【目的】パーキンソン病(PD)患者の足圧中心(COP)軌跡のダイナミクスの特徴を,非線形解析手法を用いて明らかにすることである。【方法】PD患者10名,高齢者15名を対象に,開眼立位,閉眼立位でのCOPを記録し,COP軌跡の前後方向の振幅の実効値RMS,速度実効値V,最大リアプノフ指数λ
1,相関次元D
2を算出した。λ
1は局所の不安定性を,D
2は軌跡の動的な自由度を示す。各課題での2群間の比較,各群内での開眼と閉眼の比較を行った。【結果】高齢者群に比べPD群では,開眼ではλ
1,RMSが有意に大きかった。閉眼ではλ
1,RMSが有意に大きく,D
2は有意に小さかった。開眼と閉眼の比較では,高齢者群では閉眼でD
2が増加したが,PD群では増加しなかった。【結論】開閉眼ともPD患者のCOP軌跡のダイナミクスは揺れが大きく,不安定な特徴を持っていた。PD群で閉眼してもD
2が増加しなかったことは,視覚遮断に対応して姿勢制御するための情報処理活動の低下による可能性が考えられた。非線形解析手法を用いるとCOP軌跡のダイナミクスの特徴を検出でき,軽度のPD患者の姿勢制御能力を評価する上で有益な手法であると考えられた。
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