本報告では、景観重要樹木の指定方法について、樹木保全制度や指定の方針の分析、及び茅ヶ崎市での市民を巻き込んだ指定候補樹木抽出の方法より、次の2点が結論として導かれた。第一に、景観重要樹木の指定に当たっては、景観行政団体が樹木に対する市民意識を把握することにより、指定対象樹木を抽出する必要がある。第二に、茅ヶ崎市での市民の参加を取り入れた景観重要樹木の事例分析から、樹木に対する市民意識把握の手法として、公募及び投票を採用することにより、年齢構成に偏りがなく、更に多くの市民の意識を把握することが可能となる。
本研究の目的は、都心再開発による周辺環境の変化を把握することで、土地利用と地域活動による変化を把握することにある。東京ミッドタウンのある六本木地区を対象に、特に複合型の開発が周辺の商業地域や住宅地域に及ぼす変化を調査する。本研究で明らかになったことは、幹線道路沿いの駐車場化の進展と戸建て住宅地の集合住宅化がある。一方、商業地域では商業振興組合を中心に多くの取り組みを行っており、アートのイメージ戦略を強く打ち出した活動を行っている。併せて、町内会などとの連携、ミッドタウンや六本木ヒルズなどの新規開発事業地区の事業者や就業者との連携が進んでいる。
本研究では、地域通貨の循環と利用店舗の取り組みに焦点をあて、利用促進に関する提言を行うことを目的とする。まず、東京都と周辺の13通貨についての、入手方法、利用や連携を把握し、その上で、広域連携を実施し利用量の多い2通貨を対象に利用店舗にアンケートを行った。2通貨の利用については、広域での連携やプロジェクトによる入手など多様な入手方法を推進しているものの、使い方が分からない、あまり使われない店舗が多いなどの指摘が出され、直接的な宣伝の重要性や店舗間の情報交換などの重要性が明らかになった。
本研究では、水辺空間の管理の問題を明らかにする。そのために水辺空間のタイプ別の管理実態と、住民団体との関係性の把握を行った。水辺空間を水遊びの有無と水生生物の有無で分類を行った。水遊びのできる水辺空間では塩素消毒による問題がある。水生生物のいる水辺空間では水生生物の大量発生などの問題がある。行政と住民団体との連携では水辺空間に関わる住民団体が少ないことが問題である。これらの問題を解決するために、本研究では、行政と周辺住民や住民団体との連携を提案し、今後の水辺空間の管理の方向性を見出す。
本研究の目的は、街路空間における犯罪不安と防犯環境の関係を、さいたま市岩槻区でのワークショップを通して明らかにすることです。ワークショップ参加者27名に防犯環境の評価をしてもらい、以下の結果を得た。1)防犯掲示物は犯罪不安を喚起させる可能性がある。2)交通の制御と歩車道の分離を行うことで犯罪不安は低減する。3)自分以外の者の安全を考えた場合にも犯罪不安を喚起する場合がある。
本研究は、大規模土地利用転換の代表的事業手法である独立行政法人都市再生機構が実施する土地有効利用事業における葛飾新宿六丁目地区の取り組みを例示して低炭素まちづくりの評価することを目的とする。 この大規模土地利用転換による低炭素まちづくりにの評価としては、一定の条件下で、地区の環境性能の向上を促す効果があり、二酸化炭素吸収効果が認められる。加えて副次的ではあるが、周辺市街地の環境改善の機運につながる波及効果が期待されるものであると考えている。
ファシリテーターがその場にいなくても、公園利用者が野生生物について学習し、観察できるように、我々は国営昭和記念公園に標識を設置し、携帯電話用のWebページを用いて情報を提供した。利用状況と効果は、アンケートによって調査を行った。結果、この手法によってファシリテーターがいなくても、利用者の好きな時に学習の機会を提供できたことが分かった。しかし、Webページの利用は多くなく、利用を得る工夫が必要となった。
事前広域避難が盛んな米国における研究事例をレビューするとともに、東海ネーデルランド高潮・洪水地域協議会が提唱している事前広域避難計画について検討し、今後の研究課題について整理することで、我が国における事前広域避難実施の可能性を見出すことを、本研究の目的とした。その結果、事前広域避難の成否は「避難完了までの時間」(Clearance Time)を台風来襲までの時間よりも短くすることにあること、事前広域避難実施の意思決定を可能な限り早く行うこと、科学的な根拠を提示することが求められることを指摘した。
本研究は、外国人観光客に対する情報案内サインの問題と方向性を考えるために、浅草地域を対象に実態調査を行ったものである。案内サインを観光情報、交通情報、特定場所の指示情報、注意喚起などに分類し、場所については、外周地域、及び内部地域として、それぞれ道路タイプと広場タイプに分類して、言語タイプ別に実態を把握した。結果は、ピクトグラムの活用、マップ、禁煙ポイ捨てなどの情報が多く確認されたが、スペース不足などにより内部地域での情報の少なさや、詳細な観光情報の外国語表記の少なさが顕著となった。
本研究は、横浜市の洋光台を対象に、細分化と用途変化を調査し、併せて住民組織の活動内容とその成果から住民組織の住環境保全における役割を把握したものである。広い土地の細分化、事務所や寮の細分化、駅周辺の細分化や事務所化などを中心に様々な地域での細分化や用途変化が確認された。一方で住民は、環境の良さを高く評価しているものの、限られた地区でのルール作りへの活動があるに過ぎず、まちづくり活動は行われているが住環境保全については厳しい点も多い。住民の主導性には問題も多いといえる。
本稿は、欧州ランドスケープ条約が掲げる主要施策の一つである、ランドスケープの特定、評価、質目標設定のプロセスを先進的に実施している英国のランドスケープ特性評価の理論と手法を明らかにすることを目的としている。その結果、(1)ランドスケープ特性評価は、価値判断とは分離されたランドスケープの基礎目録であること、(2)ランドスケープは、独自のタイプとエリアを持つこと、(3)ランドスケープは目指すべき固有の質目標があること、(4)ランドスケープ政策は関連政策へ波及して行くこと、(5)日本の土地利用評価の手法としても応用の可能性を探る必要があることを把握した。
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