理学療法学
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44 巻, 3 号
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研究論文(原著)
  • ─術後1 年間の前向き観察研究─
    原 毅, 石井 貴弥, 西村 晃典, 出浦 健太郎, 三浦 弘規, 草野 修輔, 久保 晃
    2017 年 44 巻 3 号 p. 181-189
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/02/08
    ジャーナル フリー

    【目的】頭頸部がん患者の術後補助療法実施が体格,運動機能,生活の質(以下,QOL)への影響を検討すること。【方法】対象は,周術期頭頸部がん患者24 例(男性21 例,女性3例,年齢54.2 ± 11.0 歳)とし,術後補助療法実施の有無で2 群に分類した。体格をBody Mass Index(以下,BMI),運動機能を6 分間歩行距離,握力(以下,GS),肩関節外転可動域(以下,SROM),QOL をShort-Form 36-Item Health Survey version 2(以下,SF36)で術前から術後12 ヵ月間に各々5 回評価した。【結果】術後補助療法実施群は,非実施群よりSROM,SF36 の身体・精神的日常役割機能,社会生活機能が有意に低く,BMI とGS の術後回復が有意に遅かった。【結論】術後補助療法を受けた頭頸部がん患者は,体格,運動機能の回復が遅く,手術前よりQOL が低かった。

  • 宮田 一弘, 篠原 智行, 臼田 滋
    2017 年 44 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/02/25
    ジャーナル フリー

    【目的】脳卒中者の歩行能力とバランス構成要素の関係をBalance Evaluation Systems Test(以下,BESTest)を用いて明らかにすることである。【方法】脳卒中者66 名を対象とし,BESTest,Functional Ambulation Category(以下,FAC),Maximum Walking Speed(以下,MWS),Timed Up and Go test(以下,TUG)を後方視的に調査した。偏順位相関にて,BESTest 各セクションと歩行評価指標との相関係数を算出した。【結果】FAC はセクションⅠとⅤのみ,MWS はセクションⅡ以外,TUG はすべてのセクションと有意な相関が認められた。【結論】最大パフォーマンスではなく,日常生活レベルでの指標であるFAC とは多くのバランス構成要素が関連しなかったが,セクションⅠとⅤはどの指標とも関連を認めたため,臨床介入に応用できる可能性が示唆された。

  • 牧迫 飛雄馬, 島田 裕之, 土井 剛彦, 堤本 広大, 堀田 亮, 中窪 翔, 牧野 圭太郎, 鈴木 隆雄
    2017 年 44 巻 3 号 p. 197-206
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/04/22
    ジャーナル フリー

    【目的】地域在住高齢者に適するようにShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)算出方法の修正を試みた。【方法】高齢者4,328 名をSPPB(0 ~12 点)で評価し,歩行速度と椅子立ち座りは対象者の測定値(四分位)を基に,立位バランスは立位保持の出来高によって配点した地域高齢者向けのSPPB community-based score(以下,SPPB-com)(0 ~10 点)を算出し,24 ヵ月の要介護発生との関連を調べた。【結果】対象者の78.7% でSPPB が,10.5% でSPPB-com が満点であった。SPPB-com が4 点以下で要支援・要介護発生率が高く(12.8%),SPPB-com,年齢,女性,MMSE が要支援・要介護発生と有意に関連していた。【結論】SPPB を再得点化したSPPB-com は地域在住高齢者の要支援・要介護リスクを把握する指標として有益となることが示唆された。

短 報
  • 宮本 沙季, 山口 智史, 松永 玄, 井上 靖悟, 近藤 国嗣, 大高 洋平
    2017 年 44 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/02/22
    ジャーナル フリー

    【目的】脳卒中後の中等度および重度片麻痺者の歩行速度と下肢伸展筋力の関係を検討する。【方法】脳卒中後中等度および重度片麻痺者29 名(平均年齢64 歳,平均発症後日数183 日)を対象とした。歩行速度と麻痺側および非麻痺側の下肢伸展筋力を計測し,両者の関係をSpearman の相関係数および偏相関係数を用いて解析した。【結果】相関分析では,麻痺側下肢筋力と歩行速度でrho = 0.70,非麻痺側下肢筋力と歩行速度でrho = 0.51 であり,それぞれ有意な正の相関を認めた(P <0.01)。一方,非麻痺側下肢伸展筋力を制御変数とした偏相関分析では歩行速度は麻痺側下肢伸展筋力と正の相関を認めた(rho = 0.55,P <0.05)。【結語】脳卒中後の中等度および重度片麻痺者において,歩行速度には両側下肢に共通する成分のほかに麻痺側の下肢伸展筋力の特徴が関連していることが示唆された。

  • ─信頼性・妥当性の検討─
    松田 雅弘, 新田 收, 古谷 槙子, 池田 由美, 楠本 泰士
    2017 年 44 巻 3 号 p. 213-218
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    【目的】発達障害児の運動イメージの未熟さが指摘されるが,幼児の運動イメージを評価する方法はない。幼児版運動イメージ評価尺度を開発し,評価の信頼性・妥当性を定型発達児で検討した。【方法】対象は42 名,そのうち13 名に再度同じ評価を実施した。評価は対象児に5 種類の基本肢位から1~2段階の姿勢変化をイメージさせ,その姿勢の絵カードを回答させた。同一評価者が36 点満点で評価した。分析は年齢との関連性をSpearman の相関係数,評価結果の信頼性を級内相関係数ICC,内的整合性にはCronbach’sのα 係数を求めた。【結果】運動イメージ評価指標と年齢との相関はrs = 0.72 と強い関連性を示した。ICC(1,1)は0.859 と高い信頼性があった。Cronbach’sのα 係数は0.829 で高い内的整合性を示した。【結論】今回の運動イメージの評価の妥当性と信頼性が確認でき,今後発達障害児の評価指標になりえると示唆された。

  • 滝本 幸治, 竹林 秀晃, 奥田 教宏, 宅間 豊, 井上 佳和, 宮本 祥子, 岡部 孝生, 宮本 謙三
    2017 年 44 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】Walking Stroop Carpet(以下,WSC)課題による転倒リスク評価の有用性について検討することを研究目的とした。【方法】対象は地域在住高齢者で,転倒群30 名と非転倒群70 名とした。WSC は,5 m の歩行路に「赤色」「青色」「黄色」「緑色」と書かれたターゲットを横4 列×縦10 列に配置したもので,ターゲットの文字は異なる色彩で印刷されており,文字と色彩は一致しない。WSC 課題は3 条件実施され,たとえば色条件では指示した色彩のみを選択し踏み歩くことが求められ,所要時間を計測した。【結果】WSC 課題(色条件)は,転倒群の所要時間が有意に遅延しており,ロジスティック回帰分析の結果,色条件のみが転倒を説明する変数として抽出された(オッズ比1.62,95% 信頼区間=1.00–2.60)。【結語】WSC 課題(色条件)は,転倒リスク評価に利用可能であることが示唆された。

症例報告
  • 星野 高志, 小口 和代, 寳珠山 稔
    2017 年 44 巻 3 号 p. 226-231
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/02/21
    ジャーナル フリー

    【目的】多発性単神経炎とステロイドミオパチー(以下,SM)を呈した好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以下,EGPA)患者への理学療法(以下,PT)について報告することである。【方法】症例はEGPA を発症した40 歳代男性で多発性単神経炎により感覚障害を伴う右下垂足と左握力低下に加え,SM が疑われる近位筋力低下を呈していた。入院13 日目より開始したPT ではステロイド量および好酸球数を指標として病勢に応じて低強度の運動からはじめ,下垂足には早期から短下肢装具を使用した。SM に対する筋力強化の是非には議論があるためADL 維持程度に留めた。【結果】右下垂足と左握力低下は残存したが,近位筋力は改善し,装具装着下での歩行が可能となり,入院50 日目に退院した。【結論】EGPA に対し,1)病勢に応じた運動負荷の調節,2)多発性単神経炎による局所症状への対応,3)SM の可能性に留意すること,以上を考慮してPT を実施した。

  • 小谷 尚也, 後藤 恭輔, 鎌田 聡, 塩田 悦仁, 山本 卓明, 井上 亨
    2017 年 44 巻 3 号 p. 232-237
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/06/20
    [早期公開] 公開日: 2017/02/28
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿神経麻痺は人工股関節全置換術(以下,THA)後の合併症として稀に起こり,回復には長期間を要する。THA 後,大腿神経麻痺を合併した1 症例に対し,ロボットスーツHAL® 単関節タイプおよび随意運動介助型電気刺激装置IVES® を用いた運動を行い,良好な結果を得たため報告する。【対象】THA 後,大腿神経麻痺を合併し,手術翌日に大腿四頭筋MMT0 であった50 歳代女性。【方法】HAL® 単関節タイプとIVES® を用い,麻痺の回復状況に応じて適宜内容を変更しながら運動を行った。【結果】術後2 週でわずかな膝関節伸展運動が可能となり,術後4 週でMMT2,術後6 週でMMT3,術後9 週でMMT4(非術側比54%),術後12 週でMMT5(非術側比97%)へと改善を認めた。【結論】大腿神経麻痺に伴う大腿四頭筋の筋出力低下に対し,HAL® 単関節タイプおよびIVES® を用いた神経筋再教育によって早期の回復をもたらす可能性が示唆された。

理学療法トピックス
シリーズ「内部障害に対する運動療法の最前線」
シリーズ「中枢神経機能の計測と調整」
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