理学療法学
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45 巻, 3 号
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研究論文(原著)
  • ─新しい妥当性観にもとづく妥当化─
    下井 俊典
    2018 年 45 巻 3 号 p. 143-149
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/03/20
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は我々が絶対信頼性を検討した継ぎ足歩行テストについて,新しい妥当性観にもとづいて,構成概念妥当性を検討することを目的とした。【方法】対象は介護予防事業に参加した493 名の地域在住健常成人である。5 m の継ぎ足歩行テストの所用時間を継ぎ足歩行時間(以下,TGT)とし,所要時間とミス・ステップ数から算出する継ぎ足歩行指数(以下,TGI)の2 種類のテスト値について妥当性を検討した。年齢・性によるテスト結果を比較するとともに,測定後2 年間の転倒経験を追跡調査できた66 名についてロジスティック回帰分析を用いて転倒予測に対する各因子の影響度を検討した。【結果】TGT,TGI のいずれも年齢・性による差が認められた。転倒の予測因子としてTGI が選択され,オッズ比1.06 およびカットオフ値として24.0 が得られた。【結論】TGI はより運動能力の高い高齢者のバランス能力,特にその比較的長期的な将来の転倒を予測できる評価方法であることが明らかとなった。

  • 和田 崇, 松本 浩実, 谷島 伸二, 萩野 浩
    2018 年 45 巻 3 号 p. 150-157
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/03/24
    ジャーナル フリー

    【目的】術前腰部脊柱管狭窄症患者における痛みの破局的思考の実態および関連因子を明らかにすること。【方法】腰部脊柱管狭窄症の手術予定患者45 名(男性:25 名,女性:20 名,平均年齢:68.4 ± 9.4歳)を対象に横断研究を行った。基本属性を収集し,下肢痛,腰痛,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS),歩行速度,Timed Up and Go test,握力測定,筋量測定,連続歩行距離を評価した。PCS のカットオフ値を30 点とし「重度PCS 群」と「軽度PCS 群」に分け比較し,多変量解析を行った。【結果】PCS は平均34.7 点であった。多変量解析の結果,歩行速度(OR: 0.036,95%CI: 0.001–0.937,p = 0.046)がPCS 関連因子として抽出された。【結論】本患者群のPCS は高値であり,歩行速度がPCS の関連因子であることが示唆された。

  • 櫻井 瑞紀, 新田 收, 松田 雅弘, 妹尾 淳史
    2018 年 45 巻 3 号 p. 158-165
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

    【目的】非特異的腰痛(以下,NLBP)では深部筋機能不全やサイドブリッジ持久力テスト(以下,SBET)保持時間低下が報告されているが,その際の深部筋疲労についての報告はない。本研究の目的は,NLBP 者におけるSBET 実施時の体幹深部筋疲労を,T2 値を指標として明らかにすることである。【方法】対象は腰痛のない対照群とNLBP 群の2 群とした。測定項目はSBET 保持時間と,SBET 前後の深部筋T2 値とした。統計解析はSBET 前後と腰痛の有無を独立変数,深部筋T2 値を従属変数とした2 元配置分散分析および単純主効果の検定を実施した。【結果】SBET 保持時間はNLBP 群が有意に低値を示した。深部筋T2 値においてSBET 前後・腰痛経験の主効果および交互作用が示された。単純主効果の検定ではNLBP 群のPost でT2 値は有意に高値を示した。【結論】NLBP 者では体幹筋等尺性持久力低下とSBET における体幹深部筋易疲労性を認めた。

  • 藤田 玲美, 松井 康素, 太田 進, 河村 顕治, 元田 弘敏, 齋藤 圭介, 原田 敦
    2018 年 45 巻 3 号 p. 166-174
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/05/18
    ジャーナル フリー

    【目的】変形性膝関節症患者において,運動機能の影響を調整した呼吸機能と姿勢の関連を検討すること。【方法】変形性膝関節症患者28 名および対照群とする地域在住健常高齢者35 名を対象に運動機能は膝関節伸展筋力,最大歩行速度でのTimed Up and Go test の所要時間,呼吸機能は肺活量,1 秒量,姿勢は頸部屈曲角度,胸椎後彎角,腰椎前彎角,膝関節屈曲角度を測定した。呼吸機能を目的変数,年齢,身長,体重,運動機能を制御変数,姿勢の構成要素を説明変数とした階層的重回帰分析を行い,制御変数の影響を統制したうえで各呼吸機能にどの姿勢が影響するかを検討した。【結果】変形性膝関節症患者では,1 秒量において膝関節屈曲角度(β = –0.56, p = 0.003)が統計的に有意であった。地域在住健常高齢者では呼吸機能と姿勢の関連はなかった。【結論】変形性膝関節症患者の呼吸機能の低下には,膝関節屈曲位が有意に関係していた。

  • 加藤 倫卓, 森 雄司, 光地 海人, 森本 大輔, 角谷 星那, 鬼頭 和也, 濱 貴之, 小鹿野 道雄, 田邊 潤
    2018 年 45 巻 3 号 p. 175-182
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/05/23
    ジャーナル フリー

    【目的】植込み型除細動器(以下,ICD)あるいは両心室ペーシング機能つき植込み型除細動器(以下,CRT-D)を装着した慢性心不全(以下,CHF)患者に対するストレッチング体操が,血管内皮機能と運動耐容能に与える影響を検討した。【方法】対象をICD あるいはCRT-D が植え込まれた運動習慣のないCHF 患者32 名(男性27 例,平均年齢69 ± 9 歳)とし,ストレッチング体操を実施するストレッチング群と対照群に無作為に分類した。4 週間の介入前後の反応性充血指数(以下,RHI)と6 分間歩行距離(以下,6MWD)を評価した。【結果】ストレッチング群のRHI と6MWD は,介入前と比較して介入後に有意に増加した(P <0.01,P <0.01)。介入前後のRHI と6MWD の変化量は,有意に正相関(r =0.53,P < 0.05)を示した。【結論】ICD あるいはCRT-D 患者に対するストレッチング体操の効果として,血管内皮機能障害と運動耐容能の改善が考えられた。

症例報告
  • 門脇 敬, 阿部 浩明, 辻本 直秀
    2018 年 45 巻 3 号 p. 183-189
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/03/19
    ジャーナル フリー

    【目的】発症後6 ヵ月経過した時点で歩行が全介助であった重度片麻痺者に対し,長下肢装具を用いて積極的な歩行練習を実施したところ,屋内監視歩行を獲得したため報告する。【対象】脳出血発症から6 ヵ月が経過したものの歩行に全介助を要する重度左片麻痺と高次脳機能障害および視野障害を呈した50 歳代の女性である。【方法】当院転院後,足部に可動性を有す長下肢装具(以下,KAFO)を用いて行う前型歩行練習を中心とした理学療法を実施した。【結果】麻痺側下肢筋力の一部は改善し,380 病日に四脚杖と短下肢装具を使用して屋内監視歩行が可能となった。【結論】重度片麻痺例に対してKAFO を用いた前型歩行練習は,下肢の支持性を向上させ,より高い歩行能力を獲得することに貢献できる可能性がある。発症から長期間経過した症例に対しても,必要に応じて下肢装具を積極的に使用し,機能の改善を図る視点をもつことが重要であると思われた。

  • 中屋 雄太, 赤松 正教, 片山 訓博, 大木元 明義, 北岡 裕章
    2018 年 45 巻 3 号 p. 190-196
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/04/18
    ジャーナル フリー

    【目的】恒久的ペースメーカー留置後に不適切な心拍応答が生じた肥大型心筋症を基礎疾患にもつ症例を担当し,心肺運動負荷試験を行うことで適切な運動処方での有酸素運動を提供することができたので報告する。【症例と経過】70 歳男性,労作時に著明な息切れを生じていた。第3 病日より有酸素運動とレジスタンストレーニングを中心に訓練を進めた。【結果】第30 病日,自転車エルゴメータを使用した心肺運動負荷試験にて,変時不全の影響で突然死リスクが高い状態であることが示唆された。そこで,恒久的ペースメーカーの加速度センサーを鋭敏に変更した。翌日の心肺運動負荷試験にて,心拍応答の改善,突然死リスクの減少,適切な運動処方での有酸素運動が可能となった。【結語】自転車エルゴメータを使用した心肺運動負荷試験においても,恒久的ペースメーカーの調整を行うことで,適切な運動処方が行える可能性が示唆された。

実践報告
  • ─非免荷型トレッドミル歩行練習との比較─
    佐藤 瑞騎, 倉田 昌一, 岩倉 正浩, 大倉 和貴, 新田 潮人, 照井 佳乃, 佐竹 將宏, 塩谷 隆信
    2018 年 45 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/06/20
    [早期公開] 公開日: 2018/03/22
    ジャーナル フリー

    【緒言】片麻痺患者に対する部分免荷型トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)の即時効果を明らかにする。【方法】片麻痺患者10 名(平均年齢71 ± 11 歳)にBWSTT と非免荷型トレッドミル歩行練習(以下,FBWTT)を施行し,10 m 歩行試験の結果を比較・検討した。評価項目は歩行速度,歩幅,歩行率,左右・上下重心移動距離,左右・上下RMS,麻痺側脚・非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数とし,3 軸加速度計を用いて抽出した。【結果】BWSTT により最大歩行速度,歩幅,歩行率,麻痺側脚の1 歩行周期変動係数,上下RMS が有意に改善した。また同様の項目と非麻痺側脚の1 歩行周期変動係数においてBWSTT がFBWTT より有意な改善が認められ,歩行速度変化率は歩行率変化率と正の相関が認められた。【結論】BWSTTは片麻痺患者に対して歩行能力向上の即時効果が期待され,FBWTTよりも有意であった。また歩行速度の改善は歩行率の改善が寄与していた。

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シリーズ「エビデンスに基づく理学療法の確立をめざして ─各部門からの提言─」
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