理学療法学
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18 巻, 5 号
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報告
  • ―運動耐容能評価としての有用性について―
    山崎 裕司, 山田 純生, 渡辺 敏, 前田 秀博, 大森 豊, 三好 邦達, 田辺 一彦, 岩崎 達弥, 榊原 雅義
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 467-472
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞症(MI)患者における,運動耐容能評価としてのAnaerobic Threshold(AT)の有用性について,従来から運動耐容能の指標として用いられてきた最高酸素摂取量(PeakVO2)と比較し検討を加えた。対象は心筋梗塞症患者25例で,年齢は58.7 ± 10.7歳である。発症後1・3・6ヵ月の各時点でトレッドミルによる運動負荷試験を施行し,peakVO2とAT(V-slope法)を測定した。ATの検出率は発症早期ほど低い傾向にあったが,1・3・6ヵ月でそれぞれ75%,80%,93%と比較的良好であった。ATとPeakVO2の推移はほぼ同様の傾向を示し,AT/PeakVO2は1・3・6ヵ月ともに約65%であった。ATとpeakVO2の相関係数は1・3・6ヵ月で,それぞれ0.80,0.83,0.78と良好な相関を認めた(p < 0.01)同様に1〜3ヵ月・3〜6ヵ月のATならびにpeakVO2の増分においても0.63,0.74と良好な相関を認めた(p < 0.02)。以上のことからATは急性期からMI患者の運動耐容能の指標として臨床に応用し得ると考えられた。
  • ―CYBEX machineを用いて―
    永井 聡, 大野 範夫, 山口 光国, 入谷 誠, 山嵜 勉, 扇谷 浩文
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 473-479
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    当院整形外科でChiari骨盤骨切り術または寛骨臼回転骨切り術を施行した症例(16例17関節,手術時年齢・14〜46歳,平均30.0歳)を対象に,CYBEX Ⅱを用いて股関節内・外転筋力の術後経過を調査した。その結果,外転筋力ピークトルク値は,術後6ヶ月から1年で術前値まで回復していた。しかし,外転位が大きくなる程,その位置での回復は遅延していた。内転筋力については,術後筋力低下することなく継時的に著明に増加していた。以上の結果から,術後徐々に正常な歩行へと獲得されていく過程で,歩容の改善には外転筋と共に拮抗筋である内転筋が関与していることが示唆された。
  • ―等速度測定による―
    高木 武二, 坂本 雅昭, 斉藤 明義, 本多 久賀子
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 481-485
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,腰痛の無い健常者の立位に於ける体幹筋について等速性運動測定による角速度に対する筋力を計ることである。
    等速性筋力計「Cybex TEF」を用いて健常者177名(男性98,女性79)の体幹筋力を測定した。測定速度は30・60・90・120・150 deg/secの5種類で行った。
    各測定速度間では,伸筋は男性が30 deg/secで女性は60 deg/secで,また屈筋では男女共に30 deg/secで最大値を示した。一方伸筋及びF/E比に於30 deg/secと60 deg/sec間では男女共に有意差は無かった。男性の屈筋は30 deg/secと60 deg/sec間に有意差を認めた。他方60 deg/sec以後は角速度が増すにつれて低下し,F/E比ではそれぞれ増加を示した。
  • ―利用者アンケート調査の分析―
    山本 和儀
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 487-495
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    1985年大阪府大東市では福祉事務所に理学療法課を設置し①0歳から高齢者に至るまでの全ライフステージに応じた地域リハビリテーションの計画と実施②行政・民間関係機関との連携と協働③市民啓発と参加により地域リハビリテーションを推進している。
    今回老人保健法に基づく40歳以上の本市リハビリテーションサービス利用者とその介護者に対するアンケート調査を実施し,事業の評価と今後の課題について検討した。
    利用者は男性54.7%女性45.3%で男性では60歳代女性では70歳代が多かった。家族構成は核家族の特徴が表れている。ADLは支障なくできるものから全介助の必要な者まで様々な人が利用し,外出が困難な人が多い。介護者は配偶者が多く,高齢であり,女性が多くを占めている。また,精神的,身体的に負担を感じている者が多く,健康状態も6割強の者が良くない。利用者の評価が高かったのは,気分転換,仲間づくり,生活の充実であり,介護者の評価も気分転換や仲間づくりが出来ることが高かった。今後望むものとして,送迎と訓練場所の増設と充実であった。
    今後の課題として,ADLの改善以上にQOLの充実にあり,双方を視野に納めたシステムの充実を図り,介護ボランティアグループ「606会」との協働をなお一層強める必要がある。また,セルフヘルプグループなど当事者組織の形成と主体化が望まれる。地域福祉としてのリハビリテーションサービスは,介護者を包含しつつ展開しなければならないし,今後益々広く関係機関と連携しながら草の根的に地域リハビリテーションの推進に取り組んで行きたい。
  • ―健側筋活動が及ぼす影響―
    後藤 伸介, 辛島 修二, 山口 昌夫, 勝木 道夫
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 497-501
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    脳卒中患者22名に対し健側下肢におもり負荷を与えることによって健側筋活動を行わせ,それによる患側下腿三頭筋の筋緊張の変化を健常者と比較検討した。筋緊張の評価は,筋を他動的に伸張した時の抗力を測定することによって行った。
    脳卒中患者の健側筋活動時の伸張抗力は,安静時に比べ有意に増加し,また,健側筋活動の量が多いほど伸張抗力も有意に増加した。しかし,活動中止後は,比較的早期に安静時に近い値となった。健側筋活動による伸長抗力の増加率は,脳卒中患者の方が健常者に比べ有意に大きかった。以上より,脳卒中患者は,健側筋活動を行うことによって患側筋緊張が増大することが示唆された。
  • ―学生評価のバラツキと実習継続性について―
    宮下 智, 関屋 曻, 川名 弘二, 浅田 春美
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 503-511
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    実習における評価基準,目標,継続性に焦点をあて,実習の問題点を探った。その結果,次のようなことが明確になった。①評価の際に,SVが注目するポイントのズレ,評価基準の不明確さ,目標設定方法の個人差がある。②評価を申し送ることについて,申し送る側と申し送られる側で考え方の差がある。③半数近くのSVに,「あくまで自分で学生を把握する」という傾向がある。
    これらの原因は,各実習期毎に明確に設定された行動目標がないこと,客観性の高い評価基準がないことがあげられる。このような状況の中で,学生は自己の目標に戸惑いを感じ,実習中には態度に最も注意するという傾向が認められた。我々は,各期に応じたステップを踏んでいけるような最低到達目標と,総括的,形成的要素を含めた評価表の検討が必要と考える。
  • ―X線学的分析を中心に―
    荒木 秀明, 坂本 三夏, 金澤 浩, 成尾 政圀, 小柳 英一, 浦門 操, 椎葉 睦生, 清水 貴子
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 513-520
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    従来,諸家により多くの腰痛体操が報告されているが,各々その科学的裏付けが乏しくかつ患者の病態に関わらず画一的に行われている傾向にある。今回我々は椎間板造影施行時に再現痛(daily pain)を得る椎間板性腰痛症と思われる患者を対象に,椎間板造影と脊髄腔造影の機能撮影像,さらに単純X線像から比較検討を行った。その結果,後屈時痛群と前屈時痛群で椎間板造影においてのみ全く逆の変化を示し,腰痛の発生には椎間板内圧に加え髄核の動きも何等かの影響が示唆され,腰痛の病態に応じた腰痛体操を指導する必要性が考えられた。さらにその結果を基礎に運動療法を患者群に施行し,全症例において良好な結果を得た。
  • 外山 治人, 岡西 哲夫, 梶原 敏夫
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 521-527
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    パーキンソン病患者に対する歩行訓練の効果を検討する目的で,パーキンソン病患者と健常人との体幹・下肢の筋活動及び重心移動を比較・検討した。パーキンソン病患者の筋活動は歩行時持続性の高い筋活動を認め,その際左右への重心移動は小さいことが分かった。そこで我々はこの持続性の高い筋活動が体幹を棒状化し重心移動を小さくすると共に足関節の固定化を招き,下肢の振り出しを困難にさせていると考えた。そして,このことがすくみ足・小刻み歩行を引き起こす要因であると推察した。この様な患者に対しリラクゼーションと1〜2Hzの音刺激に合わせた足踏み後歩行をさせると,体幹・下肢の筋活動は健常人の活動パターンに近づくと共に左右への重心移動は大きくなり,すくみ足・小刻み歩行が改善した。したがって1〜2Hzの音刺激に合わせた足踏みとりラクゼーションはパーキンソン病患者に対する歩行訓練に適していると考えられた。
  • 阿部 長, 柴田 元, 大塚 裕美, 白水 京子
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 529-533
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    慢性期脳卒中片麻痺患者のうち,患側下肢のBrunnstrom stage Ⅳ-Ⅴの15名の患者に積極的な下肢筋力強化訓練を行ない,筋力強化が歩行速度に及ぼす影響を検討した。
    測定項目は,左右の最大膝伸展力,10m最速歩行時間,重複歩長,歩行率であった。前半の2週間に従来の運動療法を施行したが,全ての指標は不変であった。その後2週間の積極的下肢筋力強化訓練を施行した結果,膝伸展力は健側・患側とも有意に増加し,重複歩長および10m歩行時間は有意に改善したが,歩行率は不変であった。
    これらの結果より,脳卒中片麻痺患者の一部において,積極的筋力強化訓練は両下肢において有用であり,重複歩長を増加させることにより,歩行速度は改善することが示唆された。
  • ―ターンバックル式装具の効果について―
    岡西 哲夫, 大橋 哲雄, 梶原 敏夫, 奥村 庄次
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 535-541
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    肘関節拘縮著明な6症例(骨折3例,授動術3例)に対し,他動的ROM訓練として徒手による方法と,ターンバックル式肘装具による方法を筋電図学的に検索した。他動的ROMの目的は,筋の防御的収縮を低下させ,結合組織の因子まで到達することにある。筋の防御的収縮の因子により制限されたものは徒手の方法であり,装具による方法は疼痛は少なく,この因子を比較的低下できた。ターンバックル式肘装具は,徒手では限界である弱い伸張力と長い時間の組み合わせと,ROMの長時間の保持等の利点から,訓練後のROMのもどりを減少できたものと考える。本装具は開始時期を従来より早め,使い方をきちんと教育すれば最も理にかなった方法と言える。
  • ―参加選手の競技成績と身体的特性の比較―
    大川 裕行, 緒方 甫, 高橋 寛, 小林 順一, 畑田 和男
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 543-547
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    1988年に行われた第8回大分国際車椅子マラソン大会に於て,競技成績と参加選手の身体計測値との関係について検討を行った。対象は,外傷性脊髄損傷者で上位50位以内でフルマラソンを完走した男性37名とした。大会開始1〜2日前にアンケート調査と体力医学的調査を行い,選手個人の身体的特性を求めた。得られた12項目の測定値を説明変数,秒単位のマラソン完走タイムを目的変数とし,多変量解析を用いて両者の関係を検討した。変数増減法による重回帰分析の結果,上肢長と肺活量から得られた回帰式が完走タイムを最もよく説明することが認められた。
  • ―健常者における検討―
    伊藤 浩充, 坂本 年将, 市橋 則明
    原稿種別: 本文
    1991 年 18 巻 5 号 p. 549-553
    発行日: 1991/09/10
    公開日: 2018/10/25
    ジャーナル フリー
    健常者59人を対象に下肢の機能的運動能力テスト(FAT)を行った。評価項目は,片脚8の字走・片脚段差昇降・片脚反復横跳び・片脚幅跳びの4項目である。さらに,膝屈伸筋力の測定をCybex Ⅱを用いて行った。FATにおいて,片脚8の字走・片脚段差昇降・片脚反復横跳びは,筋力との相関関係が小さかった。一方,片脚幅跳びは筋力との相関関係は比較的強かった。FATの各項目の測定値では,利き脚と非利き脚との差および性差が認められたので,利き脚と非利き脚の差の絶対値を求めることによって正常値を定める方がよいと考えられた。FATは,筋力だけでなく下肢の他の機能も反映している可能性も考えられるので,下肢の機能的運動能力評価として有効であると考えられた。
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