理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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20 巻, 2 号
May
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研究論文
  • 柊 幸伸, 加藤 宗規, 佐藤 仁, 丸山 仁司
    2005 年 20 巻 2 号 p. 93-98
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    市販されている3軸角速度センサを用い,臨床での動作分析に応用できるような簡単な角速度計測システムを構築した。3つのセンサを同時に接続可能ながらコンパクトなシステムであり,動作を拘束することなく計測可能なものとなった。計測例として,被験者の大腿,下腿,足部の3カ所にセンサを装着し,歩行時の下肢関節回りの角速度を導出した。計測結果は各関節の3次元空間の動きを忠実に反映したものが得られた。計測データより1歩行周期のデータを取り出してみると,一般的に知られている歩行時の二重膝作用や足部の内反や内転等の細かな動きまでとらえることが出来ていた。アナログデータをEXCEL形式のファイルに出力することも可能であり,細かな分析に対応できるものであると考えた。また,角速度から移動角度,角速度の算出も可能であり,必要とされる分析方法に柔軟に対応できると考えた。今後,計測データの効果的な分析手法の確立が必要と考える。
  • 小林 修二, 原 瑞穂, 森田 秋子
    2005 年 20 巻 2 号 p. 99-102
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,脳血管障害発症後に出現する失禁が,ADLの予後予測因子として妥当性を持つか否かを実証的に明らかにすることである。116例の片麻痺患者を対象とし,まず対象を失禁群と非失禁群の2群に分類し,つぎに失禁群を消失群と持続群に層化し,いずれも入院時・3ヶ月時・6ヶ月時のバーセル・インデックスの得点を比較した。ただしバーセル・インデックスは失禁の項目を内包しているため,この改善による得点への影響を排除するため80点満点とした。失禁群の比率は64%で,その得点は入院時から6ヶ月後まで非失禁群より有意に低得点であった。失禁は失禁群と非失禁群の2群間では,ADLの予後予測因子として妥当性を持つことが明らかになった。一方入院時の失禁はその後の治療過程で変化する要素であるため,失禁群を消失群と持続群に層化した結果,消失群の予後は良好であることが明らかになった。入院時の失禁という単一因子だけでは失禁消失群の予後を十分に予測できず,入院後の変化を踏まえながら検討を加える必要性が示唆された。
  • 山田 和政, 山田 恵, 塩中 雅博, 坂野 裕洋, 梶原 史恵, 松田 輝, 植松 光俊
    2005 年 20 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,閉眼および開眼片足立ち測定,Multi-Directional Reach Testの3評価結果における転倒群と非転倒群の比較,転倒回数との関連性および3評価結果間の相関について調べ,高齢者の転倒要因とされるバランス能力をどのような視点から捉えるべきか検討した。結果,いずれの評価結果においても転倒群が有意に少ない値を示し,また,転倒回数が多い者ほど値が少なかった。転倒群では,各評価結果間すべてにおいて有意な相関が認められた。以上より,転倒要因として圧中心保持能力と圧中心偏移能力の両方の視点からバランス能力を捉える必要のあることが示唆された。
  • 前田 慶明, 加藤 順一, 高橋 健太郎, 村上 雅仁, 古川 宏
    2005 年 20 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    健常な青年期男性7例(青年期群;25±4歳)および壮年期男性7例(壮年期群;51±4歳)を対象に,自転車エルゴメーター駆動による60 watt 5分間の運動を実施し,四肢血管の脈波伝播速度(brachial-ankle PWV; baPWV)を経時的に測定することで運動前後のbaPWVの変化について検討した。運動前の安静時baPWVは,青年期群と比較して壮年期群で有意に高値であった(p<0.0001)。両群において運動負荷6分後のbaPWVは,安静時baPWVと比較して有意に低値を示し(p<0.05),運動20分後にはbaPWVは青年および壮年期群でそれぞれ7および5%の低下を示した。一方,運動により増加した心拍数(Heart rate; HR)は,運動後12分後には両群において運動前のレベルに回復した。これらの結果から,一過性の運動負荷によりbaPWVは,運動後HRが回復したにもかかわらず経時的に継続して低下し,運動が四肢血管動脈の伸展性に影響を及ぼすことが再確認された。
  • ―市販体重計を用いた下肢支持力の測定―
    村田 伸, 宮崎 正光
    2005 年 20 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    市販の体重計を用いて測定した下肢支持力の再現性と妥当性について,障害を有する高齢者43名(平均年齢84.8±6.5歳)を対象に検討した。測定した下肢支持力の再現性は,級内相関係数0.823であり,概ね良好であった。また,下肢支持力を標準化した下肢支持力体重比は,BIおよび歩行速度との間に有意な正の相関が認められ,下肢支持力値の妥当性が示唆された。さらに,判別分析の結果,歩行可能群25名と不可能群18名を最もよく判別する下肢支持力体重比の判別点は42.9%であり,判別的中率は86.0%であった。これらの知見より,本方法により測定した下肢支持力は,障害高齢者の簡易下肢機能評価法として有用であり,歩行が可能か否かの指標になり得る可能性が示唆された。
  • 大坂谷 美希, 佐々木 誠
    2005 年 20 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,片麻痺患者においてベルトを装着した場合の起き上がり動作時間に及ぼす影響を検討することである。片麻痺患者24例を対象に,片肘立ち位を経由した起き上がり動作時間ならびに片肘立ち位の圧中心軌跡を,ベルトを装着した場合としない場合で測定した。その結果,起き上がり動作時間は,ベルト装着の有無によって差を認めなかった。片肘立ち位の静的課題での圧中心軌跡において,総軌跡長はベルト有りの条件が無しの条件に比べて有意に長かった。静的課題でのその他の圧中心軌跡のパラメータおよび動的課題でのすべての圧中心軌跡は,ベルト装着の有無によって差がなかった。また,ベルト装着によって起き上がり動作時間が短縮した群と延長した群との間では,差異を認める基本的属性ならびに片肘立ち位における圧中心軌跡の変化値はなかった。以上より,片麻痺患者では,ベルトの装着によって,片肘立ち位で静止する際に上半身の細かな揺れが増すものの,片肘立ち位で上半身を移動させる能力には影響が及ばず,起き上がり動作時間も変化しないものと考えられた。
  • -歩行中の股関節伸展角度の減少が重心移動に及ぼす影響-
    南角 学, 神先 秀人, 石倉 隆, 川那辺 圭一, 中村 孝志
    2005 年 20 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,人工股関節置換術術後早期での歩行中の股関節伸展角度の減少が重心移動に与える影響について検討することである。対象は片側THA術後4週が経過した女性9名と健常女性11名であった。床反力計,3次元動作解析装置を用いて歩行速度,股・膝関節の屈曲-伸展運動,重心移動,各両脚支持期における正の仕事量,一歩行周期及び体重1 kg・進行距離1 m当りの重心の仕事量を算出した。THA群で股関節伸展角度の減少を示し,立脚期での膝の屈曲-伸展運動が認められなかった。また,THA群の各両脚支持期における正の仕事量は,非術側の踵接地後の正の仕事量が術側と比較して有意に低い値を示した。重心移動に関しては,術側の立脚中期の重心位置が非術側と比較して有意に高い値を示した。一歩行周期及び体重1 kg・進行距離1 m当りの重心の仕事量の値から効率良い重心移動が行われていないことを示した。THA術後患者の歩行中における股関節伸展角度の減少は,蹴り出しによる上方への推進力を低下させるとともに,術側立脚期での膝関節のコントロールを阻害し,円滑な重心移動を阻害する一因となることが示唆された。
  • 木島 直幸, 宮原 将, 奥野 真理, 佐藤 治子, 藤井 菜穂子, 勝平 純司
    2005 年 20 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    前十字靭帯損傷者における歩行時のバイオメカニクスについて,多くの研究がなされている。これらの研究によって,前十字靭帯損傷者は歩行において立脚初期に膝伸展モーメントの低下がみられると報告されている。我々は,歩行時だけでなく,階段降段動作時にも前十字靭帯損傷者の膝関節伸展モーメントが低下すると仮説をたてた。そこで,我々は三次元動作解析システムを用い,7名の健常者と3名の前十字靭帯損傷者を対象に階段降段時における下肢関節モーメントや関節角度を比較した。健常者と前十字靭帯損傷者で関節角度においてほとんど変化がみられなかった一方で,2名の前十字靭帯損傷者は,膝伸展モーメントが健常者よりも大きく発揮し,足底屈モーメントが健常者よりも低下していた。また,もう1名の前十字靭帯損傷者は,膝伸展モーメントが健常者よりも小さく発揮し,足底屈モーメントが健常者よりも大きく発揮した。これらの結果は,前十字靭帯損傷者が階段降段動作において,大きな膝伸展モーメントを発揮できることが示唆された。
  • 八並 光信, 上迫 道代, 小宮山 一樹, 高橋 友理子, 遠藤 敏, 石川 愛子, 里宇 明元, 正門 由久, 森 毅彦, 近藤 咲子, ...
    2005 年 20 巻 2 号 p. 133-138
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中における廃用症候群へ対する理学療法の効果を検討したものである。対象は,1年間に造血幹細胞移植を行った患者35名のうち,早期死亡を除いた18名であった。評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能・Hb量・柔軟性について移植前後で行った。なお,移植患者は,毎日,無菌室において筋力増強練習やストレッチングを自主練習した。さらに,週3回,理学療法士と主に立位で,筋力増強練習とストレッチングを個別練習した。その結果,移植前と比べ移植後の筋力・運動耐容能・柔軟性の低下は顕著であった。Hb量は,移植前後であまり変化はなく,正常値と比較して低値を示した。今回,無菌室滞在中も理学療法を行ったにもかかわらず,移植前の筋力・運動耐容能・柔軟性を維持することができなかった。この原因としては,無菌室における活動性の制約が大きいと考えられた。この他,臨床的な観点から,薬物の副作用・血球の回復状況・栄養状態・治療関連症状等も考えられた。
  • 上杉 睦, 秋山 純和
    2005 年 20 巻 2 号 p. 139-142
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    左右下肢の荷重量における不均等は,反復起立動作の運動強度に影響を与えると考えられる。本研究では,下肢荷重量の配分の違いが反復起立動作の運動強度に及ぼす影響を検討した。対象は健常成人男性12名(平均年齢22.7歳)。測定課題は重心動揺計を用いて下肢荷重量をモニタで確認し,一側下肢の荷重量を体重の50%,60%,70%に調節して反復起立動作を行った.設定荷重量の増加に伴い,酸素摂取量,心拍数で有意な増加を認めた。荷重量の左右不均等は,起立動作の不安定性を増大させ,運動時の運動強度を増加させると考えられる。
  • 対馬 栄輝, 二ツ矢 昌夫, 坂野 晶司, 朝日 茂樹, 三田 禮造
    2005 年 20 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は,大腿骨近位部骨折(大腿骨骨折)を受傷した高齢な患者における受傷前,退院時,調査時の日常生活活動(ADL)と知能との関連性を検討することである。大腿骨骨折患者84名(平均年齢81.1±7.1歳)を対象として,知能,受傷前ADL,退院時ADL,調査時ADLを評価し,関連性を解析した。その結果,全てのADLと知能は,ほとんどが有意な相関を示した。知能が低下している者は,ADLが受傷前よりも退院時または調査時ともに有意に低下しており,入浴,更衣,歩行,排泄で著しかった。正準相関分析による第1正準変数の結果では,調査時の更衣,排泄,歩行に対して,これらと類似した受傷前ADLの項目が大きく関与し,さらに知能との関連性が高いことがわかった。第2正準変数では,入浴や食事が他の項目と違った特徴を示すことがわかった。今回は単一施設で治療を受けた患者のみを対象としていたが,施設ごとの治療方針の違い,地域差の影響も否めず,他施設間にわたる調査を継続する必要もある。
  • 藤田 智, 江連 志歩, 篠原 卓行, 玉置 広香, 陳 曉菁, 新美 英里, 村松 明日香, 勝平 純司, 藤沢 しげ子
    2005 年 20 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    妊婦は,腹圧や過度な関節負担の原因となる動作は避けるべきであるといわれている。階段昇降動作はこのような問題となる動作の一つとされ,先行研究では階段昇降動作のうち降段動作の方が,負担が大きいということが示されている。本研究の目的は,階段降段動作時において,妊娠による身体変化が下肢関節負担に与えている影響を明らかにすることである。対象者は6名の健常成人女性とし,二種類の階段での降段動作を,妊婦体験ジャケット装着時と非装着時において実施した。計測は三次元動作分析装置と床反力計を用いて行い,関節角度と下肢関節モーメントに着目し,比較した。結果より,妊婦体験ジャケットを装着した階段降段時には体重の増加と姿勢の変化により,膝関節モーメントが増加することが明らかになった。
  • 村上 雅仁, 加藤 順一, 高橋 健太郎, 前田 慶明, 山本 千恵子, 細川 晃代, 永田 安雄, 古川 宏
    2005 年 20 巻 2 号 p. 155-157
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    片麻痺を伴う脳血管障害患者200例(男性146例, 女性54例:61±11歳)を対象に,麻痺側と非麻痺側の脈波伝播速度を測定し,運動麻痺が脈波伝播速度に及ぼす影響をみるとともに,機能的自立度評価法(FIM: functional independence measure)による身体活動量との関連について検討した。麻痺側の上腕-足首間脈波伝播速度は非麻痺側と比較して有意に高値を示したが(p<0.0001),脳出血と脳梗塞による病型別および左右麻痺側別では有意差を認めなかった。麻痺側の上腕-足首間脈波伝播速度は年齢と有意に正相関を示し(r=0.56,p<0.05),FIMと負相関を認めた(r=-0.29)。これらの結果より,片麻痺を伴う脳血管障害患者の麻痺側では,非麻痺側と比較して血管の伸展性が低下しているだけでなく,加齢および運動麻痺により身体活動量が低いほど,動脈スティフネスの低下と関連していることが示唆された。
  • 斉藤 琴子, 丸山 仁司
    2005 年 20 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    上下肢の敏捷性が最大歩行速度に及ぼす影響について検討するため,健常若年者22名を対象とし,最大歩行速度,最大タッピング,最大ステッピング,握力,脚力を測定した。上肢の敏捷性の指標である最大タッピングと下肢の敏捷性の指標である最大ステッピングとの間には有意な相関は見られなかった。最大歩行速度と有意な相関を示した測定項目は最大ステッピングおよび脚力であった(p<0.05)。重回帰分析を行った結果,最大歩行速度は最大ステッピングが有意な変数として採用された。上下肢の敏捷性には相関がなく,それぞれが独立していたことにより,敏捷性に関する能力は部位によって異なることが考えられる。したがって,敏捷性を評価するには上肢だけではなく,下肢についても考慮することが重要であると考えられる。最大ステッピングの速い人ほど,最大歩行速度も速かったため,最大ステッピングを測定することにより,最大歩行速度も予測可能なことが示唆された。
  • 横井 輝夫, 加藤 美樹, 林 美紀, 長井 真美子, 水池 千尋, 中越 竜馬
    2005 年 20 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は,要介護高齢者の基本動作能力と摂食・嚥下障害との関連を明らかにすることである。摂食・嚥下障害の原因の多数を脳卒中が占めるため,脳卒中の有無に分けて検討した。対象は,介護老人保健施設に入所している要介護高齢者で,脳卒中を有する39名と脳卒中を有さない61名であった。基本動作能力は,「座位保持」,「立位保持」,および「歩行」の可否を,摂食・嚥下障害はむせの頻度を用いて評価した。その結果,脳卒中を有する者では,基本動作能力とむせの頻度との間に関連が認められ,「立位保持」,および「歩行」が可能な者は「ほとんどむせない」者が有意に多く,「座位保持」が可能な者に比べむせる者の割合は低かった。一方,脳卒中を有さない者では,2者に関連は認められなかった。しかし,むせる者の割合は,「立位保持」,および「歩行」が可能な者は不可能な者の2分の1程度であった。また,脳卒中を有する者の56%に対し脳卒中を有さない者も23%にむせがみられた。以上より,脳卒中を有する者だけではなく,脳卒中を有さない者においても,基本動作能力が低下している要介護高齢者は,摂食・嚥下障害の予備軍であと考えられた。また,脳卒中を有する要介護高齢者では,「立位保持」の可否が誤嚥の危険性を推測する臨床的に重要な指標であることが示唆された。
  • ―若年者における歩行時加速度の特徴的パターンの同定に関する検討―
    小椋 一也, 大渕 修一, 小島 基永, 古名 丈人, 潮見 泰藏
    2005 年 20 巻 2 号 p. 171-177
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    歩行の客観的評価に加速度計を用いる方法が注目されているが,基準指標となる特徴的パターンは明らかにされていない。そこで本研究は,正規化した若年者の歩行時加速度データより共通する特徴的パターンを同定することを目的とした。若年者99名の通常歩行時の加速度計を骨盤の仙骨部に装着し,前後方向(X軸),左右方向(Y軸),上下方向(Z軸)の3方向において計測した。無作為に20名を抽出し,データを正規化して加速度パターンの抽出から特徴点を検討した。同一対象者内では各方向とも加速度の特徴的パターンは一定となる傾向を示した。20名のデータの平均値については前後方向だけが個人の特徴を反映するパターンを示した。また,上下方向においても同様に個人の特徴的パターンを反映していたが,同一対象者内では分散は一定となる傾向を示したものの,20名のデータでは必ずしも一定とはならなかった。以上の結果から,健常若年者による歩行時の骨盤加速度には対象者個人および対象者全体の平均値に共通した特徴的なパターンが存在することが明らかとなった。
  • -TUGTを用いての検討-
    杉原 敏道, 郷 貴大, 三島 誠一, 舩山 貴子, 田中 基隆, 柴田 悦子, 高木 麻里子, 菊地 栄里
    2005 年 20 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/07/27
    ジャーナル フリー
    冬期間における圧雪や凍結は高齢者を転倒にさらす脅威となる。本稿ではTimed Up and Go Test(以下,TUGT)を用いて,冬期間でも外出可能な高齢者の身体能力レベルについて検討した。85名の高齢者を冬期間でも外出が可能な群(外出自立群)と冬期間のみ外出を抑制あるいは回避する群(外出自立困難群)に分類しTUGTを実施した。その結果,外出自立困難群では外出自立群に比べ有意なTUGTの遅延が認められた(p<0.01)。また,判別特性分析を用いた検討では15.5 secを境として外出自立群と外出自立困難群を良好に判別することが可能であった(判別的中率95.3%・感度78.8%)。この結果は積雪地域に住む高齢者が冬期間でも外出可能な身体能力レベルを示すとともに評価基準として有益な情報になると考えられた。しかし,外出自立群の中にも屋内で転倒を受傷している者もいたことから,ある一定の身体能力を有しても転倒は起こりうると考えられた。
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