宗教と社会
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論文
  • 藤本 篤二郎
    2024 年30 巻 p. 1-15
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2026/06/06
    ジャーナル フリー

    現代に特異な身体の自己管理の実践として、一定期間ポルノグラフィの視聴や自慰行為を自ら禁ずるという性的節制があり、英語圏だけでなく中国や日本のソーシャルメディアでも拡大している。このうち、日本の「オナ禁」言説についてスピリチュアリティの視点からとらえることで、(1)この実践を通した身体的経験が、近代的な科学的知によらない語彙によって説明されていること、(2)不可視で科学的に裏付けられたものではないが身体で知覚可能なものとして「エネルギー」という概念が中心的に用いられていること、(3)スピリチュアリティ文化の世界観に親和的な論理と、矛盾する特徴を混在していることが明らかになった。女性中心の現代ヨーガの実践と比較すると、オナ禁は「エネルギー」というスピリチュアルな概念を中心に男らしさを高め、性生活を通したパートナーシップの向上以前である、パートナーの獲得を目標とした実践であると考えられる。

  • 野中 葉
    2024 年30 巻 p. 17-31
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2026/06/06
    ジャーナル フリー

    日本に暮らすインドネシア人ムスリム(イスラーム教徒)は現在約8万6千人と推計される。日本の全ムスリム人口が約23万人と言われる中、インドネシア人は国別で最大のムスリム集団であり、しかもこの数はこの10年間で約4倍に増加している。これに伴い、インドネシア人ムスリムたちが組織を作り、モスクを建築する動きが盛んである。しかし在日ムスリムの研究では、これまで、1990年前後に来日し定住した西アジアや南アジアからの移民労働者たちに注目が集まってきた。本稿では、近年急増する在日インドネシア人ムスリムに焦点を当て、彼らによるモスク建設や組織化の実態を明らかにし、その背景と特徴を検証した。これらの組織化やモスク建設は、宗教実践のネットワークと「場」の創設であるとともに、故郷の言葉、味、情報、文化に触れる機会を持つことでもある。また、複数のモスクの開設は、本国インドネシア社会の異なる社会階層や政治社会勢力がそれぞれに組織やモスクを所有するようになったことを表わしている。

  • 堀川 みき
    2024 年30 巻 p. 33-46
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2026/06/06
    ジャーナル フリー

    人間の内面の変化を伴う更生は宗教的回心と重なり合う部分があり、宗教と更生支援の歴史的関わりは深い。現在、刑務所内における施設内処遇では宗教教誨という形で宗教が更生支援に関わっている。一方、出所後の社会内処遇における宗教の関わりについては未だ不明な点が多い。この課題に取り組むにあたり、刑務所出所者等の受け皿となる自立準備ホームを運営するキリスト教系NPO法人を調査対象とした。この法人は、刑務所内で回心した人物が理事長を務め、キリスト教の理念に基づいた更生支援活動を行なっている。調査により、このNPO法人の活動の核に、回心と更生を一つの体験としてとらえる理事長の更生支援に対する思いがある一方で、組織としてのあり方や対外的な関係、活動内容については、その対象や状況に合わせて宗教の位置づけを柔軟に変化させながら対応している実態も浮かび上がった。

  • 君島 彩子
    2024 年30 巻 p. 47-61
    発行日: 2024/06/15
    公開日: 2026/06/06
    ジャーナル フリー

    本稿は石で造られた地蔵の像本体だけでなく、被服が地蔵信仰において重要な役割を果たしたことを明らかにしたものである。筆者は山形県村山地域において、被服の奉納された地蔵784体の調査をおこなった。この地域では、形をとどめていない地蔵、頭部が失われた地蔵、そもそも地蔵ではない石塔などにおいても被服を奉納することで、「地蔵」として信仰されている。個人的な地蔵信仰は、ほとんど記録として残されていないが、そのような個人の信仰の一端を知ることができるのが被服の奉納である。石に比べて脆弱な布の被服は経年劣化で失われるため、新たに奉納する必要がある。地蔵における被服を着用したイメージの共有は、新たな被服の奉納という儀礼を生み出している。

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