運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
20 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 天笠 志保, 菊池 宏幸, 福島 教照, 小田切 優子, 高宮 朋子, 岡 浩一朗, 井上 茂
    2018 年 20 巻 1 号 p. 5-15
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住高齢者を対象に,加速度計を用いて座位行動および身体活動を評価し,その詳細なパターンと社会参加の類型との関連を検討すること。

    方法:2010年に3地域(東京都文京区・府中市・静岡県小山町)で実施した高齢者調査(対象:当時65~74歳の男女2,700人を無作為抽出)に回答(2,045名)し,追跡調査にも同意した1,314名に対して,2015年に追跡調査を行った。このときに加速度計の装着に同意した478名に,加速度計(HJA-350IT)を連続7日間装着するよう依頼した。座位行動,低強度身体活動(LPA)および中高強度身体活動(MVPA)を評価した。社会参加は国民健康・栄養調査で使用された項目を用いて評価し,個人的活動と地域的活動に類型化した。社会参加の類型と座位行動および身体活動との関連は,年齢,居住地域,同居者の有無,仕事の有無,自動車の運転,body mass index,主観的健康感,身体機能の制限,加速度計装着時間を調整した重回帰分析にて男女別に検討した。

    結果:有効なデータは450名より得られた。地域的活動レベルが高いことは細切れ(10分未満)のMVPA(short-bout MVPA)時間が長いことと関連していた(男性:β=1.56,p=0.03,女性:β=2.91,p<0.01)。また,女性では地域的活動レベルが高いことは座位時間が短いこと(β=-11.43,p<0.01)およびLPA 時間が長いこと(β=8.13,p=0.03)と関連していた。

    結論:地域的活動への参加を促すことは高齢者のshort-bout MVPAやLPA時間を延長する可能性が示唆された。

  • 原田 和弘, 増本 康平, 片桐 恵子, 福沢 愛, 長ヶ原 誠, 近藤 徳彦, 岡田 修一
    2018 年 20 巻 1 号 p. 16-25
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:斜面市街地に住む高齢者を対象に,近隣の坂道への認識が,活動的な移動習慣と関連しているかどうかを検討した。

    方法:本研究は横断研究であった。神戸市灘区鶴甲地区の1,021名へ2017年に質問紙調査を行い,693名(67.9%)が回答した。回答者のうち,65歳以上であり,移動能力に大きな制限がなく,かつ,分析項目に欠損のない,337名(男性155名,女性182名)を解析対象とした。活動的な移動習慣は,徒歩または自転車による地区外への週1日以上の外出として評価した。坂道に対する認識として,近所には坂が多く移動が大変と認識しているかどうかを質問した。基本属性等として,性別,年代,居住形態,経済的ゆとり,自動車・バイクの運転,運動実施,過体重,膝痛,心理的苦痛を取り上げた。活動的な移動習慣を従属変数,坂道に対する認識と基本属性等を独立変数としたポアソン回帰分析を行った。

    結果:解析対象の21.2%が活動的な移動習慣を有していた。ポアソン回帰分析の結果,坂道を否定的に認識している者(調整有病割合比=0.64,95%信頼区間=0.42-0.96)は,否定的に認識していない者よりも,活動的な移動習慣を有していない傾向にあった。

    結論:坂道に対する認識が否定的ではない高齢者のほうが,活動的な移動習慣を有していた。このことは,斜面市街地に住む高齢者において,近隣の坂道に対する否定的な認識を取り除くことが活動的な移動習慣の形成に影響する可能性があることを示している。

資料
  • 城所 哲宏, 田中 千晶, 田中 茂穂, 宮地 元彦, 井上 茂, 安部 孝文, 鈴木 宏哉
    2018 年 20 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:子どもにおける身体活動の評価法に関して,どのような質問紙が国際的に多く用いられているかを把握することは,今後,当該研究分野における国際比較研究を行っていくうえで極めて有益な情報となり得る。本研究は,子ども・青少年における質問紙を用いた身体活動の評価法に関する世界的な動向を整理することを目的とした。

    方法:子ども・青少年の身体活動に関する国際比較を行った“The Report Card on Physical Activity for Children and Youth (Report Card)”に参加した38か国を対象とした。各国のReport Cardにおいて,日常生活全般の身体活動量の等級付けの根拠となっている文献を収集することにより,各国における身体活動の評価法を整理した。

    結果:世界38か国において,Health Behaviour in School-aged Children(HBSC)の質問紙が最も多く用いられていた(12か国:31.6%)。次に多く用いられていた質問紙は,Global School-based Student Health Survey(GSHS)であった(6か国:15.8%)。HBSCおよびGSHSの質問紙においては,「1日60分以上の中高強度身体活動を達成した頻度」を尋ね,日常生活全般の身体活動量を評価していた。一方,身体活動の「頻度」および「1日当たりの時間」を把握することで,中高強度身体活動量を算出する質問紙も確認されたが(IPAQ,GPAQ,PAQ-C/A,SHAPES,CLASS,AQuAA),これらの質問紙を用いた国は少数であった。

    結論:子ども・青少年における身体活動評価法の国際的な動向として、「1日60分以上の中高強度身体活動を達成した頻度」を尋ねる質問紙(例:HBSC,GSHS)が多く用いられていた。

  • ―“REPORT CARD ON PHYSICAL ACTIVITY FOR CHILDREN AND YOUTH”に基づく国際指標を用いた検討―
    田中 千晶, 安部 孝文, 岡田 真平, 田中 茂穂, 奥田 昌之
    2018 年 20 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2018/03/31
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,国際指標に基づいて47都道府県の児童・生徒の身体活動の関連指標の都道府県間差を性別に検討することであった。

    方法:“Report Card on Physical Activity for Children and Youth”において国際的な指標とされている身体活動関連指標について,47都道府県の児童・生徒の代表的なデータを用いて,各指標について基準を満たす者の割合を算出し,それに基づいて,各指標の等級付けを性別に行った。

    結果:47都道府県で活動的な移動手段および体型の等級は,A~Bであった。組織化されたスポーツへの参加はB~C,体力はB~D,座位行動はC~Dであった。家族および仲間の影響はDあるいはFであった。日常の身体活動量と活動的な遊びは評価ができなかった。性差をみると,女子の等級は男子に比較して,組織化されたスポーツへの参加と家族および仲間の影響はいずれの都道府県でも,活動的な移動手段は,一部の地域において低かった。男子の座位行動の等級は,いずれの都道府県でも女子に比較して低かった。

    結論:体力を除く各指標の等級の地域間差は概して小さかった。しかし,一部の指標の等級はいずれの地域でも低く,改善が必要である。また,組織的なスポーツへの参加,家族および仲間の影響および座位行動,一部の都道府県の活動的な移動手段に性差があり,地域ごとに性差を考慮した対策の必要性が示唆された。

日本運動疫学会声明
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