運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
24 巻, 1 号
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巻頭言
原著
  • 内田 一彰, 澤 龍一, 円丁 春陽, 小野 玲
    2022 年 24 巻 1 号 p. 7-18
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2023/03/19
    ジャーナル フリー

    目的:本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に1回目の緊急事態宣言前後における身体活動量の変化を客観的に明らかにすること,そして身体機能レベルによる変化の違いを明らかにすることである。

    方法:本研究は縦断研究であり,神戸市在住の65歳以上の高齢者78名を対象とした。ベースライン調査は20199月上旬~10月上旬に,フォローアップ調査は20208月下旬~9月上旬に実施した。身体活動量は1軸加速度計を用いて,歩数(歩/日)と軽強度の活動(light-intensity physical activity; LPA)(分/日),中等度強度以上の活動(moderate/vigorous-intensity physical activity; MVPA)(分/日)を算出した。身体機能はShort Physical Performance Battery で評価し,8点以上を身体機能が高い群とした。統計解析では緊急事態宣言前後の身体活動量の変化を検討するためにウィルコクソンの符号順位検定を実施した。その後,目的変数を身体活動量の変化量,説明変数を身体機能,交絡因子を強制投入した線形回帰分析を実施した。

    結果:平均年齢は76.4歳,女性は55名,身体機能が高い群は41名であった。歩数,LPAMVPAは,緊急事態宣言前に比べて緊急事態宣言解除後3か月時点でも有意に減少していた(歩数の変化量:-1096歩/日[第1四分位数,第3四分位数:-1966, 55],LPAの変化量:-6分/日[-19, 1],MVPAの変化量:-5分/日[-11, 0])。更に,身体機能が高い群は低い群に比べて,歩数,MVPAの減少量が有意に大きかった(歩数:Β=1276.6 [95%信頼区間=2533.5 to18.7],MVPAΒ=11.5 [-20.7 to2.2])。しかし,ベースラインの各身体活動量を調整因子として加えると,それらの関連は消失した。

    結論:本研究は,歩数,LPAMVPAが緊急事態宣言前に比べて解除後3か月時点でも有意に減少しており,歩数とMVPAの減少量は身体機能が高い人において大きかった。これらの知見は,コロナ禍における高齢者の活動量維持のための介入指針の一助になると考えられる。

資料
  • 松下 宗洋, 鎌田 真光, 笹井 浩行, 原田 和弘, 門間 陽樹, 井上 茂, 中田 由夫, 小熊 祐子
    2022 年 24 巻 1 号 p. 19-33
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2023/03/19
    ジャーナル フリー
    電子付録

    目的:“これは必ず読んでおいたほうが良い”という重要論文を紹介した「身体活動・運動疫学研究における重要論文20本」が2009年に運動疫学研究に掲載されてから約10年が経過した。この間に,身体活動・運動疫学の研究分野では,新たな身体活動測定法や統計解析手法が開発され,研究トピックも変化してきた。そこで,2009年以降に出版された論文から新たに重要論文20本を選び,身体活動・運動疫学研究に携わる研究者に有用な情報を提供することを目的とした。

    方法:本研究は,日本運動疫学会プロジェクト研究「身体活動・運動疫学研究における重要文献(第2版)の作成」として行われた。候補文献を募集するために,日本運動疫学会の会員およびプロジェクト研究メンバーから候補文献の推薦を募った。その後,プロジェクト研究メンバーで重要文献選定基準を定め,協議により重要論文20本を決定した。

    結果:集まった候補文献は39本であり,そこから20本を選定した。今回の選定基準では,ガイドラインを含めないこととし,20本の重要論文を決定した(観察研究12 本,介入研究5本,システマティックレビュー・メタ解析2本,準実験デザイン1本)。出版年は20112018年であり,このうち日本発の論文は6本であった。

    結論:身体活動・運動疫学分野の重要論文20本が幅広く選定された。この重要論文20本は,身体活動・運動疫学研究に携わる研究者や,大学・大学院の授業での利用価値が高いと考えられる。今後も研究方法論や研究トピックは発展的に変化していくことが予想されるため,定期的に重要論文を共有していくことが期待される。

統計資料
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