【目的】人工膝関節置換術(以下,TKA)前後のリハビリテーションプロトコル(以下,プロトコル)の実施状況およびその内容を調査することを目的とした。【方法】対象はTKA 前後のリハビリテーションを実施している442 施設とし,TKA 前後のプロトコルの有無とその内容を問う自記式質問紙を用いた郵送調査を行った。回答の記述に加え,手術件数および地方区分によるプロトコルの実施割合の違いを検討した。【結果】術前のプロトコルの実施割合(45.4%)は術後(87.6%)に比べ低く,術後プロトコルは手術件数の四分位範囲でもっとも少ない群に比べもっとも多い群,次いで多い群が有意に高い実施割合を示した。術前後ともに地方区分による有意な違いは認めなかった。【結論】術後に比べ術前のプロトコルを実施している施設は少なく,術後は手術件数によるプロトコルの実施割合の違いがあることが示された。
【目的】心不全における軽度認知機能障害(以下,MCI)が理学療法(以下,PT)によるADL 改善効果を制限するかについて検討する。【方法】病前ADL が自立であった心不全患者155 例を,MCI 群108 例と対照群47 例に分け,PT 開始時および退院時の身体機能を比較した。また,重回帰分析で退院時Barthel Index(以下,BI)の関連因子を検討した。【結果】PT 開始時のBI と下肢機能(以下,SPPB)はMCI 群で有意に低値であった。MCI 群の退院時BI は対照群と差がない値まで改善したが,MCI 群のSPPB は退院時も対照群よりも低値であった。MCI 患者の退院時BI の関連因子は退院時SPPB であった。【結論】MCI では非MCI よりも入院時BI が低下するリスクが高いが,PT 実施によるBI 改善効果はMCI の有無にかかわらず同様であることが示された。
【目的】2019 年に北海道函館市で実施した野球肘検診の結果から,上腕骨内側上顆の超音波所見(以下,US 所見)と身体的特性・理学所見の関連性を検討すること。【方法】軟式小学生野球選手259 名を対象とし,US 所見に応じてUS 陽性群とUS 陰性群に分けた。身体的特性を質問紙にて聴取し,各理学検査を実施した。各項目にて2 群間で有意差を認めた項目を,ロジスティック回帰分析にて検討した。【結果】解析対象はUS 陽性群30 名,US 陰性群205 名。身体的特性・理学所見は年齢,身長,ポジション,過去の投球時痛,肘関節屈曲/ 伸展最終域での疼痛, 上腕骨内側上顆の圧痛(以下,TD),Moving Valgus Test(以下,MVT)で2 群間に有意差を認めた。ロジスティック回帰分析の結果,年齢,TD,MVT が抽出された。【結論】年齢,TD,MVT がUS 所見と関連のある因子であることが示唆された。
【目的】要支援・要介護高齢者の身体活動量とアパシーの関連を明らかにすること。【方法】要支援・要介護高齢者65 名に対して,Physical activity scale for the elderly(以下,PASE),アパシー,Health locus of control(以下,HLC),主観的健康感,Short physical performance battery(以下,SPPB)の評価を行った。統計解析ではPASE を三分位し低・中等度・高身体活動群として,各変数の3 群間比較を行った。またPASE と各評価項目の関連について重回帰分析を行った。【結果】高身体活動群と比較し,低身体活動群でアパシースコア,HLC 尺度,SPPB の4 m 歩行時間実測値で有意に悪い値となっていた。また,重回帰分析では,アパシースコアと4 m 歩行時間が抽出された。【結論】要支援・要介護高齢者の身体活動量には,アパシーと歩行速度で関連が認められた。
【目的】腰痛既往を有する一流男子競泳選手の蹴伸び姿勢における体幹アライメントの特徴を明らかにすること。【方法】男子選手の腰痛群9 名,非腰痛群15 名を対象とし,立位と陸上で再現した蹴伸びの2 条件で,体幹アライメントを評価し,柔軟性の指標と併せて比較した。【結果】蹴伸び条件において,腰痛群は非腰痛群と比較し,腰椎前彎角,骨盤前傾角,上胴後傾角,上胴伸展角が有意に大きいことが示された。一方,立位条件で2 群間の差は認められなかった。また,蹴伸び姿勢における下位胸郭の柔軟性は腰痛群で有意に低く,股関節や肩甲帯の柔軟性には差が認められなかった。【結論】腰痛群は,蹴伸び姿勢において過度な腰椎前彎を呈しやすく,その原因として下位胸郭の柔軟性低下が関係していることが示唆された。また競技レベルの高い一流選手であっても,特に腰痛既往のある者では, 蹴伸び姿勢において腰椎前彎を制御しにくくなる実態が示された。
【目的】慢性期脳卒中患者を対象に,運動療法と歩行練習ロボットGait Exercise Assist Robot(以下,GEAR)を併用した低頻度練習による効果を検証した。【方法】対象は,47 歳男性で発症後13 ヵ月の脳卒中右片麻痺患者1 名とした。研究はABAB 型シングルケースデザインを用いた。A 期を運動療法と通常歩行練習を行う従来練習期とし,B 期を運動療法とGEAR を用いた歩行練習を行うGEAR 練習期とした。両期ともに週2 回の練習頻度で4 週間の練習期間とした。介入期間は計16 週間とした。評価は歩行速度・歩幅・歩行率,身体・認知機能と歩容とした。【結果】歩行速度は初回GEAR 練習期・2 回目GEAR 練習期に向上し,歩行率は2 回目GEAR 練習期に増加し,歩容は介入期間の前後で改善した。【結論】低頻度条件の運動療法とGEAR 練習の併用によって,慢性期脳卒中患者一例の歩行能力は改善した。
【目的】小脳性運動失調を伴う脳卒中患者2症例に対して,体重免荷トレッドミル歩行練習(以下,BWSTT)を実施し,その効果を検討した。【方法】対象は小脳性運動失調を伴う亜急性期脳卒中患者の50 歳代の女性と60 歳代の男性とした。ABA 型のシングルケースデザインを用い,それぞれ期間を10 日間ずつ設定した。A 期には四肢と体幹の協調性練習,立位でのバランス練習や平地での歩行練習を受けた。B 期にはA 期の理学療法に加えBWSTT を実施した。評価項目は最大歩行速度,歩幅,歩行率,TUG,SARA,BBS,FACT,FAC とした。【結果】2 症例ともに最大歩行速度はA1 期と比べ,B 期において有意な向上を認めた。しかし,2 症例ともにB 期ではA1 期に比べSARA(歩行,立位,踵すね試験)やBBS の変化は乏しかった。【結論】小脳性運動失調を伴う脳卒中患者におけるBWSTT は歩行能力の向上に影響を及ぼす可能性が示された。
【目的】看護師における労働生産性の実態を調査し,心身の健康に関するワーク・エンゲイジメント,ワーカホリズムおよび腰痛との関係性を明らかにすることを目的とした。【方法】病棟看護師女性73 名を対象とし,無記名自記式のアンケート調査を実施した。調査項目は,労働生産性,ワーク・エンゲイジメント,ワーカホリズム,腰痛の有無,期間とした。【結果】労働遂行能力は,ワーク・エンゲイジメント得点の間に有意な正の相関が認められ,ワーカホリズム得点間において有意な相関は認められなかった。ワーク・エンゲイジメントにおいて,腰痛群は,非腰痛群と比較して有意に低値を示し,ワーカホリズムでは両者に有意差は認められなかった。【結論】非特異的腰痛の有無および労働遂行能力は,ワーク・エンゲイジメントを説明する独立因子であり,ポジティブメンタルヘルスの重要性が考えられた。
【目的】胎児骨系統疾患である屈曲肢異形成症(以下,CD)は,周産期に死亡する重症例が多いが,明確な生命予後や長期生存例の機能予後は不明で,理学療法を行った報告はない。今回,長期入院中のCD 児に対し,発達支援を行ったため報告する。【症例】在胎38 週5 日体重2,951 g で出生。肺低形成,軟口蓋裂,扁平喉頭,舌後退,気管軟化のため出生時から人工呼吸管理,経管栄養,吸引を要した。股関節脱臼,反張膝,足部変形を認めた。低緊張で,自力での姿勢変換は困難であり,座位は好まなかった。【経過】生後2 ヵ月より理学療法開始。脳血管疾患等リハビリテーションの標準的算定日数超過後も積極的介入が必要と判断し,介入頻度を増やして自宅退院まで継続した。結果,寝返りを獲得,座位時間が延長し,認知面の発達も認めた。【結論】医療的ケアを要する重症度の高い症例に対する介入は,発達促進だけでなく,家族との愛着形成も促し自宅退院の支援につながると考える。
【目的】ステロイド筋症は,Type Ⅱ線維の萎縮を特徴とし,Type Ⅰ線維は比較的維持される。そこで酸素利用能に優れるType Ⅰ線維に着目し,運動療法を実施した。ステロイド筋症の併発下でも運動耐容能の低下を予防できるか検証した。【方法】70 歳台女性。心臓サルコイドーシスの増悪を認め入院した。治療開始後,有酸素運動と筋力増強運動を実施した。介入前後で心肺運動負荷試験,筋力測定を実施した。【結果】34 日間の入院治療を要した。介入前後で最高酸素摂取量は14.1 →15.4 ml/kg/min と向上,膝関節伸展筋力(Rt/Lt)は,40/38 →28/29 kgf と低下した。運動による心拍応答反応は改善した。【考察】本症例はステロイド筋症の好発条件を満たしており,筋力低下の要因はステロイド筋症であると考える。運動耐容能が向上した要因は,ステロイド筋症で維持される酸素利用能や,自律神経反応が運動療法により改善したためと考える。
【目的】回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期)における移乗・トイレ・歩行の自立判定と,自立後の転倒を調査した。【方法】対象は回復期の脳損傷者135 名とし,各動作の自立および自立後の転倒状況を調べた。自立は,①療法士が動作評価,②病棟スタッフが実生活で動作観察評価,③医師を含む多職種で判定した。また入棟時FIM,SIAS 運動,BBS を自立後の転倒の有無により比較した。【結果】各自立後の転倒者は,移乗自立77 名中9 名(11.7%),トイレ自立70 名中3 名(4.3%),歩行自立60 名中8 名(13.3%)だった。転倒者の入棟時の機能は,移乗ではFIM 運動,SIAS 運動,BBS,歩行ではBBS が有意に低かった。トイレでは有意差はなかった。【結論】移乗,歩行自立者の約1 割が転倒していた。移乗,歩行自立者のうち運動機能が低い者が転倒していた。今後,客観的指標を含めたさらなる検討が必要である。
【目的】YouTube で公開された脳卒中のリハビリテーション関連の動画の質を評価することとした。【方法】2021 年1 月にYouTube を使用して,脳卒中とリハビリテーションのキーワードから動画検索を行った。Journal of the American Medical Association Score(以下,JAMAS)と日本語版DISCERN を用いて,抽出されたYouTube 動画の質を評価した。【結果】JAMAS 合計は2.5 点,引用文献や情報源に関する記載を示すAttribution は平均0.2 点と低かった。DISCERN 合計は32.8 点,治療の情報源,リスク,選択肢に関する項目の平均点は2.0 点未満であった。【結論】YouTube における脳卒中のリハビリテーション関連の動画は全体的に低品質であった。多くの動画が,情報源や治療の選択肢,リスクに関する情報を提供できていないことが明らかになった。