女児でも減少する傾向がみられた。しかし,介入群では,男女児ともに平日および休日のいずれの歩数において介入前後で有意な変化は認められなかった。

    結論:外遊びに対する動機付け強化を図る健康教育プログラムは,学年進行に伴う日常生活における身体活動量の減少を抑制することが示唆された。

  • 辻 大士, 笹川 修, 中村 信次, 小平 英志, 近藤 克則, 山崎 喜比古
    2017 年 19 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:大学生における部・サークル活動への参加状況と,ストレス対処力,うつ・不安感との縦断的関連性を明らかにする。

    方法:ある大学の2年次進級時の全学生を対象とし,部・サークル活動への参加状況ならびにストレス対処力(sense of coherence; SOC)やうつ・不安感(K6)を調査し,3,4年次進級時にかけて追跡調査を実施した。男280名,女360名を,スポーツ系継続(112名),スポーツ系中断(74名),文化・ボランティア系継続(106名),無所属継続(167名),その他(181名)の5群に分けた。繰り返しのある2要因分散分析(5群×3時点)を線形混合モデルにより実施した。

    結果:SOC,K6ともに有意な交互作用はなかった。SOCでは性,居住形態,通学時間,アルバイト時間を調整後も群間に有意差がみられた(P = 0.027)。スポーツ系継続群は無所属継続群よりも有意に高く(P = 0.017),その他群よりも高い傾向を示した(P = 0.062)。K6では群間差がある傾向がみられ(P = 0.054),スポーツ系継続群は無所属継続群よりも低い(良い)傾向がみられた(P = 0.100)。

    結論:スポーツ系活動への継続的な参加は,高いストレス対処力や良好なメンタルヘルスの維持と関連することが示唆された。しかし,在学中のストレス対処力やうつ・不安感の変化に対して,参加の影響はみられなかった。

  • 山北 満哉, 佐藤 美理, 安藤 大輔, 鈴木 孝太, 山縣 然太朗
    2017 年 19 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:両親の収入や職業,学歴といった社会経済状況が子どもの運動時間に影響を及ぼすことが多数報告されているが,我が国の子どもを対象とした報告はほとんどみあたらない。本研究は,家庭の社会経済状況の指標として用いられている両親の学歴と子どもの運動時間との関連を検討することを目的とした。

    方法:2011年7月に山梨県甲州市で実施した児童生徒の心の健康と生活習慣に関する調査に参加した小学4年生から中学3年生(9~15歳)とその両親を対象とした。両親の学歴は妊娠届出時に作成された母子管理カードより収集し,子どもの運動時間は質問紙により本人から回答を得た。児童生徒の月齢とBMIを調整したポアソン回帰分析を用いて,両親の学歴と子どもの運動時間の関連について検討を行った。

    結果:658人(男子360人,女子298人)より追跡データが得られた(追跡率87.5%)。小学生の女子において,両親の学歴がともに13年以上の児童は,両親の学歴がともに12年以下の児童と比較して,1週間の総運動時間が7時間未満である割合が有意に多かった(Prevalence ratio: 1.30, 95%信頼区間: 1.00‐1.69, p = 0.0498)。男子,および中学生の女子では有意な関連は示されなかった。

    結論:両親の学歴は小学生女子の運動時間と負の関連を示す可能性が示された。我が国においても子どもの運動時間に両親の社会経済状況が影響する可能性が示唆されたが,他の地域での更なる検証が必要である。

    Editor’s picks

    2020年度日本運動疫学会優秀論文賞 受賞論文
    子どもの運動と両親の学歴という重要かつ興味深いテーマを扱った論文である。横断研究であるものの、その短所の影響を受けにくい両親の学歴を曝露要因として用いている点も研究の質を高めることに貢献している。疫学の作法に則って、丁寧に記述されている点も評価に値する。両親の学歴は容易には修正できない要因であることから、直接的な介入には困難が伴うが、健康行動(特に運動)の格差縮小のための集団レベルでの対策に資する成果となると期待される。

資料
  • 中出 麻紀子, 村上 晴香, 宮地 元彦, 饗場 直美, 森田 明美, 霜田 哲夫, 渡邊 昌
    2017 年 19 巻 1 号 p. 44-53
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    我々は,肥満者に対する行動科学的手法を用いた減量プログラム(佐久肥満克服プログラム)を開発し,無作為化比較対照試験および1年間の追跡により,その有効性を明らかにしてきた。本資料論文では,日本運動疫学会プロジェクト研究「介入研究によるエビデンスの『つくる・伝える・使う』の促進に向けた基盤整備」の一環として,減量プログラムのエビデンスを提供し,プログラムの一般化可能性についてRE-AIMの観点から検討を行った。本減量プログラムは,食事や身体活動の改善に関する目標を対象者自身が考え,日常生活において実践できるよう,医師,管理栄養士,健康運動指導士が連携し支援を行うものであった。対象は,人間ドック受診者における肥満者であり,プログラムの到達度は24.1%であった。介入群の対象者では,プログラムにより,体重等の減少やその維持が認められた。 本プログラムは特別な施設等を必要とせず比較的容易に実施することが可能であるが,今回総勢19名もの管理栄養士・健康運動指導士が指導に携わり,その多くが研究所のスタッフであったこと,介入に多くの時間を要したことを考えると,通常の保健指導の現場へそのまま適用するのは困難であると考えられる。したがって,今後,今回得られた成果から介入手法の中で効果的であったものを明確にし,それを現場の予算に応じて活用していくことが重要だと考えられる。

二次出版
  • ―The Journal of Physical Fitness and Sports Medicineに掲載された英語論文の日本語による二次出版
    金森 悟, 高宮 朋子, 井上 茂
    2017 年 19 巻 1 号 p. 54-61
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    身体活動には1人で行うか,あるいはグループで行うかという側面がある。しかし,グループ運動と健康アウトカムとの関連,健康アウトカムとの関連のメカニズム,グループ運動参加の規定要因についてこれまで包括的に検討された研究はない。本総説の目的は,対象を特定の疾患等の保持者ではなく一般の成人および高齢者とした場合の,グループ運動と健康アウトカムとの関連,そのメカニズム,グループ運動参加の規定要因を明らかにすることとした。その結果,グループ運動をすることは身体活動の継続,心理的要因・社会関係を改善させることで,身体的・精神的疾患のリスクを下げることが示唆された。グループ運動の規定要因には多様な要因があると考えられるが,今回検討した先行研究では一部の人口統計学的要因や環境要因のみ検討が行われていた。また,1人で行う運動とグループ運動との違いを直接検討した報告は少ないため,グループ運動による特有の効果や規定要因があるのかは十分に明らかとなっていない。今後はこの点を考慮した研究を行い,グループ運動に関する知見を積み重ねていくことが望まれる。

  • ―Journal of Physical Activity and Healthに掲載された英語論文の日本語による二次出版
    原田 和弘, 柴田 愛, 李 恩兒, 岡 浩一朗, 中村 好男
    2017 年 19 巻 1 号 p. 62-74
    発行日: 2017/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:いくつかの研究では,効果や阻害要因の認知と身体活動との関連性が検討されているものの,高齢者に対する筋力トレーニングの推奨に合わせてこれらの関連性に焦点を当てた研究は行われていない。本研究では,日本人高齢者を対象に,筋力トレーニングの健康効果の認知,筋力トレーニングの阻害要因の認知と,筋力トレーニング行動の変容ステージとの関連性を検証した。

    方法:所沢市から無作為抽出された1244名(60~74歳)に横断調査を行った。変容ステージを独立変数,健康効果の認知(例:痛みが和らぐ)と阻害要因の認知(例:施設が必要な運動)を従属変数とした。データは,共分散分析と,Bonferroni法による多重比較によって解析された。

    結果:人口統計学的要因を調整したうえで,前熟考期の者の健康効果の認知得点は,他の4つのステージの者よりも有意に低かった。前熟考期・熟考期の者の阻害要因の認知得点は,準備期・維持期の者の得点よりも有意に高かった。

    結論:これらの結果は,高齢者の健康効果に関する情報や,推奨されている筋力トレーニングの種類に関する情報は,高齢者に対する筋力トレーニングの促進戦略を開発するうえで有益である可能性を示している。

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