本稿は、在宅ホスピスケアを利用して看取りを行った遺族を対象にした調査票調査から、死に関する自由記述回答を分析することで、現代日本における死生観の一側面を描き出そうとする試みである。調査は2010~2014年の間に家族を看取った主介護者に対して行い、663票の質問紙を回収した。
分析から見出されたのは、次のようなパターンである。死の問題一般に対するときには、死はそれ自体として焦点化されず、目下の日常生活の是認へと向かう。自分自身の死に関する記述では、「迷惑をかけない死」という経済的・社会的な負担の問題に関心が集まっている。これに対して、身近な死者に関する記述では、死後も存続するものや、死者の行方について多く語られている。
本調査結果の全体的傾向からは、実際の人々の死生観は、療養場所の選択や介護負担・経済的負担といった現実的問題と切り離しえないことが示唆された。
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