理学療法学
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37 巻, 5 号
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研究論文
  • 小川 真人, 北垣 和史, 小野 くみ子
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 5 号 p. 349-355
    発行日: 2010/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】定期的運動習慣の違いが,安静時および間欠的無酸素性運動後の回復時における心臓自律神経系活動に与える影響を明らかにすることである。【方法】対象者は定期的に運動を行っている健康大学生24名(年齢20.6 ± 1.2歳),および定期的な運動習慣を持たない健康大学生26名(年齢21.6 ± 0.9歳)の計50名であった。測定項目は,心拍数,心拍変動,運動反復回数,運動反復時間であった。運動様式は,高さ15 cm,23段の階段の全力駆け上がり,その後20秒休息を1クールとし,これを80% HR reserveに至るまで繰り返し実施した。【結果】安静時では,運動習慣を有さない群と比較して運動習慣を有する群は心拍数は有意に低く,心臓副交感神経系活動は有意に高値を示した(各々p < 0.05)。間欠的無酸素性運動後の回復期30分において,心拍数は,運動習慣を有する者の回復が有意に早く(p < 0.05),心臓副交感神経系の活動は運動直後と回復期30分を比較したとき,運動経験を有する群で有意に上昇(p < 0.01)した。しかし,心臓交感神経系活動の経時的変化に有意差はみられなかった。【結論】運動習慣を有する者の安静時心拍数の低下,運動後の心拍数の早期回復には,心臓副交感神経系の活動が大きく関与していることが示唆された。
  • ―解剖学的観察を基に―
    平野 和宏, 木下 一雄, 千田 真大, 河合 良訓, 上久保 毅, 安保 雅博
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 5 号 p. 356-363
    発行日: 2010/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,解剖学的観察を基に,MRIを用いて腸骨筋の機能を科学的に検証することである。【方法】実習用献体4体8肢を用いて大腰筋と腸骨筋の走行を確認した。腸骨筋前部線維は,腸腰筋腱とは別に筋線維のまま直接小転子と大腿骨に停止していた。他動的に大腿骨を操作し股関節を屈曲すると,初期屈曲では腸骨筋前部線維が短縮した。この所見を基に,健常成人11名を対象として股関節屈曲30°と屈曲90°の2条件の運動後,MRIのT2値を用いて大腰筋と腸骨筋前部・中部・後部それぞれの部位の筋活動に差があるか検討した。なお,T2値は安静時のT2値に対して運動後のT2値をT2値増加率として表した。【結果】股関節屈曲30°では,腸骨筋前部が大腰筋ならびに腸骨筋後部より有意にT2値増加率が高値を示した。屈曲90°では各部位間に有意差は認められなかった。各部位にて屈曲30°と屈曲90°のT2値増加率を比較すると,全ての部位にて屈曲90°のT2値増加率が有意に高値を示した。【結論】腸骨筋前部線維は股関節初期屈曲に作用している結果となり,屈曲角度の少ない動作は,腸骨筋前部線維が担っている可能性が示唆された。
  • 平澤 純, 有薗 信一, 小川 智也, 渡邉 文子, 寳門 玲美, 坪井 賢治, 大河内 治
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 5 号 p. 364-369
    発行日: 2010/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】消化器外科手術後において離床と歩行自立の進行状況および歩行自立が遅延する症例の特徴を検討した。【方法】対象は当院消化器外科にて開腹手術を施行した275例であった。理学療法は離床や排痰を行い,離床プログラムは手術後1日目に歩行開始,2日目に歩行自立を目標として行った。【結果】対象の歩行開始日は平均2.0日であり,歩行自立日は平均3.3日であった。手術後2日目までに歩行自立に至った者は40.7%,4日目には82.9%であった。手術後4日目までに歩行自立に至らなかった遅延群は,4日目までに歩行自立に至った順調群と比較して有意に高齢であり,緊急手術の割合が高く,手術中の出血量が多かった。歩行自立を遅延させた理由は創部痛などが挙げられた。【結論】当院の消化器外科手術後の離床プログラムでは,82.9%の患者が手術後4日目で歩行は自立した。4日目までに歩行を自立しない患者は,高齢者や緊急手術の割合が高く,遅延理由は創部痛が多いことが分かった。
  • 渡部 麻梨子, 真壁 寿
    原稿種別: 本文
    2010 年 37 巻 5 号 p. 370-377
    発行日: 2010/08/20
    公開日: 2018/08/25
    ジャーナル フリー
    【目的】パーキンソン病(PD)患者の足圧中心(COP)軌跡のダイナミクスの特徴を,非線形解析手法を用いて明らかにすることである。【方法】PD患者10名,高齢者15名を対象に,開眼立位,閉眼立位でのCOPを記録し,COP軌跡の前後方向の振幅の実効値RMS,速度実効値V,最大リアプノフ指数λ1,相関次元D2を算出した。λ1は局所の不安定性を,D2は軌跡の動的な自由度を示す。各課題での2群間の比較,各群内での開眼と閉眼の比較を行った。【結果】高齢者群に比べPD群では,開眼ではλ1,RMSが有意に大きかった。閉眼ではλ1,RMSが有意に大きく,D2は有意に小さかった。開眼と閉眼の比較では,高齢者群では閉眼でD2が増加したが,PD群では増加しなかった。【結論】開閉眼ともPD患者のCOP軌跡のダイナミクスは揺れが大きく,不安定な特徴を持っていた。PD群で閉眼してもD2が増加しなかったことは,視覚遮断に対応して姿勢制御するための情報処理活動の低下による可能性が考えられた。非線形解析手法を用いるとCOP軌跡のダイナミクスの特徴を検出でき,軽度のPD患者の姿勢制御能力を評価する上で有益な手法であると考えられた。
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