理学療法科学
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20 巻, 3 号
August
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研究論文
  • 野島 恵理子, 佐々木 誠
    2005 年 20 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,他動的な股関節内旋外旋運動の施行介入による指床間距離の変化を検討し,改善の要因を明らかにすることである。健常学生27名(平均年齢24.6歳)を施行群(他動的な股関節内旋外旋運動)18名,対照群(他動的な股関節屈曲伸展運動)9名に無作為に振り分けた。介入前後の指床間距離を測定し,改善の要因を検討するために股関節の回旋角度,骨盤角度,および胸腰椎角度の変化値との相関も求めた。その結果,施行群において指床間距離の有意な改善が認められたが,指床間距離と左右の内旋,外旋,骨盤前傾,腰椎屈曲,胸椎屈曲の角度変化値の項目において相関は認められなかった。以上より,メカニズムは明確にできなかったが,他動的な股関節内旋外旋運動には指床間距離を改善する効果があることが明らかとなった。
  • ―酸素摂取量および主観的運動強度での検討―
    志村 圭太, 河野 博之, 小久保 浩平, 西田 裕介, 丸山 仁司
    2005 年 20 巻 3 号 p. 191-195
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究では,健常成人男性10名(平均年齢21.7±0.8歳)を対象に,頭低位での低強度運動が生体に及ぼす影響を酸素摂取量(VO2)および主観的運動強度(RPE)から検討した.運動はTilt table上に背臥位または頭低位(10°傾斜)をとり,ベッド上に90°傾けて設置された自転車エルゴメータで目標心拍数(50%嫌気性代謝閾値時VO2)にて各10分間,心拍一定負荷で行った.データ解析は,各肢位での運動5~10分におけるVO2とRPEを対応のあるt検定にて分析した.その結果,VO2は背臥位と頭低位間において有意な差を認めず,RPEでは頭低位で有意に低い値を示した(p<0.05).つまり,低強度運動の実施形態として頭低位を選択することで,RPEが低い状態で背臥位の運動と同様のVO2を得ることが可能であり,運動処方における運動の継続性へ期待ができると考える.
  • 金子 秀雄, 佐藤 広徳, 丸山 仁司
    2005 年 20 巻 3 号 p. 197-201
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,超音波診断装置を用いて異なる呼吸活動時の側腹筋厚を測定し,その信頼性について検証することである。対象者は健常男性10名とし,側腹筋厚の測定に超音波診断装置を使用した。座位にて安静呼気および吸気終末と最大呼気努力時の3条件で,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋とその合計である側腹筋の筋厚を測定した。1週間後に再測定を行い,条件間における筋厚の比較と級内相関係数(ICC)を求めた。その結果,安静呼吸では,各筋において呼気および吸気終末間における筋厚に有意差はなく,各筋において高い信頼性(ICC=0.87~0.91)が得られた。しかし最大呼気努力時では,各筋が有意に増大し,内腹斜筋(ICC=0.93),側腹筋(ICC=0.91)に比べ外腹斜筋(ICC=0.48)と腹横筋(ICC=0.66)は十分な信頼性を得ることができなかった。
  • -1.5 m歩行による歩行能力評価の可能性について-
    牧迫 飛雄馬, 阿部 勉, 藤井 伸一, 住谷 久美子, 吉松 竜貴, 徳原 理恵, 小林 修二, 久保 晃
    2005 年 20 巻 3 号 p. 203-206
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    在宅における歩行能力評価としての可能性を探ることを目的に,1.5 m,5 mおよび10 m歩行を分析し,その妥当性を検討した。対象は,理学療法を実施している入院患者40例(平均年齢70±12歳)で,快適および最大速度歩行中の1.5 m,5 m,10 mの各地点を通過した所要時間,歩数を計測し,歩行速度,歩行率,歩幅を比較した。その結果,快適および最大歩行ともに歩行距離による歩行速度,歩行率,歩幅の有意差は認めなかった。また,歩行速度,歩行率,歩幅ともに快適速度,最大速度条件において1.5 m歩行は5 m歩行,10 m歩行のそれぞれと有意に高い相関関係を認めた。以上より,1.5 mでの歩行測定は,5 m歩行および10 m歩行同様に歩行能力評価指標のひとつとして活用できる可能性があると考えられた。
  • -Hand-Held Dynamometerを用いて-
    川井 謙太朗, 齋藤 昭彦
    2005 年 20 巻 3 号 p. 207-212
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    Hand-held Dynamometerを使用し,肩関節周囲筋筋力の加齢的変化を分析することを目的とした。健常女性20歳代~60歳代の各年代20名ずつ,計100名(200肩)を対象とした。年齢と肩関節周囲筋筋力との間には負の相関がみられた。肩甲胸郭関節に主に関与する筋群は,肩甲上腕関節に主に関与する筋群よりも負の相関が強かった。年代間の筋力の比較では,肩甲胸郭関節に主に関与する筋群が40歳代頃から筋力低下がみられるのに対して,肩甲上腕関節に主に関与する筋群は50歳代・60歳代頃から筋力低下がみられた。以上より,肩甲胸郭関節に主に関与する筋群の筋力は年齢と負の相関が強く,筋力低下が起こりはじめる年代も早いことが示唆された。
  • 村田 伸, 津田 彰, 中原 弘量
    2005 年 20 巻 3 号 p. 213-217
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究は,健常成人16名(男性7名,女性9名,平均24.8±3.7歳)を対象に,音楽聴取と精神作業負荷(数字の逆唱と果物の想起課題)が重心動揺に及ぼす影響を検討した。重心動揺の指標とした総軌跡長と外周面積は,3条件間で有意に異なり,精神作業負荷条件での重心動揺が統制条件(無音状態)での重心動揺より有意に大きかった。音楽聴取条件での重心動揺については,有意差が認められなかった。これらの知見より,受動的音楽聴取以上に精神作業負荷が,身体動揺の増加を惹起することが明らかとなった。
特集
  • 竹井 仁
    2005 年 20 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    関節モビライゼーションとは,主に滑膜関節において圧迫・牽引検査で示唆された関節内病変や,低可動性の改善,疼痛の軽減などさまざまな治療目的に応じ,低速度かつさまざまな振幅で種々の可動範囲を反復的に動かす他動運動である。関節機能異常の原因が関節を構成する組織(骨・関節包・靱帯)にある場合は関節モビライゼーションが適応となる。著しく関節周囲の組織と筋の両者が制限されているときには,軟部組織モビライゼーションと関節モビライゼーションを交互に行うこともある。治療を考えるときには総合的な評価から原因を明らかにし,治療の選択に際しても軟部組織と関節を別々に考えるのではなく,両者から関節機能異常をみる必要がある。関節機能異常は,どのような場合でも解剖学的,構造的な異常により発症している。したがって評価と治療を行う際には,解剖学,生理学,運動学や触診の知識・技術が重要になる。
  • 石橋 英明
    2005 年 20 巻 3 号 p. 227-233
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    本稿では,大腿骨頸部骨折のリハビリテーションに関する重要な知識を,整形外科医の視点からまとめた。すなわち,この骨折の治療をどのように考えながら進めていくのか,手術適応や手術方法をどのように決定しているのか,術後リハビリテーションに際して荷重時期をどう決めるか,リハビリテーションはどのような場合に阻害されやすいか,などを解説している。大腿骨頸部骨折患者は,平均年齢が80歳,社会的背景も異なり,多くが認知症を持ち,既存合併症を有するものも多い。その意味で実に個人差の多い患者群である。したがって,リハビリテーションの進行速度も,ゴール設定も,治療上の問題点も,各患者でまったく異なる。しかし,すべての患者に最良の結果を提供することが,われわれの責務である。そのために,整形外科医の治療に対する考え方を,リハビリテーションを担うスタッフに理解していただきたいと思う。本稿によって,大腿骨頸部骨折の治療における考え方の一端を知っていただければ幸いである。
  • 立花 陽明
    2005 年 20 巻 3 号 p. 235-240
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    日本の高齢社会が今後一層加速化することは必至であり,加齢に伴う退行変性を基盤とした骨・関節疾患が今後も増加することは容易に想像できる。変形性関節症は,関節軟骨の進行性の変性病変を主体とした骨の変形性変化として定義される。変形性膝関節症は,明らかな原因なく,加齢に慢性的な機械的刺激が加わって発症するが,これまでに,その発生や進展に関する種々のリスクファクターについて検討されてきた。本症に対する治療の第一選択は保存的治療であり,種々の保存的治療を試みるべきである。しかし,治療目標の達成度が十分でない場合には,QOLをできる限り高めるために,観血的治療も含め,各症例ごとに治療方針を吟味すべきである。
  • 宮島 剛
    2005 年 20 巻 3 号 p. 241-244
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    1. 骨粗鬆症自体は疼痛をきたす疾患ではなく,骨折を生ずることによりはじめて疼痛をきたすものである。また骨粗鬆症の患者が訴える疼痛の大半は変形性脊椎症・関節症や筋源性要素などによって生ずるものである。2. 骨粗鬆症治療薬であるビスフォスフォネートの投与によって変形性脊椎症・関節症の疼痛も改善することが知られている。ビスフォスフォネート投与による疼痛軽減効果についての調査結果を紹介する。3. 脆弱性骨折を生じて治療した後に,脊椎の隣接椎体や反対側大腿骨近位端の骨折を生ずる例をしばしばみる。これは骨折およびその治療のための固定,安静,不動化などに伴って生ずる脆弱性の進行や,これらによる筋力低下が原因である。4. これらに関連して骨粗鬆症と腰下肢の疾患及び外傷についての最近の知見を加えて概説する。
  • 大嶽 昇弘
    2005 年 20 巻 3 号 p. 245-248
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/09/02
    ジャーナル フリー
    ノルディックシステムでは可逆的な関節機能障害を対象とし,その改善を目的とするものである。具体的には関節,骨,関節包,靱帯,筋,滑液胞,腱,神経,骨膜,血管などを対象とする。例えば痛みがある場合,何らかの関節機能障害を呈しておれば,その関節機能障害を改善することで痛みを軽減しようとするものである。ここでは腰部・下肢を中心に述べるが,腰部,下肢の痛みに対し,先ずその責任部位がどこにあり,何に由来するのかを鑑別する方法について述べ,その結果責任部位とそれが軟部組織由来のものであると鑑別された場合,その主なアプローチについて述べる。
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