理学療法科学
Online ISSN : 2434-2807
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21 巻, 3 号
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研究論文
  • 山田 和政, 山田 恵, 伊藤 倫之, 塩中 雅博, 植松 光俊
    2006 年 21 巻 3 号 p. 205-208
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    長期臥床高齢患者の理学療法におけるリスクマネージメントを骨密度の観点から検討した。70歳以上の長期臥床患者33名(寝たきり群)と大腿骨頚部骨折患者29名(骨折群)を対象(すべて女性)に,踵骨の音響的骨評価値を測定し,比較した。寝たきり群は,骨折群と比較して有意に低い値であった(p<0.001)。理学療法実施時,1) 臥床期間・年齢・体重(栄養状態)に関する情報を事前に収集し,2) 廃用性症候群と老化によって著しい骨密度の低下をきたしている事を念頭に置き,3) 転倒・転落はもちろん,それより小さな外力でさえも容易に骨折を引き起こす危険性を有している事を再認識して,プログラムを進めていくことが重要である。
  • 大槻 桂右
    2006 年 21 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,上肢運動による運動耐容能評価の意義を明らかにすることである。健常男性10名を対象に,簡易エルゴメーターを用いて,上肢運動と下肢運動のAnaerobic Threshold(AT)を中心に分析した。主な結果は,上肢運動耐容能は下肢運動耐容能と有意な相関関係を認めた(AT; r=0.77,VE/VCO2 slope; r=0.96,p<0.05)。上肢運動は下肢運動と比較して,浅速呼吸になることが特徴的であった。上肢運動による運動耐容能評価の意義として,上肢運動は全身性の運動耐容能と深く関係していることや,下肢障害患者の上肢運動による運動耐容能評価の有用性が示唆された。
  • 勝平 純司, 谷口 敬道, 下井 俊典, 霍 明, 齋藤 里果, 杉原 素子
    2006 年 21 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は介護予防トレーニング前後における高齢者の歩行能力を三次元動作分析装置を用いて比較することである。27名の要介護高齢者に対して3ヶ月の介護予防トレーニングを実施し,廃用性疾患群,整形疾患群,中枢疾患群の各グループから1名ずつを被験者として抽出した。トレーニング前後において歩行速度,歩幅,ケイデンスなどの歩行パラメータ計測と三次元動作分析装置を用いた歩行分析を実施した。結果として,廃用性疾患群の被験者Aと整形疾患群の被験者Bに関しては歩行パラメータが大きく改善し,関節モーメントとパワーの波形パターンが健常者に近似した。中枢疾患群のCに関しては歩行パラメータに変化はみられず,トレーニングの前後で関節モーメント,パワーに変化はみられなかった。以上より,今後は中枢疾患者のトレーニングと効果判定の方法を更に検討する必要性が示唆された。
  • ―コミュニティにおける比較から―
    重森 健太, 日下 隆一, 大城 昌平, 濱辺 淳一
    2006 年 21 巻 3 号 p. 221-225
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,コミュニティにおける通所リハ利用者,老健入所者およびその他の高齢者の運動機能の相違を分析し,要介護高齢者の在宅生活支援について検討した。運動機能評価は10 m全力歩行時間,最大一歩幅,踏み台昇降回数,立ち上がり回数,片脚立位時間,バランスボード上の立位保持能力,長座位体前屈の7項目で行なった。結果,運動機能評価は,長座位体前屈以外の6項目でその他の高齢者よりも通所リハ利用者,老健入所者が有意に低値であった(それぞれP<0.01)。また,多項ロジスティック回帰分析では,10 m全力歩行時間が有意であった(P<0.01)。運動能力の維持・改善が在宅生活を支援していく上で重要であろうと考えられた。
  • 金田 有美子, 葛山 元基, 小林 武雅, 古谷 美帆, 吉田 大記, 成 命奇, 勝平 純司
    2006 年 21 巻 3 号 p. 227-232
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,健常男性8名を対象に,理学療法士の指示が椅子からの立ち上がり動作の下肢関節モーメントに与える影響を3次元動作解析装置を用いた動作分析手法により明らかにすることである。理学療法士の指示は,free(対象者の任意で平行棒を使用して立つ),push(平行棒を押して立つ),pull(平行棒を引いて立つ)とし,臀部離床時の股関節,膝関節,足関節の各モーメントを測定した。平行棒を押すように指示した際の立ち上がりでは膝関節伸展モーメントが小さい値を示し,平行棒を引くように指示した際の立ち上がりでは膝関節伸展モーメント,足関節底屈モーメントが大きい値を示した。平行棒を押した場合,平行棒には上向きの反力が発生するため床反力ベクトルの鉛直成分は小さくなり,膝関節伸展モーメントが小さい値を示した。以上の結果から,患者の立ち上がり動作の際に理学療法士が平行棒を押すように指示することは,下肢関節への負担を減らし,安定した立ち上がりにつながると考えられる。
  • ─上肢屈曲-外転-外旋パターンでの検討─
    佐藤 仁, 丸山 仁司
    2006 年 21 巻 3 号 p. 233-237
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    一側(右)上肢PNF屈曲-外転-外旋パターンの開始,中間,終了肢位で,徒手による等尺性抵抗運動を施し,対角線上の左下肢にかかる力について検討した。被検者は右利き健常男性14名(平均20歳)。右上肢同パターンへの抵抗運動で左下肢にかかる力は,上肢開始肢位4.04±2.40 kgf,中間肢位9.01±3.00 kgf,終了肢位6.10±4.09 kgfであった。左下肢にかかる力は,上肢中間肢位への抵抗運動が,開始肢位および終了肢位に比して有意に高値を示した(p<0.05)。左下肢伸展方向の最大筋力に対する割合は,右上肢開始肢位28.8%,中間肢位61.2%,終了肢位43.7%であった。一側上肢への等尺性抵抗運動で,体幹や下肢へ運動が拡がり,力学的な反応で反対側下肢の筋活動が向上すると解釈した。
  • ─回復期後期,維持期前期,維持期後期別の比較検討─
    上岡 裕美子, 吉野 貴子, 菅谷 公美子, 大橋 ゆかり, 飯島 節
    2006 年 21 巻 3 号 p. 239-247
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    29組の脳卒中後遺症者(患者)と担当理学療法士(PT)を対象に,それぞれが認識している理学療法目標の相違を,発症からの時期別に検討した。その結果,患者は回復期後期群では運動機能改善を目標と認識していた。維持期群は歩行・運動機能の改善と認識する者と,現状維持と認識する者の両方が認められた。一方,PTは回復期後期の患者に対して社会的役割取得および歩行改善を,維持期の患者に対しては運動機能・活動の維持および社会参加の促進を目標と認識していることが示された。いずれの時期においてもそれぞれ患者とPTが認識している目標には相違が認められ,今後,両者が確実に目標を共有するための目標設定方法について検討することが必要であると考えられた。
  • 榊原 愛子
    2006 年 21 巻 3 号 p. 249-254
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    アンケート調査により,妊娠時の腰痛の実態を把握し,腰痛が日常生活へ及ぼす影響について検討することを目的とした。茨城県内の診療所及び総合病院の産婦人科,スポーツ施設に通う妊婦769名を対象に,独自に作成した質問紙を用いて調査した。その結果,妊婦の56.7%が今回妊娠してから腰痛を経験していた。VASによる腰痛の程度は‘軽い痛み’と感じる程度であったが,腰痛群は腰痛なし群に比べて,妊娠早期から,日常生活の中で腰に負担のかかる動作に,困難さを感じていた。これらのことから,妊娠時の腰痛は自覚的には軽度であると考えられるが,妊娠早期から日常生活動作へ悪影響を及ぼすので,妊娠早期より腰痛予防の対策が必要である。
  • 金子 秀雄, 佐藤 広徳, 丸山 仁司
    2006 年 21 巻 3 号 p. 255-259
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究では,姿勢が側腹筋厚に及ぼす影響を明らかにするために,超音波診断装置を用いて側腹筋の筋厚を測定した。対象は健常男性12名(平均年齢28.6±4.4歳)とし,外腹斜筋,内腹斜筋,腹横筋の筋厚を測定した。測定姿勢は,骨盤を中間位にした背臥位,座位,立位と,骨盤を前傾位および後傾位にした座位の5条件とした。そして,姿勢の変化(背臥位,座位,立位)と骨盤傾斜の変化(座位での前傾位,中間位,後傾位)の各筋厚と3筋の合計の厚さ(側腹筋)を比較した。その結果,座位,立位における腹横筋と側腹筋の厚さは背臥位よりも有意に増大した。また,座位における骨盤中間位との比較では,骨盤後傾位においてすべての筋厚が有意に増大したが,骨盤前傾位では腹横筋,側腹筋が有意に減少した。超音波診断装置を用いた側腹筋厚の測定では,骨盤傾斜や抗重力姿勢による影響を考慮すべきである。
  • 大隈 統, 網本 和, 高倉 保幸, 高橋 佳恵, 草野 修輔
    2006 年 21 巻 3 号 p. 261-265
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    脳血管障害例の座位姿勢制御における視覚的垂直定位の影響を身体軸傾斜との関連から検討した。右麻痺7例,左麻痺8例,健常若年者9名及び健常高齢者4名に,視覚的垂直定位と,傾斜した視覚指標への身体軸傾斜を測定した。片麻痺例は身体軸傾斜が健常者より有意に小さく,麻痺側傾斜時にその傾向が著明であったが,運動麻痺の重症度と身体軸傾斜との間に有意な相関を認めなかった。視覚的垂直定位の標準偏差は左麻痺例で他の3群より有意に大きく,身体軸傾斜の標準偏差は左麻痺例の左傾斜時に大きい傾向を認めた。視覚的垂直定位の標準偏差は身体軸傾斜時の動揺に影響し,左麻痺例で顕著であると示唆された。
  • 建内 宏重, 米田 稔彦, 田中 貴広, 熊田 仁, 楞田 眞弘, 大野 博司, 田中 一成, 山口 淳
    2006 年 21 巻 3 号 p. 267-273
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,側方へのステップ動作開始時における姿勢制御の加齢による変化を明らかにすることである。対象は健常成人女性20名(若年群10名:年齢24.3±1.8歳,中高年群10名:年齢60.6±3.7歳)とした。課題は側方へのステップ動作とし,ステップ側第5中足骨頭から10~20 cmの間(S10)および20~30 cmの間(S20)の2種類の距離を設定した。動作開始時における時間因子,足圧中心移動距離(CoP)および重心移動距離(CoG),肩および骨盤の移動距離と傾斜角度,両側の脊柱起立筋,中殿筋,長内転筋の各筋活動量を測定した。S10において,中高年群は若年群よりも体重移動時間,CoPのステップ側への移動,CoGの支持側への移動,肩の傾斜および肩・骨盤の支持側へ移動,両側脊柱起立筋の活動量が増加した。S10とS20の比較において,若年群では支持側中殿筋の活動量が増加し,骨盤はよりステップ側へ移動した。中高年群では支持側の中殿筋と長内転筋の活動量が増加したが,姿勢の変化は認めなかった。以上より,加齢にともない,一旦支持側へ身体を移動させることでより安全性を重視した姿勢制御戦略を用いている可能性が示唆された。
  • ─地域女性高齢者を対象として─
    金 信敬, 黒澤 和生
    2006 年 21 巻 3 号 p. 275-279
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究は,地域の女性高齢者を対象に5ヶ月間太極拳運動を実施し,太極拳運動による身体機能の改善及び転倒予防の可能性を検討することである。対象は,太極拳群30名(平均年齢72.2±3.5歳),対照群30名(平均年齢71.6±4.5歳)であった。両群に対して,研究実施前後の身体機能測定,転倒の有無に関する質問,及び太極拳群のみへの自主練習実施状況,太極拳運動への感想,今後の継続意志について質問法での調査を実施した。その結果,太極拳群の片足立ち時間,握力,Functional Reach (FR),歩行速度,立位体前屈,片足立ち振りの全ての項目の測定値において有意に向上したが,対照群では全ての項目の測定値において有意な変化は見られなかった。また,太極拳群では,研究実施前の一年間で転倒を経験した人数に比べ,5ヶ月間の研究期間と研究終了後の半年間で転倒を経験した人数に有意な減少を示した。
  • -介護老人保健施設に入所中の車椅子自走者を対象に-
    浅井 結, 木村 美穂, 渡辺 和恵, 金澤 悠, 三浦 尚子, 佐藤 法明, 佐々木 誠
    2006 年 21 巻 3 号 p. 281-285
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    介護老人保健施設で車椅子自走可能な入所者は,車椅子駆動時における走行速度,走行安定性,走行持久力の向上ならびにその能力が維持されることが望まれる。本研究の目的は,体幹回旋運動のマシーントレーニングを一定期間施行した後の体幹回旋能力の向上が車椅子駆動能力に与える影響について明らかにすることである。介護老人保健施設に入所中の車椅子自走者14名を対象に,マシーンを使用した体幹回旋運動のトレーニングを週5回,3週間実施した。トレーニング前後に,体幹回旋力と車椅子駆動能力の測定を行った。体幹回旋力は有意に増強した。車椅子駆動能力の変化については,2.5 m往復路駆動時間と6分間駆動距離はトレーニング前後で変化を認めなかったが,5 m駆動時間は短縮する傾向を認めた。以上より,介護老人保健施設に入所中の車椅子自走者における体幹回旋運動の3週間のマシーントレーニングは,車椅子の走行安定性や走行持久性を向上させないものの,体幹回旋力を増強させることで車椅子駆動の速度を速める可能性が示唆された。
  • 藤田 康孝, 上地 瑞恵, 上原 智佳, 河合 直人, 鈴木 眞志, 二宮 秀樹, 渡辺 重人, 勝平 純司, 藤沢 しげ子
    2006 年 21 巻 3 号 p. 287-291
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    妊娠による体重増加や身体変化は歩行にさまざまな影響を及ぼす。しかし,妊婦の歩行についてバイオメカニクスの面から報告した研究はほとんどない。また,妊婦体験ジャケットを用いた先行研究では,3 cm程度のヒールで足関節底屈モーメントが減少することが報告されているが,これは実際の妊婦を対象としていない。そこで本研究では,まず妊婦と健常女性の歩行を比較し,さらに3 cm程度のヒールが実際の妊婦の歩行にどのような影響を与えているのかを検討することを目的とした。対象は妊婦3名,健常女性5名とし,ヒール高0 cmと3 cmの靴を履き,歩行パラメーターと下肢関節モーメントを床反力計と三次元動作分析装置を用いて計測した。結果より,妊婦2名で特徴的な歩行パターンが観察された。また,0 cmヒールに比べ,3 cmヒールで立脚後期の足関節底屈モーメントの減少がみられたことより,実際の妊婦においても3 cmヒールが足関節底屈筋群へかかる負担を軽減させる可能性が示唆された。
  • ─実験モデルを用いたずれ応力の推定─
    小原 謙一, 江口 淳子, 渡邉 進
    2006 年 21 巻 3 号 p. 293-297
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,圧力分布測定システムと実験モデルを用いて,椅子座位時の背もたれと骨盤の位置関係が坐骨部荷重ピーク値とずれ応力に与える影響を調べることであった。対象は,健常成人男性10名(平均年齢22.4±2.3歳)であった。その結果,荷重ピーク値は,背もたれにもたれることで有意に低値を示し,骨盤を前方へ移動させて体幹を後方傾斜させた方がより低値を示す傾向にあった。また,ずれ応力の推定値は,基準位置では1.8±0.7 kgf,5 cmでは2.2±0.6 kgf,10 cmでは2.2±0.5 kgfであり,骨盤を前方へ移動させた方が基準位置よりも高い値を示した。これらの結果は,背もたれとの距離が近い位置で背もたれにもたれることが,坐骨部への荷重は少なく,また,ずれ応力は少ないため,褥瘡予防上有効であることを示唆した。
  • -陸上空間で模倣されたフォームと肩障害との関連性についての考察-
    猪股 伸晃, 坂本 雅昭, 中澤 理恵, 中川 和昌, 桜井 進一
    2006 年 21 巻 3 号 p. 299-304
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    我々は競泳自由形フォームと肩障害の関連性について,男子競泳選手12名を対象に,陸上空間で模倣されたフォームを3次元動作解析装置を用いて分析した。結果,自由形ストロークのhand entryとmid recoveryにおいて,呼吸と同側の肩に障害をもつ群と呼吸と反対側に障害をもつ群のフォームに違いがみられ,呼吸側と肩障害との関連性が示された。今後水中におけるフォームを分析することで,より具体的に本研究の結果を解釈することが可能になると考えられる。
特集
  • 櫻田 弘治
    2006 年 21 巻 3 号 p. 305-310
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    循環器と呼吸器は非常に密接な関係にあり,呼吸理学療法を施行する上で循環器疾患に十分配慮することが必要不可欠である。近年,心臓血管外科領域では,低侵襲手術や手術後管理の進歩によって,心原性肺水腫の呼吸管理は,第一選択として非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)を行うようになり 1, 2),人工呼吸器早期離脱やその後の早期離床が可能となったことが,呼吸器合併症の発症を少なくしている大きな要因である。今回,循環器疾患に関した呼吸理学療法に焦点をあて,病態の特異性と呼吸理学療法の戦略方法,実践について述べた。
  • 高橋 哲也
    2006 年 21 巻 3 号 p. 311-316
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    心臓と肺は直結している臓器であるために,お互いが絶えず影響を及ぼしあっている。そのため,循環器疾患が原因で呼吸器に問題が生じた場合は,単に呼吸を介助しただけでは酸素化能などの呼吸器の問題は改善しない場合も多い。心疾患患者に対する呼吸理学療法は,病態を理解し,呼吸理学療法の限界を把握した上で臨床応用する必要がある。心臓外科手術後は早期離床が最も効果的な呼吸理学療法であり,インセンティブスパイロメータを使用した伝統的な呼吸練習の効果については否定されている。また,心不全患者や心臓外科手術後の患者は呼吸筋力の低下を認めるものの,呼吸筋力トレーニングが関連する諸指標にどのように影響するかが十分に明らかになっていない。そのため,心疾患患者に対する呼吸筋トレーニングについては効果や必要性について更なる研究が必要である。
  • 山崎  宗隆
    2006 年 21 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/09/22
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患に対するリハビリテーションの歴史は欧米では古く,すでに早期治療・早期退院が確立されている。様々な医療機器の進歩や研究により,日本も徐々にこれに近づきつつある。我が国の心蔵リハビリテーションの概念には,可及的迅速性・安全性,および高質なQOLへの到達の三つが内包されるが,同時にこれは携わるスタッフの目標でもある。本稿では,心臓リハビリテーションの歴史や心臓リハビリテーション指導士制度,第一相・第三相への関わり方について概説し,当院での現状を紹介する。
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