理学療法学
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25 巻, 1 号
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報告
  • ―半側視野図形呈示を用いた事象関連電位による研究―
    沼田 憲治, 中島 祥夫, 清水 忍
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    事象関連電位(Event related potential: ERP)P300により,図形認知の大脳半球優位性を検討した。健常者を対象に,左右いずれかの半側視野に呈示した図形に対する弁別課題中のERPをFz(前頭葉正中部)およびPz(頭頂葉正中部)から記録した。ERPのP300成分と,同時に記録した反応時間を呈示視野側間で比較した結果,Fz,Pzとも左視野呈示のP300潜時が右視野呈示に比べて有意に短かった。これは右半球が左半球に比べて視野認知過程に要する時間が短いことを示しており,図形認知における右半球優位性が支持された。
  • 大城 昌平, 横尾 佳奈子, 穐山 富太郎, 後藤 ヨシ子, 福田 雅文
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 6-13
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本論文は当院の低出生体重児に対する介入・療育アプローチを提示し,極低出生体重児を対象としてその効果について検討した。対象は極低出生体重児20例で,平均出生時体重は1022.8g,平均在胎週数は28.9週であった。これら対象児をコントロール群と介入実施群の2群に出生時期により分類した。コントロール群(8名)は介入・療育アプローチは行わず,介入実施群(12名)は在胎週数に換算して修正40週から44週の4週間,週3回の割合で全12セッション,1セッション30分程度の介入・療育アプローチを行った。効果判定の指標として2群の①修正44週時のブラゼルトン新生児行動評価の各クラスター値,②修正40週時と44週時のブラゼルトン新生児行動評価の各クラスター値の変化率,③修正12カ月時のベイリー乳幼児発達検査を用いた。その結果,ブラゼルトン新生児行動評価では介入実施群はコントロール群に比べて方位反応,運動調整,状態調整,自律神経系の調整の各クラスター値,及び補足項目の平均値で有意に改善を示した。また修正12カ月時のベイリー精神運動発達検査の精神発達指数と運動発達指数では2群間で有意差はなかったが,介入実施群はコントロール群と比較して,それぞれの指数で正常範囲まで達している児の割合が高かった。これらの結果から介入・療育アプローチが新生児行動の安定・組織化を図り,乳児期の発達を促すものと考えられた。
  • 盆子原 秀三, 阿部 幹子, 田中 麻里子, 川又 朋磨, 黒澤 尚
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    我々は運動療法が骨粗髭症に及ぼす影響について検討した。閉経後の骨粗髭症と診断され,運動を継続できた27名を対象として腰椎椎体骨塩量,背筋力,ADLにおける疼痛,健康に対する自覚症状について運動開始,6ヵ月目,1年目に調査した。1年目が開始時に比して背筋力に有意な増加が認められたが腰椎椎体骨塩量においては統計学的有意差は認められなかった。しかし,27名の内60歳以上の12名においては,背筋力,腰椎椎体骨塩量共に有意な増加が認められた。疼痛を主体とした能力障害の点数は,6ヵ月目に有意に減少が認められた。健康に対する自覚症状の変化としては,開始時より健康に対する関心度は高く,予防の意識づけによる訓練持続が,健康に対する意識を変化させた。
  • 奥田 哲也, 山田 順亮, 伊藤 宏樹, 渡辺 正樹
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 21-25
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    20歳代から80歳代の健常者222例に対して,10分間の90度他動的起立負荷による収縮期血圧(以下血圧と略す)の変動をオシロメトリック法を用いて検討し,起立による血圧変動を各年代,性別について解析した。仰臥位から起立することにより血圧は全般的に上昇した。しかし男性,特に50歳以上では起立直後(起立後1〜3分)に血圧が低下し,その後上昇する例が多かった。一方,女性では起立直後血圧が低下する例は少なく,10分間平均の血圧上昇程度も50歳以上では男性より大きかった。また男女とも起立から再び仰臥位に戻した直後に血圧が低下する傾向がみられた。起立時の血圧の変動を検討するには,年齢や性別を考慮する必要があると考えられた。
  • 笹崎 みちる, 関屋 曻
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 26-32
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    運動機能がピークとなる6歳前後のデュシャンヌ型筋ジストロフィー症における膝関節筋力の推移を把握すること,および筋力と立ち上がり動作との関係を明らかにすることを目的とした。15名のデュシャンヌ型筋ジストロフィー症児を対象とし,“ハンドヘルド筋力計”を用いて膝関節伸展力および屈曲力を1〜4年間測定した。立ち上がりの評価には5段階の評定法を使用した。膝関節伸展力は6歳頃ピークに達しそれ以降は減少した。また6歳〜7歳の時点で膝関節伸展力は高い群と低い群の2群に分かれ,低い群は高い群に比し障害の進行が早いと推測された。膝関節屈曲力には増減傾向が少なかった。膝関節筋力と立ち上がりとの関係では,伸展力低下と共に立ち上がりの明らかな低下を示した。
  • 柴田 恵, 辻井 洋一郎, 河上 敬介, 中村 美穂, 安藤 玲子
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    一般に,関節運動は表面電極を用いた筋電図学的研究により機能的側面に重点を置いて解析されることが多い。しかし,その解析では,一部の筋線維の活動がその筋全体の活動として捉えられる危険性が生じる。本研究では,多羽状筋と言われる三角筋の構造を形態学的に調査することにより,本筋が起こす肩関節の運動方向を検討した。ヒトの三角筋14筋を用いて,腱構造や筋線維走行などを調査した。その結果,中部線維は複雑な腱構造をしており,その構造により本筋を3型に分けた。起始腱4本,停止腱5本の型が8筋と最も多く,全筋で停止腱は起始腱より1本多かった。この起始腱と停止腱は中部線維内で交互に楔形状に位置しており,その筋線維は起始腱から停止腱へと螺旋を描くように走行することで多羽状を形成していた。前部および後部線維の筋線維束は比較的平行に走行し,三角筋粗面まで及ばず停止腱に付着していた。これらの結果から,中部線維の各走行部分が個別に作用すれば,肩関節の外転運動のみでなく回旋運動などにも関与することが示唆された。
  • ―北海道石狩・空知・後志保健福祉圏における調査から―
    佐藤 秀紀, 中嶋 和夫
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本調査研究は,65歳以上の在宅高齢者を対象に,要援護高齢者対策事業6項目(機能訓練,訪問指導,家庭奉仕員派遣事業,デイサービス事業,ショートステイ事業,老人日常生活用具等給付事業)の認知状況と人口学的要因,社会構造的要因,健康的要因の関連性の検討を目的とした。調査地域は,北海道「石狩・空知・後志保健福祉圏」とし,調査対象は,層化多段無作為抽出法により65歳以上の高齢者2,200名を抽出した。調査は調査員による留置法によって実施した。調査票が回収できた1,611名(73.2%)の中から,投入したすべての変数に回答がなされ,自記人となっていた934名の資料を分析した。統計解析には,主成分分析,一元配置分散分析,多重分類分析を用いた。その結果,要援護高齢者対策事業に対する高齢者の認知の程度が,性,教育歴,地域特性,活動能力に関連していることが示された。以上のことから,従来の行政広報誌にみられる周知型の情報提供のみならず,高齢者の特性に対応した情報体系の構築が必要なことが示唆された。
症例研究
  • 大谷 真由美, 柴田 利彦, 服部 浩治, 大久保 衞
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1998/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性で,上行大動脈置換術後に両側横隔神経麻痺を生じた。術後6週目より酸素投与下で歩行訓練を施行したが,横隔神経麻痺による呼吸筋不全のため,換気能力に低下が見られ,呼吸困難感が強く約10mで中断した。これを改善する目的で術後8週目よりポータブル型人工呼吸器装着下に歩行訓練を行った。労作時の換気がサポートされることにより呼吸困難感は軽減し,ポータブル型人工呼吸器装着直後に歩行距離は約30m可能となった。約2週間の訓練の結果,術後10週目には呼吸器から離脱し,同程度の運動能力が獲得された。これはポータブル型人工呼吸器の使用により換気不全が改善され,歩行訓練が効果的に可能となり,その結果運動能力が改善したと考える。
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