使用済み製品の適切な回収は,環境負荷を減らしうると言われている.この回収を進める方策として,デポジット制度の導入がしばしば提起される.しかし,経済学的な理論に則して,返却の手間に関する消費者ヘのアンケートを行いつつ,デポジット制度の影響を検討することは十分に行われているとは言いがたい.例えば,全国の多くの大学生協で,回収・リサイクルを企図した弁当容器が使われているが,それらの事例でデポジット制度の経済学的な検討が行われているとは言いがたい.本稿では,弁当容器回収を例に,消費者へのアンケートで得た回答を基に,デポジット制度導入の経済学的な検討を行う方法,および今後の方向性を示した.
エネルギー政策や温暖化対策などの政策評価のために多くの応用一般均衡モデル(CGEモデル)が開発されてきた.その多くが国内全体を一括して分析したものである.しかし,地域毎に家計の消費支出の構成や産業構造は大きく異なることから,同じ政策を実施するとしても影響は地域毎に大きく差異が生じると考えられるため,政策を検討するに当たって一国規模の影響のみを見るのでは不十分である.これまで,国内の多地域CGEモデルを用いて排出規制の影響を評価した例は極めて少なく,本稿では地域間産業連関表と整合的な地域別のエネルギー投入量,温室効果ガス排出量を推計し,新たに国内多地域CGEモデル(JCER地域CGEモデル)を開発した.温室効果ガス10%削減を課すシミュレーションの結果からは,鉄鋼や化学などのエネルギー多消費型産業を多く抱える地域や火力発電比率が高い地域でマイナスの影響が大きいことが分かった.
環境経済学における分析の一手法として,実験手法の有用性は広く認知されつつある.また,実験手法を用いた研究は確実に増加しており,その研究動向を把握することは環境経済学者にとって必要不可欠となっている.そこで,本稿では環境経済学における実験研究の最新動向を環境評価分野,環境政策分野,社会的ジレンマといった関連分野の順に整理し,現在の到達点と今後の展望を示す.
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