理学療法学
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47 巻, 5 号
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研究論文(原著)
  • 吉岡 潔志, 松本 智博, 中村 晃大, 土屋 吉史, 瀬古 大暉, 北嶋 康雄, 沢田 雄一郎, 小野 悠介
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 385-392
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/10
    ジャーナル フリー

    【目的】アンドロゲン低下による球海綿体筋・肛門挙筋の筋萎縮に対する自走運動の効果を検証し,併せて,アンドロゲン低下による筋萎縮が他の骨盤底の筋にも共通する特徴であるかを検証する。【方法】3 ヵ月齢雄性マウスを対象とし,去勢術を施す群,去勢術後に自走ケージで飼育する群,偽手術群に無作為に分けた。手術から8 週間後に,後肢筋および骨盤底筋の重量,筋線維直径を測定した。【結果】後肢筋の重量に3 群間で差はみられなかった。球海綿体筋と肛門挙筋は去勢により顕著に萎縮したが,自走運動による変化は認められなかった。長趾伸筋の筋線維直径は去勢の影響を受けず,尿道括約筋では有意に小さい値を示した。【結論】全身性の自走運動ではアンドロゲン低下による球海綿体筋,肛門挙筋の萎縮を抑制することができなかった。また,アンドロゲン低下による筋萎縮は,骨盤底筋に共通して見られる,身体部位単位での筋の特徴であることが示唆された。

  • 福元 裕人, 福島 洋樹
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 393-401
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/17
    ジャーナル フリー

    【目的】回復期病棟退院後の運動に関する質問紙調査で得られた心理様相と退院後の運動時間との関連を調査することを目的とした。【方法】対象は富山県リハビリテーション病院・こども支援センター回復期病棟入院患者100 名とし,質問紙調査に加え,任意で退院後の運動時間の計測を依頼した。質問紙は運動継続に関する既存のモデルや理論をもとに作成した。運動時間計測は退院日から1 ヵ月間,日記方式の自己活動記録法としてカレンダーにシールを貼る方法を採用した。【結果】質問紙は100 名,運動時間は35 名のデータが得られた。質問紙の因子分析の結果,25 項目4 因子に収束した。信頼性の検証として,25 項目についてα 係数を算出したところα = 0.895 であった。この質問紙に表される心理様相と,退院後運動時間との相関分析で有意な弱い相関が確認された。【結論】回復期病棟退院後の運動に関する心理様相と退院後の運動時間の間に関連性があることが示唆された。

  • 和中 秀行, 岩田 晃, 佐野 佑樹, 大嶺 俊充, 山本 沙紀, 杣友 ひかり, 安田 晴彦, 西井 孝
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 402-410
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/18
    ジャーナル フリー

    【目的】人工膝関節全置換術(以下,TKA)前後の歩行中の両下肢間協調性の変化と影響を与える要因について,Phase coordination index(以下,PCI)を用いて検討した。【方法】対象はTKA 患者55 名とし,各対象者の術前と退院前日のPCI を比較した。また,各時期でPCI と基本属性,術側膝関節痛,両膝関節伸展筋力,両膝関節可動域の関係について,相関係数および重回帰分析を用いて検討した。【結果】TKA 患者のPCI は術前6.43 ± 3.20% で,退院前日(術後約17 日)7.01 ± 3.14% と同程度であった。また,術前はPCI と非術側膝関節伸展筋力,疼痛と有意な相関が認められ,非術側筋力がもっとも影響の強い項目として抽出された。一方,術後はPCI と年齢とにのみ有意な相関が認められた。【結論】TKA 術前後の歩行中の両下肢間協調性は同程度であるが,各時期で関連する要因が異なることが明らかとなった。

  • 小ノ澤 真一, 染矢 富士子, 塗谷 栄治
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 411-419
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/22
    ジャーナル フリー

    【目的】長期人工呼吸器管理患者の肺コンプライアンス関連因子を検討すること。【方法】静肺コンプライアンス(以下,Cstat),動肺コンプライアンス(以下,Cdyn)を測定し,無気肺,胸水,自発呼吸の有無に分け2 標本t 検定を行い,換気状態,患者基本データ,血液生化学所見について相関分析を行った。【結果】無気肺がある患者のCstat が有意に低下し,Cstat とCdyn ともにBMI,Rapid shallow breathing index(RSBI),肺胞気動脈血酸素分圧較差,人工呼吸器管理日数に有意な相関を認めた。またCstat では年齢,CRP,肺炎発症回数においても有意な相関を認めた。【結論】Cstat,Cdyn に対する体格の影響は大きく,またCstat は無気肺,肺炎発症回数,炎症性変化に影響を受ける可能性が示唆された。またCstat,Cdyn の低下が換気効率に影響を与える可能性が示唆された。

  • 加藤 剛平, 倉地 洋輔
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 420-430
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/08/04
    ジャーナル フリー

    【目的】本邦における健常な地域在住前期高齢者に対する運動プログラムによる転倒予防の費用対効果を明らかにした。【方法】公的医療・介護の立場から分析した。質調整生存年数(Quality Adjusted Life Years:以下,QALY)を効果,医療費と介護費を費用に設定した。マルコフモデルを構築して,65 歳の女性と男性の各1,000 名を対象に当該プログラムを実施した条件における10 年後の増分費用対効果比(Incremental Cost-Effective Ratio:以下,ICER)を シミュレーション分析した。費用対効果が良好とするICER の閾値は5,000,000 円/QALY 未満とした。【結果】女性,男性集団のICER は順に1,550,900 円/QALY,2,277,086 円/QALY であった。【結論】本邦において,当該プログラムの費用対効果は良好である可能性が高いことが示唆された。

  • 伊藤 創, 葉 清規, 松田 陽子, 室伏 祐介, 川上 照彦
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 431-440
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/08/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究目的は,肩関節疾患保存例に対して理学療法を行い,初回時の夜間痛の有無における治療経過,また,関節注射による影響を調査し,理学療法の有用性を示すことである。【方法】対象は,肩関節疾患保存例72 例である。初回時の夜間痛の有無で2 群に分類し,また,夜間痛あり群のうち,初診時に関節注射実施の有無で2 群に分類し,治療開始1,3 ヵ月後までROM,動作時VAS,アテネ不眠尺度(以下,AIS)の治療経過の差について解析した。【結果】 夜間痛あり,なし群の経過に交互作用がみられ,夜間痛あり群でROM,動作時VAS,AIS の高い改善度が得られた。また,関節注射併用例で初回から1 ヵ月後で動作時VAS の高い改善度が得られた。【結論】肩関節疾患保存例に対する理学療法により,夜間痛の有無にかかわらずROM,VAS,AIS の改善が得られ,夜間痛を有する場合,関節注射を併用することで早期に疼痛の改善が得られる。

  • 藤井 廉, 今井 亮太, 西 祐樹, 田中 慎一郎, 佐藤 剛介, 森岡 周
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 441-449
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/08/06
    ジャーナル フリー

    【目的】運動恐怖を有する腰痛有訴者における重量物持ち上げ動作時の体幹の運動障害の特徴を明らかにすることである。【方法】腰痛がある労働者(以下,腰痛群)26 名と腰痛がない労働者(以下,非腰痛群)18 名が参加した。課題は重量物持ち上げ動作を5 回行い,動作時の体幹屈曲・伸展角速度および運動時間を計測した。運動恐怖の指標であるTSK を基に,腰痛群を低恐怖群(12 名)と高恐怖群(14 名)に群分けし,3 群間における体幹角速度,運動時間の比較および痛み関連因子との関係性を分析した。【結果】高恐怖群は非腰痛群,低恐怖群と比較して,1 試行目の体幹の伸展運動に要する時間に有意な延長と,体幹伸展角速度に有意な低下を認めた。腰痛群における1 試行目の体幹伸展角速度と運動恐怖に有意な正の相関を認めた。【結論】運動恐怖を有する腰痛有訴者は,重量物を挙上する際の体幹伸展方向への運動速度が低下することが明らかとなった。

  • ─膝関節内反モーメントからみる力学的関節負担の検討─
    伊藤 将円, 井川 達也, 原 毅, 丸山 仁司
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2020 年 47 巻 5 号 p. 450-458
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/08/08
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者における歩行器・歩行車の種類の違いによる膝関節内反モーメント(以下,KAM)の変化を明らかにし,どの補助具が関節負担の軽減に有用か明らかにする。【方法】対象は65 歳以上の高齢者19 名とした。各対象者に独歩,車輪付き歩行器,椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車の4 条件を計測した。KAM 最大値,膝関節内反角度,床反力を条件間で比較した。【結果】KAM は,補助具すべてで独歩と比較し有意に減少,椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比べ有意に減少した。膝関節内反角度は椅子付き歩行車,前腕支持台付き歩行車が車輪付き歩行器と比較し有意に減少した。床反力鉛直方向成分は補助具すべてで独歩と比べ有意に減少,前腕支持台付き歩行車は車輪付き歩行器,椅子付き歩行車と比較し有意に減少した。【結論】椅子付き歩行車と前腕支持台付き歩行車は独歩や車輪付き歩行車と比較してKAM の減少を認めた。

症例研究
  • 草場 正彦, 勝島 詩恵, 沢田 潤, 胡麻 夏帆, 大浦 啓輔, 伊藤 武志, 真壁 昇, 惠飛須 俊彦, 柳原 一広
    原稿種別: 症例研究
    2020 年 47 巻 5 号 p. 459-464
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/21
    ジャーナル フリー

    【緒言】定期的な外来でのがんリハビリテーション(以下,外来がんリハ)を実施し,身体機能と手段的日常生活動作(以下,IADL)が向上した進行乳がんの症例を経験した。【症例】52 歳,乳がん多発脳転移にて5 年間,外来化学療法中の女性。外来がんリハ介入時,IADL の評価であるFrenchay Activities Index(以下,FAI)は18 点,身体機能の評価であるShort Physical Performance Battery(以下,SPPB)は6 点(バランス1 点,歩行4 点,起立1 点)であった。外来がんリハは13 週間の間に1回20分,合計9 回,外来化学療法室で筋力増強運動とバランス練習および自宅での自主トレーニング指導を実施した。介入後,FAI は23 点,SPPB は9 点(バランス3 点,歩行4 点,起立2 点)に改善した。【結語】定期的な外来リハ介入により身体機能が向上し,IADL の改善につながった可能性が示唆された。

短  報
  • 佐藤 満, 山下 和彦, 仲保 徹, 加茂野 有徳
    原稿種別: 短 報
    2020 年 47 巻 5 号 p. 465-473
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/08/07
    ジャーナル フリー

    【目的】体性感覚の低下は高齢者の転倒にも深く関与する。本研究は高齢者の足底触覚閾値を測定し,転倒事象との関連を明らかにする。【方法】通所介護施設の利用者110 名を対象に,高い刺激強度再現性を有する足底感覚計で足底触覚閾値を測定した。併せて下肢筋力など9 項目の心身機能を測定し,転倒群と非転倒群の間で比較した。さらに転倒を目的変数としたロジスティック回帰分析にて各変数のオッズ比を算出し,過去1 年間の転倒歴に対する足底触覚閾値の関連を検討した。【結果】転倒群と非転倒群との比較で足底触覚閾値,足関節背屈角度に有意差が認められた。性別比と疾患の有無で調整したオッズ比は足底触覚閾値と足関節背屈角度が有意であった。【結論】足底触覚閾値は高齢者の転倒を説明する変数として強い関連が認められた。要介護認定者の集団では転倒リスクの評価に従来の指標に加えて足底触覚閾値の測定が有効である可能性が示唆された。

症例報告
  • 石原 広大, 井澤 和大, 森沢 知之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 47 巻 5 号 p. 474-482
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/07/16
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は,腹部大動脈瘤破裂術後に腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:以下,ACS)を合併し,術後経過が重症化した症例に対して,理学療法を施行した。その後,良好な転帰を得たため報告する。【症例紹介】症例は,腹部大動脈瘤破裂術後にACS を発症した60 歳代後半の患者である。術後経過において,ACS による循環不全や呼吸不全,多臓器不全が認められ,長期集中治療管理と入院加療が必要であった。我々は,ACS の病態や術後経過に応じて,呼吸理学療法や離床,運動療法を展開した。その結果,症例は人工呼吸器の離脱が可能であった。また,身体機能と運動耐容能は向上し,自宅退院が可能であった。【結論】腹部大動脈瘤破裂術後にACS を合併した症例に対しても,病態に応じた慎重な理学療法は実施可能であり,早期の運動機能と基本動作能力の獲得に貢献できる可能性がある。

実践報告
  • 浅野 大喜, 瀬戸 雄海, 山崎 千恵子, 清水 健太, 瀬川 麻衣子, 小林 正行
    原稿種別: 実践報告
    2020 年 47 巻 5 号 p. 483-490
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/20
    [早期公開] 公開日: 2020/09/12
    ジャーナル フリー

    【目的】COVID-19 により入院した高齢者と若年者の2 例に対し,感染対策をしながら理学療法を実施した。今回,その取り組み方法と症例の経過について報告する。【方法】実施にあたり,部署内で,担当者の選定,実施方法の選択,実施中の留意点の取り決めを行った。それにしたがい高齢者には直接介入,若年者には間接介入を選択し実施した。評価は,症例1(高齢者)は運動,認知機能について,症例2(若年者)は精神機能について評価を行った。【結果】症例1 は,運動,認知機能ともに初期評価時より向上し,入院32 日目に入院前に生活していた施設に退院した。症例2 は,運動機能の維持だけでなく,抑うつや混乱などの精神機能にも向上がみられ,入院24 日目に自宅退院となった。【結論】入院中のCOVID-19 患者に対する理学療法は,高齢者,若年者いずれの場合においても,運動機能,認知・精神機能に対して効果があることが示唆された。

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