理学療法学
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18 巻, 6 号
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特別講演I
特別講演II
学会長基調講演
  • ―理学療法士の立場から―
    古米 幸好
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 567-571
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    私が理学療法士として理学療法(以下PTと略す)を行っている場面を全て思い浮かべて, 私の行っているPTは, 本当に科学的であるかと自問自答すると, 残念ながら「はい」と答えることができない。それは, PTの定義が曖昧であること, 徒手療法が多いこと, 相手が病気でなく「病人」であることなどに起因しているようである。PTが科学的に行われたかについての尺度は, 次の5点にあるという前提で科学性について検討する。科学的であるための尺度(仮定) 第1は, 最も効果的なPTが行えて最短時間で治療ができるか。第2は, 可能な限度まで治療(回復)ができるか。第3は, 治療の経過中リスク管理が完全にできるか。第4は, PT記録をもとに, 他の理学療法士がPTを行っても同じ治療効果が得られるか。第5は, 法的に認められている行為であること。
シンポジウムI
  • 脇元 幸一
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 573-576
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    Magnetic Resonance Imaging(MRI), Magnetic Resonance Spectroscopy(MRS)法は無侵襲に生体における組織の分子レベルの状態を反映する指標である。そこから得られる様々なパラメータは, 近年in vivoレベルでの研究を基礎として, 神経筋疾患等の診断に重要な役割を果たしつつある。これまで我々は, 体力評価に呼吸循環器系のパラメータ, 及び心拍数を用いることで, 最適な運動強度の検討をしてきた。これらのパラメータは, 心機能に加えて運動を負荷された筋肉の組織レベルでの代謝の反映でもある。今回, 我々はMRI, MRSから得られるパラメータを駆使することで, 理学療法分野への応用を試みている。運動中, 運動後の各々のパラメータの変化は, 生体内の代謝動向を反映しており, より細かいimpairment levelの評価から, スポーツなどの高いパフォーマンスレベル下の筋肉の代謝動向が把握できる。これらの評価はパフォーマンスを低下させている疾患周辺の評価にとどまらず, オーバーストレスを惹起しない適確な運動処方を可能とし, トレーニング効果の判定, 及び予防医学的観点からもかなり貢献できると考える。
  • 木村 美子
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 577-580
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    片麻痺患者の体力の評価に関しては, 可能な運動の範囲が限定されているということもあり問題点が多いが, その方法としては, スタンダップ法, 自転車エルゴメーター法やトレッドミル法などが一般的である。これら3つの方法はどれも負荷の定量化が可能であるという大きな利点を有している。今回は片麻痺患者の体力の実態を知るために, 慢性期の片麻痺患者に対して, 自転車エルゴメーターを用いた多段階負荷法による体力テストを施行した。
  • ―心拍数からの検討―
    岩崎 洋
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 581-585
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    近年, 脊髄損傷者(以下脊損者とする)も早期からのリハビリテーションのために入院期間の短縮, 職業につき, 社会活動も営む事は常識となっている。そのためにできるだけ早期から体力をつける事が要求されるので早期の正確な体力評価は重要と考えている。このように使われる体力とは全身的持久力, すなわち有酸素的作業能力をさすことが多い。脊損者の体力評価は損傷レベルにおいてそれぞれの身体的に特徴があるので体力評価には考慮の必要がある。今回, 筆者は頸髄損傷者(以下頸損者とする)をPT訓練終了者とPT訓練中の2つに分け, 各群に2つの負荷法を加えた結果を HR, VO_2maxで比較した。そして, 臨床上 HRが頸損者の体力評価の指標として有用であるのかを検討することにある。
  • 千住 秀明, 神津 玲
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 586-590
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸不全患者のADL障害は, 主として動作時の息切れによって引き起こされる。この息切れは運動による酸素需要の増加に, 酸素摂取量が増加できず, 結果として酸素負債が起こり, 息切れ症状をもたらすと考えられている。息切れは患者の行動能力を制限し, 全身状態を低下させ, 息切れをさらに強固にする悪循環を形成する。この悪循環を断つために, 「我々理学療法士には, 運動制限プロセス, 運動制限因子, 体力などを把握して, 治療法の検討や効果判定に活用できる評価が求められている。」近年これらの問題を解決する目的で, 種々の体力評価法が実施されている。呼吸器の分野で一般的に行われている体力評価法は, 6(10, 12)分間歩行テスト (6 Minutes Walking Distance:以下6MD), 活動時の心拍数 (HR)の記録, 最大分時換気量 (Maximal Voluntary Ventilation:以下MVV), 運動負荷試験などがある。以下簡単にその検査法の概略を紹介する。
シンポジウムII
  • 伊藤 直栄
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 591-
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
  • 今川 忠男
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 592-595
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
  • 高橋 護
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 596-599
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    歩行はヒトの機能の最高到達段階の一つで高度な自動性で支配されており, 連続した基本的運動能力の発達が必要である。正常な歩行には, 滑らかでリズミカルな前方移動, 交互の一脚上の体幹バランス, 下肢長の調節などの機能的な動きが自動的な継続的移行として現れる。そのためには, 骨盤と下肢の動きの正しい順序, 固有の運動のタイミングと筋収縮が必要である。一度歩行の自動性が失われると, 歩行の滑らかさと経済的エネルギー消費が大幅に障害される。これらの障害を完全に回復させることは不可能であるかもしれないが, 可能な限り正常に近く回復させることは, 我々PTの責務であろう。しかし, 実際の訓練において患者の機能を阻害し不能力性を高めるような歩行訓練が行われているのを多く見聞する。これは患者の機能障害の原因の分析が行われないで, 股関節の屈曲ができないから屈曲の訓練を行うなど, 現症状に対する訓練が行われているためであろうと思われる。障害を科学的データに基づいて客観的に分析し, 問題点を明らかにし, その問題点に応じた訓練手順を選択し, 正常に出来るだけ近づけるように努力することが大切である。今回, 抄録で示しているPNF法の歩行獲得訓練順序に従って, どのようにすれば正常歩行に近づけることができるのか, 私の経験に基づいて述べてみる。
  • 吉尾 雅春
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 600-603
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者に対する理学療法のあり方について, 多くの理学療法士がアピール, あるいは実践報告している。それらの中には豊富な臨床経験と注意深い観察に基づいて発想され, 我々に共感を与えてくれるものも少なくはない。神経生理学的アプローチや神経発達学的アプローチもその中のひとつである。それらが, 日本における中枢神経障害に対するアプローチをこの20年余りリードしてきたのは事実であり, その功績を否定するものではない。しかし, その多くは学問的に普遍化されておらず, 各方面からその効果については否定的な報告がなされている。特に, Bobathのいう神経発達学的アプローチに対する厳しい批判は記憶に新しいが, 違った見方をすると, それだけ多くの人が興味を持っているということでもある。目の前で今まで見たこともない変化を見せ付けられる。そこには, "事実" が存在している。即ち, 科学の原点であり, 素晴らしいことである。しかし, それは個々の症例であって, 集合的なデータとして数値で示されるものではない。患者も刻々と変化しながら我々の前に存在するために, そのことを数値として客観的に表わすことが困難である。技術的にも, そのような状態で行うアプローチであるが故に, 次にまた全く同じようにしようと思っても難しいし, ましてや他人が再現性をもってそのことを実施することは困難を極め, 普遍的であることが難しいということになる。個々の症例に言えたことが全体に共通して言えることも大切であり, そういうことが我々の過去の知識の基礎となっている以上, 個々の事象, 事実を説明していても, あたかも全体のものであるかのような錯覚に陥ってしまう。
  • 網本 和
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 604-607
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    脳損傷例の理学療法をすすめる上で, 高次脳機能障害の存在は極めて重要な意味を持つことは良く知られた事実である。この場合の『重要な意味』とは, 単に各々の症例の機能を低下せしめるという一般的側面だけではなく, 高次脳機能障害例の多彩な病態がその臨床的機能予後の科学的予測にたいして少なからぬ影響を及ぼしている(予測をおおいに誤らせる)ということである。このような高次脳機能障害例のなかでもとくに半側無視は, 極めて日常的に出現することに加え, 基本的な姿勢保持機構にかかわり結果として歩行能力を大きく規定する点で重要な徴候である。ここではまず半側無視の評価について述べ, 次に症例を提示しその治療アプローチについて考察する。
シンポジウムIII
  • ―臨床心理士の立場から―
    宮森 孝史
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 609-612
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    痛みは, 特殊な物理的刺激によって誘発される感覚神経パターンにより引起こされる体験であり, それはその体験の主体である個人の注意, 不安, 暗示性, 先行経験などの心理的要因によっても影響を受ける複雑な認知的, 情動的体験である。その意味からも, 日常臨床の中でさまざまなかたちで提供される患者からの痛みの訴えの背景に, またその痛みのマネージメントを考える際に心理的要因を考慮することの重要性は十分強調できることと言える。今回は, 著者が日常接することの多い脳卒中患者が訴える痛みとそれにまつわる問題について, 評価法, マネージメントの方法論を中心に心理的立場から論じてみたい。
  • 松島 雅子
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 613-616
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    今回「痛みに対するターミナルケア」のテーマでシンポジストを依頼された時, 私には遠大すぎると一時は御断りした。加えて今学会のテーマである「科学からのメス」とは程遠いものであり, 又科学性を重視すればターミナルケアは考えにくいものだからである。しかし当院ホスピスが日本で初のスタートであることから, 又私のつたない経験の中で患者さん及び家族の方々から学んだ事, 医師をはじめとする医療スタッフから教えられた事等を, 多くの方に知っていただきたい思いで御引き受けする事にした。内容については, 理学療法士(以下PTと略す)のワクから多少逸脱する事を御承知願いたい。
  • 辻井 洋一郎
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 617-621
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    理学療法には2種類の痛みの対応法があると考えてよい。ひとつは, 発痛原因が確認できないとき, "痛み"それ自体に対して行われる対応であり, もうひとつは発痛と思われる病態に対して行われる対応である。前者は発痛原因を取り除くための対応ではなく, 生理的な鎮痛系の痛覚変調による一時的な鎮痛を期待した対応方法である。後者は発痛原因を取り除くことを目的とした根治的な治療法である。ここでは臨床で最も頻繁に対応している疼痛疾患としての筋・筋膜性疼痛症候群を例としてとりあげ, 鎮痛系の働きを考えながら, 理学療法の治療目的について考察する。
  • 中山 彰一
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 622-625
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    一般的に痛みに対しては, 単独に運動療法が適用されることは極めて少なく, 多くは, 安静, 鎮痛剤投与や神経ブロック, 温熱・寒冷などの物理療法などと併用されているのである。このため痛みに対する運動療法の特異的効果の検証に当たっては, その客観的判定に困難性を生ずる点が一方では議論となろう。以上より, 本テーマについて言及することは, 極めて難しいが, 可能な限り文献的考察も含めて運動療法の特異的効果について述べてみたい。
シンポジウムIV
  • ―股関節屈曲拘縮の運動学的分析を通して―
    嶋田 智明, 武政 誠一, 講武 芳英
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 627-630
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    人間の身体が単なる機械と大きく異なる点は, それが実に精巧な代償機構を備えた自動制御装置であるという点である。つまり, 身体のどこかの関節に拘縮とか変形があっても, 実に巧みにそれを表面化させないように身体の他の関節あるいは姿勢そのものを変化させ, すなわちアライメントを変化させ, その障害をできるだけ表面化させないようにする。したがい, 我々が患者を観察し評価する際, 一局所の異常のみに目を奪われることなく絶えず患者の全体像を見つめる必要性がここにあるといえよう。そこで, この小論では股関節屈曲拘縮を例にそれが全身のアライメントや姿勢, 歩容にいかに影響するかを考察し, 骨・関節障害に対する科学的アプローチを考える上での一つの糸口としてみたい。
  • 灰田 信英
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 631-634
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    個体内でおこるシナプス形成現象は二つに分けて考えられる。第一は個体の発生・分化の過程で起こるシナプス形成である。第二はシナプス形成後に, とくに成熟固定で起こる新たなシナプス結合の誘導, あるいは再形成である。この過程ではシナプスの誘導あるいは再形成は何によって引き起こされるかが問題となる。そして, 標的細胞の活動状態でこれがどのように修飾されるかは, 神経組織の可塑性を考える上で重要である。本稿では, この問題について, 自験例に基づいて述べる。
  • 鶴見 隆正, 川村 博文, 辻下 守弘
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 635-638
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    多忙な臨床現場の中で関節可動域訓練(以下 ROM訓練)が実際にどのように行なわれ, その科学性をどのように感じているか, などについてアンケートを実施し, また ROM訓練時にどのような筋活動が生じているかを中心に電気生理学的な検討を行なった。
  • 岡西 哲夫
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 6 号 p. 639-643
    発行日: 1991/11/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    筋力増強訓練の方法は, 基本的には徒手筋力テストの結果を基にして段階的に進められる。しかし, 実際には筋力テストだけで訓練方法は決められない。例えば筋力は実際にあっても, 手術後や固定除去後に, 筋再教育が必要となる時, あるいは疼痛があって筋力が発揮できない場合など, 等尺性収縮運動や自動介助運動などが適用となる。一般に筋力増強訓練においては, Delormeの抵抗訓練が有用とされている。しかし, 実際には負荷の強さや, 収縮時間, 反復回数などについては経験的に決められることが多い。現在, 効果的な筋力増強法があるかどうか問題となるところである。この際, 視点を変えてみれば, 患者自身がいかに筋力を強化する仕方を正しく体得して訓練しているかが重要となる。筆者らはその手段として筋の疲労感を目安とした反復訓練法を徹底させたところ, 筋力ことに筋持久力増大に効果をあげた。さて, 下肢筋力の仕上げを考えた場合, 臥位や座位での訓練だけでは不十分で荷重下での訓練, いわゆる closed kinetic chainを利用した方法が, 下肢本来の機能からしてより重要であることが指摘されている。今回は, これらの下肢筋力増強訓練上の問題点について検討し, 筋力増強訓練の効果を如何にあげたらよいかを考えてみたい。
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