理学療法学
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31 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
報告
  • 大畑 光司, 市橋 則明
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 283-290
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    歩行障害を有する患者に対する体重免荷装置を用いたトレッドミルによる歩行トレーニングが開発され,近年,その有効性について多く報告されてきている。このトレーニングの特徴は歩行時の床反力を減少させるだけでなく,必要なエネルギー消費を少なくすることができることである。しかしこのときの下肢筋の筋電図学的特徴については一致した見解に至っておらず,詳細は不明である。本研究の目的は,体重免荷歩行を行ったときの下肢筋活動を測定し,免荷量の増加による下肢筋活動の変化を明らかにすることである。健常成人10名を対象とし,トレッドミル上を時速4kmで歩行させた。全荷重歩行およびハーネス式の体重免荷装置を用いた歩行(10〜50%免荷)を行わせ,このときの筋電図を記録した。測定筋は大腿直筋(RF),内側広筋(VM),外側広筋(VL),半膜様筋(SM),大腿二頭筋(BF),前脛骨筋(TA),内側徘腹筋(GC)とした。一歩行周期の筋活動量の平均値において,荷重量の減少に伴って有意に減少した筋はRF,VM,VL,GCであった。逆にSMでは有意な増加を示した。SMの増加は,重力による加速度が減少して歩行の推進力が得られにくくなるために,代償的に働いたのではないかと考えられ,体重免荷歩行トレーニングが垂直方向への免荷に働くだけでなく,水平方向の推進力に対して抵抗として働く可能性があることが示唆された。
  • 小牧 隼人, 柴 喜崇, 大淵 修一
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 291-295
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    健常成人30名を対象に,下肢伸展挙上(SLR),大腿四頭筋セッテイング(QS)が内側広筋斜頭(VMO)の筋力増強トレーニングに適しているのか,各種目における筋放電を最大等尺性収縮時の筋放電で除して100を乗じた%MVC,外側広筋(VL)に対するVMOの比(VMO/VL比)から検討した。さらに,VMO/VL比の増大を目的として内転筋群に対して5,10kgの重錘を用いた抵抗を与え,その影響も調べた。SLRにおけるVMOの%MVCは最大でも10kgの重錘を用いた際の16%であり低値を示した。一方,QSにおける%MVCは60%を超えていた。SLRにおいては,内転筋群に抵抗を加えても,VMO/VL比に変化はみられなかった。しかし,QS時のVMO/VL比は抵抗により有意に増大し,SLRよりも有意に高値を示した。%MVC,VMO/VL比の両側面からVMOの筋力増強トレーニングとしてSLRよりもQSの方が有効であることが示唆された。
  • 河辺 信秀, 上甲 哲士, 松波 優一, 山坂 奈奈子, 田伏 友彦, 廣瀬 典子, 庄田 昌隆, 石井 當男
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 296-303
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    近年,糖尿病性足部潰瘍を原因とする下肢切断が増加している。我々は,糖尿病性足部潰瘍の危険因子である足底圧異常と,足底脱脂に及ぼす装具療法の効果を検討した。対象は,知覚神経障害が認められた2型糖尿病患者12例23肢である。全例に装具を作製し,非装着時と装着時に足底圧計測と歩行能力の評価を行い,さらに,装具装着継続が足底脱脂に及ぼす影響を調べた。また,脱脂の改善度により2群に分類し,足底圧を比較した。装着時に最大足底圧,前足部と鍾部の最大圧が有意に減少した。前足部最大圧に対する足趾部最大圧の比は有意に上昇し,圧分布異常が改善した。最大足底圧部位が前足部に存在する例は装着時には減少した。歩行能力には有意な変化はなかった。装具療法前,足底脱脂は9例(17肢)に認められ,すべて前足部に存在していたが,装具療法を148.3 ± 50.5(mean ± SD)日間継続した場合,2肢で「消失」,11肢で「改善」,および4肢で「変化なし」と判定された。「悪化」の例はなかった。「消失」,「改善」を改善群,「変化なし」を非改善群として比較した場合,非改善群では改善群に比べ最大足底圧が高く,これが脱脂の治癒を妨げたと推測された。以上の結果から,装具装着は足底圧を軽減し,かつ圧分布異常を改善し,そして足底脱脂を予防しうることが示唆された。装具療法は糖尿病性足部潰瘍に対する予防効果を発揮すると考えられる。
  • ―関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルによる検討―
    西田 まどか, 沖田 実, 福田 幸子, 岡本 直須美, 中野 治郎, 友利 幸之介, 吉村 俊朗
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 304-311
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,関節固定法と後肢懸垂法を組み合わせたラットの実験モデルを用いて,持続的伸張運動と間歇的伸張運動が拘縮と筋線維におよぼす影響を検討した。Wistar系雄ラット17匹を対照群3匹と実験群14匹に分け,実験群は両側足関節を最大底面位で固定した上で後肢懸垂法を2週間行った。また,実験算は固定のみの群(固定群,4匹),固定期間中に麻酔下で毎日30分間,ヒラメ筋に持続的伸張運動を実施する群(持続群,6匹),同様に間歇的伸張運動を実施する群(間歇群,4匹)に分け,実験終了後は足関節背面角度とヒラメ筋の組織病理学的変化を検索した。足関節背面角度は持続群,間歇群が固定群より有意に高値を示したが,この2群のヒラメ筋には著しい筋線維損傷の発生が認められた。よって,持続・間歇的伸張運動ともに本実験モデルの拘縮の進行抑制に効果的であるが,ヒラメ筋に対しては悪影響をおよぼすことが示唆された。
  • 成田 寿次, 内山 覚, 山口 勇, 荒畑 和美, 亀田 英俊
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 312-318
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,高齢整形外科患者における歩行の変化(回復過程)を安定性の指標である変動係数を用い,歩幅・一歩時間について調査することである。対象は,理学療法を施行した高齢整形外科患者11名とした。測定方法は,自由歩行速度で行い,フットプリント方式にて歩幅を1mm単位で計測した。一歩毎の時間は,フットスイッチを用いサンプリング周波数1KHzで計測した。測定時期は,1回目は,術後もしくは受傷後,歩行が介助なしの2動作になった時,2回目は,退院直前に実施した。歩幅の変動係数の変化は,1回目に比較し,2回目は7名が減少,4名が増加を示していた。結果的に歩幅の変動係数は、2回目において,全例か10%以下であった。一方,一歩時間の変動係数の変化は,相対的に大きな変動を有しており,一定の傾向は認められなかった。今回の結果としては,高齢整形外科患者の歩行における距離因子(歩幅),時間因子(一歩時間)の回復過程が異なることが示され,必ずしも両者が同期するものではないことが示唆された。
  • ―人工股関節置換術後患者での測定―
    黒木 裕士, 森永 敏博, 池添 冬芽, 大畑 光司, 家城 弘, 濱 弘道
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 319-324
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,空気圧を利用した部分荷重トレッドミル歩行が消費エネルギーに及ぼす影響について検討することである。人工股関節置換術後患者5名を対象に時速1.5kmで全荷重(FWB)歩行,2/3荷重(2/3PWB)および1/2荷重(1/2PWB)設定での歩行を実施したところ,最大足圧はそれぞれ体重値の105.6%(FWB),73.0%(2/3PWB),61.0%(1/2PWB)であり,部分荷重設定で有意に減少した(p < 0.001)。また部分荷重設定で酸素摂取量は有意に減少した(p < 0.001)。このことから本装置では概ね目標とする荷重値を得ながら消費エネルギーを軽減して歩行補助を実現しているものと推察された。
短報
  • ―所要時間と動作過程の分析―
    対馬 栄輝
    原稿種別: 本文
    2004 年 31 巻 5 号 p. 325-327
    発行日: 2004/08/20
    公開日: 2018/09/25
    ジャーナル フリー
    背臥位から立ち上がる動作においては,背臥位の頭側を向いた立位(頭側立位)または背臥位の足底側を向いた立位(足側立位)となる2通りの方法がある。これらの所要時間の差および動作パターンの特徴を検討した。対象は健常人42名とした。被検者に頭側立位と足側立位となる方法で交互に立ち上がらせて所要時間を測定し,またビデオカメラで動作パターンを撮影した。その結果,所要時間は頭側立位(平均2.6 ± 0.4秒)よりも足側立位(平均2.3 ± 0.5秒)が有意に速かった。頭側立位のパターンは27名が「背臥位―片肘立ち位―高這い位―立位」,15名が「背臥位―長坐位―しゃがみ位―回旋を伴う立ち上がり」を示し,足側立位では全被検者がしゃがみ位を介して立ち上がった。立ち上がり動作の所要時間を測定するときには,立位の向きを統一して行わせる必要があり,特に頭側立位で行わせる場合には動作パターンの特徴を分析することも必要であると考えた。
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