理学療法学
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25 巻, 6 号
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報告
  • 森岡 周, 宮本 省三, 高田 祐, 池田 武史, 日向 みどり
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 355-361
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,身体への重錘負荷が立位時重心動揺を減少させうるという仮説を検証することである。先行実験として,健常成人5名を対象に無負荷時立位および体幹,骨盤,足部に各々別々に体重の5,10,15%の重錘を負荷した立位の重心動揺(総軌跡長,矩形面積)を比較した。結果は,足部への10%重錘負荷条件が,無負荷時立位に比べ総軌跡長値,矩形面積値ともに最も減少させた。本実験としては,先行実験にて最も重心動揺を減少させた10%足部重錘負荷方法を用いて,健常成人30名と脳卒中片麻痺患者25名を対象に,無負荷時と10%足部重錘負荷時の2条件間の立位時重心動揺を比較した。その結果,健常成人,脳卒中片麻痺患者ともに総軌跡長値,矩形面積値,左右動揺標準偏差値,前後動揺標準偏差値の各パラメータにおいて無負荷時立位に比べ,10%足部重錘負荷時の値が減少し,2条件間には有意差がみられた。本実験結果から,身体への重錘負荷は立位時重心動揺を減少させることが判明し,中でも足部への重錘負荷が最も重心動揺を減少させたことから訓練方略としての可能性が示唆された。
  • 寺田 勝彦, 武田 芳夫, 福田 寛二, 田中 清介
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 362-367
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    人工股関節置換術後のトレンデレンブルグ徴候の出現の有無を,股関節外転筋・内転筋の筋機能から明らかにすることを目的とした。対象は当院で変形性股関節症の診断のもとに,人工股関節置換術を施行した35例39関節(トレンデレンブルグ徴候陽性18例20関節,陰性17例19関節)であった。術後8週時の股関節の筋機能を,等速運動機器で測定した。得られた筋トルク曲線より,筋力的要因として股関節内外転0°の外転筋・内転筋トルク値,また筋収縮的要因として外転筋・内転筋のピークトルク値までの立ち上がり時間の4指標を求めた。トレンデレンブルグ徴候陽性群および陰性群間には,外転筋・内転筋トルク値に差は認めなかった。しかし,トレンデレンブルグ徴候陽性群では外転筋の立ち上がり時間が有意に延長し,内転筋の立ち上がり時間が有意に短縮していた。また筋機能から,トレンデレンブルグ徴候陰陽性の判別の可能性を検討するために判別分析を行った。外転筋トルク値と立ち上がり時間の2指標だけでは,トレンデレンブルグ徴候陰陽性の判別は明確ではなかった。しかし,内転筋トルク値と立ち上がり時間を加えた4指標においてはトレンデレンブルグ徴候陰陽性の判別が明確で,39関節中36関節(92%)で判別可能であった。したがって,人工股関節置換術後のトレンデレンブルグ徴候の出現の有無は外転筋力の低下だけで判断できず,個々の外転筋・内転筋の筋機能として,両筋の力と立ち上がり時間の不均衡,すなわち瞬発力の不均衡によって引き起こされることが示唆された。
  • ―ラットのヒラメ筋におけるコラーゲンの生化学的分析―
    須釜 聡, 立野 勝彦, 灰田 信英, 濱出 茂治
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 368-375
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本実験の目的は,超音波照射と持続的伸張手技が足関節固定後のラットヒラメ筋コラーゲン線維に及ぼす影響を検討することである。ラットの左足関節を3週間固定後,無作為に超音波照射群,持続的伸張群,対照群に分けた。コラーゲンの測定はヒドロキシプロリン量を定量することにより行った。その結果,持続的伸張群と対照群の比較では全ての測定項目について有意差はなかった。超音波群と対照群の比較では超音波群のコラーゲン濃度の増加と酸可溶コラーゲンの割合の増加,不溶性コラーゲンの割合の減少を認めた。これらから,持続的伸張手技は固定後のヒラメ筋コラーゲン線維には影響を及ぼさないが,超音波照射はヒラメ筋のコラーゲン濃度および可溶性に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 田平 一行, 関川 則子, 神津 玲, 柳瀬 賢次, 中村 美加栄, 真鍋 靖博, 千住 秀明
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 376-380
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸不全患者の胸郭拡張差の特徴を明らかにするために,男性の慢性閉塞性肺疾患患者22名(COPD群),健常男性40名(健常群)について,体格,肺機能および胸郭拡張差を測定した。胸郭拡張差は腋窩部,剣状突起部,第10肋骨部の3部位で測定した。その結果,胸郭拡張差はCOPD群で全ての部位で低下していた。肺活量との相関はCOPD群では第10肋骨部が,健常群では剣状突起部が最も強かった。また,Hugh-Jonesの息切れ分類との関連も第10肋骨部で高い負の相関を認めた。COPDの病態より肺の過膨脹,横隔膜の平低化,呼吸筋の短縮などにより胸郭拡張差は低下しているものと考えられた。中でも第10肋骨部は,換気力学上横隔膜の機能と関連が強いため,肺活量や呼吸困難感とも高い相関を示したものと推察された。
  • 山崎 俊明, 立野 勝彦, 灰田 信英, 出口 恵美子
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 381-387
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    廃用性筋萎縮の回復過程に及ぼす運動負荷の影響を,運動持続時間の違いから検討した。ラット20匹(体重203〜227g)を各4匹の5群に分け,その内4群を実験群,1群を対照群とした。実験群には2週間の後肢懸垂により廃用性筋萎縮を惹起した。その後,懸垂をはずし2週間の回復過程とし,その間,1)通常飼育,2)1日10分運動負荷,3)30分運動負荷,4)90分運動負荷を実施した。なお,運動負荷はトレッドミルによる走行運動を週5日行った。分析はヒラメ筋を材料とし,組織化学的に行った。
    ヒラメ筋の相対重量比は,90分運動負荷群が他実験群より有意に大きかった。さらに,対照群とは差がなく,運動による回復を示した。しかし,筋線維タイプ構成比率および断面積は,実験群間に差はなかった。また,断面積の分布状況より,実験群のタイプⅡ線維で小さいサイズの線維群が観察され,一時的筋傷害の可能性が示唆された。以上より,廃用性筋萎縮の回復過程における運動負荷では,持続時間が一つの規定因子であるが,それのみでは効果を規定できないと考えられた。さらに運動負荷による効果と筋傷害の両面を考慮したプログラムの必要性が示唆された。
  • ―理学療法士の関わり及び有用性の検討―
    若杉 正樹, 中野 奈美, 千住 秀明
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 388-395
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    集団検診において高脂血症と診断された者に対し,運動指導・栄養指導を中心とした高脂血症教室(以下教室)を開催し,その前後での身体組成,体力測定,血液検査の変化から本教室の有用性を検討した。その結果,参加者の体重,Body mass index(BMI)が有意に低下し,体重あたりの予測最大酸素摂取量は増加傾向を示した。また総コレステロール,LDLコレステロールが有意に低下した。以上の結果より本教室は血清脂質のコントロールに対し有用であったと考える。
  • 川村 博文, 伊藤 健一, 山本 昌樹, 山本 博司, 石田 健司, 下保 訓伸, 鶴見 隆正, 辻下 守弘
    原稿種別: 本文
    1998 年 25 巻 6 号 p. 396-401
    発行日: 1998/09/30
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は疼痛症状とQOLを包括的に把握するためのpain scaleを試作し,より良いpain scaleを開発し臨床応用することである。試作pain scaleは多種多様な疼痛の状況と疼痛に関わるQOLを把握するためのもので,疼痛状況は 1)疼痛の強さの程度,2)疼痛の性状,3)疼痛の持続時間,4)一日の疼痛出現頻度,5)疼痛の出現時間帯の5項目で,QOLは 1)睡眠状況,2)食欲状況,3)気分,4)服薬状況,5)就労状況の5項目である。試作したpain scaleは疼痛を伴う105症例に対して測定を行ない検討を行った。再検査法(r=0.92),折半法(疼痛状況: α=0.49,QOL: α=0.64)でpain scale全体の信頼性,再現性,妥当性があることを確認した。平行テスト法でpain scaleとVASとの相関(疼痛状況vs VAS: r=0.4,QOL vs VAS: r=0.56)が認められ信頼性があることが確認できた。重回帰分析を行った結果,疼痛状況に関連のあるQOLは服薬状況(β=0.252),気分(β=0.229),睡眠状況(β=0.206)(R2=0.54)であり,さらに服薬状況に関連のある要因は食欲状況(β=0.258),就労状況(β=0.221)(R2=0.4)であることがわかり段階的に疼痛とQOLとの密接な関係をとらえることができた。このようにpain scaleに対して多角的な分析を繰り返し行う中で我々が試作したpain scaleの信頼性が高く,臨床応用する上で利用価値の高いことが判明した。
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