【目的】本研究は,脳卒中患者のADL 回復の対策として,PT,OT およびST の介入量の増加が有効であるかどうかを検討することである。【方法】入院時FIM 運動項目により患者を低群,中群,高群に分類した。各群のFIM 利得に影響する因子の検討のために,ロジスティック回帰分析を行い,抽出された因子ごとにカットオフ値や診断性能を算出した。【結果】対象者と抽出因子数は,低群297 名・5 因子,中群190 名・2 因子,高群170 名・3 因子であった。3 群に共通の因子は,PT とOT の総単位数であった。各群におけるこのカットオフ値・陽性尤度比・陰性尤度比・事後確率は,低群で747 単位以上・2.26・0.63・71.0% であり,中群で495 単位以上・1.5・0.67・62.0% であり,高群で277 単位以上・1.86・0.45・65.0% であった。【結論】重症の者ほど回復は予測しやすいが,より多くの因子でなければ精度の高い予測は難しい。
【目的】初心者・高齢者向けのディフェンシブ・スタイルのノルディック・ウォーキング(以下,NW)が高齢者の歩行に与える影響について検討する。【方法】杖なしで自立歩行可能な高齢者28 名を対象とし,通常歩行とディフェンシブ・スタイルのNW を三次元動作分析装置・床反力計を用いて計測した。【結果】通常歩行とNW を比較した結果,荷重応答期の床反力鉛直方向成分は,有意差を認めなかった。歩隔・体幹側屈振幅・身体重心左右移動振幅は,NW で有意に減少した。歩隔と身体重心左右移動振幅との間に,正の有意な相関が認められた。【結論】ディフェンシブ・スタイルのNW は,前額面上において安定性の高い歩行であることが示唆された。
【目的】本研究の目的はNeuropsychiatric Inventory(以下,NPI)について観察期間を2 日間に短縮して重症度得点で判定したNPI 重症度2 日間評定版の尺度特性およびショートステイ利用前後の要介護者の神経精神症状(以下,NPS)の変化を検証することである。【方法】ショートステイ利用前後の調査対象者はショートステイを利用する要介護者50 名とその主介護者50 名とし,NPI 重症度2 日間評定版の信頼性と妥当性および利用前後のNPS の変化を検証した。【結果】NPI 重症度2 日間評定版は,検者内信頼性のカッパ係数は0.971,NPI とのSpearman の順位相関係数は0.937 であった。ショートステイ利用後ではNPI 重症度2 日間評定版は有意に低値であった。【結論】NPI 重症度2 日間評定版は良好な信頼性と妥当性を有することが示された。ショートステイの利用後には要介護者のNPS は悪化よりむしろ改善する可能性が示唆された。
【目的】本研究の目的は,軽症から中等症までのPD 患者のバランス障害の関連因子を検討すること。【方法】対象は修正版Hoehn&Yahr 重症度分類1 -3 のPD 患者32 名。評価項目はBerg Balance Scale(以下,BBS),MMSE,UPDRS 合計点,UPDRS part Ⅱ13–15,Ⅲ27–30(振戦,固縮,動作緩慢,軸症状),BMI,握力,等尺性膝伸展筋力,過去1 ヵ月転倒頻度,レボドパ一日換算量とし,重回帰分析にて検討した。【結果】重回帰分析の結果,BBS の得点と握力,UPDRS part Ⅲ–28(姿勢異常)との関連を認めた(R2 =0.30,p <0.05)。【結論】軽症から中等症までのPD のBBS には全身筋量を表す握力と姿勢異常の関与が示唆された。この結果は早期から予防的に運動介入することでPD のバランス障害を予防できる可能性があることを示しているのかもしれない。
【目的】糖尿病(以下,DM)患者の糖尿病多発神経障害(以下,DP)が前方および後方歩行に及ぼす影響を明らかにした。【対象】DM 患者68 例を対象にしてDP の有無で群分けを行った。対照群として年代に差がない地域在住者24 例を対象とした。【方法】前方および後方歩行による10 m 歩行を測定した。対照群,DP なし群,DP あり群の対象者要因と前方および後方の歩行要因の二元配置分散分析を行い,下位検定はBonferroni 法を用いた。【結果】歩行の要因と対象者の要因に交互作用が認められた。DM 患者は地域在住の対照群と比較して有意に歩行時間の延長と歩数の増加が認められた。前方歩行に関してはDP の有無による有意な差は認められなかった。一方,後方歩行に関してはDP あり群は有意に歩行時間の延長と歩数の増加が認められた。【結語】後方歩行時間によりDP 発症による機能異常を示唆できる可能性を見出した。
【目的】超音波画像診断装置を用いて健常若年男性の腰椎各レベルの多裂筋横断面積の腰椎レベル高低での差異と左右差の2 要因を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は過去に腰部の疾病や外傷,腰痛の既往がない上下肢ともに右利きの健常若年男性55 名とした。超音波画像診断装置を用いて,腹臥位で左右の第5・4・3・2・1 腰椎レベルの多裂筋横断面積を計測した。【結果】多裂筋横断面積の左右比較では,第5・4 腰椎レベルで右側が有意に大きく,第3・2・1 腰椎レベルでは有意差は認められなかった。また,左右ともに下位腰椎にいくにつれて多裂筋横断面積は有意に増大した。【結語】腰部多裂筋横断面積は下方にいくにつれて大きくなり,利き側がより発達することが示唆された。
【目的】本研究の目的は片麻痺患者に対するローラーを用いた上肢トレーニングの効果を検討することである。【方法】三次元動作解析装置を用い,片麻痺患者7 名のローラー運動20 回後,40 回後,60 回後で上肢最大挙上時の麻痺側肩関節屈曲角度の変化を分析した。その後同様に,片麻痺患者21 名のローラー運動20 回の即時的効果,経時的効果(1日20 回を2 週間)を上肢挙上動作の違いと肩の痛みの変化の違いから分析した。【結果】20 回のローラー運動直後に即時的な肩関節屈曲角度の改善が見られた。経時的な分析では,肩関節屈曲角度の改善が得られ(p<0.05),肩関節の痛みも改善する傾向を示した。【結論】ローラー運動は即時的に麻痺側上肢挙上運動時の肩関節屈曲角度を増大させ,従来のリハビリテーションと併用することでさらに肩関節痛の軽減効果が期待できることが示唆された。
【目的】介護予防事業の取り組みに積極的な中高年者を対象に,国際生活機能分類(以下,ICF)の参加に該当する項目が生きがいや役割の形成においてどのくらい重要と捉えられているかを明らかにする。【方法】中高年者500 名に対し,ICF の参加に該当する23 の質問項目を作成し,重要度を「まったく重要でない」から「とても重要」の4 件法で回答を求め,概要を見た。また回答状況を背景因子で比較した。【結果】324 名(64.8%)より有効回答が得られ,「まったく重要ではない」,「あまり重要ではない」という回答が半数以上を占めた項目が5 つ,年齢層によって回答に差がみられた項目が5 つ,性別によって差がみられた項目が5 つ,職業の有無によって差がみられた項目が2 つあった。【結論】ICF の参加に該当する項目の中には多数の者には必ずしも重要だと捉えられていない項目や,背景因子により重要度が異なる項目があることが明らかとなった。