【目的】本研究の目的は,精神的なストレスが主観的痛み感覚と大脳皮質活動に及ぼす影響をあきらかにすることである。【対象および方法】対象は健常男性20名であり,課題群10名と対象群10名に振り分けた。精神的ストレス課題として内田クレペリン試験を用い,課題前後で痛み関連体性感覚誘発電位(Pain-related Somatosensory Evoked Potential,Pain-related SEP)を計測するとともに,Pain-related SEP計測時の電気刺激に対する痛み感覚をVisual analogue scaleにより記録した。【結果】精神的ストレス課題後に電気刺激に対する主観的な痛み感覚は有意に増加した(p < 0.01)。また,Pain-related SEP波形のN20-P25の振幅も有意に増加し(課題前3.1 ± 1.5μV,課題後3.5 ± 1.6μV,p < 0.01),P25-N30の振幅においても増加傾向が認められた(課題前2.0 ± 1.1μV,課題後2.6 ± 1.4μV,p = 0.052)。【結論】これらのことから,精神的なストレスが主観的な痛みの程度を増加させるだけでなく,一次体性感覚野の興奮性を増大させていることがあきらかとなった。
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