理学療法学
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43 巻, 6 号
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研究論文(原著)
  • 長谷川 三希子, 新田 收, 猪飼 哲夫
    2016 年 43 巻 6 号 p. 439-444
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/09/26
    ジャーナル フリー

    【目的】福山型先天性筋ジストロフィー(Fukuyama Congenital Muscular Dystrophy:以下,FCMD)に対するGross Motor Function Measure(以下,GMFM)の信頼性と妥当性を検討する。【方法】FCMD38 名(男性20 名,女性18 名),平均年齢10.5 歳を対象とした。信頼性はテストリテスト法を用い,級内相関係数(ICC(1.1))と測定の標準誤差(以下,SEM)を算出し,Cronbach’sα 係数で内的整合性を求めた。併存的妥当性は運動機能レベルと,構成要素妥当性は年齢と検討した。【結果】ICC(1.1)は0.96 以上,Cronbach’sα 係数は0.96,SEM は2.1 ~4.3%であった。併存的妥当性は0.90 以上,構成要素妥当性は0.70~0.75 であった。【結論】GMFM はFCMD の粗大運動機能評価尺度として高い信頼性と妥当性が確認できた。

  • 秋山 徹雄, 関屋 曻, 中村 大介, 加茂野 有徳
    2016 年 43 巻 6 号 p. 445-452
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/09/27
    ジャーナル フリー

    【目的】正常歩行における足圧中心位置を下腿座標系上で表現すると円弧に近い軌跡となることが知られている。本研究は,軌跡の個人内と個人間のばらつき,用いる下腿座標系による違い,円弧が最適曲線か否か,および速度依存性を明らかにすることを目的とした。【方法】健常成人10 名の歩行で床反力計測と三次元動作解析を行い,足圧中心を2 種類の下腿座標系に変換した。変換データを用いて曲線近似を行い,寄与率を求めた。【結果】一部の被験者の極端な速度の歩行を除けば,高い寄与率を示し,個人内,個人間のばらつきはきわめて小さかった。速度条件間および,座標系間の寄与率には差がなかった。近似様式間では寄与率の平均値間に有意差があったが,その差はきわめて小さかった。【結論】本研究で足圧中心軌跡は比較的一貫した円弧形状を示した。しかし,速い条件で一部の被験者にばらつきが生じたことから,円弧型機能的足底形状は高速度範囲で一部制約がある可能性が示された。

  • 大内 みふか, 加藤 久美子, 鈴木 重行
    2016 年 43 巻 6 号 p. 453-460
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/09/28
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は軽度骨盤臓器脱患者に対して骨盤底筋体操を実施し介入効果を客観的指標から検討することである。【方法】対象者は女性泌尿器科を受診し骨盤臓器脱(Stage Ⅱ)と診断された女性であった。骨盤底筋体操は6 回の個別指導を含む計16 週間施行し,評価指標は骨盤底筋最大収縮時腟圧,骨盤内臓器下垂,骨盤臓器脱の症状と生活の質(以下,QOL)とした。【結果】対象者は平均年齢67.5 ± 7.0 歳の女性17 名であった。介入後において最大収縮時腟圧の有意な増大(p < 0.05)と前腟壁の有意な挙上(p < 0.05)が認められた。症状は頻尿,腹圧性尿失禁,排尿後尿滴下と排便症状に,QOL は身体的活動の制限(p < 0.05)と心の問題(p < 0.01)に有意な改善を認めた。【結論】軽度骨盤臓器脱患者に対する骨盤底筋体操は最大収縮時腟圧,前腟壁部の下垂,排尿や排便に関連する症状,QOL を改善する可能性が示唆された。

  • 岡 智大, 飛山 義憲, 和田 治
    2016 年 43 巻 6 号 p. 461-468
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/09/29
    ジャーナル フリー

    【目的】人工膝関節全置換術(以下,TKA)患者の早期退院後のセルフチェックシートを用いた疼痛管理が術後早期の疼痛および関節可動域増悪の防止に有効かを検討することである。【方法】対象はTKA 患者55 名とし,セルフチェックシート介入群28 名(以下,介入群),コントロール群27 名に無作為に分類した。両群に退院後の疼痛管理方法を指導し,介入群にはさらにセルフチェックシートを配布し記載するよう指導した。評価項目は歩行時痛,階段昇降時痛,膝関節可動域とし,各項目の術後5 日と術後2 週の差の比較を2 標本t 検定を用いて行った。【結果】介入群ではコントロール群と比較し,術後2 週目の歩行時痛,階段昇降時痛,膝関節屈曲可動域が有意に改善していた。【結論】セルフチェックシートを使用することで,TKA 患者の在院日数の短縮化を図るうえで課題となる早期退院後の疼痛,関節可動域の増悪が防止できる可能性が示唆された。

  • 立本 将士, 山口 智史, 田辺 茂雄, 大高 洋平, 近藤 国嗣, 田中 悟志
    2016 年 43 巻 6 号 p. 469-476
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/10/14
    ジャーナル フリー

    【目的】頭皮- 皮質間距離が経頭蓋磁気刺激(以下,TMS)を用いた下肢一次運動野の運動誘発電位(以下,MEP)に及ぼす影響を検討することを目的とした。【方法】対象は健常成人10 名とした。TMS を用いて左下肢一次運動野を刺激し,右前脛骨筋からMEP を記録した。安静時運動閾値(以下,rMT),rMT の100,110,120,130,140% のTMS 刺激強度におけるMEP 振幅値,二乗平均平方根値(以下,RMS 値)を解析した。頭皮- 皮質間距離は,核磁気共鳴画像法によるT1 強調画像から,頭頂部と左中心前回頂部との距離を算出した。MEP の各解析項目と頭皮- 皮質間距離との相関を検討した。【結果】頭皮- 皮質間距離は140%rMT のMEP 振幅値およびRMS 値との間に有意な負の相関関係を認めた。【結論】下肢TMS によるMEP 測定は,頭皮- 皮質間距離の影響を受けることが示唆された。

  • 藤田 和樹, 三秋 泰一, 中川 敬夫, 堀 秀昭, 小林 康孝
    2016 年 43 巻 6 号 p. 477-485
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】脳卒中片麻痺患者の下肢痙縮に対するA 型ボツリヌス毒素製剤(以下,BoNT-A)投与が歩行に及ぼす影響を検討すること。【方法】対象は発症後6 ヵ月以上が経過している慢性期脳卒中患者15 例とした。BoNT-A は足関節底屈筋群に計300 単位投与した。BoNT-A 投与前,投与2 週後に10 m 歩行時の下肢筋電図,歩行速度,歩行周期,歩幅,ストライド長を測定した。筋電図の解析は,歩行周期を相分けし(荷重応答期,単脚支持期,前遊脚期,遊脚期),各相の平均振幅および同時活動指数を算出した。【結果】BoNT-A 投与後の筋活動は,前脛骨筋が荷重応答期で有意に増加し,ヒラメ筋は荷重応答期で有意に減少した。大腿直筋と大腿二頭筋の同時活動指数は,荷重応答期で有意に増大した。時間および距離因子は,投与前後で有意差を認めなかった。【結論】BoNT-A 投与にて下肢筋活動の変化は認められたが,時間・距離因子が改善する可能性は低い。

  • ─被検者間マルチベースラインデザインを使用した検討─
    川端 悠士, 狩又 祐太
    2016 年 43 巻 6 号 p. 486-492
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/10/18
    ジャーナル フリー

    【目的】THA 例に対する漸減的な補高挿入が,PLLD 軽減に有用か否かを明らかにすることとした。【方法】対象は初回片側人工股関節全置換術を施行した6 例とした。研究デザインはAB デザインによる被検者間マルチベースラインデザインとし,独立変数を補高挿入の有無,従属変数をPLLD とした。A 期には関節可動域運動・筋力強化運動・歩行練習といった通常の理学療法を実施した。B 期にはA 期の運動療法に加え,PLLD 値と同一の厚さの補高を挿入し歩行練習を実施した。6 例を術後3~9日をA期とし術後10 ~30 日をB 期とする2 例,術後3~16日をA 期とし術後17 ~30 日をB 期とする2 例,術後3~23日をA期とし術後24 ~30 日をB 期とする2 例に無作為に割りつけた。【結果】ランダマイゼーション検定の結果,A 期に比較してB 期におけるPLLD の減少が有意に大きかった。【結論】PLLD を有するTHA 例における補高使用の有用性が示唆された。

  • 武田 祐貴, 石野 洋祐, 武田 真理子, 山下 国亮, 齋藤 篤生, 釘本 充, 杉山 俊一, 金子 貞男
    2016 年 43 巻 6 号 p. 493-500
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/10/25
    ジャーナル フリー

    【目的】多くの先行研究によって回復期および維持期脳卒中患者の麻痺側下肢筋力は歩行能力と関連することが報告されている。しかし,脳卒中急性期の知見はない。本研究の目的は脳卒中急性期における麻痺側および非麻痺側下肢筋力と歩行速度との関連を明らかにすることである。【方法】対象は当院入院中の脳卒中患者118 名とした。発症後30 日以内の麻痺側および非麻痺側等尺性膝伸展筋力値を(1)歩行速度別に分けた3 群の分散分析および多重比較検定,(2)全対象者および歩行速度別の相関分析,(3)歩行速度を従属変数とした重回帰分析にて検討した。【結果】麻痺側等尺性膝伸展筋力は歩行速度が高い群ほど強く,歩行速度と中等度の相関を示した。重回帰分析では麻痺側等尺性膝伸展筋力が有意な説明変数として抽出された。非麻痺側ではこれらの結果は得られなかった。【結論】脳卒中急性期においても麻痺側下肢筋力が歩行能力と関連することが明らかとなった。

短 報
  • 大沼 剛, 阿部 勉, 福山 支伸, 安倍 浩之, 小山 樹
    2016 年 43 巻 6 号 p. 501-507
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/20
    [早期公開] 公開日: 2016/09/14
    ジャーナル フリー

    【目的】訪問リハビリテーションを利用開始してからの要介護度変化とそれに関係する要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は利用開始から1 年間以上訪問リハを継続している510 名とした。利用開始時と調査実施時の要介護度の比較を行った。また,要介護度変化の関連要因を探るため,ロジスティック回帰分析を行った。【結果】調査実施時では,軽度化が175 名(34.3%),維持が194 名(38.0%),重度化が141 名(27.6%)であった。要介護度を比較した結果,利用開始時と調査実施時で有意な軽度化が認められた(p = 0.017)。要介護度変化の関連要因として,軽度化には年齢(オッズ比OR = 0.967),早期訪問リハビリテーションの導入(OR = 1.950),重度化には,年齢(OR = 1.049)が関連する要因として抽出された。【結論】早期訪問リハビリテーションの導入が要介護度軽度化を促進できる可能性が示された。

理学療法トピックス
シリーズ「内部障害に対する運動療法の最前線」
シリーズ「中枢神経機能の計測と調整」
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