【目的】新型コロナウイルス感染症(以下,COVID-19)の流行前後における就労者の腰痛変化とプレゼンティーズムとの関連を検討し,さらに勤務形態の変化との関連性を明らかにする。【方法】WEB調査で回答のあった就労者1865名(平均年齢49.6±6.6歳)を横断的に解析した。COVID-19流行に伴う腰痛およびプレゼンティーズムの変化を調査し,腰痛悪化とプレゼンティーズムとの関連性を検討した。【結果】腰痛悪化は,流行前プレゼンティーズムなし群におけるプレゼンティーズム発生(オッズ比:4.26, p<0.01),流行前プレゼンティーズムあり群におけるプレゼンティーズム悪化(オッズ比:1.80, p=0.01)と有意に関連していた。【結論】COVID-19の流行に伴う腰痛悪化はプレゼンティーズムと関連することが示唆され,特にその関連性は継続してオフィスワークに従事している集団において強い傾向を認めた。
【目的】循環器疾患のリスクを軽減する電気刺激(EMS)を処方する上で,刺激部位に着目し,一過性の下肢への電気刺激部位の違いが動脈機能,特に動脈スティフネスに及ぼす影響を検討した。【方法】被験者は健康な成人男性15名であり,最大耐性の刺激強度,刺激時間は20分間とし,両下肢全体を刺激する下肢全体(L)条件,両側大腿部を刺激する大腿部(T)条件,および両側下腿部を刺激する下腿部(C)条件を設定した。各条件前後には血圧脈波検査装置で上腕~足首間の脈波伝搬速度(以下,baPWV)を測定した。【結果】全ての条件直後でbaPWVに有意に低下し,条件直後のbaPWVは,L条件とT条件との間,L条件とC条件との間にそれぞれ有意な差が認められた。【結論】下腿(C条件),大腿(T条件),下肢全体(L条件)の順に刺激部位が広範囲になるとともに,電気刺激後のbaPWVの低下が著しくなることが示された。
【目的】下垂足と足底感覚障害による歩行障害に対し,短下肢装具に加え,トレッドミル歩行練習を中心とした理学療法の効果について報告する。【対象】脊髄円錐部髄内腫瘍で立位姿勢制御の破綻と歩行障害を呈した58歳の女性である。画像診断で第11/12胸髄内に占拠性病変が確認された。不全対麻痺と足底感覚障害により立位姿勢制御および歩行機能が低下したため,第11/12胸椎髄内腫瘍に対し,腫瘍の部分摘出術が施行された。【方法】術後2日目から鶏歩の改善を目的に両足部に短下肢装具を装着し,術後6日目から歩行機能の改善を目的にトレッドミル歩行練習を開始した。【結果】術後22日目,自宅退院となり,自宅内移動が右短下肢装具を装着して自立,自宅周辺の屋外移動は両T字杖歩行が可能となった。【結語】術後急性期から装具療法を併用したトレッドミル歩行練習を実施し,術後早期に歩行機能が再獲得できた。
【目的】脳卒中患者の歩行練習において,長下肢装具から短下肢装具への移行に要する日数に関連する入院時因子を探索的に調べること。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)で長下肢装具を使用して歩行練習を行った片側大脳半球損傷の脳卒中患者200名。長下肢装具を使用した練習日数を目的変数,入院時の各種評価項目を説明変数とする重回帰分析を行って関連する因子を探索した。【結果】下肢Brunnstrom Recovery Stage, Scale for Contraversive Pushing合計点,Functional Independence Measure運動項目および年齢が関連因子として検出された。【結論】回復期病棟入院時の下肢運動麻痺の回復ステージが低く,Pushingの程度が強く,機能的自立度の運動項目が低く,年齢が高いほど,長下肢装具を使用する練習期間が長期に及びやすいことが分かった。