イノベーション・マネジメント
Online ISSN : 2433-6971
Print ISSN : 1349-2233
12 巻
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論文
  • 高田 朝子, 橫田 絵理
    2015 年 12 巻 p. 1-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    現在、上場企業において上級管理職についている女性は全体の1.2%と(内閣府男女共同参画局編,2011)非常に少ないながらも存在する。彼女達はどのようにして昇進の道を歩んできたのだろうか。Granovetter(1973)が指摘したように、昇進において人的ネットワークの存在は非常に大きな影響力を持つ。本論では女性がどのような人的ネットワークを構築すれば、企業において昇進を可能にするのかについて内部昇進をした女性上級管理職へのインタビュー調査をもとに考察した。その結果、女性自身が地位を目標としてではなく、業績を上げる能力を持っていること。少数派(トークン)としての優位さを誠実な仕事と人との対応で活かしながら、社内外で仕事を通じたネットワークを形成し、それが仕事に役立っていたこと、そして男女差無く業績を評価する男性上司の存在があった。

  • 竹内 淑恵
    2015 年 12 巻 p. 17-39
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    ソーシャルメディアの台頭により、マーケティング・コミュニケーションの分野で共感という概念に注目が集まっている。しかしながら、なぜ共感が発生するか、どのようなコミュニケーション効果があるかについては検証が十分でない。そこで本研究では、Facebookページに焦点を当て、「共感によるコミュニケーション効果モデル」を構築して実証分析を行った。また、Facebookページでの情報提供の狙いは企業ブランドイメージの向上にあると仮定し、検証した。知見は以下の通りである。

    ・Facebookページが楽しく、リラックスでき、退屈なときに活用できる内容であると共感を得やすい。また情報としての価値が認められると共感を得やすい。

    ・共感が得られると、受容・拡散や信頼・満足にプラスの影響がある。結びつきを強く感じると受容や拡散への意向も高まる。

    ・Facebookページを見る前より見た後の方が評価が高くなり、多くの項目で企業ブランドイメージが向上した。

査読付き投稿論文
  • 小山 浩一
    2015 年 12 巻 p. 41-66
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、中小企業経者を対象とした生命保険法人契約(以下「経営者保険」)の需要に関わる決定要因の分析を通じて、中小企業におけるリスク管理やその準備に資する生命保険業界の健全な発展のために示唆を得ることにある。

    経営者保険の需要は、経済合理的な一貫性を持つ経済準備必要性と、経営者の持つ価値観双方の影響下にある。

    考察の結果、以下のことが確認された。

    経済準備必要性は、経営中断リスク対処、退職金対処、予防的対処の3つに分類され、経営者保険の需要に正の影響を与える。

    価値観については、不確実性の回避と集団主義の影響が確認された。

    不確実性の回避は、加入者において需要へ負の影響を与え、集団主義は、未加入者において正の影響を与える。

    本研究から得られた主要な示唆は、価値観やその価値観が表れる顧客企業の経営方針等によるセグメント別コミュニケーション戦略の必要性である。

  • 高橋 勅徳, 曽根 秀一
    2015 年 12 巻 p. 67-82
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は、企業家概念を秩序構築主体として再定位することを通じて、企業家活動を把握し、分析的に記述する理論的視座を獲得していくことにある。企業家研究は、企業家という概念の下で(営利/非営利を問わず)、イノベーションという現象を、主体の具体的行為の次元から分析を試みる、独自の理論的傾向を有する。しかし、企業家研究における構造的進化論への転回の下で、企業家概念は社会構造に進化を生み出す役割として定義され、変異を生み出す主体として矮小化されてきた。この構造的進化論への転回の下で企業家研究は、その研究関心が企業家の具体的行為からイノベーションを生み出す社会構造の分析に移り、企業家概念を用いることの理論的必要性が消失するだけでなく、研究領域としての独自性を見失うという理論的課題に直面してきた。この理論的課題に対して、近年、Steyaert(2007a)によって関係論的転回が図られている。この関係論的転回においては、新結合の遂行主体という企業家概念の持つ本来的な含意に立ち戻ることで、社会構造を前提とした秩序の(再)構築として、人々の具体的な行為の次元から分析していくことを目指している。本論文では関係論的転回における秩序構築の主体としての企業家という新たな理論的視座に基づき、一般住宅業界に新たな秩序を構築した株式会社千金堂の事例の分析的記述を行う。

研究ノート
  • 上田 翔平, 大家 史裕, 仲田 翔, 藤井 章博
    2015 年 12 巻 p. 83-108
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    「フォーサイト」活動は、我が国では主に科学技術政策立案に利用されてきた。近年、未来に対する備えを超えて、未来の創出に尽力することと定義づけることにより、特に欧州を中心に地方自治体等の政策立案に幅広く利用されるようになっている。岐阜県東濃地区は、2027年開業が予定されている「リニア中央新幹線」の影響によって、地域社会を大きく変化・発展させる可能性がある。本論文では、「複合手法によるフォーサイト」を当該地域社会の未来像に関する合意形成のための手法に用い、住民自身の参加に基づくフォーサイトの実践を通じた未来展望の形成を試みる。対象となる未来社会を構成する人々に対して、未来を展望するための視点と知見を提供することで、よりよい集団的意思決定、ひいては政策立案、を支援することを目的としている。

査読付き研究ノート
  • 伊藤 嘉浩, 藤田 修平
    2015 年 12 巻 p. 109-131
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、イノベーション・エコシステムの概念を用いて、企業が新製品を開発し顧客に供給するために、外部の複数企業とのマネジメントをどのように行っているのか、さらに、そのためにどのような条件や課題があるのかを明らかにすることである。本稿ではエコシステムを、「複数の企業がそれぞれ持てるものを提供し合い、1 つのソリューションにまとめて顧客に提供するコラボレーション」(Adner, 2006)と定義し、日本企業のイノベーション・エコシステムのマネジメントとして、パイオニア株式会社のカーナビゲーションシステム「サイバーナビ」の新製品開発の事例の詳細について調査分析した。

    分析結果から、イノベーション・エコシステムを製品開発と製品供給とに分類した場合、パイオニアは製品開発という自社に近い点については確実かつ特徴的にマネジメントできているが、製品供給の点では、パイオニアに課題やサプライヤーとの意識の差が存在していた。また、パイオニアは、製品販売後も継続的に必要で重要なコンテンツやサービスを提供する企業の機会主義的行動に対して、資本参加や業務提携により対応していた。さらに、イノベーション・エコシステムのマネジメントに重要な条件として、(1)自社がイノベーション・エコシステムのリーダーである場合、単なる技術の集積者でなく、パートナーに課題があれば、その課題を共にマネジメントできていること、(2)自社の属する業界にとってのキーパーツになり得る存在をイノベーション・エコシステム内のパートナーとしていること、(3)自社の既存の技術・サービス・インフラをキラーコンテンツに、エコシステムの活用と継承ができていること、の3つを提示した。

  • 鍾 淑玲
    2015 年 12 巻 p. 133-155
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    本稿は歴史的な側面から段階別に全家便利商店の展開を考察し、台湾でのファミリーマートの経験を通して、日本型コンビニの国際化におけるキーファクターの抽出を目的としている。

    まず、日本型コンビニの特徴を(1)直営店よりも加盟店が多い。(2)中食商品群の強化により、高い粗利益を確保する。(3)メーカーとの共同配送システムが重視されている。(4)情報システムの構築によって、チェーン運営の効率化を図っている。(5)S&QCが重視されている、の5つのポイントにまとめた。

    次に、全家便利商店の発展段階を進出期(1988~1993年)、成長期(1994~2005年)、成熟期(2006~2014年)の3つの段階に分けて、それぞれの段階において、日本型コンビニの特徴がどのように移転されたかを明らかにした。日本型コンビニの移転に障害となるものに対して、全家便利商店は一つ一つ革新を起こしながら克服し、台湾における発展を成し遂げた。

    本稿で明らかになった日本型コンビニの国際化におけるキーファクターを挙げると、コンビニは現地適応化が不可欠な産業であることから、良い現地パートナーの確保が重要である。一方、日本側の役割は資本投資以外に、最大限の資源による現地企業への技術ノウハウをサポートすることであった。そして、経営主導権は現地パートナーに引き渡すことで、現地社員のモチベーションを持たせることができ、イノベーションの発生につながったと考えられる。

  • 田中 美和
    2015 年 12 巻 p. 157-174
    発行日: 2015年
    公開日: 2018/10/23
    ジャーナル フリー

    本研究は、日本自動車産業の次世代車開発時に、金型製作をコア技術として保有する金型メーカーの、中核的サプライヤーとしての役割を明らかにすることが目的である。

    本研究は、①金型製作技術をコアとして保有する中核的サプライヤーとしての金型メーカーに注目し、②次世代車用基幹部品の開発段階の参画から量産に至る、所謂一貫生産体制の構築及び安定的な部品供給量を果たせる量産化体制を社内確立した企業事例に着目し、分析する。明らかにする点は、次世代車用基幹部品の開発時に中核的サプライヤーとしての金型メーカーが果たした役割、そしてそれら金型メーカーと各自動車メーカーとの緊密な関係性を示す具体的な取組内容を、事例研究を通じ得られた結果から導き出す。

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