本稿では,長期的な環境問題を念頭に,割引率に関する様々な議論を紹介する.まず,Frank Ramsey の古典的な研究を出発点に,世代間衡平性との兼ね合いから割引の問題を論ずる.また,主に不確実性に焦点を当てながら,DDR と呼ばれる比較的新しい割引理論について詳細に解説する.さらに,割引率が費用便益分析の中で果たす役割についても,地球温暖化問題を例に具体的に示す.
国際的な共有地の悲劇を回避するための協力あるいは合意の内容は複数あり得る.パリ協定は,排出量目標を約束してそれを取引可能にするという点で,京都議定書と同じである.それに対し,炭素価格,つまり排出削減の限界費用を目標にすべきだという提案が,かねてよりあり,COP21 にあわせて主張する者が増えている.本稿は,パリ協定とその交渉過程をふまえながら,それらの主張の観点からパリ協定の評価を行い,またそれらの主張の妥当性を検証した.それらの主張には説得力があるものの,さらなる検討も必要である.
現在,国連環境計画(UNEP)をはじめとする様々なレベルで,持続可能な消費と生産のための取り組みが実施されている.環境経済・政策学会2015 年大会「持続可能な消費と生産」セッションでは,この動きについて概観し現在の関連プログラムの現状と展開について紹介するとともに,主要アクターである企業と消費者について関連の研究成果を紹介した.本稿では,その議論をふまえ,今後の研究展開について議論する.
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