理学療法学
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41 巻, 2 号
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研究論文(原著)
  • 兒玉 隆之, 中野 英樹, 大住 倫弘, 森岡 周, 大杉 紘徳, 安彦 鉄平
    2014 年 41 巻 2 号 p. 43-51
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】振動刺激によって脳内に惹起される運動錯覚が脳機能へ及ぼす影響を,脳波Rolandic alpha rhythm(μ波)を用いたexact Low Resolution Brain Electromagnetic Tomography(eLORETA)解析により検討することを目的とした。【方法】対象は運動障害・感覚障害を有していない健常者20名。方法は安静時,振動刺激時,自動的な筋収縮運動(自動運動)時,振動刺激や運動を伴わない感覚刺激時のそれぞれの条件下にてμ波を計測し,それぞれの脳活動部位および機能的連関をeLORETA解析により比較検討した。【結果】振動刺激時は,安静時および感覚刺激時の条件に比較し感覚運動領野上のμ波が有意に減少し,本領域での半球内および半球間における有意に強い機能的連関を認めた。自動運動時との比較では,感覚運動領域上のμ波,さらに感覚運動領野の機能的連関に差を認めなかった。【結論】振動刺激がもたらす運動錯覚の感覚運動情報処理には,感覚野のみならず,一次運動野を中心とする運動領野の機能的ネットワークが基盤となっていることが示唆された。
  • 山内 真哉, 森下 慎一郎, 眞渕 敏, 児玉 典彦, 道免 和久
    2014 年 41 巻 2 号 p. 52-59
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,亜急性期の筋炎患者に対する運動療法効果と運動負荷量について検討することである。【方法】発症後1〜6週の筋炎患者13例を対象に修正Borg scale(以下,BS)を用いて運動負荷量を設定し,筋力・持久カトレーニングを主体とした運動療法を実施した。筋力トレーニングは,下肢伸展挙上,殿部挙上,スクワット,カフレイズなどの種目を筋疲労感がBS2〜4となる負荷量で実施した。持久カトレーニングは,歩行や自転車エルゴメーターの種目を呼吸困難感がBS2〜4となる負荷量で実施した。そして,継続してトレーニング可能な運動負荷量を調査した。さらに運動療法実施前後の膝伸展筋力,6分間歩行距離,クレアチンキナーゼ(Creatine Kinase:以下,CK)値を比較検討した。【結果】運動療法完遂症例は13例中10例であった。3例は全身状態の悪化,CK値の上昇,筋痛症状の悪化などにより完遂できなかった。運動療法完遂症例10例の運動負荷量は,10例中9例が中等度負荷(BS4),1例は筋痛や不整脈のため低負荷(BS2)であった。運動療法完遂症例10例についてはCK値の上昇はなかった。また,膝伸展筋力は有意な改善が得られなかったが,6分間歩行距離は有意な改善が得られた(p<0.05)。【結論】亜急性期の筋炎患者に対する運動負荷量は,低負荷から開始し,CK値や筋痛,筋力変化などを確認しながら個々の症例に応じて負荷量を設定していくことが望ましいと考えられた。特に,筋力トレーニングの負荷量は慎重に設定する必要があると考えられた。一方で,持久カトレーニングは,症状が安定していれば,中等度の負荷量で行うことで持久力の改善につながると考えられた。
  • 小玉 裕治, 対馬 栄輝
    2014 年 41 巻 2 号 p. 60-65
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,股関節屈曲・伸展角度の違いによって,股関節外旋・内旋筋力が変化する様相をあきらかにすることである。【方法】健常人32名(男女16名,平均年齢21.9±3.8歳)を対象として,股関節外旋・内旋の等尺性最大筋力を測定した。股関節外旋・内旋筋力は,股関節内外転0°・回旋0°,膝関節屈曲位90°で測定し,股関節屈伸角度は伸展10゜,屈曲・伸展0°(屈伸0°),屈曲45°,屈曲90゜の4条件に設定した。【結果】股関節外旋筋力は,屈伸0°よりも屈曲45°または屈曲90°が有意に大きい値を示した。このうち女性では伸展10°よりも屈曲45°が有意に大きい値であった。股関節内旋筋力は伸展10°よりも屈曲45°または屈曲90゜が,屈伸0°よりも屈曲45°または屈曲90゜が有意に大きい値を示した。【結論】股関節屈伸角度の条件の違いによる股関節外旋・内旋筋力の差をみると,股関節外旋筋力は屈曲角度の違いによる変化は小さく,股関節内旋筋力は屈曲角度が増加するにしたがって大きな値を示すことがあきらかになった。
  • -MRIを用いた頸部多裂筋および僧帽筋上部線維の筋肉内脂肪計測-
    光武 翼, 中田 裕治, 大石 豪, 堀川 悦夫
    2014 年 41 巻 2 号 p. 66-74
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,頸椎症性神経根症患者における頸部伸筋群の脂肪浸潤と平衡機能との関係について明確にすることを目的とした。【方法】対象は,本研究に同意が得られた頸椎症性神経根症患者20名とした。筋肉内脂肪の評価はMRIを使用し,両側の頸部多裂筋および僧帽筋上部線維におけるpixel信号強度を用いて算出した。平衡機能は重心動揺計を用いて閉眼静的立位時の総軌跡長と外周面積を計測した。総軌跡長と年齢,BMI,NDIおよび各筋の脂肪浸潤との関係を検証した。総軌跡長に影響を及ぼす因子を決定するために,総軌跡長を従属変数,年齢,性別,BMI,NDI,頸部伸筋群の脂肪浸潤を独立変数とした重回帰分析(stepwise method)を行った。【結果】頸部多裂筋障害側の脂肪浸潤と総軌跡長は高い相関が得られ,これらの寄与率は約62%であった。【結論】頸椎症性神経根症患者は,障害側における頸部多裂筋の筋肉内脂肪浸潤が平衡機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。
平成24年度研究助成報告書
  • -Pilot Study-
    西上 智彦
    2014 年 41 巻 2 号 p. 76-77
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,難治性疼痛症例の健常者とは異なる脳波となっている部位を抽出し,この部位をターゲットとしたニューロフィードバックの効果を検討することである。対象は難治性疼痛症例6例とした。治療対象とする部位を抽出するために安静閉眼時における脳波を測定した。結果,解析ソフト内にある健常者のデータベースと比較して健常者とは異なる脳波となっている部位は運動感覚野1例,前帯状回2例,前頭前野3例であった。この部位に対してニューロフィードバックを週1回1時間4週間行った。結果,介入前のNeumeric Rating Scale(以下,NRS)は7.5±1.3であり,介入後のNRSは6.0±1.4であり,有意な差は認められなかった。しかし,他の運動療法や薬物療法に抵抗していた症例2,3のNRSは介入前後で4改善しており,意義あるものと考えられる。今後,症例数を増加し,どの脳領域なら効果があるか検討する必要がある。
  • 井上 真秀, 藤野 雄次, 蓮田 有莉, 細谷 学史, 森田 菜々恵, 深田 和浩, 高石 真二郎
    2014 年 41 巻 2 号 p. 78-79
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,発症早期の脳血管障害患者における垂直認知の偏倚と座圧分布の関連について検討することである。対象は脳血管障害患者21例とし,前額面と矢状面における垂直認知と水平座面での座圧を測定した。その結果,前額面では自覚的な視覚垂直認知と身体垂直認知の動揺性が大きいほど,座圧は麻痺側に偏倚していた。一方,矢状面では垂直認知と座圧に有意な関連は認めなかった。以上から,前額面における垂直定位の不安定性が座位姿勢制御に影響することが示唆された。
  • 吉田 直心, 菅原 憲一, 山口 智史, 齋藤 慧, 田辺 茂雄, 渡部 政司
    2014 年 41 巻 2 号 p. 80-81
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】筋弛緩課題(完全弛緩(FR),部分弛緩(PR)),弛緩前筋収縮量(10%,20%,30%,40% maximal voluntary contraction(以下,MVC)),弛緩筋(背屈,掌屈)の違いによる筋弛緩の運動学的特徴を,反応時間を指標に調べた。【方法】右利きの健常成人7名を対象とした。完全弛緩課題(FR)は,右手関節等尺性運動(背屈,掌屈)にて,筋出力状態(10%,20%,30%,40% MVC)から音合図に合わせ,急速な弛緩を行った。部分弛緩課題(PR)は,弛緩前筋出力量の半分まで弛緩する課題とした。弛緩課題(FR,PF),弛緩前筋収縮量(10%,20%,30%,40% MVC),弛緩筋(背屈,掌屈)の違いにより反応時間を比較した。【結果】ECRとFCRの反応時間の比較において,FCRにおいて反応時間が速い傾向がみられ,FR-10% MVC,PR-30% MVCにおいて有意差が見られた。【結論】運動学的な作用の違いが,筋弛緩における運動指令の差異として現れていると考えられた。
  • 鈴木 智高, 東 登志夫, 高木 峰子, 菅原 憲一
    2014 年 41 巻 2 号 p. 82-83
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    片手運動中の同側皮質運動野興奮性とその大脳半球非対称性が運動学習後どのように変化するかを調べた。11名の右利き被験者がボール回し運動課題を右手と左手それぞれで行った。練習セッションの前後で,運動課題実行中における同側皮質運動野興奮性の程度が,経頭蓋磁気刺激法による非課題手母指球筋および第一背側骨間筋の運動誘発電位の変化として測定された。練習前,非課題手の運動誘発電位は運動課題中,両側とも有意に促通された。練習後,運動課題中における非課題手の運動誘発電位の促通は右手において有意に減少した,一方,左手においては減少しなかった。複雑な運動に関連した同側皮質運動野興奮性は,はじめは両半球において対称的であると結論づけられる。しかしながら,練習によって,同側性の興奮が左半球皮質運動野においてのみ減少したことは,左半球における運動制御ネットワークのより強い学習依存的な変容を示しうる。
  • 松田 雅弘, 万治 淳史, 稲葉 彰, 中島 由季, 西村 伊織, 平島 富美子, 和田 義明
    2014 年 41 巻 2 号 p. 84-85
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】経頭蓋磁気刺激のひとつであるcTBS(continuous theta burst stimulation)を利用して,脳卒中回復期患者の非障害側大脳半球を刺激し,刺激前後の麻痺側上肢の運動学的変化と殿部荷重状態の変化についての即時効果を検討した。【対象】対象は脳血管障害により片麻痺を呈した回復期患者6名とした。【方法】cTBS前後で座圧計測装置(ニッタ社製)を上に端坐位となり,デジタルビデオカメラによって麻痺側肩関節外転,母指外転の2種類の動作を各2回撮像した。画像はFrame-DIAS IV(DKH社製)を用いて関節角度変化量・速度を求めた。cTBSは医師によって,非障害側運動野を刺激した。【結果】TBS後では殿部荷重量座圧は対称的となり,麻痺側上肢の関節角度変化と速度は有意に改善を認めた。【結語】TBSによって,回復期患者で麻痺の程度が重度でも,運動学的指標と殿部荷重量の変化に改善を認め,TBSによる即時効果が示唆された。
  • 長谷川 聡, 市橋 則明, 松村 葵, 宮坂 淳介, 伊藤 太祐, 吉岡 佑二, 新井 隆三, 柿木 良介
    2014 年 41 巻 2 号 p. 86-87
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究では健常者と肩関節拘縮症例における上肢拳上時の肩甲帯の運動パターンとリハビリテーションによる変化を検証した。健常肩においては,多少のばらつきはみられるものの,肩甲骨の運動パターン,肩甲骨周囲筋の筋活動パターンは一定の傾向が得られた。上肢拳上30°〜120°の区間では,肩甲骨の上方回旋運動はほぼ直線的な角度増大を示すことがわかった。そのスムーズな角度変化を導くためには,僧帽筋上部,僧帽筋下部,前鋸筋の筋活動量のバランスが必要で,上肢拳上初期から約110°付近までは3筋がパラレルに活動量を増加させ,拳上終盤においては僧帽筋上部の活動量増加が止まり,僧帽筋下部と前鋸筋の活動量を増加させる必要があることが明らかとなった。肩関節拘縮症例では,上肢拳上による肩甲骨の運動パターンは多様であり,一定の傾向はみられなかったため,代表的な症例の経過を示した。
  • 大久保 雄, 金岡 恒治, 神舘 盛充, 原 有美, 遠藤 光平
    2014 年 41 巻 2 号 p. 88-89
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    様々な運動器疾患に対し水中運動療法が行われている中で,水中大股歩行が近年注目され実施されている。そこで本研究では,大股歩行を水中と陸上で行った際の体幹・下肢筋活動を測定し,水中大股歩行の有効性を検討した。健常男性6名に対し,水中および陸上で大股歩行を行わせた際の筋電図および画像データを収集した。1歩行周期を立脚期,遊脚期,二重支持期にphase分けし,各phaseにおける筋活動量を比較した。その結果,歩行周期全体を通して,体幹・下肢の筋活動量は水中大股歩行で有意に小さかった。特に,水中大股歩行において,脊柱起立筋および大腿二頭筋は二重支持期で,大腿直筋は遠心性収縮の活動様式である遊脚後期で活動量が有意に小さかった。本結果より,水中歩行は陸上歩行よりも筋活動量が少なくなり,荷重負荷とともに筋への負荷が少ない運動であることが示唆された。
  • 中田 恭輔, 上床 裕之, 大倉 優之介, 古川 拓馬, 猪村 剛史, 深澤 賢宏, 大鶴 直史, 弓削 類
    2014 年 41 巻 2 号 p. 90-91
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,ヒト間葉系幹細胞の軟骨分化において模擬微小重力環境の与える影響について検討することである。【方法】培養細胞はヒト間葉系幹細胞を用いた。通常の1G重力環境下で軟骨分化誘導を行う群(以下,1G群),模擬微小重力発生装置(3D-Clinostat)によって10^<-3>G環境下で軟骨分化誘導を行う群(以下,CL群)の2群に分けて軟骨分化誘導を行った。解析は,形態学的解析としてアルシアンブルー染色を行い,分子細胞生物的解析としてReverse Transcription-Polymerase Chain Reactionを行った。【結果】1G群と比較してCL群では,アルシアンブルー染色性が低く,軟骨基質を構成するType II al collagenの遺伝子発現が低下した。【結論】模擬微小重力環境によってヒト間葉系幹細胞の軟骨分化誘導が抑制された。
  • 曽田 幸一朗, 森下 慎一郎, 水野 貴文, 梶原 和久, 瀬戸川 啓, 上谷 清隆, 児玉 典彦, 道免 和久
    2014 年 41 巻 2 号 p. 92-93
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究ではTKA術後からMENSを行い,筋力,関節可動域,大腿周囲径,疼痛,ADL能力の経時的変化について検討することを目的とした。対象はH25年1〜4月までの間にTKA目的に入院し,同意を得られた15名とした。無作為に刺激群と非刺激群に振り分け,介入を実施した。両群合わせて7名の脱落者がいたため,8名の分析となった。膝伸展筋力,膝屈曲可動域,大腿周径,WOMAC(機能),3MD,10m歩行速度に両群間で差は認められなかった。WOMAC(痛み)では刺激群で有意に改善が認められたが,NRSでは両群に差は認められなかった。膝屈曲筋力,膝伸展可動域では非刺激群で有意な改善が認められた。今回の検討では対象数が少ないため,対象数を増やして検討する必要がある。しかし,痛みに関しては先行研究を支持する結果となった。今回の刺激条件ではかゆみ以外の有害事象は発生しなかった。患者の皮膚の弱さを考慮することで,安全にMENSを実施することが可能だった。
  • 吉田 勇一, 浅海 靖恵, 中野 聡太, 福留 英明, 岡田 裕隆, 崔 元哲, 肥後 成美
    2014 年 41 巻 2 号 p. 94-95
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,理学療法専攻の学生が臨床実習(以下,実習)から受けるストレスに関する基礎データを得ることである。【方法】対象は理学療法専攻の学生36名(男性16名,女性20名,平均年齢21.0±0.7歳)とした。3年次にはじめて経験する実習をストレス負荷として,実習前後のストレスを測定した。実験1では唾液α-アミラーゼ活性(Salivary Amylase Activity:以下,SAA),State-Trait Anxiety Inventory(以下,STAI),Profile of Mood States(以下,POMS)を測定した。実験2では心拍変動(Heart Rate Variability:以下,HRV)の周波数成分(LF:low frequency,HF:high frequency)を指標とした。【結果】実習後のSAA,STAI,POMSは実習前に比べ男女ともに有意に高かった。男女間の比較では,男性のSAAは全般的に有意に高く,女性のSTAIは実習前に有意に高かった。実習後のLnLF(Ln:自然対数)とLnHFは女性が高く,男性が低くなる傾向にあった。【結論】生化学的,心理学的な指標において実習前にストレスを受けていることが示された。実習前の生化学的指標は男性が高く,心理的不安は女性が高かった。実習前後の生理学的指標は男女で異なる傾向を示した。
  • -抗重力運動に着目して-
    宮城島 沙織, 浅賀 忠義, 鎌塚 香央里, 小林 正樹, 五十嵐 リサ, 小塚 直樹
    2014 年 41 巻 2 号 p. 96-97
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】乳児は生後5ヵ月までの間,自発運動を通し運動学習をしている。極低出生体重児はその未熟性から抗重力運動が苦手で,正期産児と異なる運動パターンを示すとされるが,定量的に示された報告は少ない。今回我々は極低出生体重児における自発運動の抗重力運動の特徴を捉えることとした。【対象と方法】札幌医科大学附属病院で出生した神経学的に異常を認めない極低出生体重児(VLBW群)7名,および正期産児10名とした。3次元動作解析システムを用い,自発運動の解析を行った。【結果】VLBW群では,自発運動の上下肢左右接近距離(平均値)は大きく,左右の手を近付ける運動が少なかった。また,上下肢の運動の高さ(平均値)は低く,抗重力運動が小さいことがあきらかになった。【考察】VLBW群では早産により,より早期に重力の影響を受けることや医療的処置などにより抗重力運動の機会が少ないことが結果に影響していると考えられた。
  • 中原 和美, 松坂 誠應
    2014 年 41 巻 2 号 p. 98-99
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    今回,一次予防事業および二次予防事業対象者86名を対象に,認知機能障害を鑑別するためのTUG,TUG manualおよびdiff TUGのカットオフ値についてROC分析を用いて,検討を行った。結果,認知機能低下の推測として有意差を認めた項目は,diff TUGのみであり,カットオフ値は,1.3秒,感度0.857,特異度0.528であった。よって,TUG manualでは認知機能障害の有無の識別は困難であるが,TUGとの差であるdiff TUGを算出することにより認知機能の推測が可能であることが示唆された。
  • 神津 玲, 花田 匡利, 及川 真人, 千住 秀明
    2014 年 41 巻 2 号 p. 100-101
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    集中治療室(intensive care unit;以下,ICU)で治療されている患者,呼吸器および消化器外科周術期患者を対象とした急性期理学療法の実施状況,ならびに関連する有害事象の発生状況をあきらかにする目的で,質問票の郵送による全国調査を行った。調査対象は全国の急性期病院500施設で,調査項目はICU,呼吸器および消化器外科周術期の3つの領域における理学療法実施の有無,対象疾患,介入内容,効果判定の指標,過去1年間で生じたインシデントおよびアクシデントを主要項目とした。質問票を郵送した全500施設中,209施設から回答があった(回収率41.8%)。その結果,ICUや呼吸器および消化器外科周術期の理学療法実施率は約90%前後であり,実施内容も早期離床を中心に実施されていたが,全体的に施設によって差が大きい多い傾向にあった。理学療法実施に関連したインシデントおよびアクシデントに関しては,いずれも10%を超えており,なかには重篤な有害事象も報告されていた。
  • 大島 洋平, 玉木 彰, 長谷川 聡, 佐藤 晋, 室 繁郎, 三嶋 理晃, 柿木 良介, 松田 秀一
    2014 年 41 巻 2 号 p. 102-103
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者では気流制限によって生じる呼吸困難や運動耐容能の低下が問題となる。本研究の目的は,運動前の随意的な換気量の増加が,運動中の呼吸困難および運動耐容能に及ぼす影響を検証することである。対象は安定期COPD患者17名とし,自由呼吸下での定速度歩行試験(control-walking;C-W)および歩行前に随意的に換気量を増加した呼吸下での定速度歩行試験(voluntary hyperventilation-walking;VHV-W)における歩行時間を比較した。測定中は呼気代謝測定装置とパルスオキシメーターにて呼吸循環動態をモニタリングした。その結果,C-Wと比較してVHV-Wでは,歩行前の分時換気量,二酸化炭素排出量および酸素摂取量が増加し,呼気終末二酸化炭素分圧の低下と経皮的酸素飽和度の上昇を認めた。VHV-Wにおいて歩行中の呼気終末二酸化炭素分圧は有意に低値,経皮的酸素飽和度は有意に高値,呼吸困難の程度は有意に低値を示した。歩行時間はVHV-Wで有意に延長した。運動前の随意的な換気量の増加は,COPD患者における運動中の呼吸困難や運動耐容能の改善に有効であると考えられた。
  • -情報共有,物的・人的相互支援システムの確立-
    高取 克彦, 岡田 洋平, 松本 大輔, 田中 秀和, 松下 真一郎, 鶴田 佳世, 西田 宗幹, 増田 崇
    2014 年 41 巻 2 号 p. 104-105
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,1)介護予防事業に関わる理学療法士間に情報共有,相互支援のためのネットワークを作成すること。2)オリジナル体操の導入を含む地域巡回型介護予防教室を実施し,その有効性を検証することである。介護予防ネットワークは11施設の理学療法士および作業療法士により「奈良県介護予防セラピストネットワーク」として設立した。情報交換・共有にはSocial Network Serviceを通じて行われた。地域巡回型介護予防教室は6市町村,137名の地域高齢者に対して実施された。運動機能評価には一般的な項目に加え,重心動揺検査,最大膝伸展筋力測定および口唇閉鎖圧測定を実施し,生活機能面の評価にはE-SASを用いた。教室後3ヵ月時の評価において,介入地域では5m歩行時間,TUG,椅座位体前屈に有意な改善が認められた。しかしベースラインを共変量とした共分散分析の結果,介入後の有意な群間差は認めなかった。
  • 生野 公貴, 渕上 健, 小林 啓晋, 藤川 加奈子, 小山 総市朗, 河口 紗織, 北裏 真己, 松永 玄, 山口 智史
    2014 年 41 巻 2 号 p. 106-107
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    本研究は,回復期脳卒中片麻痺患者の歩行障害に対してペダリング運動中に電気刺激を併用することが有益かどうかを調査することを目的とした。報告書においては,現在も研究継続中であるため,介入の安全性と実現可能性について検討し報告する。対象は発症後6ヵ月以内の回復期脳卒中片麻痺患者である。研究は7施設によるassessor-masked, randomized, sham controlled trialで実施した。対象者は無作為にペダリング運動と電気刺激併用群(7名),ペダリング運動と偽刺激群(7名),電気刺激単独群(6名)の3群に割りあてられた。各々1日15分,週5回3週間の計15セッションの介入を実施し,各セッション前後の血圧および脈拍と有害事象の有無を評価した。その結果,すべての対象者において前後の血圧および脈拍では運動中止基準を超えなかった。また1名(電気刺激群)が体調不良により脱落したが,有害事象の報告はなかった。本法は回復期リハビリテーション期間においても安全に実施可能であると考えられた。
  • -社会的要因を考慮して-多施設共同研究
    石垣 智也, 尾川 達也, 松波 咲恵, 宮尾 康平, 西本 絵美, 松本 大輔
    2014 年 41 巻 2 号 p. 108-109
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    【目的】回復期リハビリテーション病棟入院患者(以下,回復期リハ病棟)におけるリハビリテーションへの参加意欲(以下,リハ参加意欲)が,自宅退院に与える影響を,社会的要因を考慮し検討すること。【方法】対象は回復期リハ病棟5施設の入院患者200名とした。自宅退院を目的変数に,疾患種別,家族介護力,入院時Functional Independence Measure(以下,FIM)運動・認知項目,Pittsburgh Rehabilitation Participation Scale(以下,PRPS),セラピストによる患者教育・家族教育の有無等の11要因を説明変数としてロジスティック回帰分析を行った。【結果】PRPSが4未満に比べ4以上の者でオッズ比2.5(95% CI:1.1-5.9),家族介護力が1人未満に比べ1人以上の者でオッズ比3.0(CI:1.3-7.2),セラピストによる家族教育がない者に比べあるものでオッズ比12.8(CI:4.7-35.3)であった。【結論】リハ参加意欲は回復期リハ病棟において自宅退院に影響しており,また家族介護力に加え,セラピストによる家族教育が自宅退院に強く影響している可能性が示唆された。
  • 友田 秀紀, 田口 脩, 小柳 亨介, 長野 友彦, 森山 雅志, 小泉 幸毅, 山本 大誠, 服部 聡
    2014 年 41 巻 2 号 p. 110-111
    発行日: 2014/04/20
    公開日: 2017/06/28
    ジャーナル フリー
    屋内歩行が自立するまでの期間を予測することは,リハビリテーションの治療計画立案において不可欠である。我々は先行研究において,歩行が自立するまでの期間をワイブル加速モデルによって検証し,その予測式を構築した。先行研究で示したモデルは,1施設(482症例)から得られた予備的研究に基づく予測式であり,より多くの医療現場へ適応する一般化可能性については今後の課題であった。本研究は,先行研究における1施設のデータに基づく予測式の一般化を目的とし,新たに集積した全国121施設(1,508症例)のデータから予測式の妥当性を検証した。その結果,先行研究で示したモデルの80%予測区間に,本研究の78.5%が収束されることが確認され,ワイブル加速モデルによる歩行自立までの期間について,その予測モデルの有用性が支持された。本研究の科学的根拠に基づく検証により,歩行自立までの期間の予後予測が高い精度で予後予測でき,リハビリテーションにおいてより早期の到達目標設定を可能とする科学的根拠を示した。
特別寄稿
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