35名の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対して呼吸機能評価(肺活量 : VC,最大吸気圧 : PImax,最大呼気圧 : PEmax,最大呼気流速 : PCF)を行いその経過を分析した。全ての検査結果は経過と共に低下する傾向が示された。初回評価時の%肺活量(%VC)は他の呼吸機能検査と相関し,また経過中の1ヵ月単位での%VC変化率も同様に他の指標の変化と相関した。評価期間中に11名が非侵襲的換気(NIV)を,8名が気管切開による侵襲的換気(TV)を受けていた。%VC変化率/月は,自発呼吸期間では平均-5.2%であったが,NIV使用期間では-2.2%となり,NIVにより%VCの低下速度が緩和される傾向があった。%VC25%以下まで自発呼吸を継続した14名は,その変化のパターンから以下の4パターンに分けられた。A群 : 発症後1〜2年の間に急激に低下する(%VC変化率/月 = -18.32%)。B群 : A群ほど急激に低下せずにほぼ直線的に低下する(%VC変化率/月 = -5.99%)。C群 : 発症後4〜5年は%VC50%程度でほぼ一定のレベルを維持しその後急に低下する(%VC変化率/月 = 前半0.07%,後半-11.66%)。D群 : 発症後8年以上経過しても%VC25%以上を保ちゆっくりと低下する(%VC変化率/月 = -1.95%)。%VCの経時的変化はその後の経過を予想する一つの判断材料になると考えられた。また,対応が後手に回らないためにも定期的な呼吸機能評価(特にVC)が重要と考えられた。
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