理学療法学
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48 巻, 1 号
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研究論文(原著)
  • ─地域在住高齢者を対象とした研究─
    世古 俊明, 隈元 庸夫, 三浦 紗世, 松田 涼, 坂口 友康, 伊藤 俊一, 森 満
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/15
    ジャーナル フリー

    【目的】pull-type hand-held dynamometer(以下,pull-type HHD)を用いた,簡易的な脚伸展筋力測定法の有用性を検証した。【方法】対象は高齢者108 名とし,pull-type HHD で脚伸展筋力と膝伸展および屈曲筋力(以下,KE,KF)を測定した。脚伸展筋力は膝屈曲60 度(以下,LP60),30 度の2 施行とした。移動機能の指標には,ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)の有無,最大・至適歩行速度を用いた。筋力値の再現性は,ICC(1,1)とBland-Altman 分析で,移動機能に対する筋力値の関連は,多変量解析で検討した。【結果】各筋力値のICC(1,1)は0.92 以上であり,いずれも固定誤差を認めた。ロコモにはLP60 が,最大歩行速度にはLP60,KE,KF が,至適歩行速度にはKE が有意に抽出された。【結論】pull-type HHD によるLP60 での測定は,最大歩行速度のみならずロコモの状態を反映する測定法となり得る。

  • 須藤 大輔, 景山 剛, 原口 力也, 山本 澄子
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/16
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者の身体機能と身体能力認識が運動戦略に与える影響を隙間通過課題を用いて検討することである。【方法】対象は若年者12 名と高齢者20 名で三次元動作解析装置,アイマークレコーダを使用し,課題は5 m の歩行路にパーテーションを設置し隙間を通過する動作とした。高齢者は身体機能評価から転倒Low risk(以下,LR 群),High risk(以下,HR 群)に分けた。さらに隙間通過する際に身体を回旋するか否か質問し,申告通りか否かで身体能力認識を確認し正確群と誤認識群に分けた。【結果】 HR 群LR 群ともに身体幅よりも狭い隙間を通過する際に若年者に比べ歩幅が縮小し,HR 群の骨盤回旋角度はLR 群に比べ大きかった。また身体能力認識を誤認識する高齢者は障害物注視時間が長かった。【結論】 高齢者の身体機能と身体能力認識は,障害物回避時の運動学的な変化と障害物注視時間に影響することが示唆された。

  • ─熟達理学療法士の成長を促す経験とそこから得る知識や教訓等─
    池田 耕二, 田坂 厚志, 粕渕 賢志, 城野 靖朋, 松田 淳子
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/19
    ジャーナル フリー

    【目的】熟達理学療法士(以下,PT)の経験学習プロセスから成長を促す経験と学習内容を明らかにし,そこからPT に対する経験学習支援方法を示唆すること。【方法】対象は熟達PT3 名であった。方法は質的研究の手法と松尾の経験学習プロセス解明の枠組みを用いた。【結果】熟達PT はキャリアの初期に「障がいを有した患者の社会参加に向けた実践経験」から〈人とのかかわりや社会・生活に対する実感〉を,初期~中期に「予期できぬ否定的な経験」から〈医療の厳しさ〉等や「重度患者を基本的理学療法で改善した経験」から〈基本的理学療法技術の有効性〉等を,中期~後期に「実習生や新人に対するサポート経験」から〈自己内省による知識・技術の整理〉等や「多職種連携による介入経験」から〈コミュニケーション〉等を学習していた。【結論】熟達PT の成功を促す経験に焦点化し経験を積ませることは,PT の経験学習支援につながると考えられる。

  • 前田 拓也, 上出 直人, 戸﨑 精, 柴 喜崇, 坂本 美喜
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 29-36
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/05
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は地域在住高齢者の呼吸機能に対する運動機能,認知機能,体組成との関連性について検討した。【方法】対象は要介護認定のない65 歳以上の地域在住高齢者347 名とした。呼吸機能として努力性肺活量および1 秒量,運動機能として握力,下肢筋力,Chair Stand Test,Timed Up and Go Test(以下,TUGT),5 m 快適・最速歩行時間,認知機能としてTrail Making Test part A(以下,TMT-A),体組成として骨格筋指数および体脂肪率を評価した。呼吸機能と運動機能,認知機能,体組成との関連を重回帰分析にて分析した。【結果】年齢,性別,体格,喫煙などの交絡因子で調整しても,努力性肺活量は握力,TUGT,TMT-A と有意な関連を示した。同様に,1 秒量は握力,TMT-A と有意な関連を示した。【結論】地域在住高齢者の呼吸機能は運動機能,認知機能が関連することが示唆された。

  • ─決定木分析を用いた検討─
    川端 悠士, 木村 光浩
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 37-45
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/06
    ジャーナル フリー

    【目的】人工股関節全置換術例の術後3 週における靴下着脱動作獲得に影響を与える要因を明らかにすること。【方法】対象は後方アプローチによる人工股関節全置換術を施行した115 例とした。調査項目は性別,年齢,関節可動域(股関節屈曲・伸展・内転・外転・外旋,膝関節屈曲,胸椎屈曲,腰椎屈曲),股関節屈曲・開排位における靴下着脱動作の可否とした。従属変数を靴下着脱動作の可否,独立変数を関節可動域として,決定木分析を行った。【結果】決定木分析の結果,靴下着脱動作獲得に影響を与える要因として,股関節屈曲・外旋可動域,胸椎屈曲可動域が抽出された。また股関節屈曲可動域が不良であっても,股関節外旋可動域および胸椎屈曲可動域が良好であれば,高い確率で靴下着脱動作が可能となることが明らかとなった。【結論】人工股関節全置換術後早期の靴下着脱動作獲得には,股関節屈曲・外旋可動域,胸椎屈曲可動域の改善が重要である。

  • ─多施設共同前向きコホート研究─
    佐藤 博文, 大川 信介, 欠端 伶奈, 高山 明日香, 大熊 克信, 額田 俊介, 藤野 雄次, 深田 和浩, 三木 啓嗣, 小林 陽平, ...
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 46-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/15
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は急性期脳梗塞者を対象とし,退院時の基本動作能力に影響を与える因子を検討することである。【方法】本研究は多施設共同研究として実施した。年齢や病前の生活状況等の基本情報,リハビリテーション進行状況,National Institutes of Health Stroke Scale(以下,NIHSS)等の神経学的評価や日常生活動作能力について調査し,退院時Ability for Basic Movement Scale(以下,ABMS Ⅱ)に影響を与える因子を調査した。【結果】259 名を解析対象とした。退院時ABMS Ⅱには初回NIHSS,離床時Scale for Contraversive Pushing,意識障害の有無,再梗塞の有無,出血性梗塞の有無,病前modified Rankin Scale が関与した。【結論】急性期脳梗塞者の基本動作能力は,神経学的障害や脳梗塞再発に影響されることが判明した。

  • ─生活活動範囲に着目して─
    佐藤 衛, 佐藤 雅昭, 川口 徹
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 55-62
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/19
    ジャーナル フリー

    【目的】在宅障害高齢者の生活活動範囲の差異に影響を及ぼす身体,精神要因を明らかにすること。【方法】在宅障害高齢者61 名を対象とした。評価項目は,Home-based Life Space Assessment と握力,大腿四頭筋筋力,Timed-Up and Go test(以下,TUG),片脚立位時間,Activities of Daily Living(以下,ADL),日常生活動作効力感尺度,うつ尺度,主観的健康観とした。補助具の使用を可として到達した最大活動範囲で自宅敷地内群,自宅敷地外群の2 群に分類し,身体,精神要因の差を検討した。【結果】自宅敷地外群は自宅敷地内群に比べ,有意にTUG が速く,ADL,日常生活動作効力感尺度が高かった。【結論】在宅障害高齢者の生活活動範囲の差異には,歩行やバランス能力を含めたパフォーマンス,日常生活活動とその自信度が影響していた。

  • 松﨑 英章, 齊藤 貴文, 楢﨑 兼司, 熊谷 秋三
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 63-71
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】地域在住自立高齢者を対象にバランス機能で層別し,客観的に評価した中高強度身体活動と2 年後の転倒発生リスクの関連性を検討した。【方法】地域在住自立高齢者602 名を対象とし,ベースラインにおける開眼片脚立位時間を用いて層別した。三軸加速度センサー内蔵活動量計を用いて,中高強度身体活動時間,歩行活動時間,生活活動時間を測定した。アウトカムは,2 年後のフォローアップ調査における過去1 年間の転倒発生の有無とした。【結果】開眼片脚立位高値群では,中高強度身体活動時間の中間値群で転倒発生リスクがもっとも低くなる結果を認めた。開眼片脚立位低値群では,各身体活動指標の最低値群に比較して,中高強度身体活動時間の中間値群と最高値群および歩行活動時間の最高値群で有意に高い転倒発生リスクを認めた。【結論】地域在住自立高齢者における中高強度身体活動と転倒発生リスクの関連性は,バランス機能によって異なることが示唆された。

  • ─立位および四つ這い位での脊椎可動域に着目して─
    友成 健, 後藤 強, 佐藤 紀, 大澤 俊文, 後東 知宏, 西良 浩一, 加藤 真介
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 72-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/11/02
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究の目的は,末期変形性股関節症(以下,股OA)患者の脊椎アライメントおよび脊椎可動域を明らかにすることである。【方法】末期変形性股関節症患者11 名(以下,OA 群)と健常高齢者16名(以下,対照群)を対象とした。測定項目としてspinal mouse® を用い,立位での静的な脊椎アライメントの比較および,立位および四つ這い位での動的な脊椎可動域を測定した。【結果】立位による胸腰椎の脊椎アライメントは両群間に有意差は認めなかった。立位および四つ這い位におけるOA 群の腰椎可動域は,対照群と比較して有意な減少を認めたが,胸椎可動域は有意差を認めなかった。【結論】末期股OA 患者は静的な胸腰椎アライメントは健常高齢者と差を認めないが,動的な腰椎可動域に関しては減少することが示唆された。

  • 横田 純一, 髙橋 蓮, 松川 祐子, 松島 圭亮
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/11/16
    ジャーナル フリー

    【目的】60 歳以上の高齢心不全患者における自宅退院の予測因子をリハビリテーション(以下,リハ)開始時および退院時のパラメータから明らかにする。【方法】急性期病院に心不全急性増悪で入院した患者305 例を,自宅群242 例と非自宅群63 例に分け,入院時および退院時の身体機能を比較した。また,自宅退院の予測因子およびカットオフ値を検討した。【結果】自宅群では,リハ開始時および退院時の膝伸展筋力,Short Physical Performance Battery(以下,SPPB),Barthel Index(以下,BI)は非自宅群よりも有意に高値であった。自宅退院の予測因子およびカットオフ値は,リハ開始時の膝伸展筋力(≥12.1 kg)とSPPB(3/4 点),退院時BI(≥80 点)であった。【結論】本結果は,自宅退院困難が予測される高齢心不全患者の抽出および自宅退院をめざしたゴール設定に寄与する可能性がある。

症例報告
  • ─生物心理社会モデルによる評価と痛みの神経生理学的教育を中心とした理学療法の実施─
    田中 智哉, 三木 貴弘, 樋口 大輔
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/17
    ジャーナル フリー

    【目的】近年,筋骨格系疼痛のマネジメントにおいて,心理社会的要因に対する痛みの神経生理学的教育(以下,PNE)の有効性が示されている。今回,両側膝タナ障害と診断された対象者に対して,PNE を中心とした介入を行い,良好な経過が得られたため報告する。【方法】対象者は誘因なく両膝痛が出現した,ランニングを趣味とする20 代男性であった。生物心理社会モデルに沿った評価を行い,痛みの破局的思考,運動恐怖,身体知覚異常,疼痛に対する誤った信念の影響が示されたため,標準的理学療法に加えてPNE を行った。【結果】痛みの破局的思考,運動恐怖,身体知覚異常は軽減し,誤った信念は修正された。両膝痛は改善し,ランニングは満足いくまで実施可能となった。【結論】標準的理学療法に加えてPNE を行うことは,両側膝タナ障害と診断された膝痛に対して有効である可能性が示された。また,それらは身体知覚異常に対しても有効な可能性がある。

  • 内尾 優, 堀部 達也, 圖師 将也, 加島 広太, 蜂須賀 健, 渕之上 昌平, 野村 岳志, 猪飼 哲夫
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/09/18
    ジャーナル フリー

    【目的】体動に伴う酸素飽和度の低下により離床に難渋した腎移植後ニューモシスチス肺炎の症例に対し,人工呼吸器管理中からTilt Table を用いた受動立位練習を施行し,筋力,ADL の改善を認めたため報告する。【症例と方法】70 歳代男性,7 年に生体腎移植施行。ニューモシスチス肺炎の診断でICU 入室となった。関節可動域練習,体位管理に加え,ICU 入室14 ~38 日目にTilt Table による受動立位練習を実施した。【結果】介入中の有害事象を認めず離床が可能であった。ICU 入室から34 日目に人工呼吸器離脱,38 日目にICU 退室,49 日目に歩行開始,67 日目Barthel Index 85 点で転院となった。【結論】早期からの鎮静中断,人工呼吸器離脱が困難であった重症患者に対して,早期よりTilt Table を用い受動立位練習を実施したことにより安全な離床,筋力およびADL 低下を予防できた可能性がある。

  • 宮城 陽平, 曽田 幸一朗, 笹沼 直樹, 内山 侑紀, 児玉 典彦, 道免 和久
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 102-107
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    【目的】後天性免疫不全症候群(以下,AIDS)を呈し,治療中に全身性筋力低下を生じた症例に対する理学療法を経験した。免疫能低下および低栄養に留意し,良好な結果を得たため報告する。【方法】症例はAIDS 治療目的に入院した50 歳代男性。前医でのニューモスチシスカリニ肺炎(PCP)治療中の長期臥床や低栄養に伴う二次性サルコペニアにより全身性に筋力低下が生じ基本動作は全介助だった。第17 病日よりCD4 陽性T リンパ球(以下,CD4 値)200/mm3 を超えた時点から低負荷での介入を行った。【経過】免疫能および栄養状態の増悪なく筋力改善が得られ,第81 病日に独歩で自宅退院した。【結論】全身性に筋力低下を生じたAIDS 患者に対し,免疫能および低栄養の増悪のないよう包括的な介入を行った。運動療法ではリカンベント式エルゴメータを用いた低負荷運動により,CD4 値の低下なく筋力改善および基本動作改善が得られた。

  • 荻原 啓文, 加茂 智彦, 田中 亮造, 加藤 巧, 遠藤 まゆみ, 角田 玲子, 伏木 宏彰
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 108-116
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/08
    ジャーナル フリー

    【目的】右小脳・脳幹梗塞による中枢性めまいと両側前庭障害を合併した症例に対する前庭リハビリテーションの効果を検討した。【方法】症例は40 歳代男性,めまい・ふらつきの改善を目的として当院を受診した。頭頸部の運動を伴う身体運動によってめまいやふらつきが生じ仕事復帰が困難な状況であった。理学療法士による前庭リハビリテーションと運動指導を実施した。【結果】Dizziness Handicap Inventory (DHI)_Functional,Dynamic Gait Index (DGI),Functional Gait Assessment (FGA) に改善が認められた。【結論】脳血管障害から中枢性めまいを呈した症例に対する前庭リハビリテーションは歩行能力やバランス能力,ADL の改善に有効な可能性があることが示唆された。

  • 伊藤 真也, 温品 悠一
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 117-123
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/10/16
    ジャーナル フリー

    【目的】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)による重症肺炎にて体外式膜型人工肺療法(以下,ECMO)を導入された症例に対して理学療法を行い,歩行獲得まで至る経過を得たので報告する。【症例紹介】71 歳男性,COVID-19 による肺炎にて入院後急激に症状が増悪し,人工呼吸器管理に加えてECMO 導入。気管切開施行後,第10 病日に理学療法開始となった。【経過】導入後深鎮静管理中は関節可動域練習,体位交換,体位ドレナージを実施し,鎮静終了後はECMO 管理下にて端座位練習を行い,呼吸法指導・骨格筋トレーニング・起居動作練習・歩行練習を実施した。最終的には自立歩行が可能となり自宅退院の転帰を得た。【まとめ】感染防護を確実に行いECMO 管理下COVID-19 症例に有害事象なく理学療法が提供できた。今後はよりCOVID-19 症例に対する安全で効果的な理学療法を検討する必要がある。

  • 本間 敬喬, 本田 陽亮, 梅田 幸嗣, 笹沼 直樹, 内山 侑紀, 児玉 典彦, 道免 和久
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 124-129
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/11/18
    ジャーナル フリー

    【目的】TAFRO 症候群患者に対して,運動様式と負荷について着目した理学療法を実施し,自宅退院に至ったので報告する。【症例】症例は70代女性で炎症反応高値,血小板減少,呼吸苦を主訴に救急搬送された。投薬治療開始までは臥床状態が続いたが,投薬開始に合わせて徐々に体重減少や血小板値改善を認め,離床を開始した。【方法】体重や血小板を指標とし,有酸素運動と無負荷の高速度抵抗運動を実施した。【経過】理学療法は入院翌日から開始し,上記方法にて運動介入を実施した。入院59 日目には病棟内歩行が自立し,入院72 日目には300 m 連続歩行が可能になり,自宅退院となった。【結語】本疾患は疾患概念が比較的新しく理学療法に関する報告はない。そのため疾患特異的な血小板数や体重を指標とし,運動療法介入を実施し,有害事象なく自宅退院が可能であった。

実践報告
  • ─モザンビーク共和国での国際緊急援助隊医療チームの活動を通して─
    水家 健太郎, 佐藤 栄一, 米田 哲, 草間 薫, 高以良 仁, 冨岡 譲二
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 48 巻 1 号 p. 130-136
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/02/19
    [早期公開] 公開日: 2020/11/19
    ジャーナル フリー

    【目的】災害時の緊急医療支援において,リハビリテーションは重要である。しかし,それに携わる人材は少なく,特に外国での活動に関しては報告も限られる。本論文ではモザンビーク共和国での経験を実践報告として報告する。【内容】サイクロン災害の概要,派遣までの経緯,現地での経験や,そこから見えてきた課題を共有する。【症例】リハビリテーション対象患者に対して,移動手段の獲得,疾病や障害の予防,患者教育などがなされた。各症例には「持続可能性」「コミュニケーション」「適正技術」等の国際協力におけるキーポイントが含まれる。【結語】緊急医療支援におけるリハビリテーションは発展途上であり,今回の派遣でいくつかの課題を持ち帰った。今後の発展のためには多くのリハビリテーション専門職の知恵や技術が必要である。

理学療法トピックス
「疾病予防の基礎研究と臨床応用」
講 座
「理学療法評価・効果判定のためのアウトカム指標」
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