理学療法学
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42 巻, 5 号
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研究論文(原著)
  • 三森 由香子, 渡辺 航太, 大高 洋平, 藤原 俊之, 細金 直文, 新田 收, 長谷 公隆, 松本 守雄, 里宇 明元
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 377-383
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】思春期特発性側弯症(以下,AIS)患者の静止立位時の足圧中心(以下,COP)を計測し,脊柱変形の部位(胸椎カーブ,腰椎カーブ)別にCOPを比較することで,脊柱変形の部位の違いが姿勢制御に及ぼす影響を明らかにする。【対象・方法】AIS患者100名(胸椎カーブ群67名,腰椎カーブ群33名,平均年齢18.1±5.5歳)を対象とした。静止立位時のCOPを計測し,両群間の相違,さらに各群内でCOPの諸指標とX線指標,年齢との関係について検討した。【結果】両群間に姿勢動揺量の差はないが,胸椎カーブ群は年齢と負の関係,腰椎カーブ群は変形の大きさと正の関係を認めた。ロンベルグ率は,腰椎カーブ群において低値であった。また,両群とも骨盤に対する頸部の位置とCOPの左右方向動揺中心位置との間に正の関連を認めた。【結論】AIS患者の姿勢動揺は,変形部位による特徴を認め,腰椎カーブ群で変形の影響を受けやすい可能性が示唆された。
  • 谷口 匡史, 建内 宏重, 成田 奈津子, 市橋 則明
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 384-391
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,体幹回旋運動中の筋活動量・筋活動開始時間に着目し,非特異的慢性腰痛患者の筋活動特性を明らかにすることである。【方法】対象は,腰痛群15名(男性9名,女性6名:年齢22.5±2.4歳),健常群15名(男性9名,女性6名:年齢25.2±5.5歳)とした。対象者は,LED点灯の合図にできるだけ早く反応し,約1秒で回旋運動を行った。三次元動作解析装置に同期した表面筋電図を用い,測定筋を両側の腹直筋,内腹斜筋・腹横筋,外腹斜筋,脊柱起立筋,多裂筋,大殿筋上部線維,広背筋上部・下部線維の計16筋とした。各筋の筋活動量・筋活動開始時間を算出し,Mann-Whitney検定にて群間比較を行った。【結果】腰痛群では,健常群に比べ,非回旋側外腹斜筋の筋活動量が有意に増加し,筋活動開始時間は有意に遅延していた。【結論】非特異的慢性腰痛患者の体幹回旋運動における筋活動特性として,外腹斜筋に異常筋活動が生じていた。
  • 稲井 卓真, 江玉 睦明, 高林 知也, 徳永 由太, 久保 雅義
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 392-400
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,広筋群のトレーニングにおいて膝関節前方剪断力をおさえた足関節部の力の方向を数学シミュレーションにより検討することである。【方法】機能別実効筋およびHill modelから,筋張力の大きさを推定した。ストレートラインモデルおよびwrapping surfaceから,筋張力の方向を決定した。足関節部の力の方向を系統的に操作し,膝関節剪断力を検討した。【結果】足関節部の力の方向が「股関節と足関節を結ぶ線」を境として変化したとき,膝関節前方剪断力の変化がみられた。【結論】足関節部の力の方向に関する本研究の知見は,膝前十字靭帯損傷患者が安全な筋力トレーニングを実施するために必要な情報になりうる。
  • 松永 勇紀, 中村 大介, 関屋 昇
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 401-407
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【背景と目的】Hansenらは足関節を固定したときに足底に円弧形状(以下,ROS)をつけると足部機能を代償できる可能性を示している。AdamczykらはROS装具を使用し円弧半径(R)が身長の約15%のときにエネルギー消費最小となることを報告している。しかし,R15%では不安定さが生じ転倒等の危険性が高いと考えられる。本研究はRをAdamczykらの研究以上に増大させRと酸素消費量との関係を調べることを目的とした。【方法】対象は男性12名としトレッドミル上の時速4.5kmで7分間歩行とした。ROS装具のRは15,21,27,33,39,45%の6条件とした。補高靴での歩行を含めて試行し歩行率,酸素消費量を測定した。【結果】酸素消費量はR27%が最小値を示し,歩行率と酸素消費量は正の相関を認めた。補高靴とR27%との歩行には差を認めなかった。【結論】酸素消費量はAdamczykらの報告よりも大きなR27%が最小値を示した。
  • 川端 悠士, 後藤 圭太, 武市 理史, 木村 光浩
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 408-415
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】人工股関節全置換術例における自覚的脚長差に影響を与える要因を明らかにすることとした。【方法】対象は初回片側人工股関節全置換術を施行した67例とした。基本的情報として年齢・性別・BMIを,術前要因としてX線学的脚長差・Crowe分類・骨盤側方傾斜角・JOA scoreを,術後要因としてX線学的脚長差・骨盤側方傾斜角・脚延長量・オフセット長・疼痛・股関節伸展可動域・股関節内転可動域・股関節外転可動域・股関節外転筋力・自覚的脚長差を調査した。【結果】階層的重回帰分析を用いて自覚的脚長差に影響を与える要因を検討した結果,自覚的脚長差に影響を与える要因として術後X線学的脚長差から独立して,術側股関節内転可動域,術後骨盤側方傾斜角が抽出された(決定係数:0.619)。【結論】人工股関節全置換術例における自覚的脚長差の改善には,術側股関節内転可動域の拡大,術後骨盤側方傾斜の是正が必要であることが示唆された。
  • 原 毅, 久保 晃, 草野 修輔
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 416-427
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】消化器がん患者の手術前サルコペニア要因の有無が手術後合併症の発症率や周術期から自宅復帰後の運動機能変化と生活の質(以下,QOL)に影響するか検討すること。【方法】対象は,周術期消化器がん患者97例(男性54例,女性43例,年齢62.5±12.1歳)とした。サルコペニア要因の有無は,筋肉量を腹部CT画像の骨格筋断面積,筋力を等尺性膝伸展筋力,身体能力を6分間歩行距離より評価し,3群に分類した。対象者各群で手術後合併症の発症率,手術前から退院後の運動機能変化とQOLを比較した。【結果】サルコペニア要因を含む群では,他の群と比較して手術後合併症の発症率が有意に高く,QOLも有意に低かった。運動機能変化では,手術前後で他の群より低下する傾向にあった。【結論】消化器がん患者のサルコペニア要因は,手術後合併症の発症率や周術期の運動機能変化およびQOLに影響することが明らかとなった。
短報
  • 池田 崇, 長澤 弘, 五味 郁子, 相澤 純也, 久合田 浩幸, 黒木 裕介, 石田 邦子, 神野 哲也, 増田 正, 森田 定雄
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 428-433
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】無作為化比較試験を用いて,分枝鎖アミノ酸(branched chain amino acid:以下,BCAA)摂取を併用した運動療法が身体機能に及ぼす効果について明らかにすること。【方法】対象は,要介護高齢者52例。無作為にBCAA群27例と対照群25例に割りつけた。運動開始10分前にBCAAを摂取し,最大筋力の30%負荷での筋力練習を3セット,有酸素運動とバランス練習とを各1セット,計5セットを週1〜2回実施した。3ヵ月間の運動介入と栄養介入とを行った。四肢粗大筋力,握力,Timed Up and Go test, Functional reach test(以下,FRT),身体活動,介入回数の評価を実施した。【結果】FRTはBCAA摂取と運動療法との併用の有意な効果を認めた。他の項目は効果を認めなかった。【結論】週2回程度の頻度で,運動開始10分前にBCAAを摂取し,30%負荷での運動療法を中心に実施することで,効果的にバランス機能を改善することが示唆された。
実践報告
  • 森 勇, 高橋 泰, 浜崎 満治, 山田 翔梧
    原稿種別: 本文
    2015 年 42 巻 5 号 p. 434-441
    発行日: 2015/08/20
    公開日: 2017/04/13
    ジャーナル フリー
    【目的】基本動作能力を測定する新指標の開発およびその指標の反応性と信頼性の検証を目的とした。【方法】基本動作の動きそのものを判定尺度とし,動作の状態像をイラストで視覚化した基本動作能力のCapacityを測定する基本動作指標(以下,BMS)を作成した。対象は要支援1から要介護5の介護保険サービス利用者148名(男性49名,女性99名。平均年齢82.8±7.7歳)。理学療法士と作業療法士(セラピスト)の主観的評価に対するBMS,BI,FIM運動項目の感度と特異度を算出した。セラピストを検者とした検者内および検者間信頼性を求めた。【結果】BMSは感度89%(特異度34%)と各ツールの中で感度がもっとも高く,特異度がもっとも低かった。検者内と検者間ともに高い信頼性が得られた。【結論】BMSは,指標として高い信頼性があり,基本動作能力のCapacityを測定しセラピストの主観的評価に高い感度で反応する指標であることが示唆された。
シリーズ「超音波装置を用いた評価と臨床への応用」
シリーズ「エビデンスに基づく理学療法 ‐理学療法診療ガイドラインを読み解く‐」
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