運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
22 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 小垣 匡史, 伊佐 常紀, 村田 峻輔, 坪井 大和, 奥村 真帆, 松田 直佳, 河原田 里果, 内田 一彰, 中塚 清将, 堀邉 佳奈, ...
    2020 年 22 巻 1 号 p. 5-12
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/10
    [早期公開] 公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,9~12歳の児童において日常的な外遊びと遂行機能の各項目(作業記憶, 認知柔軟性,抑制機能)の関連を性別で層別して調査することとした。

    方法:神戸市内の公立小学校2校に通う小学4年生から6年生314名を対象とした。作業記憶はDigit Span Test(DST),認知柔軟性はTrail Making Test(TMT),抑制機能はStroop testを用いて測定した。外遊びは自記式質問紙を用いてその頻度を測定し,週3日以上外遊びを行う児童を外遊び高頻度群,週3日未満外遊びを行う児童を外遊び低頻度群とした。児童期における外遊びの特性は性別で異なるため,解析は性別で層別して実施した。統計解析は,目的変数を遂行機能の各項目,説明変数を外遊びの頻度とし,学年で調整した回帰分析を実施後,交絡因子を学年,body mass index(BMI),身体活動量とした強制投入法による重回帰分析を実施した。

    結果:男児は女児と比べて身体活動量および外遊びの頻度が有意に高かった。男児において外遊びの頻度と遂行機能に有意な関連は認められなかったが,女児において外遊びの頻度と認知柔軟性にのみ有意な関連が認められた[偏回帰係数(B)=−8.90, 95%信頼区間:−16.97,−0.82]。交絡因子の調整後も女児において外遊びの頻度と認知柔軟性は有意な関連を示 した[B=−10.76(−19.42,−2.10]。

    結論:児童期後期において,女児の外遊びの頻度が認知柔軟性と有意に関連することを初めて示した。本研究は,特に外遊びが少ない女児において,遂行機能の一部と関連が示された外遊びが重要であることを示唆した。

  • 奈良 隆章, 木内 敦詞
    2020 年 22 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/10
    [早期公開] 公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の第一の目的は,大学新入生におけるライフスキル獲得水準の性別および専攻別の特徴を明らかにすることであった。第二の目的は,その結果を踏まえてより良い体育授業の設計を展望することであった。

    方法:筑波大学の2015年秋学期開講必修科目「基礎体育」を履修した1,325名(男子745,女子580)を対象に,日常生活スキル尺度(島本・石井,2006)によるライフスキル調査を行った。この尺度は,対人スキル(親和性,リーダーシップ,感受性,対人マナー)と個人的スキル(計画性,自尊心,情報要約力,前向きな思考)の下位概念(下位因子)から構成される。ライフスキルの下位概念(下位因子)の各得点を,性×専攻の2要因分散分析によって解析した。

    結果:対人スキルは男子よりも女子が有意に高く,それは親和性と感受性の高さによるものであった。専攻別の特徴として,対人スキルと個人的スキルともに,社会・国際学を専攻する学生が最も高く,情報学を専攻する学生が最も低かった。これは,親和性とリーダーシップ,計画性の差異によるものであった。

    結論:大学新入生のライフスキルは,性別と専攻別でそれぞれ特徴のあることが明らかになった。これらを踏まえて,大学新入生へのより良い体育授業の設計を展望した。

  • 若葉 京良, 大須賀 洋祐, 宮内 大治, 竹越 一博, 前田 清司, 田中 喜代次
    2020 年 22 巻 1 号 p. 22-34
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/10
    [早期公開] 公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,beta-hydroxy-beta-methylbutyrate(HMB)摂取と筋力運動の併用が閉経後女性の骨格筋量および筋力に及ぼす影響を検討することとした。研究デザインは,オープン化・クロスオーバー・ランダム化比較試験とし,研究期間は52週間(20週間のウォッシュアウト期間を含む)とした。

    方法:閉経後女性57名(60.2±6.0歳)をランダムに2 群(immediate intervention(II)群:29人,delayed intervention(DI)群:28人)に分けた。II群は最初の12週間にHMBと筋力運動による介入プログラムを提供した。その間,DI群は介入を行わず,最後の12週間にII群と同様の介入プログラムを提供した。なお,II群への介入終了後,20週間のウォッシュアウト期間を設けた。主要評価項目は四肢筋量,副次評価項目は最大筋力とした。

    結果:対照条件と比べて,介入条件の四肢筋量の変化値に有意な差はみられなかったが(介入条件 +0.2±0.8 kg,対照条件+0.3±0.8 kg,P = 0.88),最大筋力の変化値に有意な差がみられた(チェストプレス:介入条件+2.5±4.5 kg,対照条件0.0±5.0 kg,P < 0.001,レッグカール:介入条件+2.5±5.0 kg,対照条件0.0±5.0 kg,P = 0.001,レッグエクステンション:介入条件+12.5±7.5 kg,対照条件+5.0± 12.5 kg,P = 0.001)。

    結論:12週間にわたるHMBと筋力運動の併用は閉経後女性の筋力を向上させる可能性がある。

  • 湯浅 安理, 増成 暁彦, 吉田 成仁, 向井 直樹, 宮川 俊平, 宮本 俊和
    2020 年 22 巻 1 号 p. 35-44
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/10
    [早期公開] 公開日: 2020/01/31
    ジャーナル フリー

    目的:フィンスイミングによる痛みは足関節に生じやすいため,足関節痛と関連の高い要因を明らかにし,足関節の外傷・障害予防の一助とすることを目的とした。

    方法:2016年度フィンスイミング日本選手権出場選手314名のうち中学生以上の選手を対象とした。出場選手が所属する全チーム代表者に質問紙を送付し,79名(男子49名,女子30名)の有効回答を得た。質問項目は,足関節痛,足関節捻挫の既往,自覚的な足関節の緩さや不安定感,足関節・体幹トレーニングの実施率,泳動作中の足関節の使い方の意識,および自覚的な発症要因とした。統計処理は,足関節痛の有無と名義尺度,比率尺度との関連について二項ロジスティック回帰分析を行った。有意水準は5%とした。

    結果:現在の足関節痛(27名)は,自覚的な足関節の緩さ(27名)の中でも,特にフィン使用時の足関節の緩さ(23名)との間に有意に高い関連がみられた(オッズ比28.5,95%CI 7.7-105.9)。現在・過去の有痛者36名の自覚的な発症要因は足関節の緩さ(12名)が最多であり,足関節捻挫の既往(3名)もみられた。トレーニング実施率は体幹68.4%に対し,足関節は26.6%と低かった。

    結論:フィン使用時の自覚的な足関節の緩さはフィンスイミングによる足関節痛と高い関連が明らかとなり,更に自覚的な発症要因としても足関節の緩さが最多であったことから,足関節の緩さへの対策の必要性が示唆された。

  • 廣野 準一, 藁科 侑希, 西田 智, 津賀 裕喜, 小田 桂吾, 大垣 亮, 鍋山 隆弘, 向井 直樹
    2020 年 22 巻 1 号 p. 45-53
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/10
    [早期公開] 公開日: 2020/02/27
    ジャーナル フリー

    目的:高校と大学の剣道競技者を対象に競技に関連する疼痛を調査し,年代ごとの有症状況や年代間の違いについて,性差をふまえて検討した。

    方法:対象は,福岡県高等学校体育連盟剣道専門部に所属する高校9校327名,全国の学生剣道連盟に所属する大学10校431名の剣道部員とした。質問紙にて,疼痛経験の有無とその詳細,対象者の特徴や練習を調査した。疼痛の定義は,現在の所属に在籍してから質問紙記入時までの剣道部活動中に発症した痛みとした。

    結果:有効回答数は高校143名,大学272名であり,有効回答率は54.7%であった。各年代の疼痛有症率は,高校生で60.8%,大学生で33.8%であった。有症率は,大学より高校で,高校年代で男性より女性で有意に高かった。練習時間と頻度は,大学より高校で,練習時間は高校年代で男性より女性で有意に多かった。パフォーマンスに支障のある疼痛は82.4%で,そのうちの受診率は44.1%であった。急性疼痛は慢性疼痛の1/3 以下の有症件数であった。疼痛部位は,高校では足部/足趾,手関節,腰部/骨盤/仙骨,大学では下腿/アキレス腱,足部/足趾,腰部/骨盤/仙骨に多かった。

    結論:疼痛有症状況は年代や性別で異なり,練習時間や頻度が影響する可能性が考えられた。また,パフォーマンスに影響するほどの疼痛を抱えながらも,医療機関を受診しない者が多いという現状が示された。

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