理学療法学
Online ISSN : 2189-602X
Print ISSN : 0289-3770
ISSN-L : 0289-3770
29 巻, 5 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
報告
  • ―肩関節と膝関節の負担の比較―
    相馬 俊雄, 百瀬 公人, 山本 澄子, 大西 秀明, 大山 峰生, 曾津 加代子, 伊橋 光二, 市江 雅芳, 半田 康延
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 5 号 p. 143-151
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,通常指導される「健脚昇り,患脚降り」と,その逆の「患脚昇り,健脚降り」での肩関節と膝関節の関節モーメントを算出し,身体に負担の少ない段差昇降動作を検討することである。対象は健常成人10名であった。運動課題は右下肢を健脚,左下肢を患脚と想定した昇降動作であり,健側上肢でロフストランド杖(L杖)を用いて患脚に体重の2/3以下の部分荷重を維持したまま,2種類の昇降動作を二動作二足一段で行った。動作中の肩関節内転,肘関節伸展および膝関節伸展モーメントは三次元動作解析装置と床反力計を用いて算出し,そのピーク値を求めた。さらに等尺性随意最大肩関節内転と膝関節伸展モーメントの値を基準にして,動作中の各関節モーメントを正規化して比較した。その結果各関節モーメントのピーク値を比較すると,昇り降り動作ともに膝関節伸展モーメントでは「健脚昇り,患脚降り」が,肩関節内転モーメントでは「患脚昇り,健脚降り」が有意に大きな値を示した。肘関節伸展モーメントでは有意な差は認められなかった。次に最大関節モーメントに対する相対値を比較すると,「患脚昇り,健脚降り」の肩関節内転モーメントが昇り動作では75.2%,降り動作では90.2%と有意に大きかった。以上より,「患脚昇り,健脚降り」で動作を行うと肩関節内転モーメントの相対値が非常に大きくなり,動作の遂行が困難になると予想される。よって,L杖を使用した昇降動作の指導を行う場合,一般的に指導されることが多い「健脚昇り,患脚降り」の方が身体の負担が少ないことが力学的解析からも裏付けられた。
  • 村上 雅仁, 加藤 順一, 山辺 裕, 谷崎 俊郎, 平山 昌男, 岩橋 正典, 横山 光宏, 永田 安雄, 細川 晃代, 古川 宏
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 5 号 p. 152-155
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    自転車エルゴメータによるトレーニングが脳血管障害片麻痺患者の回復期リハビリテーション期において運動耐容能と運動エネルギー効率を改善させうるか否かについて検討を行った。対象は,当センターに入院した歩行可能な脳血管障害片麻痺患者20名とした。対象患者に対して通常の理学療法に加えて入院時に測定したAnaerobic Thresholdレベルの運動強度での自転車エルゴメータによるトレーニングを1日に20分間,週に5回,8週間行った。入院時と理学療法8週間後の最大酸素摂取量と最高負荷量,時定数,酸素欠損を比較すると有意な改善が認められた。歩行可能な脳血管障害片麻痺患者において自転車エルゴメータによるトレーニングにより,末梢運動骨格筋の代謝の改善が得られ運動効率が改善したと考えられた。また,低負荷定常負荷試験による時定数と酸素欠損を運動能力の指標にすることが有用であると示唆された。
  • 寺西 利生, 水野 雅康, 岡西 哲夫, 才藤 栄一
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 5 号 p. 156-159
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    関節トルクの測定は,筋力測定として,現在まで数多く行われてきた。しかし,臨床場面では患者の実際の作業能力と関節トルクの改善は直結しない場合も多い。本研究の目的は,作業負荷シミュレータを用いて対象物に対して及ぼすことのできるトルクを測定し,その臨床的応用の前段階として,健常若年者の上肢トルクの平均値を求めるとともに,その信頼性を検討することである。対象は,右利きの健常成人49名であった。作業負荷シミュレータを用い,4種類のアタッチメントに対して与えうる等尺性最大トルクを測定し,平均値を得た。また,信頼性の検討として,2週間後に同一の計測を行い,ICC(1,1)を用いて検討した。その結果,全ての課題で利き手のトルクは非利き手に比較し同等または大であった。また,各アタッチメントの全ての課題において左右のトルク値は高い相関を示した。加えて,ほとんどの課題で,良好な再現性が得られた。
短報
  • 佐々木 誠
    原稿種別: 本文
    2002 年 29 巻 5 号 p. 160-163
    発行日: 2002/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    従来の立位重心動揺測定は膝関節伸展位で行われており,膝関節屈伸運動を伴う立位での動作や移動を直接には反映していない。そこで,膝関節屈伸運動時の足圧の作用中心点(以下,COP)を特定するために,若年健常者27名を対象に,スクワット動作時のCOPのフォースプレートによる測定再現性と特性について検討した。級内相関係数(ICC1,1)は,総軌跡長(LNG)とY(前後)方向最大振幅(YD)で0.6を上回り,X(左右)方向最大振幅(XD),矩形面積(REC AREA),X(左右)方向動揺平均中心変位(DEV OF MX)で0.6を下回った。従来の重心動揺測定のパラメータとの関連を検討した結果,静止立位条件と相関のあるパラメータがあったが,関連性は必ずしも強くはなかった。また,スクワット動作時のLNGとCross TestのREC AREAとの間に示された関連は弱かった。以上より,健常者におけるスクワット動作時のCOPは,LNGと前後成分で再現性が示される一方で,左右成分およびREC AREAで冗長性が示され,静止立位での側方不安定性に起因する動揺性を反映するが,その関連性は必ずしも強くはなかった。従来の測定でのパラメータとの間に相関を認めなかったパラメータが多かったことからも,本COP測定によって新たな情報が提供される可能性が示唆された。
feedback
Top