理学療法学
Online ISSN : 2189-602X
Print ISSN : 0289-3770
ISSN-L : 0289-3770
32 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
報告
  • 橋立 博幸, 内山 靖
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 59-65
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    福祉サービスを利用している高齢者を対象に,パフォーマンステストの1つであるTimed “Up and Go” Test(TUG)について,歩行距離と速度指示を異なる計測条件に設定して施行し,検査結果と再現性に及ぼす影響を検討するとともに,その臨床的意義を明らかにすることを目的とした。対象は通所サービスならびに施設入所サービスを利用する高齢者81名(平均年齢80.1 ± 8.5歳)であった。TUGは歩行距離が3mおよび5m,速度指示が至適速度および最大速度の計測条件を組み合わせて,同一日内に2回ずつ実施して再現性を検証した。また,障害の階層構造を示す指標との関連性を比較した。TUGは検査方法が異なった場合に得られる計測値そのものが変化するため,既存の基準値を参照する場合には計測条件を厳密に照合することが必要であった。TUGの再現性は総じて高かったが,至適速度によって計測する場合,歩行距離の延長によって低下する可能性があった。また,TUGは機能的制限,活動制限,参加制約を表すいずれの指標とも相関するが,階層が上がるとともに相関係数が低下したことから,特定の場面で発揮されるパフォーマンスは,加齢,知的機能によって環境因子の影響を受けやすくなり,活動性や社会参加に反映されることが示唆された。
  • 笠原 良雄, 道山 典功, 出倉 庸子, 小森 哲夫
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 66-71
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    35名の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対して呼吸機能評価(肺活量 : VC,最大吸気圧 : PImax,最大呼気圧 : PEmax,最大呼気流速 : PCF)を行いその経過を分析した。全ての検査結果は経過と共に低下する傾向が示された。初回評価時の%肺活量(%VC)は他の呼吸機能検査と相関し,また経過中の1ヵ月単位での%VC変化率も同様に他の指標の変化と相関した。評価期間中に11名が非侵襲的換気(NIV)を,8名が気管切開による侵襲的換気(TV)を受けていた。%VC変化率/月は,自発呼吸期間では平均-5.2%であったが,NIV使用期間では-2.2%となり,NIVにより%VCの低下速度が緩和される傾向があった。%VC25%以下まで自発呼吸を継続した14名は,その変化のパターンから以下の4パターンに分けられた。A群 : 発症後1〜2年の間に急激に低下する(%VC変化率/月 = -18.32%)。B群 : A群ほど急激に低下せずにほぼ直線的に低下する(%VC変化率/月 = -5.99%)。C群 : 発症後4〜5年は%VC50%程度でほぼ一定のレベルを維持しその後急に低下する(%VC変化率/月 = 前半0.07%,後半-11.66%)。D群 : 発症後8年以上経過しても%VC25%以上を保ちゆっくりと低下する(%VC変化率/月 = -1.95%)。%VCの経時的変化はその後の経過を予想する一つの判断材料になると考えられた。また,対応が後手に回らないためにも定期的な呼吸機能評価(特にVC)が重要と考えられた。
  • 渡辺 敏, 井澤 和大, 小林 亨, 小林 智子, 横山 仁志, 近藤 美千代, 大宮 一人, 菊地 慶太, 幕内 晴朗
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 72-76
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    大動脈瘤人工血管置換術後リハビリテーションは,早期離床や早期ADLの再獲得に向け独自の手術後プログラムを実施している施設が増加している。しかし手術部位別のプログラム進行度やADL阻害因子について詳細に検討した文献は少ない。今回十分な症例数ではないが上行大動脈から弓部大動脈置換術7例,胸部下行大動脈置換術4例,腹部大動脈置換術23例を対象に,手術部位別のプログラム進行度とADL阻害因子を検討した。手術後の椅子座位開始平均日数 ± 標準偏差は上行大動脈から弓部大動脈置換術10.6 ± 5.3日,胸部下行大動脈置換術5.0 ± 1.0日,腹部大動脈置換術3.0 ± 1.1日であった。手術後退院までの平均日数 ± 標準偏差は上行大動脈から弓部大動脈置換術44.9 ± 18.1日,胸部下行大動脈置換術31.7 ± 20.6日,腹部大動脈置換術22.6 ± 18.9日であった。上行大動脈から弓部大動脈置換術は手術後の病態管理や残存解離腔の管理がADL阻害因子であった。胸部下行大動脈置換術は手術後胸水の管理がADL阻害因子であり,腹部大動脈置換術は食欲不振などの消化器症状がADL阻害因子であった。
  • 古川 裕之, 大久保 吏司, 木田 晃弘, 戎 健吾, 中路 教義, 藤田 健司, 伊藤 浩充, 石川 齊
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 77-82
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    反復性肩関節脱臼と診断されたスポーツ選手を対象に,肩関節における低速域から高速域までの等速性筋力を測定し,高速域での筋力測定の有用性を検討した。対象は,スポーツ疾患群として,肩関節の術前スポーツ選手13名,健常群として,肩関節に既往のない健常者12名とし,等速性筋力測定装置(Biodex Multi-Joint System)を用いて,肩関節外転90°,肘関節屈曲90°での肩関節内外旋運動(以下2nd内外旋)と,前額面上における肩関節外旋位,肘関節伸展位での肩関節内外転運動(以下内外転)を,角速度60°/sec,180°/sec,360°/secにて測定した。結果,スポーツ疾患群の2nd内旋筋力がすべての角速度で有意に低下しており,その内外旋筋力比から回旋筋群の機能低下が推測された。また,内外転運動において,60°/sec,180°/secでは筋力低下が認められなかったが,360°/secでは外転および内転筋力の両者に有意な低下が認められた。トルク値を体重で除したトルク体重比においても,180°/secでは外転筋力のみ筋力低下が認められ,360°/secでは外転および内転筋力の筋力低下が認められた。以上より,高速域での筋力測定により,従来の低,中速域での測定では健常者とほぼ同等の筋力を発揮できるものの中にも,高速域では筋力低下を示す者がいることが示唆された。
  • 横井 輝夫, 櫻井 臣, 北村 恵子, 岡本 圭左, 北川 幸子, 加藤 美樹, 長井 真美子, 近藤 千秋, 水池 千尋
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 83-87
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,痴呆性高齢者の痴呆の重症度とADLの項目別難易度との関連を明らかにすることである。対象は,介護老人保健施設に入所している65歳以上の要介護高齢者145名(平均年齢83.2 ± 7.7歳)である。方法は,痴呆の重症度は「行動観察による痴呆患者の精神状態評価尺度」(NMスケール),ADLの項目別難易度はFIMの運動項目の自立度を用いて評価した。その結果,痴呆の重症度と「浴槽,シャワー移乗」「階段移動」以外の11項目の自立度との間で有意な関連が認められた。これら11項目の自立度と痴呆の重症度間での比較では,痴呆を有さない正常境界群に対し軽症群で有意な低下が認められた項目は存在せず,軽症群に対し中等症群では8項目,中等症群に対し重症群では9項目で有意な低下が認められた。また,自立度の順序性は,正常,境界群と軽症群では変化がみられなかったが,中等症以降「食事」以外のセルフケア,及び排泄コントロールを中心に自立度は著明に低下し,自立度の順序性も崩れていった。以上の知見より,痴呆性高齢者のADLの項目別難易度は,特に痴呆の重症度が中等症以降「食事」以外のセルフケア,及び排泄コントロールを中心に顕著に高くなり,その項目別難易度の順序性も崩れていく過程をたどることが示唆された。
  • 村田 伸, 津田 彰, 稲谷 ふみ枝, 田中 芳幸
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 88-95
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,在宅障害高齢者110名(平均年齢83.1歳,男性17名,女性93名)を対象に,転倒歴と注意力及び身体機能を評価し,転倒に影響を及ぼす要因を検討した。転倒経験群28名,ニアミス(転倒しそうになった)体験群33名,非経験群49名の3群間の比較において,転倒経験群とニアミス体験群のTrail making test-Part A(TMT-A)は,非経験群より有意に小さく,身体機能の自己認識の逸脱は有意に大きかった。また,転倒経験群の最大一歩幅,歩行速度,足把持力,足関節背屈角度の4項目は,ニアミス体験群と非経験群より有意に低値を示した。さらに,転倒歴の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析の結果,注意の指標としたTMT-A,足把持力,足関節背屈角度のオッズ比が有意であった。本結果は,立位姿勢保持が不安定な在宅障害高齢者では,身体機能の低下,とくに足把持力や足部可動性などの足部機能の低下が転倒の危険因子であることのみならず,注意力の低下も転倒を引き起こす重大な要因であることを明らかにした。
症例研究
  • 米津 亮, 鶴見 隆正
    原稿種別: 本文
    2005 年 32 巻 2 号 p. 96-102
    発行日: 2005/04/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    脳性麻痺児1例に対し日常生活の介助軽減のため理学療法を実施した。対象は12歳9ヵ月の痙直型四肢麻痺男児。2ヵ月間の入園前後を含む3年3ヵ月間の経過に対して後方視的研究を実施した。本研究の目的は,理学療法が対象児の運動機能に及ぼす影響を確認し,運動機能改善に至った要因について考察を行うことである。理学療法の実施状況から介入期間を5期に区分した上で,運動機能の推移を確認した。その結果,PT内容を変更した入園理学療法を境に座位保持が可能になり,以後機能維持を示す所見を示した。今回の研究では,理学療法実施状況をデータとして理学療法のどの部分が運動機能に影響を及ぼしたのかをより客観的に示せた。
feedback
Top