理学療法学
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16 巻, 4 号
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原著
  • 沼田 憲治, 齋藤 宏, 萩原 昇, 川名 隆二
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 231-235
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    脳損傷患者にみられる異常姿勢について視空間感覚の障害との関連から調べた。対象は脳卒中患者のなかから右半球損傷患者10名,左半球損傷患者10名とした。実験1では前額面上での垂直判断をおこなわせ,真の垂直位からの偏位を調べた。実験2では画像傾斜による視覚刺激(階段画像および縦縞画像の2種類を使用)を与え,そのときに生じる立位姿勢の偏位をグラビコーダーで調べた。
    結果は次の通りである。
    ①視覚的垂直判断はそれぞれの半球損傷側の反対方向に偏位していた。②階段画像を使用した視覚刺激では,損傷半球側の反対方向への画像の傾斜に伴いそれと同方向への姿勢偏位を生じた。③縦縞画像による視覚刺激では姿勢偏位は生じなかった。④視覚的垂直判断の偏位と視覚刺激に伴う姿勢偏位との間に有意な相関は認められなかった。
  • 井上 隆三
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 237-243
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,立位で身体を前方へ傾斜させ重心が前方へ移動した時の,重心動揺とその速度パワースペクトラムを計測した。また,合わせて重心動揺の分散値を算出し,パワースペクトラムとの関連を検索した。
    自然な立位から身体を最も前方へ傾斜させた時,重心動揺とその速度パワースペクトラムの前後方向成分が,1.75〜2.50Hzの帯域でそれぞれ,1.98倍,1.63倍と最も大きな増加を示した。1.75〜2.50Hzの帯域は,歩行の1ステップに一致した周波数帯域である。歩行開始時には,身体は前方へ傾斜し重心が前方へ移動する。歩行開始への移行段階での身体を前方へ傾斜した立位で,歩行の1ステップに一致した重心動揺とその速度パワースペクトラムの前後方向成分が著明な増加を示した。
報告
  • 松永 義博, 峰久 京子, 木村 啓介, 安藤 美紀
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 245-252
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    今回,Dermatomal Somato Sensory Evoked Potentials(DSSEPs)を腰部椎間板ヘルニアと診断され当院に入院した症例(16例)について検討した。患者の年齢は29歳から60歳であり,その平均年齢は40.3歳であった。全例に対して術前知覚障害およびMyelographyと対応した。手術施行例は15例であり,その内14例について,神経根の浮腫,癒着,可動性などの手術所見と術前DSSEPと対応した。術後経時的にDSSEPを検討出来た症例は10例であった。以上の結果,術前DSSEPは知覚障害と高い相関が認められたものの,Myelography,手術所見とは相関が低かった。また術後経時的検査においては手術前より正常例2例を省く7例に対し回復が認められ,その平均回復期間は2.78ヵ月であった。DSSEPが知覚障害と相関性が高く,Myelographyおよび手術所見とは低い理由については,圧迫の速度,神経根と脊椎管および椎間孔の相対的空間,神経根内での正常な神経線維が障害された神経線維を代償するなどが考えられた。
  • 木山 喬博, 岩月 宏泰, 室賀 辰夫, 猪田 邦雄, 坂口 勇人, 苗村 美樹, 青木 賢次
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 253-260
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    電気刺激強度を一定にして筋出力を変えた場合と,筋出力を一定値に保持して電気刺激強度を変化させた場合の母指球筋のSilent Period(SP)への影響を知るため,実験を行い以下の結果を得た。1)健常者のSPは100〜120msで,諸家の報告値100msと大差は無かった。2)SPの潜時は筋出力を増加した場合には21msの短縮を示し,電気刺激を強くすると21.4msの延長を示した。3)SPの潜時を規定する因子として,諸家が推測する末梢受容器の関与以外に,αやγ運動神経の関与を含めた筋肉自身の収縮・弛緩などの動的な物理的性質の影響も無視できないことを窺わせた。
  • ―横断歩道の実地調査より―
    高橋 精一郎, 鳥井田 峰子, 田山 久美
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 261-266
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    現在,歩行速度の評価基準には定まったものがない。例えば10m15秒,10m10秒あるいは健常人よりも若干遅めといったもので,その理論的根拠にも乏しい。
    はたして社会生活をしていく上でこの速さで十分であろうか? という疑問から,少なくとも横断歩道を安全に渡れる速さがなければいけないのではないかと考えた。
    そこで130ヵ所の横断歩道の青信号の点灯点滅時間を調べ,横断に必要な速さを算出した。その結果,9割以上の横断歩道を渡るには1m/secの速さが必要であることがわかった。これを歩行評価基準の一つとすべきであるし,訓練においてもこの速さを獲得すべきである。
  • 伊橋 光二, 齋藤 昭彦, 八幡 純治, 伊藤 直栄
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 267-272
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    呼吸介助手技は換気量を増大させる肺理学療法の最も基本となる手技である。この呼吸介助手技を行った場合に実際に肺気量分画がどのように変化するのか健常青年を対象に検討した。
    1. 呼吸介助手技により体位,介助部位に関係なく一回換気量が約2倍に増加した。
    2. 呼吸介助手技により胸郭が絞り込まれ機能的残気量が減少した。
    3. 一回換気量の増加は,安静呼気位を越えた呼気介助による予備呼気量の低下が主である。
    4. 半数の例では予備吸気量が減少しており,胸郭の柔軟性による反発拡張による安静吸気位を越えた吸気による一回換気量の増加も生じている。
  • 山本 和儀
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    大阪府大東市には,全国で唯一福祉分野に理学療法課という理学療法士4名,ケースワーカー1名,非常勤職員の作業療法士1名,看護婦1名を配する行政課をつくっている。そこでの活動は以下のとおりである。①市域全体を視野に入れ市民のニーズに合わせたサービスを行う。各地域の障害者・老人に対して施設および学校への巡回,在宅訪問での機能訓練を実施している。②0歳から老人まで年齢に関係なく関係機関と連携しながら,どの時期にも理学療法課が一貫してリハビリテーションを計画し実施している。③市民の地域リハビリテーションに対する意識・理解を深める。市民の手によって障害者・老人が社会参加できる街づくりを実現するように働きかける。具体的には,市民対象に「リハビリテーション祭り」というイベントや介護講習会等の啓発事業を実施し,ボランティアの育成に力を入れている。特に若年層のボランティアづくりが今後重要な課題である。本文では,具体的な活動について紹介している。
  • ―対象患者の年度別動向と起居移動動作能力―
    千野根 勝行, 太田 隆, 小沼 正臣, 亀田 英俊, 富田 昇, 小山内 隆, 久寿米木 和繁, 片岡 凞, 林 泰史
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    高齢脳卒中片麻痺患者の特徴とその現状把握を目的に調査を行った。対象は,東京都老人医療センターリハビリテーション病棟でPTを施行した昭和57年4月から昭和62年3月までの過去5年間の脳卒中片麻痺患者515例で,理学療法終了時の起居移動動作能力とこれに影響を与える諸因子を検討した。また,昭和62年度の対象患者111例を加え,過去6年間の年度別対象患者の動向も検討した。その結果,1)対象患者の高齢化と重症化,自宅退院率の低下が認められた。2)終了時起居移動動作能力と,麻痺側・年齢・Brunnstrom Stage・阻害因子の保有数・発症回数・病巣の大きさ・発症からPT開始までの期間との間に関連を認めた。3)高齢脳卒中片麻痺患者では,PT施行後も約3割の症例がベット上ADLに終わっていた。4)ねたきりであっても,指示や監視をすることにより動作が可能となる場合が多かった。
  • ―筋のリラクゼーションの重要性について―
    岡西 哲夫, 大橋 哲雄, 梶原 敏夫
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 289-295
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    人工膝関節置換術(10例,11関節)と膝関節授動術(5例,5関節)に対し,初期ROM訓練として3種類の方法,①徒手によるROM訓練,②三角台を使用した持続屈曲訓練,(③CPMによるROM訓練を筋電図学的に検索した。術後初期のROM訓練の目的は,筋の防御的収縮を消失させ,拘縮をつくらないことにある。最もリラクゼーションを得られなかったものは①の方法であり,②の方法は持続時間が長いと疼痛をひきおこした。術後初期のROM訓練としてCPMが最も目的にかなった方法と思われる。
症例研究
  • 岩月 宏泰, 室賀 辰夫, 木山 喬博, 辻井 洋一郎
    原稿種別: 本文
    1989 年 16 巻 4 号 p. 297-302
    発行日: 1989/07/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    パーキンソニズムにおける上肢運動機能の特性を評価する目的で規則刺激(0.2Hz)と不規則刺激(0.2Hz以下)を合図に接触板移動運動を行わせ,錐体外路系の変性が予測に及ぼす影響について検討した。得られた結果は,① パーキンソン群における主動作筋の潜時は,不規則刺激より規則刺激で延長がみられた。② 全所要時間は刺激頻度に関わらず加齢に伴い有意に延長し,健常群とパーキンソン群の両群とも刺激頻度の差を認めなかった。③ 示指を接触板に接触し離脱する“運動の切り換え”過程では,パーキンソン群と老年群の間で差を認めなかった。
    以上のことから,本症にみられる動作緩徐は筋固縮,易疲労等の要因による末梢効果器の障害と大脳基底核-補足運動野が制御する内的運動プログラムに乱れが生じたためと考えられる。
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