自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder, 以下ASD)者はユーモア理解やユーモア体験の難しさから他者とのユーモア共有が難しいことが指摘されている。この背景の認知的特性として,中枢性統合の弱さが考えられたため,どこがおもしろいかを明示する役割のある「ツッコミ」がASD者のユーモア促進に有用であると考えられた。そこで,本研究は「ツッコミ」という補足的言語情報がASD者のユーモア理解とユーモア体験に与える影響について,16〜37歳のASD者13名と16〜30歳の典型発達(Typically Development, 以下TD)者26名を対象に検討した。その結果,ASD者においては「ツッコミ」がユーモアにおける「オチの理解」を促進するものの,ユーモア体験は促進されないことが示唆された。このことから,TD者は「ツッコミ」が示したおもしろさと同じユーモア体験をしている一方で,ASD者はおもしろさを感じやすいものがTD者と異なることや,独自のユーモア理解からユーモア体験が生じている可能性が示唆された。
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