本稿では、歩行車を使用した歩行における骨盤への理学療法士による介助の力学的影響を分析し、介助による外部からの力および外部からの骨盤モーメントが歩行動作に及ぼす影響を、シミュレーションにより検証した。はじめに健常成人4名を対象とし、右下肢への荷重を体重の70%に制約し歩行車にて歩行させ、理学療法士が提供する介助力とトルクを測定した。その結果、遊脚相を支援する介助パターンを特定することができた。次に、シミュレーションソフトウェアを用いて作成した人体モデルにおいて、遊脚期を再現し、理学療法士の介助から得られた介助パターンを入力することで、遊脚相における骨盤への介助による外部からの力および外部からの骨盤モーメントが下肢運動に及ぼす影響を明らかにした。これらの知見は、歩行ロボット支援デバイス開発の一助となりうる。
脳卒中患者は下肢装具を使用する機会が多いが、現状ではユーザのニーズが十分に反映され、充足しているか評価が難しい。本研究の目的は、ユーザ視点に基づくニーズの充足の評価に有効な因子と評価項目を明らかにニーズの充足の程度を評価する手段を得ることを目的とする。先行研究におけるインタビュー結果に基づいて評価項目を設定し、61名の下肢装具ユーザによる5件法の回答データに対し、因子および評価項目の選定のため、探索的因子分析を実施した。また、項目の信頼性の確保のための評価項目に対する信頼性係数を算出した。その結果、「装具の適合状況の確認および装具使用によるメリット」「装具使用によるデメリット」「装具提供および継続使用に関わるサービス」の3つの因子が抽出され、20の評価項目が得られた。これらの評価項目は信頼性係数より、内的整合性の観点から十分な信頼性を有する結果を示した。この項目を取りまとめ「装具サービスニーズ評価尺度」と命名した。本尺度の活用により、装具やサービスへのニーズの充足を評価が可能となり、ユーザニーズを反映による装具およびサービスの改善につながる可能性がある。
本研究の目的は、福祉用具貸与事業所に所属する福祉用具専門相談員が、末期がん患者の終末期各期に行っている福祉用具の選定から末期がん患者のニーズを把握し、その支援内容を明らかにすることである。終末期前期には、《今までと同じ暮らし》を考えて選定を行い、中期になると、〔介護者の使いやすい用具の提案〕〔介護者を疲労させない用具の工夫〕で介護しやすい環境を整え、後期には、〔予後を考え用具を選択する〕ことで《状態の悪化に備える》【予測】を行っていた。末期がん患者は最期まで意識が保たれていることから、病状に合わせて福祉用具により《自立を支援》し、《本人の希望を叶える》、福祉用具選定の意義は大きい。
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