理学療法学
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26 巻, 1 号
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原著
  • 高橋 哲也, Jenkins Sue, Strauss Geoff, Watson Carol, Lake Fiona
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(Chronic Airflow Limitation; CAL)患者は上肢運動によってしばしば息切れを訴える。しかし,CAL患者の上肢運動耐容能やさまざまな治療の効果を客観的に評価するための標準的な上肢運動負荷試験はない。本研究では,9人のCAL患者(平均年齢61.6歳,平均1秒率40.0%)を対象に,我々が独自に考案した非支持かつ動的な漸増運動負荷試験(Unsupported Incremental Upper Limb eXercise test; UIULX test)から得られる運動継続時間,呼吸循環反応,息切れ感,および主観的運動強度の再現性を検証した。症候限界性のUIULX testはプラスチック製の棒を一定の早さ(30rpm)で股関節の位置から各レベルへ持ち上げる運動で,1分間に15cmずつ運動の高さが漸増するプロトコールを使用した。最高運動高度レベルで運動を終了できた場合は棒の重さを1分毎に重くした。3回のUIULX testの結果,級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient; ICC)は運動継続時間0.976,最大酸素摂取量0.954,最大二酸化炭素排出量0.954,最大分時換気量0.957,最大呼吸数0.950,最大1回換気量0.934,最大心拍数0.914と高い再現性が認められた。また,それら変数の増加パターン,さらに運動終了時の上肢筋の主観的運動強度,息切れ感にも高い再現性が認められた。よって,UIULX testはCAL患者で毎回同程度の呼吸循環反応や主観的運動強度を引き出すことができることが証明されたが,臨床応用にはUIULX testの妥当性の検討が必要である。
報告
  • 井澤 和大, 山田 純生, 黒澤 保壽, 山崎 裕司, 田辺 一彦, 長田 尚彦, 村山 正博
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 9-13
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    退院早期に自動車運転を希望した急性心筋梗塞(AMI)患者26名を対象に自動車運転時心血管反応を検討した。発症後4〜5週間目に心電図伝送システムを用い,2回における運転中の心電図,心拍数を常時監視し,16名に携帯型自動血圧計にて血圧を測定した。1)運転時心電図変化をHolter心電図,心肺運動負荷試験および嫌気性代謝閾値(AT)レベル運動療法中の心電図変化と比較検討した。2)16例について,運転中の収縮期血圧,心拍数および二重積の最高値を初回,2回目運転時,および運動療法中と比較検討した。その結果,1)運転時と運動療法中,運動負荷試験およびHolter心電図からみた心電図の検討では不整脈,虚血性変化の発現頻度はいずれも差を認めなかった。2)初回運転時の心拍数は2回目に比較し差がなかったが,初回運転時の収縮期血圧は有意な高値を示した。また,二重積は高値傾向を示したが有意ではなかった。3)運転時の心拍数,二重積は運動療法中に比べ有意な低値を示した。以上のことから二重積より見た心負荷は初回運転時は2回目に比較し高値傾向を示すが,運動療法中の心負荷値より低くHolter心電図,運動負荷試験,運動療法中において異常心血管反応を認めない症例に対しての早期運転は許可出来ると考えられた。
  • 諸角 一記, 今井 英輝, 西谷 拓也, 安田 明正, 江渡 良子, 藤原 孝之
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 14-16
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢者が用いる義歯の有無が身体運動にどのように影響するのかを明らかにすることである。健常高齢者11名,平均年齢75.1歳(66〜94歳)を対象として,義歯有り咬合,義歯無し咬合の2項目において握力と棒反応時間を測定した。それらの結果から,握力は義歯有り咬合に対して義歯無し咬合が有意に減少した(義歯有り咬合 : 平均26.8kg,義歯無し咬合 : 平均25.6kg)。棒反応時間では有意差は認められなかったが,義歯有り咬合に対して義歯無し咬合で反応時間が延長し握力と同様の傾向を示した。このことより,高齢者の義歯の有無が一部の身体運動に影響を及ぼすことが示唆された。
  • 結城 俊也
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本稿の目的はマスメディアにおける理学療法士の取り扱われ方を調査することにより,社会的存在としてどのように認識されているかにつき検討することにある。対象は読売,朝日,毎日の3新聞とし,対象期間は1990年〜1995年の6年間とした。日本経済新聞社データベースを用い,理学療法士の登場する記事の検索を行った。総記事数398件を8項目(①「看護・介護」②「病院・老人ホーム・老人保健施設等の新規開設」③「地域リハビリテーション」④「障害児保育」⑤「教育」⑥「スポーツ」⑦「治療」⑧「その他」)に分類し,その特徴につき分析した。その結果,記事数全体の年次推移は増加傾向を示した。項目別では「地域リハビリテーション」が34%と最も高率であった。それに対し「治療」は9%と低調であった。また「スポーツ」は1994年より記事数が増加してきた。今回の調査により,理学療法士に対する社会の期待,関心は地域における活躍に集まっていることが示唆された。
  • 平田 晃久, 伊賀崎 伴彦, 村山 伸樹, 川上 修, 堺 裕, 野口 ゆかり, 伊藤 多枝子, 音成 龍司
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    運動関連電位を運動疾患患者に臨床応用するために,外部刺激誘導法による運動関連脳電位の簡便な測定法を考案し,これを用い,20-79歳からなる30名の正常人における歩行時の運動関連脳電位を測定した。時計の針が,9時の位置より12時の位置まで5秒間で連続して動く。被験者は時計の1.5m前に立ち,時計の針が12時の位置を指すのを合図に2歩あるく。時計の針が12時の位置を指したときを歩行開始時とし,その前後で脳波を記録した。そうして得られた加算平均波形から,歩行せずに時計をみているときの加算平均波形を引算した波形を外部刺激誘導法による歩行時の運動関連電位とした。準備電位(Bereitschaftspotential,BP)は全例より記録され,立ち上がりの平均潜時は1082 ± 320msecであった。時計の針が12時の位置を指したときの平均振幅は7.8 ± 3.6μVで,加齢に伴い増加する傾向を認めた。21名からNegative slope(NS')が認められた。NS'の平均開始時潜時は501 ± 175msecで,その出現頻度は加齢により増加した。運動前電位は単純動作より複雑動作の方が,NS'が明瞭となり、運動開始時の振幅が増加すると報告されていることから,今回の結果から歩行は加齢に伴い単純から複雑動作へと変わると考察できる。
  • 田頭 勝之, 熊 明子, 森下 佳代, 紀伊 美枝, 節安 寿美恵, 青木 英次, 一色 知子
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    現在,老人保健施設は長期入所傾向を示しており,家庭退所促進のため,試験外泊などの取り組みが行われている。本研究は,老人保健施設入所者の外泊状況を調査し,外泊時介護負担に関連する要因を明らかにすることを目的とした。外泊時介護を負担に感じた258名の負担群とし,負担と感じない68名を非負担群として両群を比較した。数量化II類による分析の結果,外泊時介護負担は,問題行動の有無,補助介護者の有無,退所先,介護者自身の介護希望場所などの因子と関連していた。介護負担は退所先にも影響を及ぼしており,介護負担の軽減には,痴呆や問題行動への対応や,介護力の補完などの必要性が示唆された。
症例研究
  • ―運動療法と舌根沈下防止装具の併用―
    佐藤 昌代, 金子 断行, 砂野 義信
    原稿種別: 本文
    1999 年 26 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1999/01/31
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児・者の上気道閉塞性呼吸障害は,下顎後退・舌根沈下による中咽頭の通過障害が一因である。下顎後退,舌根沈下による上気道閉塞性呼吸障害の症状を呈した重症児に対し,運動療法を施行し,胸郭呼吸運動の改善をみた。運動療法効果の持続と気道確保のため舌根沈下防止用装具を試作した。装具装着により,閉塞性無呼吸数の減少,脈拍数の減少,動脈血ガス値の改善を認めた。運動療法と装具の併用が本児の呼吸機能の改善に繋がったと考えられる。
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