理学療法学
Online ISSN : 2189-602X
Print ISSN : 0289-3770
ISSN-L : 0289-3770
48 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
研究論文(原著)
  • 清水 健太, 大越 康充, 館山 唯, 浮城 健吾, 三浦 浩太, 川上 健作, 鈴木 昭二, 井野 拓実, 吉田 俊教, 前田 龍智
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 6 号 p. 555-562
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/08/31
    ジャーナル フリー

    【目的】脛骨平面を通過する三次元下肢荷重軸(以下,3D-MA)動態と膝関節運動学および冠状面アライメントの関連を明らかにすることである。【方法】変形性膝関節症(以下,膝OA)症例75 例93 膝(北大分類stage Ⅱ–Ⅴ)を対象とし,光学的モーションキャプチャ技術による歩行時の三次元動作解析から,膝キネマティクスと3D-MA 動態を検討した。【結果】3D-MA X 座標成分値(以下,3D-MAx)動態は膝内外反キネマティクスと定性的に類似しており,X 線学的アライメントと有意な中等度の相関を示した。重度例では,初期接地からピーク値までの3D-MAx 内方変位量の増加,荷重応答期での膝屈曲変化量の減少が認められた。【結論】3D-MAx 動態は静的な膝アライメントや動的な膝キネマティクスを反映した複合的な指標であり,歩行時の荷重軸動態の評価は膝OA 進行のメカニズム解明に一助をなす可能性がある。

  • ─セルフ・エフィカシーおよび自己調整による媒介効果の検証─
    太田 幸志, 原田 和弘
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 6 号 p. 563-571
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/01
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】運動への手段的態度と感情的態度が,セルフ・エフィカシーと自己調整を媒介して,運動行動に影響しているかを検証した。【方法】事前調査において50 ~74 歳の500 名へ質問紙によるインターネット調査を実施し,うち394 名が半年後追跡調査に回答した。基本属性を考慮したうえで,手段的態度,感情的態度,セルフ・エフィカシー,自己調整,運動行動の関連性をパス解析にて検証した。【結果】横断および縦断解析ともに,感情的態度は自己調整およびセルフ・エフィカシーを介して間接的に運動行動に回帰していた。一方で,手段的態度は自己調整を媒介して間接的に運動行動に回帰していたが,セルフ・エフィカシーへの関連性は認められなかった。【結論】感情的態度はセルフ・エフィカシーと自己調整の両者に媒介して運動行動に影響することが明らかになった一方で,手段的態度が両者を媒介して運動行動に影響を与えるかは明確にならなかった。

  • 白石 涼, 佐藤 圭祐, 千知岩 伸匡, 吉田 貞夫, 尾川 貴洋
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 6 号 p. 572-578
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/06
    ジャーナル フリー

    【目的】大腿骨近位部骨折患者を対象に,腹部Computed Tomography(CT)の大腰筋面積で推定した骨格筋量と機能的予後の関連を調査した。【方法】回復期病棟に入院した113 名を骨格筋量減少群と対照群に分け,患者背景,機能的予後を比較した。Functional Independence Measure(以下,FIM)利得を目的変数とした重回帰分析を行い,骨格筋量との関連性を検討した。【結果】平均年齢は83.5 ± 8.3 歳,男性35 名,女性78 名であった。骨格筋量減少群は56 名だった。骨格筋量減少群は対照群に比べ,高齢で,痩せており,入院時認知FIM,退院時FIM 合計,FIM 利得が有意に低かった。多変量解析で,骨格筋量減少とFIM 利得に有意な関連を認めた。【結論】大腿骨近位部骨折患者における大腰筋面積で推定した骨格筋量減少は,機能的予後不良と関連することが示唆された。

  • ─microstate segmentation 法を用いて─
    西本 和平, 植田 智裕, 兒玉 隆之
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 6 号 p. 579-589
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/29
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究では,歩行イメージを時間的空間的に変化させた際の脳内神経活動性について,脳波解析により検討することを目的とした。【方法】対象は健常若年者8 名であり,歩行イメージの速度を変化させる時間的変化条件と歩行方向を変化させる空間的変化条件の下,脳波microstate segmentation 法により,それぞれの特徴的な脳内神経活動領域を検証し,時間的空間的変化時の特性を検討した。【結果】歩行イメージにおいて時間的空間的変化時に共通して補足運動野および楔前部に優位な神経活動を認めた。時間的変化では前頭眼野および上頭頂小葉,空間的変化では前頭眼野,前頭極および上頭頂小葉にそれぞれ優位な神経活動を認めた。【結論】歩行イメージを時間的空間的に変化させた際には,異なる脳領域が活動することが示唆された。歩行イメージを最適化された介入手法として用いる場合には,時間的および空間的特性を考慮していく必要性が示された。

  • ─2 施設共同前向き観察研究─
    髙橋 佑太, 秋保 光利, 今井 亮介, 次富 亮輔, 青野 ひろみ, 白石 英晶, 田中 秀輝, 宮原 拓哉, 岩田 優助
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 6 号 p. 590-597
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/30
    ジャーナル フリー

    【目的】間質性肺疾患は呼吸困難による活動制限を招くが,入院に伴う入院関連能力低下(Hospital-acquired disability;以下,HAD)の発生率や臨床的アウトカムへの影響は明らかでない。【方法】研究参加2 施設による前向き観察研究を実施した。対象は間質性肺疾患を背景とした呼吸不全による入院患者のうち,リハビリテーションを受けた患者とした。退院時Barthel index 合計点数が入院前と比べて5 点以上低下した場合をHAD と定義し,HAD が在院日数に与える影響を検討するために,重回帰分析を行った。【結果】対象者66 例(年齢77 歳,男性47 例)のうち,32 例(48%)にHAD が発生した。またHAD は在院日数の独立した規定因子として抽出された(β =0.34,95% 信頼区間=3.86 – 25.52)。【結論】間質性肺疾患患者では高率にHAD が生じ,在院日数を含む臨床的アウトカムに影響を与えることが示唆された。

  • ─後ろ向きコホート研究─
    中口 拓真, 石本 泰星, 宮川 祐希, 西村 淳, 近藤 義剛
    原稿種別: 研究論文(原著)
    2021 年 48 巻 6 号 p. 598-606
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/11/10
    ジャーナル フリー

    【目的】被殻・視床出血患者の急性期CT 画像から,発症3 ヵ月後の歩行自立を予測すること。【方法】回復期リハビリテーション病棟に入院していた被殻・視床出血患者134 名を対象とした。CT 画像は発症後12時間以内に撮影されたものを使用し,深層残差ネットワークにより発症3 ヵ月後の歩行自立を予測した。予測精度としてC 統計量,感度,特異度,F 値,Matthews Correlation Coefficient(以下,MCC)を算出した。【結果】予測精度[平均値(95%CI)]は,C 統計量0.89(0.70 – 0.94),感度0.91(0.76 – 0.95),特異度0.83(0.69 – 0.88),F 値0.87(0.80 – 0.92),MCC 0.82(0.76 – 0.89)であった。【結論】被殻・視床出血患者の急性期CT を用いて,発症3 ヵ月後の歩行自立を予測できる可能性がある。

症例研究
  • ─シングルケースデザインを用いた検討─
    瀬古 博正, 加藤 倫卓, 小野 慎太郎, 海野 真弓, 表 俊也, 表 信吾
    原稿種別: 症例研究
    2021 年 48 巻 6 号 p. 607-613
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/08/27
    ジャーナル フリー

    【目的】心臓移植(以下,心移植)患者の外来心臓リハビリテーション(以下,心リハ)に神経筋電気刺激療法(以下,NMES)を加え,身体機能改善に相乗効果があるかを検証した。【方法】症例は40 歳代男性。心移植後から心リハを開始した。研究デザインはA(基礎水準期)-B(介入期)-A(基礎水準期)とし,各期間を8 週間とした。測定点は0 週目,8 週目,16 週目,24 週目とした。週1 回の心リハに加えて,介入期のみ下肢に対するNMES を50分/日,週5回実施した。【結果】嫌気性代謝閾値は(16.7,20.6,22.8,17.9)mL/kg/min,下肢筋力は(0.69,0.70,0.76,0.74)%BW,通常歩行速度は(1.17,1.36,1.41,1.37)m/s と変化した(それぞれ0 週目,8 週目,16 週目,24 週目)。【結論】心移植患者の心リハにNMES を加えることで,身体機能の改善に寄与する可能性が考えられた。

短 報
  • ─Berg Balance Scale, Moss Attention Rating Scale, Stop Walking When Talking test による多変量解析─
    井上 桂輔, 沼沢 祥行, 山本 一樹, 須藤 聡, 箱守 正樹, 豊田 和典, 冨滿 弘之, 関屋 曻
    原稿種別: 短 報
    2021 年 48 巻 6 号 p. 614-619
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/30
    ジャーナル フリー

    【目的】急性期脳梗塞患者の注意障害を定量的に示して歩行自立判定を検討したものは見あたらない。本研究では,BBS に加えてMARS およびSWWT を用いて,急性期脳梗塞患者の病棟内歩行自立判定に関連する要因を明らかにすることを目的とした。【方法】発症から2 週間以内の急性期脳梗塞患者の病棟内歩行自立判定におけるROC 曲線から算出したBBS のカットオフ値による判別と,多重ロジスティック回帰分析から算出した判別スコアによる判別の精度を比較した。【結果】多重ロジスティック回帰分析ではBBS,MARS,SWWT が採択され,判別スコアを用いた方がBBS 単独での判別よりも精度が高かった。【結論】急性期脳梗塞患者の歩行練習開始時点における病棟内歩行自立判別はBBS だけでなく,MARS,SWWT を用いることで精度が高まる可能性がある。

  • 高橋 哲也, 森沢 知之, 齊藤 正和, 澤 龍一, 谷口 香, 北原 エリ子, 西﨑 祐史, 野尻 宗子, 森澤 文登, 南野 徹, 藤原 ...
    原稿種別: 短  報
    2021 年 48 巻 6 号 p. 620-627
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/04
    ジャーナル フリー
    電子付録

    【目的】レッドゾーン内で新型コロナウイルス感染症患者を診る理学療法士の心理的ストレスを明らかにすること。【方法】対象は新型コロナウイルス感染症患者にレッドゾーンで理学療法を行っている理学療法士とした。調査はインターネットアンケートシステムを用いたアンケート調査とし,個人の基本情報に加えて,レッドゾーンでの理学療法の内容,感染対策の負担や心理的ストレスなどを調査した。【結果】分析対象584 例のうち,レッドゾーン内の理学療法で「ストレスがある」と回答しなかったものはわずか6 例であった。感染することへの不安だけでなく,周囲からの偏見から差別を受けたなど「社会的ストレス」も少なくなかった。ストレス内容で特に多かったのは,家族や周りへの感染(88.5%),自分への感染(82.0%)であった。【結論】新型コロナウイルス感染症患者にレッドゾーンで理学療法を行っているほぼすべての理学療法士でなんらかの心理的ストレスを抱えていた。

実践報告
  • 中根 征也, 安田 彩夏, 松尾 浩希, 平川 正彦, 杉本 圭, 檜垣 奨, 笹倉 栄人, 冨田 昌夫
    原稿種別: 実践報告
    2021 年 48 巻 6 号 p. 628-635
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/20
    [早期公開] 公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    【目的】新型コロナウイルス感染症拡大によって,臨床実習が行えず,オンラインを活用した学内実習を実施した。実施した内容と学生の満足度について報告する。【方法】本学に在籍する2 年生69 名と4 年生64 名の学内実習において,オンライン上で実習協力者と学生をつなぎ,医療面接や姿勢動作観察,臨床推論を実施した。また,学生を対象に質問紙による満足度などを調査した。【結果】学年間の質問紙調査の結果を比較すると,2 年生と比較して4 年生は,満足度・学習意欲・学習効果などの質問において,肯定的な回答が多いことがわかった。【結論】低学年では,医療面接などを通じて,臨床経験の積み重ねが期待できるが,最終学年では理学療法プログラムの経験などが不十分となり,臨床経験の積み重ねは難しい。今後は臨床実習だけでなく,「当事者」を講師として招き,臨床さながらの経験ができる学内演習授業を構築することが課題である。

講 座
シリーズ「加齢に伴う生体の変化とその理解」
シリーズ「その時バランスをどう見るか」
feedback
Top