宗教と社会
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最新号
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論文
  • 藤井 麻央
    2021 年 27 巻 p. 1-15
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    本稿では、明治中期から昭和初期に金光教が組織を整備する場面で、教会制度と教義がどのように関係していたか、森岡清美の宗教組織論を手掛かりにして考察した。その結果、森岡が日本の宗教運動体の原組織と指摘した信仰の導き関係を媒介とする派閥的結合が制度の間隙を縫って作用していくことがわかった。一方で、教義的にあるべき姿とされた「布教者や教会は神を前にして平等である」ことを体現する水平的結合の教会制度を構築して導き関係を統制する経過も明らかとなった。金光教では「手続き」と呼ばれる導き関係を「純信仰的」なものとして、教会制度において行使することを否定したのであった。このような金光教の中長期的経過を分析することによって、信仰の導き関係を媒介とする派閥的結合と金光教が備える平等観が拮抗する中で、教義が教会制度に対して規範的な力を有しながら両者が相互作用する展開過程が示された。

  • 大場 あや
    2021 年 27 巻 p. 17-31
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    本論文は、戦後の新生活運動および生活改善を掲げた諸活動が、地域社会における冠婚葬祭の慣習にどのような影響を及ぼしたのか、山形県を事例に検討するものである。冠婚葬祭の簡素化は最も多く取り組まれ、重要視された項目にもかかわらず、ほとんど成果がなかったとされてきた。そこで実践報告・広報紙等を手掛かりに、最上町における運動の展開と冠婚葬祭をめぐる取り組みを精査した。当時盛り上がりを見せていたまちづくりの一環として町を挙げて着手されたものの、住民の立場や世代等による温度差が次第に浮き彫りとなり、儀礼の簡略化・贈答返礼慣行の「廃止」運動は行き詰まる。方向転換した住民らは衣装・用具・設備の「共同化」を進めるが、それは図らずも「外部化」へと繋がるきっかけとなる。1950年代、新生活運動の文脈において伝統的な冠婚葬祭が客体化されることで、高度経済成長期以降の専門業者普及による変容の前段的過程が用意されたと言える。

  • 畠中 茉莉子
    2021 年 27 巻 p. 33-47
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    ルーマンは宗教を社会の一つの機能システムとして描きつつも、その存立を自明視はせず、近代社会における宗教の存立の可否を問い続けた。彼の世俗化論はこの問いを中心的な主題としたものである。彼の世俗化論には1977年版、2000年版という複数のテキストがあり、前者から後者へと至る間に宗教に対する彼の見方は変化した。この変容の詳細はまだ解明されていない。その解明が本稿の主眼である。当初、彼は宗教としてキリスト教の教会組織を念頭に置いていた。その後彼は同時代の神学者と宗教社会学者の問題提起を通じて、現代の拡散した宗教的現象において示されている宗教性とは何かという問いに出会う。この問いに向き合う中で彼の宗教をめぐる視点は拡大した。彼は現代の様々な宗教的現象への関心を示す。それらは伝統的な組織の内には収まらない。そのためルーマンは、現代の宗教性を一つの自立した宗教システムとして描くための理論的概念を模索したのである。

  • 磯部 美紀
    2021 年 27 巻 p. 49-63
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    近年の日本においては、宗教家を介在させない葬儀が一つの葬儀形態として受容されている。また、「故人らしさ」を反映させた個性的な葬儀を望む人々もいる。今や、葬儀に僧侶が関与することは自明ではなくなりつつある。本稿では、このような葬儀を取り巻く状況の変化を受けて、僧侶が自らの役割をどのような点に見出し、いかに葬儀実践を模索しているのかを、新潟県で行われた仏式葬儀を事例に論じる。特に、法話(僧侶によって行われる説法)に注目する。法話の内容を分析すると、故人の生き様を反映させた個別化された要素と、仏教儀礼として定型化された要素が確認できる。この事例研究を通して、両要素は相反するものではなく、相互補完的な関係にあることが示された。法話実践の分析により、僧侶が個性的な葬儀を称賛する現代的ニーズに対応しつつ、同時に死別に際して必要とされる仏法に基づく物語を人々に提供する具体的様相が明らかになった。

  • 桂 悠介
    2021 年 27 巻 p. 65-80
    発行日: 2021/06/05
    公開日: 2023/06/24
    ジャーナル フリー

    本稿では、日本人ムスリムの改宗までの諸経験に着目することで改宗プロセスの分類を行う。先行研究においては、日本人の改宗の大半はムスリムとの結婚が契機であるとされ、結婚以外の経験は十分に着目されてこなかった。本研究ではまず、欧米の先行研究から「便宜的改宗者」と「確信(意識)的改宗者」、及び「関係的改宗」と「理性的改宗」という分析視点を提示する。これらの視点を基に、インタビューデータや入信記にあらわれる諸経験を検討する。そこで、日本においても、グローバルな人や情報の移動の中で生じるムスリムとの交流や海外渡航等が契機となる関係的改宗や、読書、勉強会、議論などが重要となる理性的改宗が時に重なり合いながら現れていることを指摘する。一つの要因に還元できない多様な経験に着目する本稿は、従来の日本人の自己像と他者としてのムスリム像の双方を問い直し、今日のイスラームをめぐる共生の課題解決に向けたひとつの視座を提供するものである。

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